安全・安価・安定な静電気モーター
☆静電気モーターは難しさと面白さがあります
電磁気力で動くモーターも難しいのですが、静電気のモーターは更に難しいような気がします。
静電気が十分に用意できるかどうかも微妙で、電磁気モーターよりもパワーが小さいことも難しい原因だと思います。
一方、「静電気は短時間で放電して終わり」というはかないイメージを変える衝撃もあります。静電気で回転が得られるならば、静電気を生活に利用できるのではないかという、「ロマン」も生まれてきます。
そこで、安定に回るように製作時の部品点数を減らし、「単純化」 をはかることによって「安価・安定・安全」に回るモーターを考えてみました。◎安価 ・・・ コンデンサーを安価に: 二重プラスチックコップ → アルミホイル2枚とビニル袋
◎安定 ・・・ 電極とローターの距離を微調整できる
◎安全 ・・・ 軸をシャープ芯にすることでケガ防止
塩ビ管とキッチンペーパーで静電気を送ります。
☆回るかどうかのポイント(安価・安定・安全に解決)
回る原動力は、静電気を発生させているところ(塩ビ管)から、地面に電荷が移動するエネルギーを回転運動に変えているようです。(参考文献1)
この電荷の移動がきちんと行われることが前提です。そこで、安定に回るための3つのポイントについて考えてます。
(1)静電気が十分に発生し、アースがとれていること
本実践では、塩ビ管をクッキングペーパーでこする方法で発生させていますが、クッキングペーパーも何回も使っていると、あまりよくありません。うまくいかないときは、クッキングペーパーを思い切って新品を使いましょう。
静電気が十分に連続供給できれば、コンデンサーはいらないようですが、やはり手放しで回っている様子を観察したいものです。長い間回すためには、コンデンサーの部分でしっかり静電気がたまっていることが大事です。
そこで、プラスチックコップを2層に重ねたコンデンサーをよく見かけますが、今回は単純化を図っているので、コンデンサーの基本である「平行平板コンデンサー」を使います。
アルミ箔とビニル袋の切れ端をサンドイッチにして作るので、大変安価です。大きさを自由に変えられるので、実験する季節に応じて最低限の容量が選べ、万一の感電時にもある程度の安全が保たれます。また、アースの面積も広くとれるので安定に電化が移動します。
(2)電極とローターの距離が適切であること
ここが電荷を移動させる最も電気的な抵抗の高い部分でしょう。近いほどよいはずですが、ローターが揺れながら回ると、電極に当たり、摩擦になってしまいます。
(3)ローターと受け軸の摩擦が少ないこと
ローターの中心に裁縫のスナップを使うアイデア(参考文献2)をお借りしています。スナップの穴はアルミテープでふさぎます。
また、多くのスナップは、真鍮などの非鉄金属でできているので、穴を半田付けでふさぐこともできます。(この方がきれい)
次に、回転軸の材料ですが、上向きに固定した画鋲やとがった鉛筆を見かけます。今回はほんの少し安全を考慮し、とがらせたシャープペンシルの芯約2cmと消しゴムの組み合わせを使います。(シャープペンシルの芯もとがって危ないのですが、折れやすいのでけがの確率も減ります)
☆各部品と組み立て方
◎ローター(回転する部分) (参考文献(1)(2)より)
- プラスチックコップの底の部分をはさみで切り取りローターとします。
- 多くのプラスチックコップには、底を補強するために8カ所突起があります。この部分を目安に、5cm×1cm幅のアルミテープを写真のように8カ所貼り付けていきます。(この部分に順次電荷がたまり電極との反発力で回転します(参考文献2)
- 底の中心に2mmの穴を開け、スナップの凸を取り付け、穴をアルミテープでふさぎます。下記の設計図にあるようにアルミテープの糊の面が軸に接しないように工夫します。
アルミテープを5カ所までつけた様子
◎電極
◎コンデンサー
- 10cm四方にビニル袋を1枚切り取って、9cm四方のアルミホイルで「サンドイッチ」しました。
- ビニル袋は穴があいていなければどんな物でも使えると思います。
◎軸
- シャープペンシルの芯を消しゴムに刺してつくります。(消しゴムを粗末にするなと怒られそうですが)
- シャープペンシルの芯を少し削ってとがらせると消しゴムに入りやすく、軸受けとの摩擦も少ないようです。
◎全体設計図(断面図)
◎完成写真
回ると→
☆その他
☆参考文献
1) 電気通信大学同窓会「目黒会」
http://www.megrokai.or.jp/megurokai/houkoku/kousaku/motor/franklinmotor.html2) 電気通信大学同窓会「目黒会」工作教室
http://www.megrokai.or.jp/megurokai/houkoku/kousaku/motor/franklinmotor.PDF