外食が嫌いなのにはワケがある。
美味しいものには目がないのだが、外食はどうにも腰が引ける。居酒屋は最低（料理は食べたいのですが、）。スナックもだめ。宴会も嫌いだ。喫茶店は、もうその文字からして論外（ランチセットなんかには惹かれますが、）。ファミレスでさえもいけない。ファーストフード店とラーメン屋さんは、滞在時間が短いので、少し許せる。
諸悪の根源は、たばこの煙です。じつは実家は街角のタバコ屋だったので、いろんな意味でタバコには馴染みはあります。ついでに言えば、私の博士論文のテーマはニコチンでした。でも、自分は吸わないし、たばこの煙は許せません。思い起こせば３歳の頃、爺ちゃん、父さんが吐き出していた紫煙、居間を浮遊するそのエクトプラズムを手で払いのけながら、煤煙公害に憤っていたのが、もの心のつき始め。医学生だった時分、もう25年も前ですが、この時すでに喫煙・受動喫煙の害は、医学的にも自明の話でした。ちなみに、能動喫煙は、肺癌のみならず、胃癌、肝臓癌、子宮頸癌、腎癌、骨髄性白血病などのリスクとなり、受動喫煙は、非喫煙者なのに肺癌などの原因になりえるのです。他人の発癌リスクを上げるは、考えようによっては殺人です。
殺人とまでいわなくても、たばこの煙のニオイは非常に不快です。受動喫煙のさらに手前の問題です。ニオイのもとの化学物質は服や体に付着し、おそらく体内もに吸収されることでしょう。分煙型のレストランでも、禁煙区域の外で喫煙している人がいると、におってくるのはご存知でしょうか。同じ意味でＪＲの客車内禁煙も、デッキで吸われては意味がない。吸わない人には常識で、吸う人には信じられない話だろう。
ワインも料理もまずくなる。迷惑な話。吸わない人には常識で、吸う人にもこれは今や常識だろう。
そんな嫌なにおいをなんとか我慢して食事を終えレストランを出ると、服にニオイが染み込んでいる。ウールものなどは特にひどい。髪の毛にもニオイが染み込んでいる。仕事関係の宴会だと、翌日には背広をクリーニングに出さないと、しばらく不快を引きずることになる。クリーニング代は自分持ち。吸わない人には常識で、吸う人は気がつくはずもない。人は自分のニオイには気づかないもの。喫煙者は、タバコのニオイのなかで生活しているのだから鈍感です。同じ臭いなら、発癌性のないオナラの方がマシなのに、あちらはエチケット違反。科学的には片手落ちです。
ニコチン中毒者の犠牲にされるのは、いつも、吸わない側の人間です。私の妻などは、煙のニオイをかぐと不整脈が出ます。もしもそれで、心臓や脳の発作に発展すれば、これは傷害罪じゃないか（受動喫煙が心筋梗塞や狭心症のリスクであることは証明されています）。発作以前なら、傷害未遂、みんなで吸えば凶器準備集合罪。とにかく許し難い。
毎度アメリカの話で恐縮ですが、アメリカでは、公共施設、レストランは全面禁煙です。ヒステリックなほどの規制と思っていましたが、受動喫煙に晒されるタバコ弱者を保護するという意味でまっとうな話です。きっと私のような人間がいくつも訴訟を起こして、そういう制度が出来たのではないかと想像されます。そして、それが常識となってこの身に染みついてから日本を振り返ると、まったく許せない社会状況でなのです。繰り返しますが、分煙でも意味はありません。米国公衆衛生局長官年次報告においても、受動喫煙には安全量、安全な暴露時間はないと指摘されています。日本の健康増進法では駄目ということです。
健康食材に凝っているファミリーレストランでも、分煙と称して喫煙を許すところがあります。矛盾した健康志向です。その健康志向は確固たる理念からものではなく、ただ宣伝効果を狙ってのソロバン勘定からの帰結にすぎないのでしょう。ポーズだけの健康志向です。近所のファミレスでは、順番待ちの行列はいつも禁煙席の列は長く、喫煙者の列は短い。ゆえに、喫煙者は早くご飯にありつけるのです。アタマに来ます。食べ物の恨みは根深いですよ！！とにかく、ファミレスの順番待ちは、どうして他人に害を及ぼす人達が優遇され、タバコ弱者は冷遇されるのか。喫煙者はマジョリィティだから経済効果上は優先すべきお客様と考えているのか。経営者の方々の見解を聞きたいものです。
医師としてではなく、タバコ弱者の納税者として一言。
タバコ税を納めるのは国・地方への貢献として大いに結構。また、喫煙者が自己責任でタバコ発癌のリスクを負うのは本人の勝手です。ただし、その癌の治療費として非喫煙者のおさめる健康保険料も使われているのは、本人の勝手で済むことではありません。
医師として一言、タバコで癌になった方。敷地内禁煙のわが病院でも治療は承っております。
（他人の）健康（に害を及ばさない）ため、吸い過ぎには注意しましょう。
| （2008/02/29記す） |