お父さんのエッセィ

『Statesの景気のこと』(1999/10/24)


『Statesの景気のこと』


ちょっとアメリカ合衆国を旅する機会があった。
テキサス(南部)とマサチューセッツ(東部:いわゆるニューイングランド)に3,4日ずつ滞在した。
飛行機で4時間のダラスとボストンでは、気温差もあれば時差もあるのだが、
なぜか
同じ風景が脳裏にこびりついている。

テキサスリッチのダラスでは、丸まま空きビルとなった摩天楼、
そしてほとんどがら空きの店舗スペースが連なるホテルのアーケード街
オフィス街でもfor leaseの看板もやたらと目に付く。
景気のいい国だったはずだよね。。。

街を大改造工事中のボストンでも郊外では空きモール。
紅葉の街に初雪も降ろうかという風は、とても寒かった。

好景気の合衆国は、
金融改革や情報通信網の高度化した社会の確立などの上に築かれたものらしいが、
それは一方で目に見える傷跡のうえにあったわけだ。
(ただ不要になったものを傷とは言わない、、かな)
廃墟の摩天楼は、社会変革の目に見える形としての象徴といえる。

その変革の具体的の方法論のひとつが
本来的な意味でのリストラであり、アウトソーシングだろう。
非採算部門の切り捨てと外部委託によるスリム化戦略だ。
先頃の日産の例を見てもわかるように、それは革新的方法論のように語られている。
徹底的にプラグマティックなのは西洋らしい手法だ。
ところで、
アウトソーシングやリストラは、
一見すると、ある程度の失業率の上に成り立つ経済体制のように思われる。
が、不思議なことにアメリカにはそれほどに失業率は無いらしい。
新分野での雇用創出、適量適所の人材の再配分がなされたというわけだ。

ところで、転職は当たり前の合衆国だけど、
変革の陰で不本意な転職を余儀なくされた人は、みんなハッピーというわけではなかろう。
時流に乗り遅れて会社で生き残れなかった人たち。。。
例として適切かどうかあやしいのですが、、
ヘルシー志向で公共施設での禁煙も当たり前の国だけど、
オフィスビルの玄関横でかくれタバコを喫っているホワイトカラーは意外と多い様子でした。。。
ちょっと、笑えましたが、、
正論あるいは立て前のうしろに影をひく本音の部分として、象徴的でしょう。
ことほど左様に目に見えない傷跡も多分あるにでしょう。。。

景気の悪い日本で皆が企業のスリム化に走ったら、
日本型リストラはただの首切りだから、人材の再配分ができない分、
もっとアンハッピーなのでしょうね。


(1999/10/23記す)