ミョウバンの大結晶をつくる
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☆自由研究でも有名な「ミョウバンの結晶づくり」を手軽に
ミョウバンの結晶作りは昔からある実験で「育てる」という楽しみがあります。
しかし、大きな結晶をきれいにつくるのは、なかなか大変です。
また、ちょっとした条件(ホコリなど)で、大きなものではなく、小さな結晶がたくさんできることがありガッカリします。
そこで、ある程度大きい結晶をつくるほうほうとして、発泡スチロールケースなど大がかりなものを使わない方法を検討します。
このページでは、とくに、多人数で安価につくる方法について考えたいと思います。
容器はビーカーで行っていますが、市販のガラス容器でもじゅうぶん代用できます。
◎結晶を育てる方法としては
(1)温度降下法・・・水溶液の温度を徐々に下げることによって、溶けきれないミョウバンを取り出す方法。
(2)溶媒蒸発法・・・水溶液の溶媒(水)を徐々に蒸発させることで、、溶けきれないミョウバンを取り出す方法。
(3)密度拡散法・・・水溶液の濃度の差(密度の差)によって、高密度の溶液から低密度の溶液中の種結晶を育てる方法。
の3つが知られています。
色々と実験してみた結論としては、
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上記(2)の「溶媒蒸発法」が手軽
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育てる液(母液)の濃度は、気温にあわせて変える
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母液は必ずろ過して使う
が一番手軽にきれいな結晶を手に入れる方法であると考えます。
以下に、詳しい方法を述べます。
☆「温度降下法」からの「溶媒蒸発法」がおすすめです
60℃くらいに加熱した精製水にミョウバンを飽和するまで溶かし、種結晶をつるして、徐々に温度を下げると結晶が成長します。
40℃付近で種結晶をいれて、室温に下がるまでに、温度降下法で結晶が成長します。
温度降下法だけでは室温まですぐに下がってしまいます。
そこで、水溶液の温度が室温になったら、「溶媒蒸発法」で成長させます。
水が蒸発することで、「徐々」に過飽和となり、種結晶がきれいに育ちます。
結晶はゆっくり成長させると透明できれいな結晶になります。
水の蒸発する速度がちょうどきれいな結晶の成長に合っているようです。
温度降下法では、急速に結晶が成長しますので、早く大きな結晶を手に入れたい場合は適しています。
しかしながら、結晶の透明度は落ちます。
発泡スチロールの容器や恒温槽などがあれば、有効な方法です。
中心部も透明な結晶を作りたい場合は、溶媒蒸発法で母液の温度を保存する部屋の室温に下げてから種結晶をつるす方が良いかもしれません。
☆母液の作り方
結晶を育てる場所の気温に合わせて、ミョウバンを溶かす量を調整するのがポイントです。
ミョウバンにはいろいろな種類がありますが多くは、
・生ミョウバン(見た目が透明の粒) (カリウムミョウバン12水和物 AlK(SO4)2・12H2O )
・焼きミョウバン(見た目が白い粉) (カリウムミョウバン無水物 AlK(SO4)2)
の二種類が手に入りやすいです。
生ミョウバンは買うと高価なので、「焼きミョウバン」がおすすめです。焼きミョウバンは、ナスの漬け物や栗の煮込みの色を鮮やかにする食品添加物です。
薬局や大きなスーパーマーケットに行けば50gで100円程度で販売されています。
生ミョウバンは、焼きミョウバンを水に溶かして再結晶させることで、つくることができます。
例えば、
冬(気温15℃程度)・・・・ 水100mLに生ミョウバン16g(焼きミョウバン8g)
夏(気温30℃程度)・・・・ 水100mLに生ミョウバン40g(焼きミョウバン15g)
が「目安」です。(本ページは冬場に作成しており、室温20℃の条件で水100mLに焼きミョウバン10gの液でつくっています)。この量が結晶の成長速度と透明度に関わってきます。
作った水溶液を培養する場所で2~3日蓋をしておいておくと、その気温の飽和水溶液になります。これをろ過して使うと最も透明度が上がります。
また、水は精製水を使うのが理想ですが、水道水でもじゅうぶんきれいな結晶ができます。(精製水と水道水の「見た目の差」は、ほとんどありません。)
