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好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!! −2010年8月に読んだ本



新潮社 新潮文庫
蒼路の旅人 /上橋菜穂子

すげー、とにかくすげー。北の大陸への侵略を画策する大国タルシュ帝国。そのタルシュ帝国に面する隣国サンガルからの救援を求められた新ヨゴ皇国では、帝とチャグム皇太子の間の亀裂が致命的になりつつあった……。という感じで、圧倒的すぎるよ、タルシュ帝国。前半、チャグムのあまりに青臭い聖人君子ぶりに反吐が出ると思いつつ読んでいたら、その青臭いとかどうという議論を一瞬で薙ぎ倒す圧倒的な暴力っ!! もう、ただただ蹂躙される一方のチャグム皇太子という展開の凄いこと凄いこと。そして、ラストに至るチャグム皇太子の決断っ!! これを引き継いで守り人シリーズの最終話『天と地の守り人』に続くのか。いやぁ、はじめは単なるファンタジーだったはずなのに、いつのまにか国家間のパワーバランスを描く壮大なストーリーになっているわけですがっ。うわぁ、スゲェ続きが読みたい。むちゃ楽しみすぎるっ!!

[ 守り人シリーズ ]


幻冬舎 幻狼ファンタジアノベルス
翼の帰る処3 ―歌われぬ約束― /妹尾ゆふ子

中間管理職の希望の星。ヤエトっ!! ヤエトっ!! や、宰相までに出世し、有力貴族の地位も得たヤエト。そんなヤエトに縁談の話が。というわけで、ヤエトと皇女のフラグが着実に積み重なってる予感。まあ、ヤエトは、なんやかんやで、あっちこっちでフラグ作りまくってる気もするけど(^^;。……それにしても、相変わらず、仕事に忙しいヤエトに非常に共感できて、その上、きちんと出来の良いファンタジーが非常に楽しい。そして、シロバの雛二羽が和むなぁ〜。

[ 翼の帰る処 ]


小学館 ガガガ文庫
羽月莉音の帝国 /至道流星

借金まみれになってオリオリがアレコレさせられるエロい話になるのかと思ったら、順調に成功するだけの展開に絶望したっ!! いや、オリオリは結局、不幸だけど(^^;。

というか、沙織以外は小説のパーツとして出来が酷すぎる。確かに、沙織は可愛いのだけど、しかし、終始順風満帆で危機に陥ることもなく、山も谷もないストーリーのどこが面白いんだろ。高校生が企業してゆくゆくは世界を牛耳ろうという話で、経済用語を丁寧に説明した上で、その経済的な成功の過程を真摯にきちんと手順を踏んで描いてるんだけど、そのせいで非常にテンポが悪く、しかも、その代償のわりに、嘘っぽさはぜんぜん拭えていない。ライトノベルらしい荒唐無稽さが悪い意味で発揮されてて、経済小説的なリアリティを上塗りしまくってる予感。エンターテイメント性をひたすらキャラに負ってるだけで、経済小説としての魅力が全くないんなら、単なるキャラクター小説にすればよかったんじゃね?

[ 羽月莉音の帝国 ]


幻冬舎 幻冬舎文庫
阪急電車 /有川浩

阪急今津線の車内を舞台にした至極の恋愛短編集。素晴らしい素晴らしい。

有川浩のくせに、軍オタが1人出てくる以外、自衛隊関係者が1人もいねぇ(^^;。阪急今津線の車内を舞台としたちょっとした出会いと別れの物語で、これはいい恋愛モノでした。印象的なのが、祖母と孫娘の二人乗客で、祖母の芯の通った考え方がいいねぇ。そして、初々しいカップルたちの馴れ初めが幸せそうで幸せそうで、……こんちきしょうめっ!!

……しかし、登場人物が大学生になると、恋愛にSEXを絡めないといけませんか、そうですか。初々しいカップルの恋愛モノなのにデフォルトで夜の話が入ってくるフォーマットは、個人的には、純愛系エロゲ以上に大きな違和感があって、やぱし、ラノベの中高生を主体にした恋愛モノのほうが好みだなぁ、と思ったりも。

[ 阪急電車 ]


アスキー・メディアワークス 電撃文庫
ソードアート・オンライン5 ファントム・バレット /川原礫

新ゲームに移行して、キリト弱化、スグがぜんぜん出てこねー、と思ったのも束の間、あっという間にヒロインゲットで最強伝説だと……。相変わらず過ぎる(笑)。

実際に死人が出ると噂される《死銃》事件。総務省から調査を依頼されたキリトは、銃撃戦メインの GGO へ。慣れ親しんだ剣と魔法の世界との違いに戸惑うキリトだが……。という感じで、新章スタート。銃撃戦メインの闘いでもキリトの無双ぶりは健在というか、むしろ一層凄いことになってるよっ!! 強い、マジ強すぎるっ!! ほんとキリトは凄いという印象ばかりなんだけど、ただ、ストーリー的には、まだ、新ヒロインとの絡みは恋愛に発展してなかったり、まだまだこれからかしらん。

[ ソードアート・オンライン ]


