ロシア最新ニュ−ス
2001年2月分履歴
2月27日(火)
“猫も”デフォルト“が嫌いだ”(完)
- “イズヴェスチヤ、2月20日、オリガ・ラズメイコ“-
金融アナリストは銀行危機を予言している。そこでちょっと忘れかかっていた“デフォルト”という言葉を思い出した。多くの凡人は現在に至っても、この言葉の本当の意味は知らないだろうが、“技術デフォルトのおそれ”とか、“ウラルブランド石油価格下落”とか、“米国経済リセッション段階に突入”とか、そうしたいろいろな指摘で死ぬほど混乱している。回復しはじめるやいなや、国の銀行システムにたいする国民の信頼が滑るようにぐらつき始めている。こうしたことは全て1998年にあったことである。しかし今は2001年である。今は別の国だし、別の法律、別の経済、別の銀行システムである。
1998年危機の前、銀行システムは投資の最も魅力的対象であった。銀行を設立することはカフェを開店するの同じようなものであった。しかし設立することに意味があった。膨大の資金を自由に引き入れることができたし、それで為替市場や証券市場でさらに莫大な金を稼ぎ出すことができた。資金が大量に流れた。銀行数は日ごとではなく、時間で増加した。かつてのエコノミスト、数学者、物理学者、軍人、技術者という専門家が銀行員となった。中流階級が誕生し、その活動のためのインフラが整備され始めた。もっともなことだが、体制で支配的な役割をしていた銀行が“綻び”はじめると、あらゆるインフラも“倒壊”し始めた。経済危機は先ず銀行を襲い、そして銀行から他の経済部門も襲った。
現在、状況はまったく異なる。経済においても、銀行部門においても、言えることである。徴税率も向上している。輸出は増加し、輸入を凌ぎ続けている。2000年のロシアの輸入高は1999年比で、様々な省庁の資料によると、10〜15%増であり、輸出高は40〜43.5%増である。2001年1月の国家予算は中間デ−タによると、78億5千万ル-ブル黒字であり、さらに収入は予想を上回り、支出はかなり小さなものであった。原料の市況はロシアにとってきわめて有利のままである。石油価格は国家予算で予定しているより高い水準のままだし、OPEC諸国は世界市場にたいする石油出荷の削減を発表している。こうしたことを背景にロシア石油企業は生産量を増加しつづけ、国家は漸次、そうでなくとも増加している輸出割当を石油企業に拡大している。
“現在ロシアには多くの資金がある、と”アフトバンク“の副頭取ユ−リ・テプロフは述べ、しかし、危機後銀行業の収益率は低下し、銀行の投資魅力は一桁減少した、と発言している。90年代前半、少なくとも98年8月まで銀行はそこに預金すれば大きな利益を手にすることができた組織であった。今日、銀行は投資としてはけして魅力あるものではない。投資した1ル-ブル当たり銀行に投資するより儲けの多い、他の経済部門が存在する。
98年8月後、ロシアの製造業はチャンスを得た。そしてそうした企業はそのチャンスを生かし、輸入業者を押しのけ、また多くの部門において市場のうまい汁を横取りしたのである。昨年の生産高は9%増であり、部門によっては30〜45%増にもなった。現在のシステムでは銀行の役割はきわめて控えめなものである。銀行はまさにあるべき姿、つまり投機で儲けることのできない信用機関に次第になりつつある。しかも銀行は以前とは異なるやり方で融資している。彼らは借主にたいしきわめて選別的な対応しているし、その上はるかに厳しくなった法的制限により、別のやり方をとることができないでいる。これは融資業務だけでなく、業務全体においてである。
どの経済部門も現在では銀行のような全面的な規制をうけていない。銀行は銀行間でさえもきわめて慎重に業務をしている。銀行機関の総資本額も急速に増加している。絶対数値ではそれは国際的な基準からはかなり離れたものだが、相対的には(個別のマクロ経済指数は具体的な国にたいしてのみ検討可能である)ロシアの銀行機関は世界の基準を十分満たすものである。例えば、平均資本率のような国際指数はロシアの銀行機関では約11%であり、銀行によってはそれをはるかに上回るが、それにたいし多くの外国の銀行では資本率8%で、一般にはそれよりも少ない。中央銀行の金外貨準備高は記録的水準300億ドルに近いものである。したがって、ロシアにおける全面的な銀行危機の話は時期尚早のように思える。
