25日「ロシアの経済、石油だけが唯一ではない」(本紙経済解説員ワシリ・ズブコフ)読者の一人がロシアは石油なしに存在できるか、と聞いてきた。仮定法で提起された問題はどれも、現実で検証できない回答を求める。ロシアの石油は現実に存在するもので、抽象化は難しい。石油は輸送や電力、化学の原料その他多く用途に必要なものだ。石油だけをもっぱら当てにしている多くの生産部門が存在する。例えば、パイプライン輸送部門や、鋼管生産部門だ。しかしながら、この仮定の問題について、三つの側面、輸出、GDPへの影響、予算編成という点から検討してみることにする。輸出から見てみる。今年ロシアは4億7900万トン〜4億8400万トンの石油を採掘する予定だ(昨年比2〜2.5%増)。上半期の採掘量は2億7670万トン。原油輸出は増加し続け、上半期では1億2670万トンに達した。ロシアは世界で二番目の石油販売国だ。昨年ロシアの輸出全体における石油の割合は34.6%(2004年は32.1%)。合計で輸出高1600億ドルとなるその他のものは何か。これは天然ガス、兵器、軍事時術、鉄・非鉄金属、金属製品、肥料、化学原料、ガス・石油化学製品、穀物、木材、その加工品、機械加工品等。こうしてリストアップすると、石油以外にも我が国には別の安定した外貨収入源があると理解しやすくなる。国際復興開発銀行では、石油が現在のように高値でなければ、ロシアの経済成長率は4〜4.5%だろうと見ている。当然のことながら、安定化基金も存在しなかったろうし、仮りにあったとしてもはるかに少ないものであったはずだ。しかも現在存在する巨額の安定化基金はまだそのほとんど手がつけられていない。何故なら、これはロシアにとって世界経済が悪化した場合に備えた予備金だからだ。ロシアから輸出されるものは、海外で需要のあるものや、国内消費で余ったものだ。ロシア輸出内訳は、これはまた各々の産業部門の発展程度を示すものでもある。例えば製鉄、昨年鉄鋼製品を約200億ドル輸出した。輸出高の伸び率は年間5〜6%。ロシアは世界の鉄鋼市場で本格的なプレ−ヤとなっている。製鉄部門に導入されつつある生産設備の近代化、最新技術、材料などにより、製鉄部門には生産拡大の余力があると、期待をいだかせる。ましてや、国がその力相応にこの部門を支援しているからなおさらのことだ。したがって、米国や欧州の競合会社は割当量その他保護措置を導入して、出来る限りロシアの輸入を制限しようとしている。一方ロシアの鉄鋼企業は関税規制を回避しようと、新設備を海外で積極的に購入している。来年ロシアとEUの貿易協定が見直され、ロシアに対する新しい鉄鋼輸出割当量がきめられると見られる。今度はロシアの化学部門を検討してみる。この部門の輸出力は化学・石油化学企業の生産効率と著しく関係している。当然、新工場の建設、最新の技術の導入、数百億ドルの投資などが必要となる。しかも現在、この部門はきわめて活力に満ちている。最近の産業エネルギ−省の報告によると、この三年間、化学製品の輸出は安定的に伸び(年間11%近く)、総額では100億ドルを超えるようになった。ロシアの木材加工部門の輸出潜在力はきわめて大きい。木材資源量(世界資源の25%)ではブラジルだけが競争相手である。専門家は、うまくこの資源を活用すれば(加工の程度)、木材輸出は、原油売上で国が得る収入と匹敵するものをもたらす可能性がある。専門家の評価では、国内の木材加工部門の輸出潜在力は1200億ドルもある。現在、この部門全体の輸出高は丸太輸出でやっと100億ドルを超える程度だ。世界の未加工木材の貿易でロシアの割合が22%もある事実はけして誇れるようなものではない。政府はより加工された木材製品の輸出を積極的に推進し、逆に丸太の輸出を減少させるつもりでいる。石油がない場合の輸出について仮定的な話をしてみた。石油がないとしても、ロシアは貿易高では世界の20位以内には入るだろう。経済全体から見れば、この構図もけして悲惨なものではない。最早誰も、ロシアのことを「ミサイルをもつブルキナファソ」とはまさか呼びこともないだろう。今年ロシアのGDPは概算で9000億ドル程度になるだろう。四年前はたった6000億ドルしかなかった。2010年までにGDP倍増というプ−チン大統領の願望も実現することもきわめてリアルとなっている。米国では特恵制度からロシアを除外しようとささやき出している。ロシアは金持ちになり、最早甘くする必要はないと言っている。では石油なしに、ロシアのGDPはどの程度になるだろうか。公式資料によると、GDPにおける石油ガス部門の割合はここ数年9%以下で、全産業では31%。だが発展センタ−の専門家の考えだと、公式統計は産業の貢献度、特に石油ガス部門の貢献度を意識的に低くし、GDPにおける貿易の役割を故意の高くしている。それによると、パイプライン輸送も考慮すると、石油ガスはGDPの25%にあたる。一方、石油を除外した国内の全産業は15%である。仮に平均で17%とすると、我が国はこれでこと足りる。ロシアの”石油ガス以外”の産業はきわめて十分GDPを補完できる。ここで、”石油がない”という仮定のファクタ−がロシアの国家予算にどうように影響するか検討してみる。疑いもなく、予算規模は縮小するだろう。収入は減り、おそらく支出も別のものとなるだろう。石油なしでは予算規模は約4分の1小さくなるだろう。現在国家予算の収入は石油ガス収入により半分が形成されている。4年前ではこの半分であった(23.4%)。石油ガス収入とは関税その他税からの収入のことで、これは石油ガス企業の利益税、国が所有する株式に対する石油ガス企業の配当金、海外で活動する国営石油会社の収入のことである。一方この部門の超過利益は安定化基金に蓄積されている。だから経済に対する直接の影響は事実上ない。財務相アレクセイ・クウドリンによると、昨年石油収入の70%は安定化基金に繰り入れられた。今年もそこにすでに74.4%は入ると見られる。2009年は67.1%。財務相は石油収入の利用はGDPの2.8%まで縮小すると提案している。あるロシアの専門家はこの考えはよいとし、ある専門家は良くないとしている。この構想の今後について予想は難しい。「石油なしのロシア」というテ−マで学位がとれるかもしれない。だが結論は次のようにしてもらいたい。ロシアはきわめて自己完結的な世界でも数少ない国に一つである。市場経済のレ−ルに移行しても、ロシアは効率的な国家独占企業を設立して基幹部門の国家管理を維持し、同時に強力な民間部門の基盤を作ることができた。経済の抜本的立て直しにより生産の低下はあったが、現在は登り調子にある。石油部門なしでも現代ロシアの経済は十分発展力をもっている。国内における高度の知的ポテンシャルは、ロシアが巨大の原料部門からハイテクの輸出国に変貌しうると期待を抱かせるものだ。もちろん、いつか地下の石油埋蔵庫が空になる時が来る。しかし、その時にはナノテクノロジ−や産業のロボット化、宇宙技術、新素材など他の牽引車がロシア経済をひっぱっていると信じたい。