bunretsu_open.JPGタマネギの細胞分裂を授業で全員が観察する


☆教科書に載っているのに難しい実験

 

 この実験は本当に難しい。(と思われています)
まず、染色体が分裂している最中の細胞を見つけることができません。

本当は、分裂している最中の細胞があるのに、顕微鏡でとらえられないこともあります。

この実験ではよくタマネギを用いるのですが,ネギやニラなどを使う場合もありどの方法を選ぶかが難しいところです。

しかし、この実験の研究がいろいろなところで盛んになりようやく方法が確立してきました。

種から発根させたり、染色液に酢酸ダーリアを使用したりという手法が多く紹介されています。


実験のワークシート(PDF版)
 

本サイトでは、紹介するポイントは次のとおりです。授業で全員が観察できることを目指したいと思います。

 1 根のはやし方・・・・「ビーカーにタマネギ」の単なる水栽培では,根がはえにくいようです。
               暗所で空気を十分に入れる必要があります。(細胞分裂には,酸素が必要です)
               種から発根させた根を使うと手軽です。

 2 採取する時間・・・・タマネギも生き物です。細胞分裂が盛んな時間帯は午前 10:00〜10:30ごろがよいようです。
               (最近の調査では午後4:00〜4:30も盛んであることがわかりました。このページの最初の写真は16:00に採取しました。)

 3 染色方法・・・・・・・・せっかく細胞分裂中の根が手に入っても,染色が十分 でなければ光学顕微鏡では観察できません。
               酢酸オルセインの場合,塩酸処理する前の根は、最低でも2時間は染色する必要があります。

 

☆根を手に入れる(1)(種を発根させる)

  1. タマネギやネギの種を用意します。(ホームセンターなどで購入。春先はタマネギよりネギの方が入手が容易です)

  2. シャーレに脱脂綿などの保水材を敷いて種を蒔きます。種がぬれる程度に水道水を与えます。(脱脂綿よりもティッシュなどの紙の方が良好です。脱脂綿は、根がもつれて扱いにくくなります)

  3. アルミホイルで遮光します。(保存する場所は、暗室などがよいが、室温25℃前後の時期が最も良い)

  4. 根が5mm以上伸びたものを午前10:00〜10:30または、午後4:00〜4:30に採取します(下記参照)。

  5. 2〜3日したらシャーレいっぱいに水道水を入れ、その後水を捨てる作業を行います。(カビが生えるのを防ぎます。値段の安い種はカビが生えやすいようです)

 

negi_share_1day.jpg negi_share_2day.jpg negi_share_3day.jpg

100円ショップで販売されていたネギの種を蒔いて順に1日目,2日目,3日目(撮影時25℃ AM10:30)

種は一度にまくのではなく2〜3日ずらして蒔くと毎日適量に採取できます。
一度にたくさん5mm以上になっていると作業が大変です。

chakoshidesukuu.jpg 水槽に発根した根が入っています。左下はザル

この場合は、
シャーレごと水槽に入れて、ティッシュなどの保水剤とシャーレを取り除き、ザルを通すと能率良く発根した根を回収できます。


 

☆根を手に入れる(2)(球根タマネギを水栽培する)

  1. タマネギを用意します。(スーパーのタマネギで十分です。 ただし新タマネギではなく、去年収穫された物が良いと言われますが最近の新タマネギは発根する)

  2. もともとついている乾燥した根をカッターナイフを使って,水中で切りとります。(空気中で切ると組織の中に空気が入ります)

  3. ペットボトルで写真Aのような水栽培用の台をつくります。(ペットボトルを切った後,特大の半田ごてで穴を開けました。)

  4. タマネギを3.でつくった台にのせて水槽の中に入れます。水の量は,根がはえる部分が水に少しつかるくらい とします)

  5. 金魚用のエアーポンプも入れます。(写真B)(できたら2台入れると良いです。これをやらないから分裂が起きにくくなります)

  6. 暗い所(暗室など)に置いておきます。(2日くらいで根が伸びるはず。)

  7. 毎日水を変える必要があります。(カッターナイフで切った次の日は,水が茶色になっている ので必ずかえる)

  8. 5mm以上伸びた根を午前10:00〜10:30にピンセットで採取します(下記参照)

      

     写真A                  写真B                        写真C

  写真A・・・たまねぎの下にペットボトルを切ったものに水が行き交う穴をあけてタマネギを置く台を作る

  写真B・・・タマネギをペットボトルの台にのせる。エアポンプで空気を送り,暗室に保存しておく。

 