アスキー・メディアワークス 電撃文庫
とある魔術の禁書目録(21) /鎌池和馬

バトルバトルバトルっ!! 熱いっ、熱すぎるっっっ!! でも、オールキャストが一箇所に集結してフィアンマと対峙するような、わかりやすい展開を期待してたのだけど、各々擦れ違いながらバランバランに戦闘を繰り広げる展開は、あまりにカオスすぎてわけわかんねぇ〜。

というわけで、第三次世界大戦勃発。上条当麻、一方通行、浜面仕上に加え、御坂美琴や風斬氷華もロシア入り。我らが巨乳眼鏡はまさしく天使、うひょ〜〜〜〜。と、あとがきによると、一冊予定がこの21巻と次巻に分冊したということで、見せ場が盛りだくさんなのはむしろ次巻なのかしらん? 浜面はもういっぱいいっぱいにしか見えないのだけど、大丈夫なのか?

[ とある魔術の禁書目録 ]


アスキー・メディアワークス 電撃文庫
ヴァルプルギスの後悔 Fire3. /上遠野浩平

熾烈すぎる魔女戦争っ!! 二人の魔女は当然として、巨人を駆る<ロボット将軍>マキシム・G や奇蹟使いのフェイ・リスキィ。もう、なにこの派手で激しいバトル。マジにすげー、圧巻すぎるっ!!

古来から続く炎の魔女ヴァルプルギスと氷の魔女アルケスティスの魔女戦争。アルケスティスの策略で串刺しにされ重症を負った霧間凪は、ビートと朝倉朝子とともに逃避行を続けるが、そんな三人に統和機構のマキシム・G が襲い掛かる。一方、<リキ・ティキ・タビ>の力を継承してしまった織機綺は葛藤に苦しみつつも統和機構に復帰し、谷口正樹は織機綺を取り戻すためアルケスティスと行動を共にする。さらに、霧間凪とはぐれた羽原健太郎の前に現れた、霧間凪の叔父でかつて中枢候補者だった長谷部京輔や、中枢候補者の1人で陰から霧間凪を見守る九連内朱巳の思惑は?という感じの内容。で、ここに来て、『冥王と獣のダンス』(→感想)の奇蹟使いだと……。いや、二人の魔女の闘いだけでなく、統和機構中枢の後継者争いを絡めつつ、むちゃくちゃ派手なバトルで、とにかくおもしれー、めちゃおもしれー。でも、やたら登場人物が多い上に、すでに人間関係がカオスと化しているので、もはや、過去作品を脇に積んで読まないと、ほんと、わけわからんのですが(^^;。

[ ヴァルプルギスの後悔 ]


早川書房 ハヤカワ文庫JA
アリスへの決別 /山本弘

全7篇の短編集。児ポ法とか尖がったネタを集めた短編集なのだけど、そういう過激な題材以外には価値のないような話ばかりで、物語としてはどれもいまいち。強いて私的に面白かった作品を挙げれば、月面基地初の殺人事件を描いた「七歩跳んだ男」辺りかなぁ。ミステリ的な仕立ての終盤がなかなか愉快。あとは、夢のような世界を舞台にした「オルダーセンの世界」も雰囲気と世界観が魅力的に思えて悪くはなかったけれど、肝心の“亜夢界”の設定がちょっと説得力弱くて胡散臭いのがなぁ。「オルダーセンの世界」はまだしも、その続編、「夢幻潜航艇」の方は酷い印象。……しかし、全体にトンデモを嫌悪する論調が見え隠れする内容が多いように思えるのだけど、フィクション内でのトンデモ批判って、そもそも食い合わせが良くない予感。

[ アリスへの決別 ]


アスキー・メディアワークス 電撃文庫
クロノ×セクス×コンプレックス(2) /壁井ユカコ

男イラネ。<をい。1巻では空気だった男子生徒が、この2巻では本格出演。男子のバーニーは、三村とともにタイムリープな事件に巻き込まれる、という内容で、1巻同様、壁井ユカコらしからぬ明るいドタバタコメディが非常に面白いのだけど、ただ、個人的には、もっと、ニコやオリンピアなど、ミムラ周りの女の子の話が読みたかった……。

や、確かに1巻のあとがきで、“次巻ではもう少し男子にもスポットがあたる予定”と書かれてたけど、単純に男子がストーリーに絡んでくるだけではなく、まさか、新キャラのバーニーが実質的な主人公に立ち位置になるとはっ!! やりすぎだよっ!! 当然、女の子たちのアレコレに関しては、ほとんどページが割かれなくなっていて、ちと、がっかり。それにしても、バーニー視点で見るミムラが、あまりに思わせぶりな女の子になっていて、すごく怖い。ドキドキすぎる(^^;。誤解ですれ違いなドタバタコメディはやぱし楽しすぎっ!! そして、衝撃のラストが素晴らしい。やっぱ、ストーリーはすっごく面白くて、続きがとっても気になるぅ〜。

[ クロノ×セクス×コンプレックス ]


小学館 ガガガ文庫
とある飛空士への恋歌4 /犬村小六

えぐえぐ、泣ける(T-T)。特に、前半の葬儀シーンに、とにかく号泣。そして、繰り返される死を覚悟しての闘い。イスラの要である超弩級戦艦ルナ・バルコの勇姿……。うわぁ、熱いっ、熱すぎるっ!! 素晴らしいっ!!

