「快適さは投資家向けではない」

「サハリン・エネルギ−」社の株主(シェル55%、三井25%、三菱20%)は「サハリン-2」プロジェクト第二段階の開始について発表した。これにより、さらに二つの海上プラットフォ−ムや、サハリン南部まで総延長800kmの石油ガスパイプライン、ガス液化工場、石油及び液化天然ガス積み出し用タ−ミナルなどが建設される。この発表は先週行われたが、その前日連邦議会向けにプ−チン大統領の教書演説があった。見ようによってはこれに特別の意図も読み取れる。確か、「サハリン-1」プロジェクトの株主は2001年秋、そのプロジェクトに投資する決定をしたと発表した。これは全世界経済フォ−ラムモスクワ会議の前日のことであった。その時プ−チン大統領は出席者の前で演説し、国の投資環境が改善されている良い兆候だと、この出来事を指摘した。今回サハリン投資家は大統領演説の中でこうした特別の指摘に授かることはなかった。結局ところ、たぶんこれには真剣に期待できなかったのかもしれない。教書の主な対象はロシアの国会議員であり、外国投資家ではなかった。国の投資環境はすでに改善しており、ロシア石油採掘の大規模国際プロジェクトの成否にかかわらず、改善し続けている。こうしたことを最も如実に証明しているのは、投資家の発表ではなく、絶え間なく上昇する国の格付けであり、これは最早、“投資環境”格付けの一歩手前まできている。世界の格付け機関がロシア経済を市場と承認すると最後の決定的判断を下せば、ロシアは先進諸国の正式メンバ−となり、投資流入の形で貰うものは全てもらえるようになるだろう。そうなると、各投資家に大投資家でさえ、帽子をとるようなことは国家指導者はしなくてもよくなるだろう。確かに西側の国家リ−ダ−はこうした歓迎のジェスチャ−を軽視しておらず、英首相トニ・ブレアは「サハリン-2」プロジェクトを継続するとした投資家の決断を“聞き満足している”と特別声明を送っている。トニ・ブレアの満足感と激励を次のようにも解釈できる。ロシアでは生産物分与契約は、この契約がほとんど奇跡に近く不変のままだと、政府や国会議員から批判、攻撃、誹謗中傷の嵐に最近さらされている。さらにいかなる数値も事実、投資家の実際の成果も、今のところ、生産物分与にたいし国のこうした態度を変えることはできない。しかし一面は言葉の問題だが、もう一面は現実的問題でもある。「サハリン-2」プロジェクト第二段階の投資決定するため、政府はあえて「気分のよくなる手紙」を投資家に出さざるえなかった。これはよく変更されるロシアの法例の中で調印した契約が優先すると確認したものであった。「サハリン・エネルギ−」社が懸念する最大のものは、ガス価格とその輸送料金、ガス供給・輸送契約の締結・履行の国家規制に関する、独占資本とガス供給関係法規がこのプロジェクトに適用されないことである。国が“自国独占資本”のパイプラインやサハリンの民間パイプラインの利用を規制する法規はそうしたわけで関係なくなるだろう。関係ないといことは関係ないということだ。いかなる疑問が出ようか。何故に特別な手紙が必要なのか、はたして手紙がなければ投資家はロシアの法律に気づかないのだろうか。一面ではそうだが、“願望”はまったく別問題となる。どちらが強いか、わからない。協定、ライセンス、許可、承認など完全にワンセットあり、法律は考慮せずともよい、これで十分快適ではないのだろうか。問題は本当に感じているか、月に二度ほど気分のよい手紙を受け取ったとしても、安全だと感じることができるか、そこにある。ロシアには法律はあるがこれは一面で“願望”はまったく別問題であり、どちらが強いのか不明である、こうしたことはだいぶ前から知られている。もうひとつ“必要”という言葉もある。この前では法律も“願望”も、時には不可抗力の状態でさえ屈服する。たとえば、「ガスプロム」社は数日前、韓国のガス輸入会社「ゴガス」とガス分野の協力、とりわけロシアから韓国へ天然ガスの将来の輸出について協定を結んだ。ガス供給源は「サハリン-2」のどこかであることは明らかである。「ガスプロム」社はサハリンプロジェクトにどのような関係をもっているのだろうか。どのような関係もない。将来、もつつもりなのだろうか。これは今後の取り決めいかんである。もしかしたら、投資家との取り決めではなく、何らかの追加調整するという国の今後の意向にかかっているかもしれない。こうした条件の変更や国の干渉から、まさに現政府の“気分の良い手紙”が投資家を保護しているのである。しかしこれは今の話である。しかし近々の選挙後、事態はどうなるだろう。大統領によると、議会多数派に基づく政府を組閣することになる。だが十年ぐらいたつとどうなるだろうか。サハリン生産物分与契約にもとづきプロジェクト費用補償後、プラットフォ−ムや沿岸の設備、パイプライン、液化天然ガス工場、タ−ミナルなど“名目上”つまり正式の所有者は国家になるのだろうか。政府は、このインフラの排他的利用者は、たとえば隣りの「サハリン-1」プロジェクトで仕事をしている「ロスネフチ−サハリンモルネフテガス」社や「エクソンモ−ビル」社ではなく、「サハリン・エネルギ−」社であるとする契約条項を今まで通りにきちんと遵守するだろう。有力なライバルに他人のインフラを利用する希望がなく、政府に再考をせまるきわめて強い希望が出ないと、誰が保証できるだろうか。そもそも国は一度だと不安を抱かせるので何度も投資家に立場の変更ないと保証してきた。追加保証を求める事態は、ロシアでは定期的に起きる。政府はまたもや保証し、政府は最後にも保証したが、もう手遅れだった!こうした事例を彷彿させる。

 

             ニコライ・イワノフ(雑誌「世界エネルギ−政策」副編集長)