猫の空輸。
猫の輸出に関わる長い道のり(それでも概略ですが)は、
前回お読みいただいたとおりです。
今日は実際の猫の行程・母を尋ねて3000里をお楽しみください。
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アテーション、プリーズ
本アトラクション中は事故防止のためシートベルトを着用し、
みだりに席をお立ちにならないようにお願い申し上げます
それでは、みなさま、スリルに満ちた??冒険の旅へご一緒ください???
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日本国内の空の移動は、猫にとっては選択の余地のない扱いが待っています。
有無を言わせず、承諾書(前述)にサインさせられ??、
猫はケージごと、お縄になります。
(ケージごと丈夫なネットでぐるぐるマキにされ、
引田天功でも脱走不可能な状態で、しばし飼い主と引き離されます)
飼い主は、テロ後の厳重な警戒の中、ゲートをくぐり機上の人となります。
羽田では、手荷物ターンテーブルではなく、手渡しで猫を受け渡されますが、
あまり頑丈に捕縛されており、係員も解放に手間取ります。
もともとドライブさえ嫌いな猫です。
彼女はミャーミャー文句を言ってます。
猫を抱え、ひっくり返りそうな量の荷物を背負い、成田に向かいます。
乗り換えのないように、リムジンバスを選択しました。
猫のケージには検疫証明書を付けてありますが、
成田への乗り入れの身分証明チェックは飼い主のみ。
宅急便カウンターで、事前に送っておいた荷物をピックアップし
JALにチェックインします。
猫も含め、もう身動きできないほどの荷物ですが、
歩く距離はとほんどなく、便利に出来てます。
座席は、、、
学会旅行で貯めたマイレージを掻き集め、
ビジネスクラス(成田ーダラス便の一番良い席)を予約し、
愛猫の客室内持ち込みをお願いしてあります。
しかしカウンターでは
また、誓約書を書かされそうになりました。
ひるまずに、機内持ち込みを申し出ます。
めずらしい手続きらしく、チェックインに手間取ります。
荷物は、ダラスで入国手続きはありますが、
すぐにAAに引き取ってもらえるように、
成田でアーカンソーまでの輸送を約束してもらえます。
とにもかくにも、お猫様は、ビジネスクラスご搭乗と確定しました。
身体検査は、ジーンズのベルトもはずされる念の入れようですが、
お猫様はX線を浴びることもなく、無事通過します。
ビジネスクラス以上には特別待合室がありますが、猫は持ち込み禁止とのこと。
やむなく、通路で、お猫様をケージから出して、給水・給餌タイムとしました。
おかげで、私の特別待合いでも休息はおあづけです。
にくたらしいことに、私の犠牲的態度にも関わらず、
警戒モードの彼女は、餌に手をつけません。
それでも、これからの長い旅を考え、彼女をいたわるけなげな私。。。
思っている以上に猫は丈夫なのかも知れません、、、、
一般待合いでは、めずらしい猫の搭乗に話の輪が出来ます。
ビジネスシートは優先搭乗。
いよいよお猫様の搭乗です。
今は無き成田ダラスの直行便DC10=JAL birdはビジネスクラスが最上席で、
その中でも2列目は、前席との間が特に広く、前の席のポケットの雑誌に手が届きません。
猫同伴はその2列目B席の割り当てとなりました。
わたしはそのいわゆる王様席にどっかと座り、
猫ケージを足下に置きます。
旅行嫌いで、ミャーミャー鳴き続けるのが通例の猫です。
隣席の人には、さぞや迷惑なことでしょう。。。
お客さんの猫アレルギーも心配です。
不安な気持ちで隣席の人を待ちます。
。。。。。
ラッキーなことに、テロ直後のアメリカ便は空いていました。
隣席は空いたままでした。(JALで猫の隣の席の使用を避けたのでしょうかね?)
半日に近い長旅では、愛猫はきっと粗相をすることでしょう。
私はペットシーツを床に敷き詰め、離陸を待ちます。
すると、スッチーさんがやってきました。
離陸時に危ないので、お猫様を2A席にのせて、
ケージごとベルト着用せよとの指示です。
なんと、あにはからんや、、その結果
お猫様はその飛行機で一番良い席(一番ゆったりしていて窓側の席)に着座することとなったのでした。
VIP扱いです。
エコノミーの人たち、これを知ったら仰天でしょうね。。。。
暴動が起きたかもしれません。。。。
ペットシーツを座席に敷き詰め、ケージを座席に固定します。
それでも、不平を言いまくる愛猫。
王様席に座らせてもらえたのだから、静かにしやがれ!!