今年、銀行危機を予想できるか。こうした問いにたいし、“MFC”銀行景況分析部責任者ワレリ・ペトロフは次のように述べている。
「今日銀行に大きな影響を与えうるネガテイブなマクロ経済要因は客観的に存在しています。銀行業務の一部はすでに実質収益マイナスとなっています。例えば、短期国債投資分です。流通資金が過剰な条件で利益をもたらす融資対象のないことは、銀行収益増加の大きな障害になるかもしれませんが、おそらくシステム全体の危機要因にはならないでしょう。次の問題ははるかに深刻です。対外債務返済用に内国債市場を利用すると、国債市場はまちがいなく収益を急激に上げて反応するでしょう。この分野の軽率な行動は最悪の市場動向を再び引き起こしかねない(1996年〜1998年の“バブル”を彷彿させる)、そうしたことに容易になりえます」
“アフトバンク”出納部長オレグ・サモフバロフの話:
「銀行危機を予言する人は一般に、石油価格下落シナリオを根拠としている。だがこの価格下落は石油最大需要国で米国と西側諸国の経済に大規模な後退がある場合に限りありうることである。景気後退のシナリオは今のところ現実味がない。特に先月の期間だけでも公定歩合1%を敢然と引き下げた米国FRBの行動を考えるとなおさらである。
“ソビンバンク”頭取キリレンコ:
「ロシアの銀行機関は、その資本比率は不十分であり、銀行商品も比較的少なく、多くの部門で法規制のないことで被害をうけているので、当然のこと危機の萌芽を孕んでいる。現在、主な構造的リスクの一つは貸方と借方の不一致(ル−ブル借方がほとんど伸びていないのにル−ブル貸方増加している)と個人預金市場の独占化である。米国経済の場合と同様、国の通貨当局は“ソフトランデイング”できる一連を対策を予めとるべきである。余剰流動資金の回収や個人預金市場を競争させる条件をつくることである。ロシアの通貨当局が必要な努力をすれば、時間的に先送りし急激な形の危機は避けることができるだろう。」
“ソドビジネスバンク”頭取イ−ゴリ・ザハロフ:
「深刻な銀行危機は国策に何らかの激変あった場合に限り引き起こされる可能性があります。債務デフォルト、ル−ブル相場の急変などです。また税務機関や中央銀行その他管理機関の何らかの熟慮のない行動により銀行機関に一定の困難が生じるかもしれません。しかし、こうしたこはあまりありそうではありません。勿論、銀行によっては倒産する可能性も否定できません。しかし、私の考えではこれは危機ではないし、銀行機関の正常な発展だと思います」
“アヴァンガルド”銀行出納部長コンスタンチン・ズイリャノフ:
「近い中、すくなこともこの1年間、切迫した危機の前提条件は見られない。しかし、危機は必ずやってくるだろう。シナリオはこうなるかもしれない。米国経済の停滞は二三四半期連続して石油価格大幅下落を引き起こし、また発展途上国の市場(ラテンアメリカ、中国、ロシア)から資金の流出を引き起こすだろう。さらにもう1〜1.5四半期後西側の危機はロシアにも危機を誘発するだろう。一方ロシアは世界危機に対抗するためには、まだあまりにも弱すぎる。
ロシア開発銀行頭取セルゲイ・イワノフ:
「銀行自体が不快な出来事をもたらす可能性がある。必要量のル−ブル通貨不足と顧客獲得の日常的な競争により、多くの銀行は許容限度を超えた高リスクの融資方針を取らざるえなくなっている。例えば、流通商品を担保にかなり長期で膨大な貸付けをしている。こうした担保とると、銀行は時として借主の現実の財務状態の分析や、監査の定期的実施やその内容にしかるべき注意を払わないか、それともこうした監査をまったく無視し、顧客に定期報告を求めなくなる。こうした状況だからこそ、警戒心を抱かないわけにはいかない。一連の銀行にたいし、いくつかの大口融資未返済の情報は市場に深刻な懸念を引き起こす可能性があるし、その結果銀行から顧客預金が大量に引き出されるかもしれません。これは信用機関の借方勘定を崩壊させるだけでなく、将来全面的な銀行危機となる可能性があります」
