kafunkan_1shot.jpg ホウセンカの花粉管のアニメ


☆花粉管は伸びるのが速い?遅い?

植物が動くことをリアルタイムに観察できるのはとても感動的です。

「オオカナダモの原形質流動」 「花粉管の伸長」など・・・

花粉管は長ければ,伸びるのに1日かかるものもあるようですが,

目の前でのびている様子(特に50分の授業の中で)を観察したいものです。

 

☆ポイントは花粉の選び方

花の種類で花粉管の伸びは、かなり違うようです。
この実験で良く使われるのは,

ホウセンカ・シロツメクサ・アカツメクサ・ムラサキツユクサ・インパチェンスなどです。

授業では、時間の関係でホウセンカの花粉を使うと最も早く伸びるようです。

ホウセンカは早ければ5分でのびていることがわかります。

8%のショ糖水溶液に寒天を入れた培地に花粉を絵の具の筆を使ってのせます。

kafun_fude_nuri.jpg


さらに8%のショ糖水溶液を1滴たらした上からカバーガラスをかけて観察します。

寒天上に花粉を乗せただけでも観察できますが、高倍率での観察にはカバーガラスがあった方が良いでしょう
ただし、カバーガラスで完全に寒天に埋没した花粉はほとんど発芽しません。(酸欠か?)

下の図で水色の部分の水溶液はなくても見えます。(寒天の水分で十分)

プレパラートの作り方

寒天の上に花粉をまきますが、「寒天中の花粉」の発芽率は低く

「寒天上の花粉」は発芽率が高いようです。

とくに、図のように、カバーガラスをかけるときに空気が入ったところの花粉は発芽率が100%に近いようです。

☆実験の様子

ホウセンカの場合は8%のショ糖水溶液(グラニュー糖でも可)を使います。(濃度が低いと原形質吐出をし、濃いと伸びが遅くなります)

 →原形質吐出が多い場合:ショ糖濃度を上げる
 →のびが遅い場合:ショ糖濃度を下げる

シロツメクサの場合は16%のショ糖水溶液を使います。(この濃度は試行錯誤の結果です)

ショ糖水溶液に寒天(2%)を混ぜ培地とします。スライドガラスにのせた様子です。


ピンセットで寒天の真ん中を削り、花粉をのせます。その上に空気が入るようにカバーガラスをかけます。

 


空気と寒天と花粉が真ん中に。

 


このように空気が入っていないとあまり花粉管はのびません。

花粉の発芽率が高い場合は、カバーガラスをかけずに低倍率(100倍まで)で観察するのが一番良く花粉管が伸びます。 

後は低倍率で顕微鏡観察をします。(対物レンズを高倍率にするときには寒天をつぶさないように注意します)

 

☆花粉の静止画

5分後のホウセンカの花粉(100倍)(空気が入っている場合)

 

5分後のホウセンカの花粉(100倍)(空気が入っていない場合)

 

☆ホウセンカの花粉の冷凍

ホウセンカは夏の花でおおむね6月~9月が花の時期でしょう。スケジュールの関係でそれ以外の時期に行う場合や、
ホウセンカの花だけをもらって時間を空けて観察したい場合は、花ごと冷凍する方法があります。
ただ、そのまま冷凍・解凍してしまうと発芽しない花粉になってしまいます。
ポイントは
(1)乾燥
(2)温度変化をゆっくり
です。

まず、(1)の乾燥のために、プラスチックケースにシリカゲルを入れて花を保存します。
 reitou_red_case.jpg1週間冷凍したホウセンカの花

次に、(2)の温度変化をゆっくりするために
 冷凍: 花とシリカゲルをケースに入れる → 冷蔵庫に入れる → 翌日冷凍庫に入れる
 解凍: 冷凍庫から冷蔵庫に移す → 翌日室温に戻す → 2時間後ケースから取り出し観察する

のプロセスが大事です。冷蔵庫を経由せず、急冷し、解凍時もすぐに使った場合発芽率は0%でした。

reitou_red_inner.jpg 上記プロセスで解凍したホウセンカの花

reitou_red_flower.jpg ケースから取り出したホウセンカの花(花弁は痛んでいますが、花粉は乾燥したままです)

◎観察結果
 reiou_pink_20min.jpg(100倍) ショ糖8%、寒天2% 花粉散布後20分

生の花粉よりも発芽が遅いのですが、冷凍しても花粉が生きていることがわかります。

☆シロツメクサも使える

ホウセンカはなかなか手に入らなくなってきました。(あまり販売されていない まれに種を売っているお店があります)

シロツメクサなら校庭のほか地域の公園にいっぱい咲いています。

ただし、ホウセンカと違い、花粉管がでるまでに20分近く時間がかかってしまいます。

ところでシロツメクサの花粉はどこにあるのでしょうか。

 

シロツメクサと一つの花を取り出した様子。

花の花弁の中からおしべが出てきました。この黄色い部分を寒天にこすりつけます。

 

30分後のシロツメクサの花粉(100倍 ショ糖16%溶液寒天)(空気が入っている場合)

 

☆アカツメクサは便利

すぐ手に入り、シロツメクサよりも早く花粉管が出る植物にアカツメクサがあります。

akatsumekusa_hana.jpg シロツメクサよりも背が高いことが多いです。

花粉の取り出し方はシロツメクサと同じです。ショ糖溶液の濃度は16%で行いました。

akatsumekusa_10min.jpg
10分後のアカツメクサの花粉管(100倍)

シロツメクサよりも約2倍はやく伸びるようです。

 

 

☆花粉の動画

◎ホウセンカ

下の動画は、空気が入ったところのホウセンカの花粉を連続撮影した写真です。

 ←クリックすると,横幅が倍のアニメ(700 kbyte)が見えます。

   ☆アニメについて

1フレーム1分で撮影してあります。ぜんぶで14分撮影しました。
3分間(180秒)を1秒で見えるようにつくってありますので,180倍速の映像ということになります。
(撮影には,(株)内田洋行のデジタル顕微鏡SB-600UVを使いUSB接続で取り込みました。)

  

◎アカツメクサの花粉管

シロツメクサ以外にもアカツメクサの花粉が使えます。
30秒のリアルタイムの動画ですので、伸びていく速さの感覚がはっきりわかります。
花粉の原形質と花粉管内が流動している様子もわかります。
HPの容量の都合でmp4圧縮としました。(実際の画像はもっとなめらかです)

←右クリックで動画(mp4)をダウンロードできます。

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