お父さんのエッセィ

『元外科医のヒマラヤ修業9 ――生活の知恵を結集して冬を乗り切る――』(2011/12/30)


『元外科医のヒマラヤ修業9 ――生活の知恵を結集して冬を乗り切る――』


 カトマンズで2度目の冬を迎えた。当地のレンガ壁の家がとても寒いことは1年前に書かせていただいた。道産子の小生ながら不意を突かれて凍えた昨シーズンであったが、今シーズンの備えは鉄壁である。
 妻曰く、カトマンズの冬は(気温の日内変化 明け方2℃~日中17℃ ほど)、2-30年前の高松(妻の出身地)とあまり変わらない とのこと。たしかに終日暖房の北海道でもないかぎり、当時は皆さん寒い思いをしていたことだろう。温故知新、そこから寒さ対策を組み立てた。今シーズンはリベンジである。

   世界共通の基本的寒さ対策は厚着。某社のヒートテック下着は昨年も使用した。今回は加えてウルトラ・ライト・ダウン・ジャケットを部屋着として採用した。そして、我が国の誇る知恵として、コタツ(電気)を日本から空輸した。コタツ布団と断熱シートももちろん忘れてはいない。昨シーズンの敗因は、電気オイルヒーターや電気ストーブで部屋丸ごとの暖房を考えたことだった。『焼け石に水』の逆バージョン、『ネパールの家に丸ごと暖房』。これは隙間風のレンガ屋敷では不可能だし、エネルギーの無駄でしかない。一方、コタツの中だけを希望の温度にするのは、わけないことだし、大して消費電力もかからない(運用消費電力は、1200w vs 200wほどである)。(以下、劇的ビフォーアフターのナレーション風に読んでいただきたい)
 『暖房の魔術師マミヤが、コタツを小部屋にセットしています。すると、どうしたことでしょう。昨シーズンあれほど寒く辛かった暮らしが、今は暖かい微笑みの空間に生まれ変わったではないですか!』
 広くて寒い居間での日常から撤退し、やや狭い寝室を居と定め、窓を目張りし、そこにコタツをセットして、必要時のみエアコンの暖房も併用する体制とした。威力は絶大。コタツを最低出力で使っても、十分に快適。さらにウルトラ・ライト・ダウン・ジャケットの威力も衝撃的で、実はヒートテック下着も不要になってしまった。冬はTシャツ(全館暖房でヌクヌク暮らしていたという意)という道産子としては、長下着のチクチクした肌触りが嫌だったので、パジャマ+ダウンジャケットで、チクチクなしで過ごせることは非常にありがたいのだ。ユニクロ柳井社長万歳!!
 ここまでは、日本の知恵と科学の勝利というわけだ。さらに、ネパールにも優れものの装置があった。昨年も少し書いたが、ギザという温水給湯システムがそれだ。ガスや電気式のものもあるが、基本は自然循環式太陽熱温水システムなのだ。さらに追い焚き用にヒーターを備えていれ言うことなし。最高気温17℃でも日中の陽射しが4-5時間あれは、エネルギー消費ゼロで、シャワーや風呂に快適な温度の給湯が可能だ。冬は乾季(雲があまり出ない)で、かつギリギリ氷点下にならないカトマンズにはうってつけだ。電気もガスも石油も不足がちの国で普及した生活の知恵といえる。当地は大気汚染(排気ガスと砂塵)もひどいので、エコの意味でも大切だ。エコを考えている現地人はいないかもしれないが。。。

   狭い部屋で局所暖房し、じっとエコ暮らしをしていると、多少の不都合もある。コタツを抱えるように、じっと座ってパソコンに向かって落語などに興じていると、縮こまった足腰に負担がかかるのだ。運動にならないので、体のエコはちょっと不健康。なにやら昔々の4畳半下宿の受験生の生活を連想する。これでインスタントラーメンと煎餅とミカン三昧なら更に言うことなしだが、前2者は当地では良いものは手に入らない。とにかく、運動の時間を作ることと、体重管理は怠れない。冬将軍に勝利しても、わが身をもって大使館職員の範たるべく、メタボの脂肪の燃焼方法を更に模索する年の瀬である。
(いま、アーユルベーダの脂肪燃焼ハーブを検討中だが、これはまた、別の話)
(2011/12/30記す)