焼きミョウバンを使う場合は生ミョウバンよりも溶けにくいので、約半分程度の量になります。
ろ過については、コーヒーフィルターを使ったろ過でもじゅうぶん効果があります。
100円ショップなどで手に入るコーヒーフィルター
生ミョウバンも焼きミョウバンも、溶媒の水を60℃付近まで熱しないと完全に溶けません。
また、水溶液を入れるときに30℃以下にしてから注がないと種結晶が溶けてしましますので、常温でゆっくり冷やします。
この分量の根拠はその気温での飽和水溶液をつくるところにあります。
ミョウバンの溶解度曲線によると、100gの水20℃で、生ミョウバンを11.4g 溶かすと飽和水溶液になります。
(教科書などのグラフでは20℃で約12gと読み取れます)
ミョウバンの飽和水溶液は温度がゆっくり下がった場合、少し過飽和になります。
しかし、100gの水に12g溶かしてゆっくり20℃以下にしても、すぐには再結晶しません。
ミョウバンの水溶液には、「準安定領域」があるためです。(参考文献 1)
気温より少し高い温度の飽和水溶液を準備するのがポイントです。
冬場は気温+10~+20℃、夏場は、気温+5~+10℃くらいが目安です。
この方法では、最初、温度降下法で成長させます。
水溶液がその気温での飽和水溶液になったところからは
溶媒蒸発法で結晶成長させるかたちになります。
作った飽和水溶液は、必ずろ過して下さい。ろ過をすることで種結晶以外の新たな析出をかなり少なくすることが可能です。
☆種結晶の設置の方法
「種結晶を糸で結ぶ」という記述をよく見かけますが、「たいへん難易度が高い」と思います。
そこで、ミョウバンの結晶が熱で融けやすいことを利用して、(カリウムミョウバンAlK(SO4)2・12H2O
融点92.5℃)
「熱した銅線を種結晶にさす」という方法を紹介します。
この写真は、0.4mmの銅線を蒸留水で洗浄し、赤くなるまでガスバーナーで熱して、市販のミョウバンの一粒にさしたものです。(あまり熱しすぎると、銅が溶けて玉になってしまいます。蒸留水がない場合水道水でも構いません)
なお、種結晶には、カリウムミョウバンの12水和物(AlK(SO4)2・12H2O)を使用しています。
セットした様子
後は、割りばしなどで橋を渡し、容器にセットします。
実験をする人がひとり1つ実験できるように、プリンカップを使用した例を紹介します。(プリンカップは蒸留水で洗浄してあります。)
プリンカップが用意できなければ、市販の紙コップでもじゅうぶん代用できます。
容器については、内側にキズがないことも、底に結晶がたまらない条件になりそうですが、
ビーカーなどのガラス容器では、洗剤とスポンジで洗浄すると余分な結晶が出にくいことがわかりました。
もしかすると、手垢などの脂分が結晶の核になっている可能性があります。
人数が多くて、実験者一人1つ容器が用意できない場合には、200mL程度の紙コップが使えます。
種結晶を3つ同時にぶら下げても大丈夫です。
お互いにぶつからないようにセットすれば、3日で5mm程度の結晶に成長します。
☆結晶成長の様子 (画像クリックで動画再生)
この方法で種結晶をつるして、30分ごとに写真を撮って動画にしたものです。
1コマ30分です。約48時間の成長の様子です。
1秒間で2コマで編集してあります。(2秒で1時間分になり、1800倍速の映像です)
20℃の飽和水溶液(水100gにミョウバン12g)に種結晶をつるしてあります。
撮影時の室温は16℃でしたので、温度降下による成長が大きいかもしれません。
☆動画撮影の様子
USBカメラを使ってビーカーの側面から撮影しました。
カメラを操作するソフトは(株)ケンコーの「NetCam」を利用しました。
この撮影を通して改めてわかったことは、ミョウバンの結晶が、最初温度降下で成長し、溶液の温度が気温と等しくなってから、徐々に溶媒の蒸発で成長することです。
セットして2~3日ですぐ大きくなるのに、その後、成長が止まるのは、このためであると考えられます。
☆結晶成長にホコリは大敵
結晶を育てる場所は、「クリーンルーム」ではありませんので、部屋のホコリはすごい数になるそうです。
ふたをせず、そのまま放置すると、ホコリが結晶核になり、小さな結晶がたくさんできてしまします。
基本的には、ラップフィルムや薬包紙を蒸発するすき間が残るように乗せてフタをする方法がおすすめです。
