わが家には芝生の庭がある。
現在の家を建てたとき、妻が望んで芝をはらせた庭で
サクランボの木とツツジとカエデが季節のアクセントだ。
エンジン芝刈り機を使うほどの広さはないが
手入れには結構手間暇もかかる。
造成後1〜2年は青々とした芝で、パターの練習も出来そうなほどだった。
その後、クローバーにやられた。
数年はクローバーの排除作業に夏の余暇を費やしたが
エイリアンのようなクローバーの増殖に
やがてわたしは戦意を喪失し順応した。
クローバーに前後して庭の隅に蕗が繁り
そして最近は蒲公英が新興だ。
花や種子を取りこぼさないためには、はいつくばって手作業での花摘みが必要で
それはまるで黄色とみどりのオセロゲームといった様相だ。
この3年一進一退だったオセロはわたしの順応にともない
黄色タンポポ組の圧勝となった。
採ってもとっても増殖する蒲公英。
癌外科の私は無軌道な増殖を職業柄嫌悪するのだが
順応してしまったのには訳もある、、、。
ある夏の夕方、外出から戻った我が一家。
車を降り玄関の横にたたずむ妻と長男。
彼らは夕日を背に白い綿帽子のタンポポを摘み取り、息を吹きかけ
白い綿毛の飛行をのどかに眺めていた。
なんとほのぼのとした母子の夕暮れだろう、、、メルヘンである。
私がはいつくばってオセロゲームに悪戦苦闘していたその庭で、である。
エイリアンとの戦いには内通者がおり、
私には最初から勝ち目がなかったというわけだ。
『おい、何てことしてくれるんだ!』
叫ぶ私。
それでも、メルヘンモードの妻は、
彼女が望んで造成した庭の運命をなかなか悟れないでいた。
「このひと、何を怒っているのかしら??私は情緒教育(子供とメルヘン)をしているのに、、」ってなもんである。
「いったい、これまで何回ぐらい私の知らない間にメルヘンモードしていたものやら?」私は青ざめた。
何も知らずに除草に明け暮れていた私はまるで、トムとジェリーのマンガにでてくる間抜けなスパイク君のようではないか。
タンポポとのオセロゲームは戦犯たる妻子に引き継がせ、今年も無益に?戦われている。
私は仕事の忙しさもあり、いまはあまりゲームには気が乗らないでいる。
雪深い旭川もいつのまにか花の季節となった。
福寿草が咲き、水仙が咲き、桜が咲き、チューリップが咲き
そして今は
ハーブの季節を前にひと休み、
それは青空と蒲公英の季節なのである。
| (1998/5/17記す) |