快適空間の爆撃機SU34

「ノ−ヴォスチ」通信軍事解説員ヴィクトル・リトフキン

2006年末までにロシア空軍に前線爆撃機SU34が初めて配備される」とロシア空軍総司令官ウラジ−ミル・ミハイロフは最近伝えた。同司令官の発言は、この飛行機を生産しているノヴォシビルスク航空生産公団でも、またこれを開発したスホイ合同設計所でも確認された。

空軍パイロットは祝いとなるだろう。「SU34」は空軍で長いこと待ちこがれていたものだ。この爆撃機が初めて空に舞い上がったのは19904月。この飛行機に相応しいテスト・パイロット、イゴリ・ヴォチンツエフとエフゲニ・レヴルノフがテスト飛行を行った。当時これはSU27IB(戦闘爆撃機)と呼ばれ、よく知られた戦闘機SU27をかなり改良したものであった。先ずこの飛行機は地上及び、戦術的、機動的深さで移動する小型の海上標的を破壊するための用途であった。当然全天候型で夜間飛行も可能であった。

 

この新型飛行機は空中標的との戦いがいわゆる禁止されていたわけではないが、SU27のように実戦での主役ではなく、ホビ−の域のとどまるはずであった。スホイ設計所の設計総長、SU34プロジェクトの指導者ミハイル・シモノフ(しかし、実際に“担当した”のは設計長のロラン・マルチロソフとオレグ・ソボレフ)は、「新型飛行機はロシア領に対する敵軍の攻撃に反撃するために開発されたもので、ほぼ20年間以上にわたり前線の爆撃機であったSU24SU24Mと交代するためのものである。しかし同時に、遠距離飛行など他の課題も解決できなければならない。そのため、設計には豊富な能力が込められている」と語っていた。どのような能力だろうか。第一にSU34は無制限の飛行距離である。

 

もちろん、空中給油が必要である。しかし、それなしでも、また補助燃料タンクなしでも、4千キロメ−トル以上は飛行できる。この飛行機に類似の爆撃機はこうしたことができない。そのため、予定の時間内にロシアの端から端までへの移動飛行が容易である。非常事態が発生した国境にすかさず飛んでいける。シモノフ設計総長によると、通常戦闘機は例えば極東からタジキスタンまで約1週間かかる。中継飛行場が悪天候で閉鎖されていたり、適時に給油されなかったり、パイロットがきちんと休養できなかったりする。ところがこの飛行機ではこうした「困難」が飛行時間や速度に影響することない。SU34の最大特長は乗員の作業や休養にとって快適な環境が整っていることだ。前線の爆撃機における「休養」など、プロからすれば耳障りの言葉だが、それでも休養の環境はある。

 

パイロット室の椅子はもちろん、カタパルト式だが、他のSU機のように縦並びではなく、横並びである。これは旅客機IL96やエアバスA310のようなサロンである。パイロットや爆撃手は椅子から離れ、リラックス運動ができる。希望とならばシ−ト間の通路に横になり、自動操縦運転で相棒が見張りをしている間、ある時間眠ることもできる。魔法瓶からボルシチを取り出したり、電子レンジで肉を焼いたりすることさえできる。またコックピットにはこうしたタイプに飛行機には珍しく、トイレットなどの設備もある。これは爆撃機というより、旅客機だ。どうしてこうした環境と整えたのかと聞くと「SU27UB試験時にニコライ・サドヴニコフ指揮下の乗組員はモスクワ−オホ−ツク海−モスクワのル−トで無着陸飛行を初めて達成した。空中で四回給油した。空中滞在時間は合計16時間で、機械は故障無く動いた。

 

しかし、パイロットは「干からびたパン」みたいな笑顔でやっと飛行機から出てきた。その表情はぼやけた緑色の作業着のようなものだった。当然、こうした飛行の後では戦闘は不可能だろう」とシモノフ設計総長。SU34では、数千キロの飛行の後でもパイロットは疲労せず、あたかも数分前のコックピットに入ったごとく戦場で仕事ができるように、全てのことがなされている。戦闘で効果的に“仕事”ができるように、兵器操作用に根本的に新しいコンピュ−タや、電子機器などが搭載されている。いかなる天候でも、数メ−トルの誤差で所定の場所に爆撃機を導く。

 