水が蒸発する余地を残したふたをする必要があります。薬包紙などでも十分すき間のあるフタはできますが、
観察しやすいことを考えると、ペットボトルを切ったものも使えます。(フタをすると蒸発が遅くなりますが、ホコリは入りにくくなります。)
これで、ふたをしたまま観察できます。
(ペットボトルの底の部分は、ペン立てなど整理整頓に利用できます。)
ペットボトルのふたの部分には、薬包紙などをそっと乗せておくと更にホコリを防ぎつつ、
溶媒の蒸発をさせることが出来ます。
☆できた結晶
蒸留水100mlにミョウバン12gを溶かし、水溶液をろ過したものを使用
気温10℃前後の部屋で、ペットボトルのフタをし、3日放置した写真です。ある程度の結晶が手軽にできます。
◎フタの有無の違い
蒸留水100mlにミョウバン24gを溶かしたもの ペットボトルのフタあり(右)、フタなし(左)
種結晶が育つ前にホコリが落ち、底に小さな結晶ができます。同じだけミョウバンが水溶液中に含まれていますが、
フタなしの場合では、ひとつの結晶の大きさが小さくなってしまいます。
☆中学生の作品
蒸留水100mlにカリウムミョウバン12水和物12gを溶かした水溶液を使い、1月の千葉県でつくりました。
1週間で18mmほどに成長していました。
しかも透明度が高く、参考書に載っている物と遜色ありません。
大人が作るより、上手な中学生がいっぱいいます。
☆ビーカーで育てた場合
透明な種結晶から溶媒蒸発法で育てました
↓ 3ヶ月後
約30mmです。
↓ 半年後
47mmに育っていました。
☆密度拡散法
溶媒蒸発法の他に、密度拡散法と呼ばれる方法が紹介されています。(参考文献2)
時間がかかりますが、完全にホコリをシャットアウトでき、きれいな結晶をつくることができます。
成長速度を上げるには、上部を小さな電球で加熱する方法があるそうです。(参考文献3)
溶媒蒸発法である程度育てた結晶をさらに長期的に大きくするには、この方法がよいかもしれません。
☆その他
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「振動が少ない場所に」との記述がありますが、そんなに気にしなくてもある程度の結晶はできました。
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振動よりも、結晶成長の速度をゆっくりにすることが大切なようです。
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種結晶をつけた銅線に2つ目の結晶ができることがありますが、ピンセットで取り除いたり、ペンチでつぶしたりして、再び溶液中に入れれば大丈夫です。
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結晶を取り出したり、溶液をつぎ足したりするときには、種結晶を少し精製水で洗う(削る形になる?)と継ぎ目が目立ちにくくなります。
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室温の飽和水溶液を、溶媒の蒸発によって過飽和にするため、特別な装置が必要でなく、多人数で実験できることが、利点だといえます。
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下に沈んだきれいな結晶は種結晶として使えます。
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長期間育てる場合は、底にできた結晶を取り除くため、容器と水溶液を新しいものにします。種結晶が育つためのミョウバンを底にできた結晶に取られてしまいます。
☆参考文献
1) 左巻健男 編著 「理科おもしろ実験・ものづくり完全マニュアル」 東京書籍
2) 大きくきれいな結晶づくり 河村 美樹 http://www.osaka-c.ed.jp/matsubara/kadai/24ki/kadair18.htm(リンク切れ)
3) ミョウバン飽和水溶液からの結晶製作と教育実践 -二槽式結晶育成装置による巨大結晶の成長観察-
山本 勝博 http://www.osaka-c.ed.jp/kak/web/kenkyuu17/pdf/04/2.pdf(リンク切れ)
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