11月、フロリダに行って来た。
アメリカの中でも、あそこは気温がワンランク上で、日本で言うと沖縄みたいなイメージだろうか。
楽園である。
実際に、年取ったアメリカ人はフロリダで余生を送るために、居を構える人も多いし、
税金が無いのだそうな(何の税金か聞きそびれたが、要するに州財源は観光収入で十分なのだそうな)。
今回の旅行、
表向きの目的は、仕事(学会参加・発表)で、妻も私も、しっかり仕事はこなした。
(注:アメリカでは、『私も妻も』と書いてはいけない。)
付随的?目的のため、旅は子供同伴で、
どうしたわけか、学会会場から車で10分の距離にディズニーワールドがあった。
また、どうしたことか、ディズニーワールドから車で5分の場所に、安いコンドミニアムを借りることが出来た。
(家族4人で、一泊55ドルは、観光地の学会用ホテルに比較して破格の値段である。)
ディズニーのネタも、ごまんとありますが、それは、友人たちに話すとして、
今日は、その楽園での苦労話です。
まあ、ここまでの立地条件で、学会のお仕事を片づけるのですから、
世界に冠たるディズニーワールドを見学しない手はありません。
アメリカでは、クーポンや割引は、当たり前の習慣らしく、
ラボの教授からも、正規の料金で入場券を買ってはいけない、とアドバイスをもらっていました。
我々は、割引入場券を探しに行きました。
案の定、ホテル街のメーンストリートには割引チケット屋さんが軒を連ねています。
われわれも、賢いアメリカ消費者になりつつあるのです。
割引入場券ゲットへの第一歩、ちょっと得意な気分です。
目星をつけていたチケット屋に入ります。
先客は白人の老夫婦と、インドから学会に来ている研究者夫妻のようです。
係りのおばさんは一人だけだったので、しばらく待たされました。
慣れた風をよそおい、辛抱い強く順番を待ちます。
やがて順番となり、我々は交渉を開始します。
相手は、話し好きなヒスパニック系のおばさんです。
その店の割引が、どれだけ徳か、紙に書いて一生懸命にまくし立ててくれます。
話を総合すると、家族全員で100ドルぐらいの節約が可能のようです。
やはり、『買い』でしょう。
ところが、
実際に買う段になると、チケットはそこでは売ってないというのです。
チケットを売るところは別の場所で、そこで1時間半ほど話を聞いてくれれば、
そのお得な値段でチケットを売ってくれるというのです。
有名なホテルチェーンのリゾートの会員権の話だそうです。
ひも付きだったわけです。考えてみれば話が旨すぎました。
道理で、熱心に説明してくれたわけです。
1時間半は、長いです。しかも英語の話しを聞かねばなりません。
ちょっと腰が引けました。
が、その講義の時間で、昼飯をおごってくれるというのです。
会員権を買うのは必須ではないとも説明されました。
昼飯を食べながらの1時間半なら、100ドル割引の対価としては我慢の範囲です。
最後に、『会員権は要らない』の一言を言うぐらいなら、英語下手の私にも簡単です。
家族4人分として手付け金40ドルを払い、翌日の昼食時間をその講義??のために予約しました。
翌日、午前中の学会活動もそこそこに、時計を気にしながら、その場所に向かいました。
インド人夫妻もいることでしょう。
そのリゾートは建設途中でしたが、広大な敷地をほこり、
門から昼食会場まで、車で3分以上も走ったでしょうか。
途中にはゴルフ場まで併設されていました。
楽園です。
我々は受付を済ませ、昼食会場に案内される順番をまちました。
待合いは、家族連れの黒人、白人などで結構賑わっていました。
怪しい、洗脳商法ではなさそうです。
やがて、順番です。
担当となる、おばさんが出てきて、握手して、ランチに向かいます。
ランチ会場は、バフェ(バイキング)形式で金はかかってません。
少しがっかりしましたが、考えてみれば、ただの食事ですからそんなモノでしょう。
気を取り直します。
やはり、たくさんの家族で込み合ってます。
めいめいの家族に担当者がついています。
セールスマンだけで、3,40人もいるでしょうか。
会場は熱気で溢れています。
豪華な説明会場、
中流アメリカ人クラスのセールスマンを数十人も雇う羽振り、(アメリカは人件費がものすごいはずです)
リゾート開発は、まるで、日本のバブル期のような活況なのでしょう。
担当のおばさんとテーブルを囲み、食事をとりながら、家族の話、旅行の話などでうち解けます。
この人もヒスパニック系で、愛想の良い人です。
やがて、リゾートの説明が始まります。
やはり、紙にリゾートのコストや、今までの我が家の旅行のコストを書き出し、
そのリゾート会員権がいかにお得かつ堅実かという説明が続きます。
年に1,2週間のリゾート利用のコストが、2,3百万円相当の金額で、しかも一生モノだそうです。
毎年フロリダに来るわけには行かないと言うと、
世界各地のリゾートと提携しているので、
その都度、利用分だけ会員権のトレードが出来るというのです。
