直流と交流の違いをLEDで観察する昔ながらの実験装置ですが、安価にわかりやすいものを作りたいものです。
市販品は、コンセントにつないだ電源装置から、直流と交流を切り替えスイッチで切り替えてLEDが光る様子を観察します。
これでは、コンセントの電流が直流か交流か見ている側が混乱する場合もあります。
そこで、「直流は乾電池」、「交流はコンセント」をそれぞれ電源として、別々に観察器を作ると、違いをはっきり区別することができます。
また、教科書によっては、記載されているLEDの色が様々で、LEDを取り替え可能にした観察器があると便利です。
本WEBでは、次の3つの方針で観察器を作ります。
(1)交流はコンセントから取る。
(2)2列ソケットを使ってLEDが取り替えられるようにする。
(3)直流・交流で一つずつ別に作る。
コンセントのAC100VをそのままLEDにつなぐと大変危険で、LEDも破損してしまします。そこで、コンセントの電圧を下げてLEDにつなぐ方法を挙げてみます。
(A)抵抗を使う
抵抗による電圧降下でLEDにつなぎます。ワット数の高い抵抗が必要です。電圧を下げる分のエネルギーを熱に変換するので、すごく発熱し、危険が伴います。
(B)トランス(電源装置)を使う
一番多く見受けられる方法です。トランスは重量が重く持ち運びが大変な上、高価です。
電源装置の電圧をLEDが光るところまで上げて点灯させるのですが、交流の電圧の設定を慎重に行わないとLEDが破損します。
(C)コンデンサのリアクタンスを使う
本WEBで紹介する方法です。コンデンサに交流を流すと電圧が下がる性質を利用します。
もとは、100円ショップの「LEDナツメ電球」の回路を参考にしています。LEDナツメ電球を分解すると、LEDと100Vを取り入れるソケットの間に大きなコンデンサ(写真ではオレンジ色の部品)が見つかります。
100円ショップの「LEDナツメ電球」を分解
「LEDナツメ電球」の回路例
LEDナツメ電球では、交流とコンデンサの性質を使っています。
コンデンサを交流に接続すると、電源の電圧の変化と、コンデンサの充放電による電流の変化にずれが生じます。(リアクタンス)
リアクタンス(記号Z)は、円周率を(π)、交流周波数をf(Hz)、コンデンサの容量をC(F)とすると、
Z = 1/(2πfC)
ここで、 f = 50
Hz、C= 0.47 μFを代入すると、
Z = 1/(2π×50×0.47×10-6
) = 6.8
(kΩ)
このリアクタンスにV=100Vをかけると電流は
I = V/Z = 100/(6.8×1000) = 0.015 = 15
(mA)
また、交流にコンデンサを直列につないでも、「力率」が0であるため、ほとんど発熱をすることがありません。
これを応用して、安全で、電源装置よりも軽量な交流観察器を紹介します。
本WEBで紹介する交流観察器はコンデンサを用いてコンセントの電圧を直接下げ、LEDを点灯させます。
各部品の役割
◎C1とR1
コンデンサー(C1)はこの教具のメインとなるパーツです。
このコンデンサの交流抵抗(リアクタンス)により、LED部へ流す電流を15mA程度に制限しています。
抵抗(R1)はコンセントを抜いて、交流観察器を片付けるときにC1に溜まっている電荷(電圧は100V程度)を放電するための抵抗です。
放電するときの時間(時定数)はコンデンサーの容量と抵抗の積で求められ、
C1×R1
= 0.47 μF×470 kΩ ≒ 0.5×0.5 秒 = 0.25
秒
となり、コンセントを抜いた後、約0.25秒でコンデンサの電荷は放電されます。
0.25秒であれば、電源ONの時に、電源の交流50Hzの1サイクル0.02秒よりも長いため、コンセントにさしている間はR1によってすべて放電することはありません。
◎R2とR3
R2とR3を並列につないで、この部分の抵抗値を500Ωにしました。
この抵抗は、全体の電流制限だけでなく、コンセントを指した瞬間に流れるコンセント特有の大きな電流(突入電流)を制限する役割があります。