  写真C・・・設置後24時間後のタマネギ すでに根が生えている!この中で一番のびている根はすでに「収穫」可能。

 

☆根を固定する(「球根の根」と「種の根」との共通処理を行う)

  関東地方なら6月前後の気温が25℃付近になる時期を選びます。(寒い時期の実験には温度の管理が必要)

  1. 午前10:00〜10:30の最も細胞分裂が盛んな時間帯に採取します。 (6時間後の16:00から16:30の時間も良好です)(観察結果からタマネギの根は,1日2回分裂することになります)
  2. 午前10時すぎの根をそのまま保存するためにファーマー液(氷酢酸:エタノール=1:3)につけます。 (ファーマー液は1日たったら新しいものに取り替えてください。使いまわししない) (ファーマー液をカルノア液と読んでいる本も見かけますが、本来のカルノア液は(エタノール:氷酢酸:クロロホルム=6:3:1)です。クロロホルムを使わなくてもファーマー液で十分固定できます)

  3. ファーマー液に1日つけたら,保存のため保存液70%エタノール(水:エタノール=3:7)につけて,冷蔵庫で保存します。(実はこれで1年持ちます)

  4. よく染まらない場合は、染色液に1日つけてから観察して下さい。(タマネギは酢酸オルセインが良好です)

 染色液(下記参照)に2時間以上つけ込んで染めます。(下記写真の通り5分ではコントラストが悪いです)



☆観察する (以下の手順を含んだワークシート(PDF版))

  1. 50mlのビーカーに3%塩酸20mlと,タマネギの根を入れます。( 細胞同士をはなれやすくするため)

  2. 100mlのビーカーに60℃ぐらいのお湯30ml入れたところに、塩酸を入れたビーカーをつけて温めます。

  3. 2〜3分のち,ピンセットで取り出して,水をいれた500mlのビーカーでかなり良く洗ってください。(塩酸が脱色することがあります)

  4. スライドガラスにのせ、根の先2mmくらいを残して,先端以外を捨てます。(色の濃い方が先端)

  5. カバーガラスをかけ、カバーガラスの上からつまようじの先で円を描くよう つぶします。

  6. 低倍率で正方形に近い小さい細胞(分裂したての細胞)が集まっているところをさがし その後、高倍率にします。

 ◎いくつかの参考書には60℃の塩酸につけた後、染色する手順になっていますが、
  長時間染色する場合、塩酸処理した根はどろどろになってしまいやすいので
  上記の順序としました。染色した根は、塩酸につけすぎると脱色されますので、
  短時間ですませると良いと思います。


  6.について(細胞を広げる重要性)

   塩酸で細胞同士をはなれやすくし、細胞の重なりがないように広げることが大切です。
   プレパラートの様子と100倍で顕微鏡観察した様子を比較します。

                  下の写真を含むプリント(PDF版)
   
   カバーガラスをかけてだけの状態
   tubushi0_pre.jpgtubushi0_100bai.jpg

   つまようじで1回だけ押した状態
   tubushi1_pre.jpgtubushi1_100bai.jpg

   根の周辺をつまようじで3回、円を描くように押した状態
   tubushi2_pre.jpgtubushi2_100bai.jpg

   根の周辺をつまようじで5回、円を描くように押した状態
   tubushi3_pre.jpgtubushi3_100bai.jpg

   根の周辺をつまようじで変化がなくなるまで円を描くように押した状態
   tubushi4_pre.jpgtubushi4_100bai.jpg

   きちんと細胞を広げておくと、100倍の段階でも細胞が重なっているかどうかがわかります。
   広げる前の段階から、根の先端には、良く染色された場所(染色体が多い部分)が多いことがわかります。
   この部分は細胞の核の数が多いわけですから、細胞の数が多くなります。(分裂直後の細胞が多い可能性がある部分です)
 

☆観察結果

 いろいろな染色液や染色時間の違いによる結果写真です。同じ根を使っても、染色液が違えば、見える分裂像は全く違います。


◎酢酸オルセイン

同一視野で40倍・100倍・400倍の写真 (塩酸前に96時間染色) 

             下の3枚を含むプリント(PDF版)

40倍
hirogete_40bai.jpg

100倍
hirogete_100bai.jpg

400倍
hirogete_400bai.jpg



orsein_18h_teibairitsu.JPG
種の根(酢酸オルセイン)(100倍)(塩酸処理前 18時間染色)
低倍率の段階でどの細胞を拡大するか当たりを付けると能率よく観察できます。