会員権を、世界中のリゾートを利用するための通貨と考えるシステムのようです。
世界中何処に旅行しても、豪華な施設を利用できることになります。
食事のあとは
電動カートに乗って、リゾート中を見学します。
豪華なレク施設、ゴルフ場、スイート並の宿泊室。。。
おばさんが言います。
『豪華でお得でしょう?文句のない施設でしょう?』
『はい、そのとおりです』
『じゃ、買わない理由はないわね。』
(アメリカのセールスマンは、自動車販売店でも同じでしたが、
文句なく気に入ったモノは、値段のことを細かく気にせずに、購入すべきだと、迫ってきます。
買う買わないは、いろいろな事情を考えて、、、などというと、
あんた、気に入ったって言ったじゃないか、ならば、値段の前に、購入を決断すべきだというのです。
相当に乱暴な話ですが、アメリカ人の理論では、当然の論法らしいです。)
(買わないことに決めていたので、断りの一手に出ます)
『でも、結構な値段だし、、日本に提携リゾートが無いようですね。これでは買えません。』
『値段のことなら、OKよ。今日契約すれば、2000ドルの割引よ。』
『でも、やはり、日本で利用出来ないじゃないですか。』
『ハワイに提携先があるでしょ。子供たちもためにも買いでしょ。』
『でも、、、』
押し問答が始まります。
1時間半の約束は、いつの間にか3時間を超え、西日が我々の押し問答に焦りの色を投げかけます。
英語が苦痛になってきました。
今日のディズニー見学の時間がどんどん減っていきます。。。
忍耐強く話を聞く限界を超えてます。
(こういうのを、No more Mr. Nice-Guy. と言うのだそうです。)
やがて、おっかない顔の、上司という人まで登場してきます。
相当のセールスマージンがあるのでしょうか?
欲にぎらついた目でにらまれます。ジャバザハットのようです。
やはり、お前ら、やくざだったのか??
こんな、バブリーな説明会をやらかす連中はやはり、カタギの人間のはずがありません。
更にその上の上司まで来ると言います。
待たされながら考えます。
だいたい、
完成すれば1500近い部屋数で、これを2週間単位で切り売りしたとして、4万近い家族に売ることになります。
日本円で250万円でたたき売ったとして、ざっと見積もって1千億円の資金を集めると言うことになります。(特技の暗算能力を駆使します)
アメリカの建設コスト、施設維持コストがどんなモノか解りませんが、
しかし、考えてみればディズニーの集客能力をもってしても
4万家族という数字は、一つの施設の売り込みとしては無謀な数字に思われます。
こんな施設が、ディズニーワールド周辺には複数あるのです。
やっぱり、途中で倒産させて、会員権料をだまし取るつもりではないのか。
いま雇用にありついているセールスマンも工事業者も、そうなった時は他人事です。
なんだか、豊田商事事件を連想してしまいます。
(被害妄想がはいるくらい孤立無援の雰囲気なのです)
われわれは、バブルの被害者となった人間も知ってます。
ボス・キャラ(上司の上司)の登場です。
ここで、ひるんではいけません。
『10年後にこの会社が続いている保証が何処にあるのだ?
アメリカ経済があと10年も好調を続けると考えるほど、日本人は脳天気ではない。
お前たちは信用ならない。
はっきり言って、買い、とは思われない。買・わ・な・い!』
という意味のことを、言い放ちます。
英語で怒ることが出来る自分をほめたいところです。
(会社の経営実態を説明しろなどと言ってはいけません。話が泥沼になります。)
会心の一撃で、ボスキャラも諦めたようです。
やっと勘弁してもらえました。
お帰りはあちら。顎でしゃくられます。
愛想の良かったおばさんは、もうそばにはいません。
三十六計逃げるに如かず、子供たちを急かして出口に回ります。
出口の向こうに、お約束の割引チケット売り場がありました。
思えば長い道のりでした。
ディズニー見学に使うはずだった気力は、半分以上消耗してしまいました。
悔しいので、当初の予定以外にも考えられる限りの割り引きチケットを買いまくりました。
楽園は、楽しまなくては、、、。
良い社会勉強(英語とアメリカ文化・経済の勉強)というには、あまりに不愉快で後味の悪い経験でした。
みなさん、この割引ゲット方法はお勧めできません。
こんな思いをするぐらいなら、正規の料金を払って入場し、さっさと行楽しましょう。
(日本からのパック・ツアーならこんな苦労はないのでしょうが、、、。)
私の体験談に大笑いしたラボの教授!許しませんよ!!
PS
何を隠そう、、、
妻は、別の機会に、別の観光地のホテルの割引交渉を成立させていました。
手付けもうってあるというのです。それも100ドルも。。
キャンセル料として捨てるには高額すぎます。
どうやら、われわれは
もう一回リゾートの講義を聞き、
もう一回英語で怒ってみせる必要があるらしいのです。
とほほ。
(2002/12/12記す) |