息子をUHB少年の船にのせた。
北海道では毎年年末にUHB(北海道文化放送)というテレビ局の主催で少年団クルーズが行われる。
この冬で15回目とのことで、もう歴史のある行事といえる。
費用は、旅費として約25万円、他に支度、装備、小遣いに出費が上乗せされる。
参加者は北海道内の小5から中1の男女の希望者600人。
目的地はグアム、サイパン。往復13日の船旅である。
さらに、少年団を指導監督する係員・ボランティアは船員を除いても約300人にのぼるという手厚い陣容でもある。
後援団体もそうそうたる会社が名を連ねていた。
今回5年生の息子に、新世紀の門出として、この船旅をプレゼントした。
私は、豪華客船のツアーをイメージしていたが、
現実には、豪華客船でのイジメのツアーだったとのこと。
とんだバトルロワイヤルで、息子には大変申し訳ないことと思っている。
600名の団員は主催者側のランダムな割付で男女別の小班に編成されるのだが、
日本的??団体生活の弊害が弱いものイジメであることに、私は無警戒だった。
5年生=最年少=弱者=イジメ、今にしてみれば、明快な図式だ。
全ての班が弱肉強食のサバイバルクルーズだったわけではない。
女の子達は結構仲良く、主催者の意図したように楽しんだと聞いている。
あくまで、我が息子に、班割の運がなかっただけらしい、、、。
また、年少者でない=いじめる側の少年たちには愉快なクルーズだったことは想像に難くない。
まあ、こんな文を書く人間の息子だから、生意気を絵に描いたような存在だったのかもしれないが
息子の属した班では、息子以外のもうひとりの小5の子がイジメの主な標的にだったとのこと。
『生意気』が問題ではないということ。
カメラを取り上げられシャッターを押されたり、
カメラが紛失し、同じ機種を他の団員がもっていたり(盗まれた証拠はない)
時計が紛失しを、壊れた状態で発見されたり(これも盗まれた証拠はない)
拝みたおしの金銭要求やら、おやつのかつあげ・窃盗やら、
正々堂々としていないやり口は、強者の態度とはいえない。
陰湿極まりない小人の卑怯さである。
育ってきた環境がすさんでいたのだろう。
生意気者の鼻っぱしをガツンとやるような、体育会系ののりは容認するし、
喧嘩ぐらいは仕方ないが、連帯感のない旅の終わりは無味乾燥だし、
遺恨と教訓がお土産とはお寒いかぎりの太平洋である。
係員の指導は、グループ内解決、君の性格を直せ、という明快なものだったそうな。
性格云々にも一理あるが、、、グループ内解決とは安直すぎないか、
それは強者が紳士でなければ、弱肉強食という意味だ。
それは闘争による交渉権の獲得か、隷属かを意味している。
義務教育と違って希望者の集まりだから、300名にのぼる主催者側の人員にはもちろん責任は問えない。
彼らにとっても、楽しい休暇なのだから。。。
息子の不運については、
世の中、紳士ばかりではないことを、いつかは学ばねばならなかった、と考えることもできる。
日本の社会に生きる以上仕方のない試練、と考えることもできる。
海を渡るだけでなく、世の中を渡るツアーだったと考えるしかない。
それはそれで勉強に違いない。
旅が私の期待に違った(たがった)ことについては、
弱肉強食の子供社会に大人的紳士的規範を期待するのは甘すぎるということだ。
25万円は勉強料としては高額だが、命の保証料だったというのが、 私の勉強か。
それはそれで勉強に違いない。
個別の責任を追及したり、主催者相手に裁判をおこしたり、旅費の返還を求める気はない。
ただ、
主催者側が、『仲間を作る旅』『子供を成長させる旅』『良い想い出を作る旅』と、
まるで問題意識に欠けた甘すぎる幻想の中にいるのは、
いかに21世紀初のお正月としても、おめでたすぎる。
そして
私がよかれと思って我が子を送り出した先が、
ロックアウト(スタローンの刑務所サバイバル映画)とおなじ、逃げ場のない閉鎖・闘争空間だったことについては、だまされた感がぬぐえない。
それならそれと、事前にひとこと言ってくれていたら、
もう1,2年待って子供が大きくなってから参加させたであろうに、、、??
今にして思えば、主催者代表が教育関係の重鎮だったことは、
日本の教育荒廃の同一線上の問題としての、
次元の低さの暗示だったのかもしれない。
『いじめられる側にも問題があるのでは?』
『いじめは存在しなかった』
と彼らは言うのだろうか?
少年の船の企画の意図は良いし、関係者の多大な骨折りに謝意を惜しむものではないが
野蛮で非紳士的な行動をいさめる教育的配慮がない現状では、
少なくとも(交渉術か武道のたしなみのない?)年少者がこのツアー(UHB少年の船)に参加するのは、
おすすめではない。
(反論があるなら、おうけします。このHPに掲載させていただきます。)
(2001/01/06記す) |