昨年度は銀行資本の大幅な増加を特徴とし、その増加テンポは銀行によっては1999年の同指数を何倍も上回る。こうした傾向は先ず、ロシア銀行の基準に自行の数値を合わせようとする銀行の意向によるものであり、大部分はまさに自己資本額と結びついたものである。ところがこうした動機が唯一ではない。と言うのも自己資本率のような指数はロシアや世界の銀行機関では主要な基準はであるが、ロシアの銀行の大半は暴利をえてこれをクリアしている。ロシア銀行の基準ではこの数値は10%であるが、積極的に自己資本率を高めている銀行ではこの数値は数倍大きいものである。
部分的には銀行による自己真本増加は積極的融資によるものだが、これはまた借主一人当たりのリスク基準(25%以下)で“縛られて”おり、特に魅力的な融資計画にたいする投資が増えていることを証明しているのかもしれない。資本を増加させている、多くの銀行の資産主要部分は商業融資である。
多くの場合、自己資本の増加はほとんど、“イメ−ジ”行為を見ることができる。自己資本がより多くなることにより、銀行は国家プロジェクトで代理人となる資格をうる入札に参加できるようになるし、ロシア内の格付けにおいて、また推定される外国投資家の目により重く見られるかもしれない。
ところが最近ますます頻繁に、自己資本率の増加が“生きた金”でなく、“代用物”で行われている。人工的に資本を“ポンピング”するあらゆる手段が利用され、その一つの特徴は銀行資産中の割引手形の割合が大きいことである。
2月21日(水)
“米国にはロシアは必要なのだろうか”(完)
- “この問いの回答はおそらく、ワシントンも分からないだろう“-
(独立新聞、2月14日、ドミトリ・ゴルノスタエフ)
一昨日、ロシア代表と米国新首脳部の最初の直接会談の日取りが明らかになった。ロシア外務大臣イゴリ・イワノフと国務長官コリン・パウエルがカイロで24日会談する。正直なところ、この会談は若干遅れた。露米関係には山積する問題があるのだから、もう少し前に会ってもよいだろう。ところがおそらくワシントンは急ぐ必要性を認めていないだろう。それと言うのも、“対話は中断せず継続する必要がある”とモスクワがちょっと一言いったことにも、沈黙かそれとも、“ロシアの脅威”発言が米国高官から出てきただけであった。公平にきするため、パウエルはそうした人の中にはいなかったと言う必要はあるが、それでも........。
象徴的なのは、イワノフとパウエルの最初の会談が今日最も問題のある地域、近東で行われることだ。それと言うのも、露米関係の議題も劣らず問題のある事柄が多いからである。近東和平に関し、モスクワと米国の立場は多かれ少なかれ似たようなものであるにせよ、これが重要な政治問題で二国の利害が衝突しない、おそらく唯一の一致点であろう(ところで、ここには一定の条件付ではあるが、さらにアフガン紛争も加えることもできる)。二人の外交責任者が扱いことになる食い違い全体を眺めると、これはきわめて広範囲にわたる。地球的規模の挑戦である迎撃ミサイルや国際安全の脅威についての評価から、地域レベルの挑戦であるバルカン半島とペルシャ湾問題などにいたる。
国際舞台における米国新政府の当初の発言は今のところさほど大きなものではないが、その発言から他国にたいするホワイトハウスの警告をはっきりと読み取ることができる。米国の対外政策がはるかに厳しいものとなることだ。それもたんに厳しいだけではない。ジョ−ジ・ブッシュとその取り巻きのほとんど(周知のようにキングメ−カのことだが、だがブッシュの場合は対外政策に関し、これはいつになく真実に違いない)は想像可能なもの、想像を超えるもの、そうしたあらゆる危険から米国を防護しようと真剣に企てているにちがいない。ここでも彼らには全ての手段が正当なのである。クリントン時代、米国は自国の世界覇権主義を誇示するという要求を100%有利な作戦行動で満たしたが、テキサス出身の大統領の時代になると米国は、ある人物が自己の力と正当性に過信をもち、それ故に罰せられることがないと思い始めるときまって生まれる、そうしたリスクの大きさを深く考えもせずに、もっと冒険的な目論みに着手するつもりである。