そうは言っても、猫には通じません。。。。
どうか、クレームが来ませんように、、、。
いよいよ離陸です。
エンジンが飛行モードの騒音をたてはじめます。
うまい具合に、お猫様の鳴き声は騒音にかき消され、周りの席までも届かないようです。
二人とも初体験の王様席。
くつろぐ私。
鳴き続ける猫。。。
ゆったりと夕食をいただき、一段落すると、
何人かスッチーさんが、猫を見に来ました。
『まあかわいい猫、何という種類の猫ですか?』
『ただの雑種の三毛です。』
『、、、、おとなしいですね。』(飼い主の意見とは異なりますが、他の猫よりは静かだったのでしょう)、、
『、、、、そうですか。』
等々。
やがて、うら若いスッチーさんが自分の猫の写真を手に、猫談義に訪れます。
『これ、うちの猫なんです。』
写真にはかわいい子猫が2匹うつってました。
名前はたしか、きなこちゃんとちまきちゃんと言ってました。
話が弾みます。
私は、話のなかで猫の誕生日を訊きました。
何を勘違いしたか、彼女は少し気まずそうに自分の誕生日を答えてくれました???
はぁ??
まあ、これは、黙って聞いておきました。。
世話のやける猫ですが、
こういうときには重宝です??
そんなこんなで、我々は無事合衆国に降り立ちました。
飼い主の入国手続きをすませ、
動物検疫の申告をします。
陽気な黒人の検疫官は、ろくに猫を見もせず、
労作の健康証明書も一瞥しただけで、
私のスーツケースを開けるように言ってます。
猫好きに悪い人間はいないという常識を彼は知らないのでしょうか??
やむなく、スーツケースを開けます。
怪しいモノなぞ、あるはずもないのですが、、、
かれが見つけだしたのは『猫の餌』
ドライも、猫缶も全部没収されました。
オイオイ、家に着いた後の猫の食事、どうしてくれるんだ、、、。
どうも、肉類は検疫の対象らしいです。仕方ありません。
彼はタッパーにつめた猫缶までも見つけだし、中身を捨てて、
空のタッパーを洗って返してくれました。
ディスポの手袋して、水のしたたるタッパーを持って、苦笑いしてます。
もう用はないから、はやく行けと言ってます。
仕事とはいえ、ご苦労なことです。
気を取り直し、スーツケースをまたまた預け、
再び猫のチェックインです。
またまた、手荷物扱いを申し渡されますが、
ひるまずに、機内持ち込みの予約のあることを説明します。
料金を支払い、手続きを終えます。
今度のゲート検査は、
猫も、ケージから出されて、飼い主と一緒に金属探知ゲートをくぐります。
テロ後のアメリカでは、猫も警戒の対象です??
手荷物の中では、とくに、ノートパソコンを取り出して、X線をかける念の入れようでした。
国内線はエコノミー、約1時間の辛抱です。
アメリカ人はおおざっぱです。
ケージは前席の下に90度横にして無理矢理押し込まれます。
ミャーミャー泣いても誰も気にかけてくれません。。。
後で判明しましたが、この時、彼女は粗相していたようです。
が、
アメリカ人女性ははみんな香水をつけているし、
足下の猫の臭いなぞ、我々の鼻まで届きはしません。。。
飛行機は飛びます。
一路、広野の果て、アーカンソーへ。
千歳を出てから24時間以上を費やし
ようやく、たどり着いたリトルロックは蒼天の午後。
私は、この地に先遣する妻子との再開を果たしました。
愛猫は、母を尋ねて数千マイル、
絶食と緊張と鳴き続けで、声が嗄れていました。
あれから約7週間。
アメリカの猫缶が殊の外、体質に合ったらしく
明佳音は、アメリカ人の体型といっても良いほどに目方を増やし
これを書いている私の横で、
丸くなって
寝ています。
猫は、
けっこう丈夫です。
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ご来場のみなさま、本アトラクションは、これを持って終了となります。
お忘れ物のございませんようにお確かめの上、
前方左手のお出口より御退室ください。
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(2001/11/18記す) |