「語るのもつらく悲しい。我々の大地に恐ろしい悲劇が起きました。ここ数日間、我々誰しも深く心を痛め、ロシアのベスラン市で起きたこと全てに心を通わせたことでしょう。そこで我々はたんなる殺人者というより、無防備な子供たちに武器を使用した者たちと遭遇しました。

 

 そして今、まず人生で最も大事なもの、自分たちの子供やその親族を失った人々にたいし、支援と苦しみを共有すると申し上げます。

 この数日、テロリストの手で死亡した人々を思い浮かべてほしい。

 ロシアの歴史には悲劇の頁や重大な出来事が少なくありません。私たちは巨大で偉大な国家でしたが、急速に変化する世界の環境で生きる能力がありませんでした。その国家が崩壊した後に生まれた環境で生活しています。

 しかしあらゆる困難にもかかわらず、私たちはソ連邦というこの巨大国家の中核は維持することができました。そして私たちは新しい国家をロシア連邦と名づけました。

 

 私たちみな、変革、より良いものへの変革に期待しました。

 しかし私たちの生活の中で変化した多くのものにたいし、まったく準備できていませんでした。何故でしょうか。私たちは社会、政治体制の発展状態や水準に合わない過渡期経済環境の中で生活しています。

 

 私たちは激化した国内紛争や人種間矛盾の環境の中で生活しています。これらは以前では支配イデオロギ−で厳しく弾圧されたものでした。

 

 私たちは国防と安全問題にしかるべき注意を払うことやめ、司法、警察治安分野にも及ぶ汚職を許してきました。

 また我が国は、かつては最も強力な国境防衛体制がありましたが、あっという間に西側からも、東側からも防衛できないものとなりました。

 

 新しい、現代的で現実に防衛できる国境構築には、多くの歳月を要しますし、数十億ル−ブルが必要となります。

 しかしそれでも、私たちは適時にそして職業人として行動すれば、より効果をあげることができたわけです。

 基本的に、自国内と世界で起きているプロセスの複雑さと危険性について私たちが理解しなかったことは認めるべきです。

 いずれにしても、そうしたことに対応できず、弱さを露呈したわけです。

 

 “弱いやつは打て”と言います。

 ある者は“より脂の多い”一片を我々から奪おうとし、ある者はその手助けをしています。ロシアは核超大国の一つで、まだ彼らにとって脅威だ、この脅威を取り除く必要があると考え、手助けしているのです。

 そしてテロリズムとは、これはもちろん、こうした目的達成のたんなる手段です。何度も述べましたように、私たちは危機や暴動、テロ攻撃に何度も遭遇してきました。しかし今回起きたことは、その残忍さからみて非人間的で、前例のないテロ犯罪です。これは大統領や国会、政府に対する挑戦ではありません。これはロシア全体、我が国の国民全てに対する挑戦です。

 

 これは我が国に対する攻撃です。

 テロリストは我々より強いと思っています。彼らはその残忍さで我々を脅し、我々の意志をくじき、我々の社会を崩壊できると考えています。私たちには彼らに反撃するか、それとも彼らの要求に同意するか、一見選択肢があると思われるかもしれません。彼らの要求をのむということは、最終的に彼らが我々に手を出さなくなると期待して、屈服し、ロシアを破壊させ、“徐々に解体”させることです。

 

 大統領、ロシア国家の元首として、国とその領土の防衛を誓った人間として、またたんにロシアの一市民として、実際私たちにはいかなる選択肢も存在しないと確信しています。何故ならば、我々が脅しを許し、パニックに屈するならば、カラバフやプリドネストロヴィエその他の悲劇のように、果てしない血の紛争の連続に数百万の人々を押しやるからです。

 私たちは個々の脅しや、テロリストの単独の攻撃を相手にはしていません。私たちはロシアに対する国際テロの直接干渉を相手にしているのです。

 私たちは何度も同胞の命を奪う、全面的で残忍な総力戦を相手にしています。

 全世界の経験は、こうした戦争は残念ながら、急速に終結しないことを示しています。こうした環境において、私たちは以前のように気楽に生活できないし、そうしてはいけません。

 

 私たちは遥かに効果的な安全体制を構築しなればなりませんし、我が国の治安機関に新たな脅威のレベルと規模に対応する行動を求めるものです。

 しかし最も重要なことは、共通の危険に対する国民の動員です。他の諸国の事件が示していることは、テロリストは国の力だけでなく、組織され団結している市民社会と直面するところでは、大きな反撃を受けています。

 尊敬する同胞のみなさん!

 武装集団をこの恐ろしい犯罪に送り込んだ人たちは、我が国諸民族をけしかけ、ロシア国民を脅し、北コ−カサスで内紛を勃発させることが目的です。

 このことに関し、次のことを言いたい。

 その一つとして、近々国の結束を強化する総合対策を打ち出します。  

 二つ目として、北コ−カサスの情勢を監視する、力と手段の関係について新たなシステム作りが必要と考えています。

 三つ目として、治安機関の活動に対し根本的に新しいやり方も含め、効果的な危機防止管理システム作りが必要です。

 

 これら全ての措置は、国の憲法に全面的に合わせ実施されることを特に指摘しておきます。

 親愛なる友人のみなさん!

 我々は共にとても重々しい悲痛な時間を耐え忍んでいます。忍耐と市民の責任をはたした人たち全てに今感謝したいと思います。

 私たちは彼らよりモラルの点でも、勇敢さでも、人間の連帯でも、優れていたし、常に優れているはずです。そのことを今日の夜あらためて確認しました。

 まさに悲痛に浸るベスランでなおいっそう互いのことを思いやり、支えあっていました。

 他人の命と無事のため、自分の危険もおそれませんでした。

 最も非人間的環境の中でさえ、彼らは人間としてふるまったのです。

 失った痛みは耐えがたいものです。しかしこの試練は私たちをよりいっそう親密にさせ、多くのこと見直させました。

 今日、私たちは団結しなければなりません。そうやって初めて私たちは敵に勝利できるでしょう」

 

ロシア連邦大統領ウラジ−ミル・プ−チン(テレビ演説全文)

200494

「ノ−ヴォスチ」通信

訳出:飯塚俊明©