球根の根(酢酸オルセイン)(280倍)(塩酸処理後 5分間染色

5分間では,染色が十分ではありません。(株)中村理科のデジカメ撮影キットで撮影

 

  
球根の根(酢酸オルセイン) (280倍)(塩酸処理前24時間染色)                    

   (株)中村理科のデジカメ撮影キットで撮影                 

視野の中に各段階の分裂像がそろっています。

orsein_18h_allstar.JPG
種の根(酢酸オルセイン)(400倍)(塩酸処理前 18時間染色

サイバーショット(コリメート法で撮影)

視野の中に各段階の分裂像がそろっています
          



orsein_18h_sensyokutai.JPG
種の根(酢酸オルセイン)(400倍)(塩酸処理前 18時間染色)
サイバーショット(コリメート法で撮影)
酢酸オルセインの染色はコントラストがよいので染色体がこのように
鮮明に見える細胞も観察できます。



◎酢酸カーミン
 
     

        球根の根(酢酸カーミン15分染色)(70倍)              (400倍)


   (株)中村理科のデジカメ撮影キットで撮影
酢酸カーミンは酢酸オルセインよりもコントラストが悪く なります。

 

 
◎酢酸インジゴカーミン

 

 

球根の根(塩酸処理後 酢酸インディゴカーミン)(600倍)
オリンパスC-1000Lで撮影

 

◎酢酸ダーリア

種から発根したもの(酢酸ダーリア24時間染色後3%塩酸で2分脱色)(150倍)

File Pixで撮影

 

種から発根したもの(酢酸ダーリアと塩酸の混合液で10分染色)(150倍)

種から発根したもの(酢酸ダーリアと塩酸の混合液で10分染色)(400倍)

 

 

☆染色液について

       本観察ではきちんとした根が手に入っても染色で失敗することが多いようです。
    (1) 染色が足りず、分裂中の染色体が染まっていない
    (2) 染色しすぎて、細胞質まで染まり、染色体がはっきり見えない

   それぞれの染色液の染色条件や染色時間により、上記(1)(2)のどちらかの失敗をしてしまうことがあります。

        ・酢酸カーミン

アセトカルミンなどの名前の市販品を使用。染色力は弱いが核だけが染まります。
しかし15分以上染色する必要を感じます。薬品庫においてある古いものは染色力が弱いのでこの実験には使わない方がよいかもしれません。
(タマネギの皮の観察では酢酸オルセインよりも早く染まり十分使えます)

        ・酢酸オルセイン(この実験ではおすすめ)

調整済みの市販品もありますが、高価です。本実験では、オルセインという色素を購入し,オルセイン0.5g+45%酢酸100mlで調整しました。
酢酸カーミンより深い赤色に染色されます。カーミンよりコントラストが良く、塩酸に対しての「抵抗力?」が高いので、、染まりが良好です。
ただし、染色に時間がかかる傾向があります。
反面、1週間くらいつけ込んでも細胞質はそれほど染まっていません。染色体と細胞質のコントラストがよく、目を凝らさなくてもしっかり観察できます。

        ・酢酸ダーリア

ダーリアバイオレットという色素を購入し,ダーリア0.5g+30%酢酸100mlで調整。紫色〜青色に染色されます。
しかし、酢酸ダーリアは細胞質まで強く染色されます。

塩酸と混合し乖離も同時に行う手法が報告されています。(参考文献1)
本実験では、酢酸ダーリア液と1N塩酸とを7:3混合した液で10分染色するのが一番良い結果を得ました。
長時間染色すると細胞質が染まりすぎて観察しづらくなります。

なお、酢酸ダーリアで染まりすぎた根は、塩酸につけることによって少し脱色されます。3%塩酸25℃で5分つけるとほぼ脱色されてしまいます。
脱色については、2分くらいが一番良い結果を得ました。

        ・酢酸インディゴカーミン

インディゴカーミンという酸素の検出などで使われる色素を購入します。インディゴカーミン0.5g+45%酢酸100mlで調整します。
インディゴカーミンは他の色素より安価であり大量に使用したい場合はおすすめです。しかし、細胞質まで染まり、観察しづらいのが難点です。
また、褐色瓶に保存しても1年で変色し使用不可になります。毎回使うときに新しく作る必要があります。

 

☆その他

☆参考文献

  1. 半本秀博,2000年.「体細胞分裂の観察を確実に行う簡易染色法と材料の条件」.遺伝,54:50-54.

 

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