いやぁ、カルエルとクレアの話も盛り上がっているけれど、今回の見所は、なんといっても超弩級戦艦ルナ・バルコの艦隊戦だよな。イスラを護る最強の盾。孤立無援の中、群がる敵機、火を噴く砲門っ!! 一千名の生命を乗せた、もはや満身創痍の超弩級戦艦……。しかし、ニュータイプに目覚めたカルエルが大活躍する展開になるかと思いきや、ノリピーとかに比べるとほとんど役にたってなくてそこは残念。<をい。

[ とある飛空士への恋歌 ]


富士見書房 富士見ファンタジア文庫
フルメタル・パニック! 12 ずっと、スタンド・バイ・ミー(下) /賀東招二

だはははははははっ、エピローグの車種に大笑い。感動的な最終巻だった気もするのだけど、もう、エピローグの印象しかないよっ!! ……それにしても、このネタ、通用するの高年齢すぎくね?

最終決戦の地、メリダ島へ降り立った宗介は、TAROSの起動を阻止し、かなめを救出できるのか……。というわけで、12年続いた『フルメタル・パニック!』のシリーズもとうとう完結。我らがテッサもイラストでパンチラを見せるぐらいで、宗介とかなめの二人を中心とした感動的なラストでした。泣ける(T-T)。特に、動画ファイルからの展開が泣けます。そしてラストシーン。ほんとにいい最終巻でしたっ!! というか、アルぅぅぅぅぅ(爆笑)。

[ フルメタル・パニック! ]


集英社 スーパーダッシュ文庫
テルミー きみがやろうとしている事は /滝川廉治

泣ける(T-T)。修学旅行中に起きたバスの転落事故。唯一生き残った鬼塚輝美は、事故で死んだ一人一人のクラスメートの願いを受け止め、叶えていく……。という感じで、ベタに切なく優しい物語です。淡々と綴られる筆致がこの切ない物語に非常にあっていて、ほんと素晴らしい。

死んだクラスメートは24人。突然の死に対する恨み言もなく、死の間際の純粋な想いがほんとに切なく哀しい。一人一人が十数年の人生をそれぞれの価値観できちんとした存在感を持って生きてきたことが伝わる、各々の想いが伝わる内容で、ほんとに切なく涙腺を刺激しまくりです。残された家族や友人の想いがまたせつなく、親友の知らない一面と泣けるエロ本とかどういう。すばらしかった。……それにしても、まだまだ想いを叶えてられていないクラスメートが残っているのだけど、続編はどうするんだろ?

[ テルミー ]


講談社 講談社文庫
カナスピカ /秋田禎信

うわぁ、とにかく綺麗な青春物語だ。人付き合いの苦手な少女が、宇宙人に作られた地球観測衛星と出会い、その地球観測衛星を手助けする過程で恋をしさまざまな人と触れ合い、少しだけ成長するような青春物語。優しく温かみのある物語をベースに、みんなどこかズレている登場人物たちのコミカルなやり取りが楽しい内容です。

というわけで、『魔術士オーフェン』(→感想) の秋田禎信の初ライトノベル越境作品。変にコミカルな部分はあるものの、かなり真っ当な青春物語で、『オーフェン』と比べると、わりとエッジを抑えて読みやすく書かれてる印象。地球観測衛星カナスピカと生きるのに不器用な中学生、加奈を中心に、人と人との心の交流を描いた、全体的に優しさを湛えた内容が、すごくピュアで綺麗でいいね。1冊に綺麗に纏まっていて、ほんと良かったです。

[ カナスピカ ]


メディアファクトリー MF文庫J
この中に1人、妹がいる! /田口一

だはははははははっ、凄い凄いっ!! アイデアの勝利だっ!! 父の遺言に従い、高校在学中に彼女のを作ろうとする帝野将悟のそばに、お兄ちゃんと結婚しようと目論む生き別れの実妹が紛れ込む。果たして将悟は、正体不明の実妹を回避しつつ、彼女をゲットできるのか?! という感じで、いやぁ、モテモテなのに、疑心暗鬼で一線を越えることができない将悟少年の苦悩を描いたラブコメでこれは素晴らしいっ!!

もうもう将悟を巡る心乃枝と雅のラブバトルがめちゃ面白いっ!! むっつりエッチな心乃枝と、テンプレなツンデレキャラの雅。妹を全面に出した展開とか、どういうバトルだよっ!! 面白くてドキドキすぎるだろっ!!

しかし、もっと話を膨らませて、女の子たくさんのハーレム展開になるかと思ったら、恋愛対象になるのはほとんど二人だけなのな。他のヒロイン意味ねーーーーっ!! というか、シリーズ化前提というわけでなく、1巻で終わらせてもいいように小さく纏めてしまってる終盤が、正直ガッカリ。続編はどうするの?

[ この中に1人、妹がいる! ]


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