備長炭に似た炭の電池の失敗


☆はじめに   安くなった電池の実験に使える炭,しかし・・・

 

  米村傳治郎先生ご考案の備長炭電池はパワーがあって教材としても最高です。

  しかし,以前は,備長炭が高くて演示でした。

  最近では,100円均一のお店でも,28cmくらいの備長炭に似た炭が売られるようになりました。

  これで,個別実験が可能となります。

 

  早速買ってきて水洗いをすませ水槽で水を吸い込ませると・・・

 

    →  

  水に浮くものとしずむもの           割れるものと割れないもの

 

  炭の準備から失敗です。

  炭は必要以上の本数を揃えたいですね。

 

 注意:

   日本農林規格(JAS)で「備長炭」と称されているものは

 ”烏剛樹”・”青剛樹”・”ウバメガシ”の3種類を炭材にした白炭のみをさすそうです。

 ここで使っている炭は,値段からして「備長炭」と言えるかどうか不明なので,

 「備長炭に似た炭」としました。(読者の方からの御指摘)

 

 (お詫び

  傳治郎先生のお名前が、長い間「傳次郎先生」になっておりました。申し訳ありませんでした。)


 

  また,本物の備長炭(一箱1万円)を使っても,豆電球が点灯しないこともあります。以下にその原因を考えてみます。

 

 

☆炭の電池の材料(失敗の原因の隠れ場所)

 

  (A) 炭(+極)

  (B) アルミホイル(−極)

  (C) 食塩水(+極と−極の間を取り持つ電解質)

  (D) クッキングペーパー(電解質を保持するため)

 

 

 

☆失敗しないポイント

 

  ◎ (A)の炭は前の日から,(C)の食塩水につけておく。

  

      実は,これが他のHPにはあまり扱われていないポイント。

      多孔質の部分に電解液が触れていないと備長炭が宙に浮いた存在になります。

      食塩水につけていない備長炭に比べて起電圧が安定します。

      この実験をするときに備長炭でなくてはならない理由を紹介します。

      

      「普通の炭でも弱い電池にはなりますが、備長炭の足元にも及ばないですね。

       備長炭を使うと、0.7ボルト、130ミリアンペアくらいの電池になるんですね。

       だから、これを直列に2つつなぐと、単三乾電池1本で動くラジオくらいなら聞けますね。

       備長炭には、数ミクロン〜数百ミクロンという小さな穴がたくさん空いてるからなんですよ。

       この穴のおかげで、わずか1グラムの備長炭の表面積は、約300平方メートルにもなるんですよ。

       この穴が、電子をより頻繁に活動させるのに役に立つんですね。

       そのために、強力な電池になるんですね」              

       (http://kids.gakken.co.jp/kit/otona/make3.htmlより引用)

 

 

  ◎ (B)のアルミホイルの寿命はかなり短い

 

      きちんとセットアップできると豆電球がつきますが,

      20秒程度で,ほとんどつかなくなります。

      これは,いわゆる「電池切れ」に近い状態です。 (ボルタ方式の電池ですので,分極もおこっているかもしれません。)

      アルミホイルがぼろぼろになるといわれていますが,1分や2分ではあまり変わりません。

      しかし,アルミホイルを新しくすると,また,豆電球がつきます。

      「接触」的な問題かもしれませんが・・・

 

 

 

  ◎ (C)の食塩水は,濃い方が良い。

 

      豆電球(2.5V 0.3A)にいろいろな濃度の電解質で作った炭電池をつないでみました。

      その時の電池の起電力と豆電球に流れた電流値を測定した結果です。

 

濃度 起電力 電流値 豆電球
1% 0.4V 70mA ×
10% 0.5V 105mA ×
20%

0.7V

150mA ×
35%(ほぼ飽和) 0.9V 190mA わずかに点灯

 

      今回の調査では,この電解質濃度が点灯するかどうかの分かれ目であると考えます。

 

 

☆組み立て方

 

   

