翻訳者の著作権について                                    翻訳者の権利について少しお話してみます。まず著作物には下記の種類があります。翻訳の場合、下記表内の二次著作物に該当します。

    

著作物の種類

言語の著作物

論文、小説、脚本、詩歌、俳句、講演など

音楽の著作物

楽曲及び楽曲を伴う歌詞

舞踊、無言劇の著作物

日本舞踊、バレエ、ダンスなどの舞踊やパントマイムの振り付け

美術の著作物

絵画、版画、彫刻、まんが、書、舞台装置など。美術工芸品も含む

建築の著作物

建造物自体。設計図は図形の著作物

地図、図形の著作物

地図と学術的な図面、図表、模型など

映画の著作物

劇場用映画、テレビ映画、ビデオソフトなど

写真の著作物

写真、グラビアなど

プログラムの著作物

コンピュータ・プログラム

このほかに次のような著作物もあります。

二次的著作物

上表の著作物(原著作物)を翻訳、編曲、変形、翻案(映画化など)し作成したもの

編集著作物

百科事典、辞書、新聞、雑誌、詩集などの編集物

データベースの著作物

データベース

なお、次にあげるものは著作物であっても、著作権がありません。
1.
憲法そのほかの法令(地方公共団体の条例、規則も含む。)
2.
国や地方公共団体の告示、訓令、通達など。
3.
裁判所の判決、決定、命令など。
4. 1
から3の翻訳物や編集物で国又は地方公共団体の作成するもの

「人格的な権利と財産的な権利の2つ」
著作者の権利は、人格的な利益を保護する著作者人格権と財産的な利益を保護する著作権の2つに分かれています。
著作者人格権は、著作者だけが持っている権利で、譲渡したり、相続したりすることはできません(一身専属権)。この権利は著作者の死亡によって消滅しますが、著作者の死後も一定の範囲で守られることになっています。
「定められた条件で自由利用」
著作権法では、一定の場合に、著作権を制限して著作物を自由に利用することができることにしています。しかし、著作権者の利益を不当に害さないように、また著作物の通常の利用が妨げられないように、その条件が厳密に定められています。また、著作権が制限される場合でも、著作者人格権は制限されません。


一方、財産的な意味の著作権は、その一部又は全部を譲渡したり相続したりできます。ですから、そうした場合の著作権者は著作者ではなく、著作権を譲り受けたり、相続したりした人ということになります。

著作者の権利
●著作者人格権
公表権 自分の著作物で、まだ公表されていないものを公表するかしないか、するとすれば、いつ、どのような方法、形で公表するかを決めることができる権利
氏名表示権 自分の著作物を公表するときに、著作者名を表示するかしないか、するとすれば、実名か変名かを決めることができる権利
同一性保持権 自分の著作物の内容、又は題号を自分の意に反して勝手に改変されない権利

●著作権
複製権 印刷、写真、複写、録音、録画などの方法によって著作物を有形的に再製する権利
上演権・演奏権 著作物を公に上演したり、演奏したりする権利
上映権 著作物を公に上映する権利
公衆送信権など 著作物を自動公衆送信(*インタラクティブ送信)したり、放送したり、有線放送したり、また、その放送や有線放送を、受信装置を使って公に伝達する権利
*サーバーなどに蓄積された情報を公衆からのアクセスにより自動的に送信すること
口述権 著作物を朗読などの方法で口頭で公に伝える権利
展示権 美術の著作物と未発行の写真著作物の原作品を公に展示する権利
頒布権 映画の著作物の複製物を頒布(販売・貸与など)する権利
譲渡権 映画以外の著作物の原作品又は複製物を公衆へ譲渡する権利
貸与権 映画以外の著作物の複製物を公衆へ貸与する権利
翻訳権・翻案権など 著作物を翻訳、編曲、変形、翻案する権利(二次的著作物を創作することに及ぶ権利)
二次的著作物の利用権 自分の著作物を原作品とする二次的著作物を利用(上記の各権利に係る行為)することについて、二次的著作物の著作権者がもつものと同じ権利

  翻訳者の権利は、著作者人格権と著作権です。

 まず著作者人格権が基本的な権利ですので、出版等をしようとする者にたいし、自己の氏名を実名もしくはペンネ−ムで公表を求める権利、または公表させない権利があります。また自分の著作物の内容、又は題号を自分の意に反して勝手に改変されない権利もあります。したがって、校正やその他大きな誤りがある場合でも、翻訳者の同意なしに翻訳物を修正できません。

よく他人の著書や翻訳物を自己のものと称して出版する例もありますが、著作者人格権の侵害は犯罪とされ、罰則は、著作権侵害、著作者人格権侵害ともに3年以下の懲役又は300万円以下の罰金となっています。

 著作者人格権は人間の属性のようなもので、例えば人の姓名のようなものですので、売買や契約で制限することはできません

 

 つぎに著作権のことですが、たぶん出版権などが争点になると思われます。これは高額の翻訳料を支払った場合、出版権は依頼者に譲渡されたと見なすことはできますが、一般の標準料金では出版権は譲渡されたと見なすことはできません。

 また著作者・翻訳者の許諾なしに使える場合、例えば非営利団体が使用する場合でも、翻訳者の著作者人格権は制限されません。つまり翻訳者名など出所を明示する義務があります。

 

 以上簡単に説明しましたが、さらに詳しく調査するつもりです。

 

                             TIS  山本