お父さんのエッセィ

『南部蒼天8』(2002/03/19)


『階層』


アメリカはこれから、嵐のシーズンだそうで、蒼天アーカンソーも今日は雨です。

さて、今日は
米国における人種的少数派としての生活所感についてです。

米国に異邦人として存在するにはいくつもの形態があろう。
我々の立場は、(留学)研究者であるが、
これにも非公式なモノまで考えれば無数のグレードがある。

詳しくは知らないが、
上(ピン)は
給料と身分の保障された形、、たとえば
政府や本邦大学職員の身分での派遣、
米国研究室の招待による留学、
(いわゆる、お客さん状態)から、

下(キリ)は
ほとんど補償のない形、、たとえば
自分でポストを探し出して、雇ってもらう形の留学、
さらに
無給で研究の時間と場所のみ許可・提供してもらう形の留学
(この場合、後々能力が認められれば有給に昇格することもあります)
といった具合だ。

後者の場合、
有給とすると、米国には2000ドル・月を最低賃金とするという約束事はあるが、
それにも抜け道(もっと低い給料で雇う方法)はあり、
また、都合により解雇されることも、間間、聞きおよびます。
一方、無給の場合は、その施設に身分(無給職員??)が認知されれば良し、
さもなければ、法律的には施設の外を歩いている人程度の権利しかないわけで、
仕事(研究活動)に有象無象の不利益を被ることは覚悟せねばならない。。。

研究者として留学する多くの日本人はおそらく理科系・医科系大学の修士・博士号の保持者でしょうが、
そうしたタイトルを尊重してくれるのは、(ピン)のケースであり、
(キリ)のケースでは、単に一般労働者としての、みなされ方以外は、
相手の紳士性に期待する以外にありません。

考えても見てください。
米国には、中国や韓国やロシアやインドなど、本邦以外からの優秀な研究者が無数にいるのです。
彼らも、母国では医者であり、博士だった人たちです。
でも、チャンスに恵まれなければ、、
彼らはスーパーのレジ係りや、ウエーターをやってしのいでいます。
日本人を特別とする理屈は、米国側にはないわけで、
日本人を雇う利便性は、多くの日本人研究者は永住を目的としていないという点ぐらいなものかもしれません。


さて、
ここからは、
キリは一般的な人種的少数派に
ピンは米国市民の中のmajorityに意味が拡大します。

米国に関していくつかの伝説的キャッチフレーズがあります。
『自由と平等の国』『アメリカン・ドリーム』等々

(キリ)の人たちも同じ夢を見ることが許されるのか?

夢を見るのはただ(無料)ですが、
上のキャッチフレーズにはただし書きがあることも忘れてはなりません。
それは
米国市民にとっての『自由と平等の国』、
人種によって確率が変動する(が、誰にとっても確率はゼロではない)『アメリカン・ドリーム』
ということです。

誤解を恐れずに『人種によって』と、言い切りましたが、
米国には人種差別は存在します。存在すると思います。
存在するからこそ、公式には解消されたとされるし、
人種差別なる言葉自体がタブー視されているのではないか。。。
根深い影です。(きっと、みんな思っていることですよね)

キリ族に属する一人として感じるのは、
米国ではコネは大きな力だし、カネも大きな力だし、、
それは米国市民(ピン族)が生まれながらにして持っている特権であるということ。

そして、
社会における富の再配分は、米国に於いては
本邦よりも金持ち優遇に傾斜しているということ。
これを、不平等と呼ぶか、これこそを(資本主義的)平等と呼ぶかは、
また別の問題ですが、、、。

以上、誤解を恐れずに、平たく言うと、

金持ち、コネ持ちの白人市民は、バカで無能でも、一生を楽に過ごせる確率が
他の場合よりも高く、一方
キリの人たちは、多くの場合、貧乏人は一生貧乏で、
結局、バカで無能な金持ち・コネ持ち達の安穏とした生活を底辺で支える。
という構造です。
労働対対価で考えると、明らかに底辺の者に不利な構造です。

キリ族は、
ピン族の享受する既得権的な自由や平等やドリームが、
キリ族に不利なダブルスタンダードと言われるそしりを免れるために用意された、
おこぼれ的・言い訳的に用意された自由や平等やドリームで
ささやかに暮らしていると言っても良いかも知れない。

でも、そして、だからこそ注目すべき点は、キリ族の彼らが米国の繁栄を支えているという構造です。

私も
Majorityに意見するほど、青くはありません。
鯨に優しい動物愛護団体の人に、牛肉を食べるなとか言いません。
アメリカはもともとインディアンの土地だったとかも言いません。
私はあくまで、白人の土地にやってきた、東洋人です。
deep southで人種差別反対などと叫んだりもしません。
だんだん、ずれてきましたが、、、

まあ、愚痴はこのぐらいにして、、
まとめに入りましょう。。。

米国市民にとっての『自由と平等の国』、
人種によって確率が変動する(が、誰にとっても確率はゼロではない)『アメリカン・ドリーム』
を、現実として認識したうえで、
ささやかに望むことは、

親亀がこけると、子亀もこけます。
どうか、我々に、いけずをしないで頂きたい。。。!!

底辺を支え、
ささやかに暮らすキリ族は
『アメリカン・ドリーム』を見ているのではなく、
底辺たる自分の、さらに足元を見すえているのだから。。。

でも、食傷気味の私を除き、キリ族は一般にバイタリティに溢れています。
ここでは、存在を主張できない者は敗者です。で、みんな24時間、戦ってます。

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追記1
当局の方へ、
私はマルキストでも、ムスリムでも、危険思想犯でもありません。
あくまで、ビバ・アメリカです。
アメリカ万歳、自由万歳!!\(^O^)/\(^O^)/\(^O^)/

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追記2:辞書から拾い読み
●さ‐べつ【差別】
1)差をつけて取りあつかうこと。わけへだて。正当な理由なく劣ったものとして不当に扱うこと。「―意識」

●しゃ‐べつ【差別】
(シャは呉音)
1)〔仏〕万物の本性が平等であるのに対し、それぞれの個物が具体的な差異をもっていること。

●かい‐そう【階層】
1)建物の階の上下の層。一般に、段階的に層をなすものの各層。
2)社会経済的地位がほぼ等しい一群の人々。年齢・財産・職業・学歴・身分などが尺度。マルクス主義では階級と区別する。界層。


(2002/03/19記す)