我が家の愛ネコ・シリウス君は体重9Kgとなり、獣医さんを訪れると、肥満とのお叱りを受ける。天空に光り輝く犬星(おおいぬ座アルファ星)の名をいただいたのが間違いだったのか、体重では中型犬にも負けない大ネコとなった。気立ての優しい大らかなネコに育ったが、重すぎて、とてもネパールに連れて行く気にはなれない。物理的な運搬の手間のみならず、航空会社によっては、ペットの輸送はケージを含めて10kg以内などというクリア不可能な非関税障壁があったりする。また運賃は、超過手荷物扱いなので、ネパールだと1kgあたり約5000円、ケージ込み総量では5万円以上の計算となる。なかなかにハードルが高いのだ。
小さくて可愛いネコが必要だった。気持ちの上では、どうしても必要だった。
ネパールでも子ネコを探したが、なにせネコに優しくない国なので、ネコの絶対数が少なく、可愛い子ネコが見つからないのだ。さらに転勤時には、狂犬病汚染国から日本・欧米などへのネコの持ち込みには、検疫上の困難がある。寒い時代である。
で、今回、ネパールの連休にあわせて帰朝して、子ネコを買うことにした。
多忙の妻と連れ立ってペットショップを巡った。数日後3軒目で、ビビッときた子ネコと遭遇。我が家のネコ選びの基準は、目つきと人懐っこさである。第二王子候補は、顔が可愛し、初見の我々にも喉をゴロゴロならした。どこの店員さんも、第一印象での即決購入を勧めるのだが、我々としてもネコとしても一生の問題である。『お持ち帰り宣言』をグッとこらえて、一晩の冷却期間をおくことにした。『今日は他にも引き合いがあったし、明日までに売れちゃうかも、、、』と店員さんの攻撃は激しかった。しかし、ネコ選びには、3つ目の基準があった。それは『縁』である。明日この時間にこの店を訪ね、この子ネコが売れていたら、それは縁がなかったということなのだ。後ろ髪を引かれつつ閉店間際の店を後にした。
翌日夜8時、巡り合わせを確かめに件の店に出向いた。3つ目の条件もクリアされた。彼は我々を待っていた。第二王子は、耳の折れていないスコティッシュ・フォールド(フォールドは折れ耳のことなので、ちょっと変)。なんと、体の模様は、アメリカンショートヘアの第一王子シリウスと同一(系統的に同根なので不思議ではない)。ただし、鼻先から前頚部・腹部と四肢末端は純白。鼻も肉球もピンク。白い手足にちなんで、名前は『ソックス』と即決(クリントン元米大統領のネコもソックスといった)。こうしてフルネーム:ソックス・ホワイト・マミヤが家族の一員となった。ちなみにシリウスは、シリウス・ブラック・マミヤである。
次の課題は、シリウスとソックスの対面だった。ネコ種的には気立ての良い種同士だが、シリウスは愛情の分割に耐えられるのか。子猫ソックスは大猫シリウスに攻撃されないか。場合によっては子ネコの生命に関わる。
ふたを開けてみると、状況は想定外だった。初対面から威嚇姿勢を示すソックス。あくまで平和的に友達になりたいシリウス。ソックスは4日4晩、毛を逆立て背中を丸め、フーフー威嚇音を発していた。何と気の強い子だろう。ストレスと衰弱が心配だった。結局、おっとりお坊ちゃま・シリウス君の誠意が通じたのか、単にソックスが慣れたのか、彼らは馴染んだ。お互いに臭いを嗅ぎ、時にジャレ合い、少し離れて眠る。シリウス君に弟ができた。問題は、子ネコが老猫用の餌に興味を示し、大ネコが子ネコ用の高カロリー餌に興味を示すことだった。シリウスがこれ以上太ると大変だ。
さて、夜ともなると、シリウスは9kgの体重でも私に乗って休み、ソックスは、ゴロゴロ言いながらすり寄ってくる。ちなみに我が家ではネコの絵を何点か所有している。寝室に飾っているその絵の1枚が、実はソックスにそっくりだった。やはり縁があったのだ。その絵に添えられた言葉も気に入っている。『人生は、少しの酒とネコと晩飯』というものだ。ネコに囲まれて、その言葉を味わって眠る。至福の第一幕だった。
今回の休暇ではここまで。
ペットが海外を移動するには、狂犬病がコントロールされている地域(日本や欧米)で検疫に備えるのが便利だ。詳細は書かないが、それでも、検疫の便宜を整えるのに最初は数か月必要なので、今回は連れて行けない。次の課題は、ソックスが、シリウスや我が娘のように半年に一度しか顔を見せないオヤジを覚えていてくれるものかどうか。そして次回、新たな家族離散が可能なものかどうか。来年の休暇で、ソックスを世界デビューさせるかどうかは、今後の育ち方次第だ。家族全員の絆の育ち方である。
(2011/10/27記す) |