『貿易』
それは、猫の輸出。
きらきらと輝いた夏の最後の日、
高い空を眩しく見上げ、私と愛猫は住み慣れた我が家を後にした。
愛猫は齢10年を越えたとはいえ、これから機上の猫となる定めを知る由もない。
だが、
愛猫にとって10年暮らした家を出ることは、その寿命を考えれば、
不帰の旅路といっても過言ではなく、
一人それを知る小生の心は複雑だった。
振り返れば、
妻留学の打診を聞きつけてから約10ヶ月、
愛猫・明佳音の渡米同行を決意し、準備に費やした期間は半年にもなるだろうか。。
猫にパスポートはあるわけがないが、
スムーズな出入国のためには周到な準備が必要であることを
読者諸氏はご存知だろうか?
私はアメリカ大使館、領事館のHP検索から仕事にかかった。
HPには充分な情報はなかった。
そこで、東京のアメリカ大使館に電話をかけ、
動物のアメリカへの輸出に関するパンフレットを取り寄せることに成功した。
英文のパンフレットには、文責を負えないとの但し書き付き=ご参考ということで、
(さすが、訴訟の国)
日本語訳が添付されていた。
動物検疫の詳細は州によって多少異なるそうで、
子細な部分に関しては、大使館では責任を負いかねるそうだが、
概して
意外にも日本からの猫のアメリカ入国は簡単だった。
(ちなみに日本への持ち込みはとても大変です。いづれも受け入れ国の法律に依ります)
健康証明書があればほぼフリーパスらしかった。
ただし、ただしである、
証明内容は、愛猫の狂犬病に関する健康証明である。
私の記憶が確かなら、狂犬病の国内発症はもう何年も報告されておらず、
日本国内に狂犬病の動物は、まず存在しないと考えてよいはずだった。
パンフレットによると
アメリカでは犬、猫、アライグマなどが危ないのだそうな。。
でも、証明???ってのは、どうやってするのだろう??
現実的には存在しない病気の健康証明、、、、?
これは、予防接種の証明に違いない。。。
私は動物検疫に関し、インターネットで検索し
健康証明に関し、確認を得た。
検疫所はHPが充実しているのみならず、
電話、E-mailでの問い合わせにも、いたって親切丁寧であった。
結果、
一般の予防接種証明書を、出国時に検疫所に持参すれば、
大して時間もかからずに、健康証明書を発行してくれるとのこと。
(農林水産省動物検疫所:ホームページ=http://www.animal-quarantine-service.go.jp/)
こうなれば話は簡単である。
私は、かかりつけの動物病院に電話をいれた。
『すみません、猫に狂犬?病???の予防接種をお願いしたいのですが。。。』
『猫用の狂犬病の注射なぞ、(聞いたことがありません)うちではやっていません。』
。。。。。。。
断られてしまった。。。。
。。。。。。。
気持ちを取り直し、
私は別の動物病院(院長先生は高校同窓でした)に白羽の矢を立てた。
『すみません、猫に狂犬?病???の予防接種をお願いしたいのですが。。。』
『。。。。。』
やはり、反応が普通ではない。。。また断られるのか。。。ちょっと嫌な感じ。。。
『少し調べさせてください。』
前向きの反応であった。(良い先生だ。)
結局、犬用の製剤を注射し、犬用の証明書に記載してもらうことで話がまとまった。
しかし、これから猫の輸出を考えている向きに注意していただきたいのは、
注射の効力発生には、接種後約一ヶ月の時間が必要であり、
出発直前の注射では、手続き上不備とみなされるおそれがあるということだ。
この際、猫用の三種混合ワクチンも含め、日程を組んでいただき、
無事に予防接種・および病院発行の証明書を得た。
次は、
交通機関の猫輸送の対応状況の確認である。
タクシー。
常連なので??フリーパス。
JR。
予約は不要で、当日窓口で手続きをすればOK。
市販のケージに入れて、手荷物料金を支払う。
要するに、行商のおばさんの荷物と同じ扱いである。
ケージから出さなければどこに置いても良いとのこと。
国内航空会社。
ANAに聞きました。
予約は不要で、当日窓口で手続きをすればOK。
受託手荷物扱いだそうで、数千円かかります。
搭乗90分前から手荷物コーナーにて受け付けられるが、
要するに人間と一緒のスペースには乗せてくれない。
ケージの大きさと猫を含めた総重量で値段が決まる。
個人のケージで可だが、
強度の問題でレンタルケージの使用を言われる場合がある。
トラブルがあっても文句は言わないという誓約書を書かされます。
(この場合のトラブルとは猫の身に何かがおこると言うことですが、
ここでひるんでいては、アメリカにはたどり着けません。
心を鬼にして、サインしましょう。)
国際線。
取り扱い時期の限定がある場合がある。要注意。
前日までに予約が必要で、人間の予約の時に手続きすればいい。
客1名につき生後8週以上の猫2匹まで可能など、航空会社で細かく設定されている。
ケージは個人もちで、基本的には、荷物扱いのみだが、
JALはビジネスクラス以上なら、予約された猫の最初の1匹は客室への同伴が可能である。
うちの子の
成田ーアーカンソーの料金は22000円もしました。
きょうび、人間一人NY往復も可能な値段です。
もちろん、客室同伴です。
アメリカ国内線。
AAに乗りました。数千円かかりました。
一応予約しましたが、
基本的には予約は不要で、当日窓口で手続きをすればOK。
エコノミーでも、客室内持ち込みが可能。
(窓口では手荷物扱いを言われますが、ねばり強く交渉すればOK)
現実には
前席の下のスペースに無理矢理押し組むしかありませんでしたが。
結構、手間をかけて用意したこと、お判りいただけたでしょうか?
そうして、成田に入る前日、
我々は、千歳空港に出向き、無事に健康証明書を手にすることが出来た。
事前にファックス等で情報をやりとりしていたため、
書類の作成はスムーズ。
(もちろん、当日、成田で健康証明を受けることも出来ますが、
北海道から飛び立つ身としては、それではあまりにあわただしいので、
前日にゆっくりと手続きを受けたわけです。検疫所の獣医先生に感謝!!)
ちなみに、うちの猫。
三毛で、英語ではa tortoiseshell catもしくはa calico cat(キャラコ)といいますが、
書類上は、live cat(生きた猫??)、mixed(雑種)、
color=white, brown, black (色=白、黒、茶)となっていました。
かくして、
猫とその飼い主は、機上の人となったのでした。
その話はまた後日。
(2001/11/16記す) |