お父さんのエッセィ

『南部蒼天18』(2003/10/26)


『葡萄』


 リトルロックから車で2時間弱の距離にアルタスという地方がある(Altus,Arkansas)。オザークという風光明媚な丘陵・森林地帯のはずれで、そのアルタスは、町とも呼べない程の集落を中心とした田園(正確には田んぼではないが)地帯で、丘陵部には広大なブドウ畑が広がっている。当然の帰結として、そして嬉しいことに、ここでは、地物のワインが楽しめる。紅葉も終わりに近い10月の晴れた日、我々はワイン狩りに出かけた。ここにワイナリーは4件あった。二軒はリトルロックのマーケットにも広く卸しておる大手??で、あとの二軒は小規模で、数十ケースの流通とか、ワイナリーのみでの販売というマニアックな農家だ。

 リトルロック市内で一般に流通しているアーカンソーワインの特徴は、赤も白も妙に甘い、私などにはそんな需要があることが信じられないぐらいの甘さなのだ。しかし、なかにはスマートなテイストのものもあり、ワイナリー巡りは、自分にあった逸品の発見の期待と、ワイナリーの主人(農家のにいちゃんやおばさん)との会話の楽しみがあり、なかなかな秋の趣向である。今回四軒全てを回ってきた。

 まず、大手の2件を訪ねた。一軒目は Post Familie vineyardsというワイナリーで甘すぎないワインという注文でテイストさせてもらい、今年の味覚2品を買った Munson 2000とSyrahという銘柄だった。
 もう一軒は、係員がいなかったので、テイスト出来ず、眺めただけに終わった。

 続いて一番歴史が浅いという小さなワイナリーに廻った。Chateau Aux Arcという農家で、大学を中退してワイナリーを始めたという恰幅の良い女主人のワイナリーだった。美味しいワインを少量生産しており、リトルロックでもこだわりの店には品が並んでいる。以前からその味に感銘を受けていたので、妻が是非にも、と女主人に会いたがったのだ。今年は2000年の収穫のもを100ケース単位で十種類ほど出していた。やはり甘すぎないワインを勧めてもらった。ここではChardonnay 2000を2本購入した。不定期にあるワインとフランス料理のテイストの会への申し込みも受けってくれた。上々のワイン狩りだ。最後にこの女主人がもう一軒のワイナリーを教えてくれた。商売敵だろうに、4件とも、他を悪く言ったりしないのが、牧歌的でgentleだった。
 さて、その最後の一軒は、5代の歴史があるが、市場に卸していないという小さなワイナリーだった。Mount Bethel Wineryといい、恰幅の良いおばさんがワイン作りにかけるこだわりを語ってくれながら、幅広いテイストの注文に応じてくれた。ここで買ったのはDomaine Montel Wineのcynthiana、cabernet sauvignon、merlot、chardnnay。節操なく買ったわけだが、テイストでは、どれもアーカンソーの甘過ぎ田舎ワインではなく、coolだったのだ。参考までに、おばさんのお薦めワインを聞いたが、彼女はテイストの残りものを飲むのが楽しみだそうで、どの品種にも自信があるようだった。ちなみにBig Daddy Red Portというデザートワインもテイストさせてくれたが、これは甘過ぎで確かにデザートワインだったが、触手はのびなかった。町の秋のワイン祭りは終わっていたが、これからフルーツワイン(各種berryやpeach,plum)の季節になるそうで、陽気なこのおばさんに再訪を誘われた。(www.mountbethel.com参照)

 著者注)小学校時代の親友・北本君の助言で、うちでは廉価で美味しいワインを楽しむことにしています。


(2003/10/26記す)