葉の断面と気孔の観察 (植物スライサーを使って)


☆葉の断面の観察を素早く手軽に

 植物の学習では、葉の断面を観察しますが、茎の断面同様なかなか薄く切るのが難しい実験です。
葉を固定して、カミソリを動かす方法が主流ですが、私は、逆の発想で行っています。原理は台所にある野菜などを薄く切るフードプロセッサと同じです。
葉のうすい切片を作るには、下のような「植物スライサー」を使います。
slicer.jpg自作 植物スライサー

この器具の良さは、次の通りです。

  (1)安価 (下敷き、ペットボトルのキャップは廃品でもOK グループ分用意することが可能)
  
  (2)容易 (偶然を利用してうすい切片を作るので、中学生でも1単位時間の授業で使いこなします。
          また、大量に薄い切片ができるので、一人に1つプレパラートをつくって観察できます)

  (3)安全 (カミソリがプラスチック板に密着します。このスライサーを使い始めてから、
          授業中、カミソリでのケガがほとんどなくなりました。)



☆植物スライサーの作り方

100円ショップの下敷きを6cm×4cm程度に切って、
下の図のように1cm×3cm程度の長方形を切り抜きます。


slicer_spec.gif

その上に両刃カミソリを置いて、ペットボトルのキャップを下に置き
切片受けを作ります。
ペットボトルのキャップの中を水で満たし、
滑りが良くなるようにカミソリも水で濡らしておくようにします。

(写真では、ネオジウム磁石でカミソリを固定していますが、
 慣れてくれば軽く指で押さえて使っても大丈夫です)

ツバキの葉などを1cm×0.5cm程度に切って、
短い方をカミソリの刃の上でいろいろな方向に滑らせます。
(茎の断面の観察にも使えます。茎はセイタカアワダチソウが便利です)

両刃カミソリと下敷きの切り込みとの間隔切片の厚さを決めます。

この間隔は、いろいろ試しながら最も良い間隔を探ります。
(葉の堅さの違いなどから、最も良い間隔はそれぞれ違うようです。)

素早く葉の上を滑らせることで、20枚に1枚くらいは、かなりうすい切片が作れます。

(歯と切り込みの間隔と滑らせる速さが偶然いい具合になると
 うすい切片ができるというわけです)


 

☆断面の顕微鏡観察

 この観察では、葉の表と裏の細胞の並び方から、機能の違いに気付いてほしいところです。
 そのためには、顕微鏡で観察したときに、もともと表だったのはどちらかが分からなければなりません。
そこで、単純ですが、わかりやすい工夫として 油性フェルトペンを使う方法があります。
モッコク(ツバキ科)(100倍)表が青
  とってきた固めの葉っぱの表に油性マジックで色をつけます。
みたい部分の断面を両刃かみそりで薄く切って、顕微鏡で観察します。
明らかに表がわかり、細胞の並び方が、表と裏で違うことがわかりやすくなります。
(少なくとも逆に理解することは少なくなります)    

☆その他の注意点

  ・素材としてゴムの木の葉は表の透明の層が厚く、そこを気孔への空間と勘違いする場合があるので、難易度が高くなります。
  ・また、薄く切る方法ですが、葉をすごく尖った三角形に切って、その頂点の薄い部分を観察するという方法もよいと思います。

☆気孔はツユクサだけではない

   気孔の観察の定番はやはりツユクサでしょう。
 プレパラートの作りやすさ、気孔の見つけやすさなどは、最高です。
 しかし、もっと身近な素材でも見つけることができます。
 それは、キャベツです。
 キャベツの気孔(80倍)
 キャベツの気孔(400倍) キャベツもかたいので、そのままでは見ることができません。
また、ツユクサの用に表面をはがすのは大変です。

そこで、次のような加工をします。
  (1)キャベツの一番外の葉を用意する。(中の葉は気孔が少ない)
  (2)キャベツをお湯で10分くらいゆでて柔らかくする。
  (3)ゆでたキャベツを5mm各程度に切ってスライドガラスの上にのせる。
  (4)その上にカバーガラスをかけて指でつぶす。
  そのまま顕微鏡で観察をします。


☆参考

植物スライサーでカットした茎の断面
tsuyukusa_kuki.jpgツユクサの茎の断面(40倍)

seitakaawadachi.jpgセイタカアワダチソウの茎の断面(40倍)


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