お父さんのエッセィ

『ネコを連れた外科医(前編)』(1998/05/05)


『ネコを連れた外科医(前編)』


本日は晴天なり。
そして本日、サクラも散り始めし端午の節句。
さらに本日私は北海道中部の某市・某病院のお留守番。

何が悲しゅうて、
あたら短い青年外科医の青春を
外科医の缶詰(おいしいの?って訊いてくる友達もいる)として
煮詰めなくてはならないのか?
(外科医の缶詰は『キョロちゃん』マークを送っても当たりません。)

当直室の座敷わらしか、わいは?
座敷わらしのいる家は栄えるのだそうだから
病院が栄えると言うことは、、、
お客さん(患者さん)がたくさん来ると言うことで、、
今日はお客さんゼロだから、ぼくは
座敷わらしではなくて貧乏神なのか、、、

ともあれ、お客の来ない外科医は夜明けのガス灯みたいなもので、新月をまって
完全個室の当直室で蛍雪勉学に勤しむのでした(こないだ視た徳川慶喜みたい)。
さて、
完全個室といえば、エッチなひびきを感じ取る大兄もありましょう。
なかには、恋仲の看護婦さんや馴染みの?WATER BUSINESSの女性を連れ込む強者もいるやに聞いておりますが、、、
(関係者もみておりますのでとても公には出来ませんがそーゆーはなしはいくつも知ってます。)
わたくし?いえいえ、滅相もありません。妻子のある身ですし、、、??。
ん、んー(咳払い)。
私が連れ込んだといえば、愛猫あかねぐらいのもの。
病院にネコ、非常識に聞こえるかもしれません。
(もう時効ですから書きますか、、、)

あれは、いつの頃だったじゃろうか、北風のきつい吹雪の晩じゃった??。
あかねもまだ生後半年の子猫で、めんこい盛りじゃ。
ようやく年越しの米を手に入れた若夫婦が、内職に〆縄をなっていると??、
不意に玄関をたたく音が聞こえてきたんじゃ、、
--ドンドン--ドンドン--
「与作はおるか?」
(中略)
年末年始の当直差配のお役人が、うむをもいわせぬ調子でお役を言いつけおった。
『おめさ、年越しはK市・K病院で寝ずの番さ立て』
御上のいうことには逆らえね。
んだども、
嫁は嫁で用があり、どーしてもあかねさ、みる人の手配がつかね。
こーんな小さな子猫さ6日も7日もこの寒空に一匹でおくことはなんね。
ちゅうんで、ネコ一匹こっそりと寝ずの番さ連れてったってこった、、。

(ちなみに、当直差配のお役人はこっそり常夏の島で年越しそばを食べたって話です。)

医局の差配は非常です。個人の細かい事情は斟酌されません。
とくに年末年始などの繁忙期にはピンチヒッターも探せません。
いっぽう、飼い主にしか慣れていない猫をおいそれと預かってくれる知り合いもなく、、、
ペットホテルは先代のネコを預けた折りの騒動で懲りておりましたし(いずれ書こうと思ってます)、、、
そこで、窮余の策として
ネコを連れた外科医は誕生したわけです。
((つづく))


(1998/05/05記す)