塩化銅・硫酸銅の電気分解の後始末(廃液処理)


☆もうヤスリで磨かなくてよい。

 塩化銅の電気分解をおこなうと、電極に使う炭素棒に銅が付いて取れなくなります。
昔は、使い捨てたり、ヤスリで磨いたりしていました。
最近は、シャープペンシルの芯などで代用する方法もありますが、
シャープペンシルの芯は、析出した銅をはがそうとするとおれやすいのが欠点です。   ただ、大変な時間が掛かりました。
そこで、電気分解の後始末に電気分解を利用します。
電気分解後の電極は、+極:塩素ガス、-極:銅の析出となっていますが、
   電極の+と-を入れ換えます。
すると、 
-極であった電極が+極になり塩素ガスを発生させながらの銅がどんどんはがれていきます。 ただし、きれいになった反対の極には、銅が析出します。

→永久に両方きれいにならなりません。

そこで、+極に銅の着いた電極、-極に鉄くぎなどの捨てもよい材料 (当然電気の通るもの)
を使って電気分解します。すると、-極に近い部分の銅がどんどんはがれてきれいになって行きます。

コツは、-極に使った鉄くぎなどの金属を移動させながら、+極にふれないようにしてきれいにします。
  (このとき、水溶液中の塩化銅がどんどん消費され、銅イオンが銅に変わり、廃液の問題も小さくなっていきます)
(ただし、換気を十分に行わないと危険です)
また、鉄くぎの鉄は銅よりもイオンか傾向が高いので溶け出すことを考慮に入れ、少し大きめのものをおすすめします。
   

☆有毒の塩化銅をどうするか

  ペットボトルなどに保存しておいて、業者さんなどに回収してもらう方法が考えられます。しかし、使う量を考えると保存がたいへんです。 そこで、回収した塩化銅水溶液の中に、
重曹(炭酸水素ナトリウム)を入れてかき混ぜます。(過剰に入れる必要があります)
 → 
水槽にあつめた廃塩化銅水溶液      炭酸水素ナトリウムを入れた直後

すると、二酸化炭素のあわが出て、銅イオンが沈殿になります。
この反応では、

2CuCl2+ 2NaHCO3 + H2O → CuCO3・Cu(OH)2 + CO2+ 2HCl + 2NaCl

となり、 CuCO3・Cu(OH)2塩基性炭酸銅(緑青の主成分) ができ、沈殿します。

この方法で、銅イオンを沈殿させれば、廃液の体積を小さくすることができます。
(炭酸水素ナトリウムを過剰に入れるので、上澄みは塩基性を示します。)
 NaHCO3+ H2O → H2CO3 + NaOH → CO2 + H2O + NaOH 
でできた水酸化ナトリウムで塩酸が中和されます

(上澄みは   炭酸水 + 食塩水 + うすい水酸化ナトリウム  なので、水酸化ナトリウムをクエン酸などで中和すれば捨てることができます)
注意:塩基性炭酸銅は業者などに回収してもらう方がよいかもしれません。
   (参考文献(1)には塩基性炭酸銅の無害が報告されていますが、微量に硫酸銅が存在しているかもしれません。念のため)

☆硫酸銅水溶液も同様に処理

塩化銅同様の反応式が考えられます。

2CuSO4 + 2NaHCO3 + H20 → CuCO3・Cu(OH)2 + CO2 + H2SO4 + Na2SO4

ここでも炭酸水素ナトリウムを過剰に入れるので 上記の硫酸は中和されます。
2NaHCO3 + 2H20 + H2SO4→  2CO2 + 4H2O + Na2SO4 

最終的には、
2CuSO4 + 4NaHCO3→ CuCO3・Cu(OH)2 + 3CO+ H2O + 2Na2SO4

となります。

上澄みにはCO2のほか、NaHCO3とNa2SO4が含まれると考えられます。
(液性は塩基性です)
硫酸銅の場合、この上澄みが捨てられるかどうかは、SO4イオンをどう扱うかにかかっています。
bottle_CuSO4.jpg塩基性炭酸銅の沈殿
もとの水溶液は硫酸銅です。発生した二酸化炭素でペットボトルがふくれています。

☆参考文献


 (1)顔料図鑑 http://homepage1.nifty.com/namakemono/material/pigments.html
 (2)≪銅の旅≫に関する化学反応 http://www8.plala.or.jp/grasia/Cu2jiken.htm


←戻る