作品紹介 Best Selection




◆ 夢の香りのティー・タイム
りぼん昭和60年3月号、りぼんマスコットコミックス(RMC)「乙女ごころ・夢ごころ」に収録 【Amazon

「学校帰りの喫茶店、お気にいりの窓ぎわの席。いつか、あなたと…」
学校帰りに立ち寄る喫茶店でよく見かける男の子。女子校に通っているために、まともに異性と会話もできない結花と津和野のピュアなラブストーリー。

デビュー3作目。初めて『りぼん』本誌に掲載された作品です。デビュー作『コバルト・ブルーのひとしずく』、2作目『魔法のとけたプリンセス』に感じられた、ストーリー展開や絵に対する稚拙さを感じさせず、また、後に見られるようになる、人気至上主義の商業主義への影響もない。ある意味、柊あおいさんが、漫画家として一番美味しい時に描かれた傑作です。

※) ちなみに、いちせ が、初めて出会った柊あおい作品が、この『夢の香りのティー・タイム』です。


◆ 星の瞳のシルエット
りぼん昭和60年12月号〜平成元年5月号、単行本全10巻、1999年文庫化 【Amazon

「星のかけら、大切にもってるよ」
ずっと忘れられずにいた“すすき野原の男の子”。でも、最近、友達の好きな男の子が気になって…。なんといっても、魅力的なのは、主人公、香澄の親友であり恋のライバルでもある森下さん!! 高校生編の悲しく必死な想いには、切なくて胸が締め付けられます。

「250万乙女の聖書、マシュマロ感覚ドリーミー・ラブ」といわれた、誰もが認める柊あおいさん代表作。柊あおいさん初の連載作品。前半は、それまでの読み切り作品の集大成的な要素を多く持っていたが(悪く言えば、過去作品の単なる焼きなおし的な部分も多かったのだが)、後半は、今の作風につながる新しい作風を身につけることとなる。多角関係が泥沼になり、その点は非難されたりもしているが、そのピュアなラブストーリーと繊細な心理描写、時折魅せるギャグセンスと少女漫画史に残る最高傑作といって過言ではない。


◆ 耳をすませば
りぼん平成元年8月号〜11月号、RMC「耳をすませば」に収録 【Amazon

「心の中で音がする ド・ン・ナ・ヒ・ト・ダ・ロ・ウ」
図書貸出カードの中から始まる恋。読書好きな雫が、自分の借りる本を、いつも自分より先に借りているひとの存在に気づいて……。

『星の瞳』に次ぐ 2作目の連載作品。連載モノの中では、もっとも“柊あおいさんらしい”といわれる作品で、コアなファンの中では、『星の瞳』以上に評価するという声も聞く。本作品は、スタジオ・ジブリにより、アニメ映画化されているが、このアニメ化に非難が大きいのは、このように、ファンの間で、特別な位置を占める作品である部分も大きい。ただし、非常に大きな評価を得ている本作であるが、小学生を中心とするりぼん読者には受けが悪く注1)、4話で打ち切りとなってしまう。打ち切りにより、後半は単なる辻褄あわせになってしまい、また、ストーリー的にも未消化な部分が多く、非常に残念な作品になっている。

注1) 『りぼん』をメインに活躍していた柊あおいさんですが、ファン層は、当時、中高校生が多かった(『りぼん』読者層は小学生中心)。


◆ サイレント・ベル
りぼん平成4年12月号、RMC「STEP」に収録 【Amazon

「サンタの贈り物は素直に受け取っていいんだよ」
クリスマスに失恋した二人。そんな二人がたまたま出会い、失恋して止まっていた時間が動き出す瞬間。静かに展開されるストーリーが心に染みわたります。

『耳すま』以降、長く、人気、作品の質ともに低迷します。『耳すま』の打ち切りが相当にショックだったのか、人気のあった『星の瞳』の焼き直し的な作品や、りぼんの読者受けを狙った挙句、自身の作風にあわない支離滅裂な作品を多く生み出すことになります。そういう状況でも、ごくたまにですが、本来の柊あおいさんファン向けに、多少高年齢を意識したと思われる作品を生み出しています。この作品も、そんな作品の中の一本です(他には、『夢からさめても』『ENGAGE』なども見逃せない)。序盤のモノローグもセリフもなく、絵だけで見せる方法など、柊あおいさんの魅力を凝縮した作品です。


◆ 季節の栞
マーガレット 平成9年No.9、RMC「ENGAGE II」に収録 【Amazon

「………光……見てました」
中学卒業前の、北川と真砂、二人の小さな気持ちの積み重ね、そういう気持ちを凝縮した作品です。

ターゲット層の違いがあるにもかかわらず、『りぼん』で描くことにこだわっていた柊あおいさんですが、『雪の桜の木の下で…』(1995.12) 以降、『ぶ〜け』『マーガレット』、及び、『office YOU』上に、活動の場を移しています。無理して読者層に合わせる必要がなくなったため、良い作品が増えつつありますが、そのなかでも、桁違いに素晴らしいのがこの作品。文句なく、柊あおいさんの最高傑作です。