お父さんのエッセィ

『ささいなこと』(2000/03/31)


『ささいなこと』


ご存じの通り、私は言いたいことを言って、臆するところがない。
いってみれば、細かいことに気を遣わないタイプだが、
最近、些細なことに一喜一憂する自分を発見し、驚いている。
ひがみっぽくなったということかも知れないが、、、

2月某日、参加した某全国学会でのこと。
小さな学会で、小さな会場であった。
私の発表のセッションでは
一つの発表が終わるたびにパラパラと拍手がおこっていた。
通常の学会は拍手などなしに事務的に厳かに??進行していくものだが
遠慮がちな拍手は、奇異にも感じたがアットホームな雰囲気といった感もあった。
さめた言い方をすれば、あか抜けない会とも言えた。

私の発表の順番がきた。
学会歴十数年の私は、何の気負いもなく発表を終えた。
言いたいことは、言いおおせたようだった。
質疑応答からは聴衆の好意的反応も読みとれた。
私は演台から降りた。
パラパラと拍手があった。
私は不意をつかれた。
気負いのない発表ではあったが、さすがに集中力が切れた一瞬に
その拍手は容易に私の心にしみこんできた。
おそらくは社交辞令の範疇のその拍手を
『うれしい』と感じたのだった。
一瞬後に些細な拍手にすぎないことに思い至り、赤面した。
ささいな話である。



実はその学会会場にたどり着くまでが、艱難辛苦だった。
往路はJRと飛行機の乗り継ぎで、4-5時間の予定だったのだが、
雪害(大雪)のためJRが麻痺してしまい、
約20時間の行程と予算の5倍の交通費がかかっていたのだ。
私としては体力的にぎりぎりに近い状態での発表だったのだ。
これはまた別の話ではあるが、、、、。


(2000/03/31記す)