お父さんのエッセィ

『元外科医のヒマラヤ修行(3) 寒いよー、暗いよー、そして環境問題を考える。 』(2010/12/30)


『元外科医のヒマラヤ修行(3) 寒いよー、暗いよー、そして環境問題を考える。 』


 10月のネパールはお祭り一色である。そして乾期のこの時期は観光のみならず、トレッキングもハイシーズンだ。 この辺の話は一般のガイド本にゆずる。ちなみに地元の観光業者によると12月から1月は、山歩きには寒すぎるとのこと。
なお、モンスーンが反対向きに吹くこの時期は、空気を洗う雨のない半年間でもある。
カトマンズ盆地では大気汚染が深刻(粉塵で視界は最悪200mぐらい。原因は排ガス、ゴミ焼き、砂埃など)となるので、雨がないことを素直には喜べない。

   12月はカトマンズ盆地も寒い。日中は15度を超える陽気だが、最低気温は0度近くまで下がる。借家の壁は、断熱材なしのブロック1層造りなので、一度冷えると手におえない。底冷えというやつだ。さらに窓の木枠はスカスカで、すき間風もひどい。翻って、北海道の我が家はよかった。断熱に優れ、冬は灯油ストーブを約4か月連続運転させているので、家の中ではいつもTシャツでOKだった。ちなみに今の借家では、暖房機の連続運転はありえない。ブロックの壁に煙突の穴が開いていないし、煙突式ストーブも売ってない。電気式のオイルヒータなら煙突は不要だが、フル稼働したらコンセントが溶けてしまい、家の外で電線が焼き切れてしまった。壁はブロックなので不燃だが、それでも火事で暖を取るのは避けたい。結局、半稼働の電気ストーブで寒さに震える毎日である。さらには、計画停電の街(現在、週74時間=1日10時間以上)では半稼働もままならない。暖炉のある家もあるようだが、家のつくりは似たり寄ったりなので、それで解決するわけではない。ちなみに地元民は、高価な燃料を買えないので、昼間は日向ぼっこ、夜は厚着でしのぎ、早寝するのだそうだ。

   思い起こすと、赴任準備のプリントに、当地の気温の年間変化の資料があった。12月から3月は確かに寒いらしい。あのとき真面目に読まなかったことを後悔している。南アジアの国という漠然としたイメージで、Tシャツや短パンは持ってきた。しかし仕事中はワイシャツか白衣だし、夏は蚊の用心ということで、Tシャツ・短パンの出番は案外少ないのだ。そんなことより、子供のころに使っていたズボン下。北海道では、先に書いたような状況なので、成人後にズボン下を使用した記憶はないが、今回あれの意義を再発見した。一時帰国した時に、ダウンジャケットとヒートテック下着を少し購入した。どうせならスーツケースに目いっぱい入れてくれば良かったと、また反省している。

   話は前後するが、計画停電は最長1日17時間にもなるそうだ。
ネパールでは電力は水力発電によるが、半年以上も雨が降らない、さらにヒマラヤの雪は冬季にはそんなに解けない、といった事情で、ダムは枯れかかるらしい。それが故の計画停電というわけだ。地元民はやはり昼間は日向ぼっこし、夜はロウソク、バッテリーシステム、自家発電機などで、光熱を確保し、早寝するらしい。
しかし、ロウソク以外は、子作りを含めて、環境には優しくない。
 (筆者注:北海道の1.7倍の国土に、北海道の5倍近い人口を抱えていては、環境にやさしいはずはない)。
 ちなみに、水不足のこの盆地では、上水道が枯れることもある。
一般住民は毎日シャワーを浴びるということはなく、さらにエネルギー問題も重なるので、たまのシャワーも冷水だったりする。裕福な家庭では、タンクローリーで水を買い、ソーラーシステムや電気やガスなどによる温水システムをつけたりもできる。しかし、おおもととなるエネルギー事情はここに書いたとおりである。ちなみにわが身は、名誉職だが大使館では高位の職員なので、みっともない真似も出来ず、シャワーは毎日使わせていただいております。。。

 心頭滅却しても、鼻水はとまらず。人間の営みは環境には負荷をかけるものだと改めて思う。
自省しつつも、外では、ゴーゴーと自家発電機をまわしている。

(2010/12/30記す)