R2とR3は約2℃程度温度が上がります。
◎R4
R4は本器具特有の部品であり、LEDナツメ球ではあり得ない「LEDを取り替える」という必要性から付けられた抵抗です。
また、R4
とLEDを取り外した状態で、交流電源部からの解放電圧をはかると、交流の100Vとなっています。
電圧が高く、素手で触ると感電するおそれがあり、LEDを取り替えるときにLEDを破損してしまいます。
LEDは逆電圧に対して弱く、100Vでは、多くのLEDが破損します。
また、R4なしでLEDを1つだけ接続しても多くのLEDは破損します。
これは、LEDの順方向に電圧が加わる時は良いのですが、逆方向に加わるときは、電源部を解放している状態とほぼ同じになり、LEDに瞬間的に100Vかかってしまうからです。
そこで、R4をLEDに並列に接続しておくと、R3の両端電圧が12V程度となり、素手でも感電せず、LEDを交換するときにもLEDを破損しません。
R4によって、本器具のLEDに流れる電流は約3mA(2つのLEDで約6mA)となります。
◎電源部分
ACプラグの平行線の1本を4 cm程度切り取り、にC1,R1,R2,R3を組み込みます。
透明の熱収縮チューブで絶縁します。
熱収縮チューブがない場合は、透明の絶縁テープが良いと思います。(中が見えるようにした方が良いです。)
注意: 写真の通り、必ず、ACプラグ側に、C1とR1が来るようにします。
☆R2とR3をACプラグ側にしてコンセントにさすと、R2,R3が破裂します。
(再現性があります。理由をご存じの方は、トップページのメールでご教授願えると助かります。)
◎LEDの取り付け
LEDは取り替えができるように2列ソケットにさす方法をとります。
(使わないICソケットでも十分代用できます。なければ、みの虫クリップでも大丈夫です。)
2列ソケットの下のリード部分をそれぞれ写真のようにスズメッキ線などと半田付けします。
電源部分からの導線は、ピンヘッダなどによって接続します。(ピンヘッダがなければ、直接半田付けでも良いと思います。)
R4は1/6Wのものを使用しています。
LEDは極性が互いに逆になるように取り付けますが、R4がさしてあれば、同じ向きでも点灯します。(2つ同時に点灯・消灯をします)
◎電源とLEDの接続
LEDの2列ソケットをL字フレームなどに両面テープで固定し完成です。(写真のL字フレームはプラスチック製です)
LEDがしっかり固定できて、長さのある物であれば代用できます。(古いほうきの柄など、円柱の物は固定に工夫が必要です。)
青色LEDと緑色LEDを接続し、交流により点灯した様子
(見やすくするため、LEDを手で左右に振っています)
交流にあったR4は必要なく、LEDを互いに逆に取り付け、乾電池電源と接続します。
この回路図では、LED青が点灯しません。
直流を観察するので、2列ソケットにさすピンを入れ替えるなど、
面倒な方法用いて「電流の向き」を変えるのが、「直流」と言うことを体験するのも良いかも知れません。
素早く切り替えたい方には、後半で、逆転スイッチを紹介します。
手で持つところを考慮し、電池ボックスを端から約14
cmのところに両面テープで固定しています。
直列の場合も交流と同様に部品を加工します。2列ソケットをスズメッキ線で半田付けし、LEDの並列回路が組めるにします。
ピンヘッダは抜き差しすることがあるので、ずらして接続しています。
手元のスイッチで操作します。
直流の電源の極性をスイッチで手軽に変える方法を紹介します。
このスイッチに下の図のように配線。
入力を電池側に、出力をLED側に接続して使います。
・小串 憲明,斉藤 豊, 「ケミコンレスLED照明電源の設計と試作」,CQ出版社
http://toragi.cqpub.co.jp/Portals/0/greenele/backnumber/no2/p063-065_.pdf(リンク切れ)
・nshdot 「AC100VでLED」
http://blog.nshdot.com/2008/04/ac100vled.html