自動誘導・補正ミサイル及び爆弾は8トン搭載され、最善に防御されたタ−ゲットを攻撃できる。その距離は最大250km。間もなく実戦配備される新型爆撃機には、有効安全システムあるいは今のところ仮に呼んでいる、人工頭脳システムが装備されている。これは自身で戦闘行為を行い、またハイレベルのパイロットの役割をはたし、超低空でも時速1400kmで飛行しながら、正確に地形の変化に対応し、不意に出現した障害物を迂回し、さらに地上軍の迎撃ミサイルによる保護されたエリアを難なく突破できる。SU34から防御することは、超音速巡航ミサイル同様に困難であると、シモノフ設計総長。地上近くで一定高度に飛行機を「維持」できるのは、デジタルコンピュ−タや有効安全システムだけでなく、コックピット真後ろの胴体部に設置された水平尾翼のおかげでもある。

 

写真には美しく写っている。これは垂直突風を制御するだけでなく、最低高度で飛行するあらゆる高速飛行機で発生する「悪気流」を抑制する。パイロットや爆撃手は、効果的な照準爆撃や、敵側砲火の中での機動性、敵側火器の制圧、敵側ミサイルや対空砲火の回避など、より容易に行うことができる。SU34では飛行士を保護するため、攻撃機SU25を除けば、おそらく世界で初めて装甲コックピットが採用された。この装甲の厚さは17mmで、弾丸や小口径の砲弾、ミサイルの破片から人間や計器をしっかりと保護できる。カタパルトは必要ならば、空中でも地上でも一瞬に作動する。

 

超音速飛行機や、電子戦装置、自動照準の熱線式、電波探知式、その複合式の弾頭搭載のミサイルを使った最近の局地戦及び武力紛争について統計的に分析し、また事故原因を究明している専門家の試算によると、SU34における人間防御統合システムは、同タイプの他の飛行機より5倍以上も効果性が高い。つまり、SU-34は戦闘において類似機より5倍以上も効果的で安全性が高いということだ。我々の話を注意深く聞いていた航空専門家の一部は、超音速前線爆撃機SU34の速度はそう早いものではないと指摘。例えばSU-30MKIより遅い。最高でマッハ1.8だ。

 

これにはわけがある。この飛行機は敵の戦闘機が爆撃機を迎撃することが目的ではない。さらにより早い速度には、その速度に到達するために、燃料など多く浪費する。燃料ばかりか、追加の装置も必要になる。空気取り入れ口の流量を調節する特別の装置が必要となる。最終的には航空機メ-カにとっても、その発注者や使用者によってもコスト高となってしまう。こうした点でSU34は省コストタイプといえる。この飛行機の課題は大量の重い兵器を空に上げ、それを確実に目標地点まで運搬し、正確にタ-ゲットを攻撃して優雅に予想もつかない機動性で敵から逃れることである。このために十分な速度範囲をもっている。

 

エンジンはモスクワの会社「サリュ−ト」が提供するAL-31F-M1型。このエンジンはきわめて推力が大きい。13.5トンである。メンテナンスまでの期間は1000時間。これもまたこうした飛行機では独自の性能である。頭上を翼や機体に吊した爆弾やミサイルを搭載した我々の「ス−シカ(スホイの愛称)」が“低”速でさっと通過する兵士たちには気の毒だと、シモノフ設計総長。火器による攻撃は言うの及ばず、それよりこうした飛行による心理的ショックはおそらく、地面が唸り振動する攻撃戦車の光景よりもはるかに強いものだろう。

 

「トヴァルドフスキ−の作品を覚えていますか。“人の心を狙う大砲をもって戦場に向かう戦車はなんと恐ろしいことか”。まさにこれが我々の飛行機のことだ。空飛ぶ戦車とも言える。頑強、パワフル、機動性、威嚇的だ」と述べた。伝説上の設計者に同意しないわけにはいかない。SU34は、燃料や兵器を完全に搭載した状態で45.1トン。これはロシアの中型戦車T90ST80Uの重量だ。

 

SU24は米国のF111に対抗して開発され、意識してか無意識か、どことなくその外観が似ていて、“どこか親西側イメ−ジ”があったが、SU34は似ているものがない。独特の表情、独特の格好、独特の精悍さ、独特で純粋なロシアの不可知性がある。これは、誰にも脅威を与えず、ロシアの国防力保障のためだけに開発された我が祖国の飛行機だ。それでも、他の「SU」機シリ−ズと異なる点は、SU34は外国に売られることはない。提案されることも宣伝されることもない。