   アルミホイルは,端を折り返すことで,炭と接触を防ぎ,クリップで接続する際の補強になります。

 

 

 

☆結果

 

  豆電球の点灯の様子

 

    

    1.5V0.3Aの豆電球+炭電池     2.5V0.3Aの豆電球+炭電池  2.5V0.3Aの豆電球+マンガン電池

 

     もっと華々しく点灯すると良いのですが・・・

 

   → やはり売り物のマンガン乾電池は「すごい」ということがわかります。

 

 

 

☆直列つなぎ

 

  ・折れた炭で作った電池でも,15cmくらいあれば,十分に豆電球は点灯します。

  ・折れた炭でも0.8Vは出せますので,2本直列にして1.6Vを手に入れることも可能です。

 

   2本を直列につないだ写真(2.5V0.3Aの豆電球に200mA程度流せます)

 

 

☆電極について

 

  ・−極のアルミホイルにクリップをかませるのは簡単ですが,+極の炭にクリップをかませるのは,大変困難です。

   そこで,炭に「端子」のような物をとりつけるアイデアがありますが,

     →  

   このようにアルミを使うのはダメです    イオン化傾向の低い銅を使いましょう

  

   アルミを使うことを紹介しているHPもありますが,落ち着いて考えると,炭の先でもう一つ電池を作っているようなものです。

   すぐ下のクッキングペーパーからしみだした食塩水が炭とアルミの間に入ってしまいます。

 

   (−)アルミホイル|食塩水|炭(+)   炭(+)|食塩水|アルミホイル(−) となります。

           ↑                       ↑

        本来の電池                  炭の先で予期せずにできた電池

   

   アルミを使うのは,ちょうどとやっているのと同じになります。

   炭の先にアルミをまいた瞬間に電池の起電力を低下させることになります。

 

   銅線でも電池になってしまいますが,銅はイオン化傾向が低く+極になるため電池を弱めることにはなりません。

   炭と銅線で,電池ができても,

 

   (−)アルミホイル|食塩水|炭(+)   炭(−)|食塩水|銅(+) で直列つなぎになり,

 

   起電力低下にはなりません。(むしろ上がる?)

   ですので,もし炭に,クリップをつける部分をつくるのなら,銅が良いと思います。

 

 

☆反応式

 

           電池記号   (+)O2 | NaCl aq | Al(-)

 

     正極(炭に取り込まれた酸素) : 3O2 + 6H2O + 12e- → 12OH-

     負極(アルミニウム)       : 4Al →  4Al3+  +  12e-

     全体                 : 4Al + 3O2 + 6H20 → 4Al(OH)3

 

 

☆その他

 

・この実験をすると,電解液の食塩水が乾燥し,食塩の再結晶あちこちにあらわれて片付けが大変です。

・よく,「握るとパワーが上がる」と書いてありますが,起電圧で0.05V程度上がるだけで,それほど効果はないようです。

・豆電球がつかなくても太陽電池用のモーターは回りました。 (太陽電池用モーターはすごい)

・「発光ダイオードをつけたい」という要望がありますが,発光ダイオードは2V程度の電圧が必要であるため,場合によっては,炭電池を3つ直列にしなければ点灯しないこともあります。

・炭に,ビタミンCをすり込むという報告(http://www2.hamajima.co.jp/ikiikiwakuwaku/record/r_2003_05_10/newpage2.htm)もあります。

 

 

 

☆参考文献

   

・学研大人の科学シリーズ(http://kids.gakken.co.jp/kit/otona/make3.html

・愛知物理サークルホームページ(http://www2.hamajima.co.jp/ikiikiwakuwaku/record/r_2003_05_10/newpage2.htm

・化学教育兵庫サークル(http://www.eonet.ne.jp/~komi/kaiho/chec07.htm

・様々な科学電池を作ろう(http://www.edu.pref.ibaraki.jp/center/zyouhou/sozai_db/kagaku/2/battry.htm

 

 

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