先週、CIA長官ジョ−ジ・テネットは米国の国家安全にたいする脅威に関し、同局の評価を述べた。繰り返すが、この結論は新たなものではないが、しかしきわめて示唆的なものである。その結論とは、米国は脅威を避けることができず、いたるところであらゆる危険が待ち受けている、ということだ。そこでロシアもまたこうした危険性の中で、かなり控えめに評価されている。心にもないことを言うとはいえ、ロシア対外情報局が発表するかもしれない脅威の中に米国が、しかもレングリの“ブラックリスト”のロシアの地位よりかなり名誉ある地位できっと存在するだろう。けれども自国の親しいある国の脅威を公表した事実(しかし、ほぼ八年間続けて二人の大統領は人前でも舞台裏でも、家族ごとでも、単独でも親しくつき合っていた)は、けして二国関係のためにはならないだろう。
まあ、諜報機関だからこそ、脅威を見定め、国家首脳部の注意を向けさせる必要があるのだろう。だが米国首脳部でロシアの脅威について公然と発言する人間はテネット一人ではない。ブッシュの側近、国家安全顧問コンドリザ・ライスは、ロシアは潜在的脅威であり、しかも欧州諸国とっても米国にとっても直接的なものであると、考えている。イ−ゴリ・イワノフは、一体何がライス女史を不安にさせているのか、コリン・パウエル氏にたずねてみたいと発言している。しかしこれは説明なしでも分かるように思える。(まして、これに関しては正直なあるいはきわめて明瞭な説明は期待すべきではない)
例えば、新世紀における迎撃ミサイル防衛問題について米国新政府は懸念を抱く民主党とはことなり、迎撃ミサイル網の設置は必要だときわめて明瞭に考えている。その上、これはすでに仮説としてではなく、職務上断定的であってはならない人間、コリン・パウエルが公理として繰り返し発言している(少なくとも、テレビの前では)。
米国の攻撃の兆候は最早ロシアではなく、脅威の多い世界にたいし、ひっそりと増大している。最近の一例をあげてみると、先週初めジョ−ジ・ブッシュはペンタゴンにたいし約60億ドル追加予算を割り当てる意向だと発言している。
現在のロシア、その対外政策はブッシュの米国が自国の完全な安全を感じ取る上で多々ある障害の中、たった一つにすぎない。はるかに大きな危険はワシントンでは将来ありうるかもしれない東半球における、ロシアとインド、イラク、中国の同盟であると見なしている。さらに海の向こうでのこうした同盟形成の基本的な要素は、軍事技術、科学技術協力であると考えられ、それはわが国の国家予算に入る輸出収入のきわめて大きな部分であるとしている。つまり、ワシントンは人的交流以外のあらゆる分野でモスクワとこうした国々の関係発展を今後も出来る限り妨害しようとするだろう。
さらに共和党の米国は日常の主張にもかかわらず、その同盟国でない、反対に部分的あるいは全面的に米国の立場に同意しなく諸国の人権擁護に配慮することはまったくなるだろう。グシンスキ−事件についての声明が国務省高官の発言に基づき何度となく繰り返されていることも偶然ではない。
NATOの拡大も続くだろうし、まして近いうちに同機構の拡大“第二波”問題を解決しなければならないのでなおさらである。モスクワは、これに関し米国の意図はどのようなものか、直接尋ねるべきかもしれない。1997年、第一次東方拡大キャンペ−ン時、わが国は最低限にせよ少なくとも何らかの保障を口約束だけにせよ獲得していた。今はおそらく、これ自体問題になっていないだろう。だがこの問題は提起する必要がある。ロシアにNATO拡大の対応ができていれば(同機構拡大第二波は第一にバルト諸国であろうし、第二に迎撃ミサイル防衛網の設置を促進させることだろう)、それについて敵対者にも、自国の納税者にも発言できるだろう。
今のところワシントンからは事実上、反露発言だけが聞こえてくる(“我々は露米対話を継続する意向である”というお決まりの表現はカットすれば)。モスクワは公式にこうしたことにコメントしないわけにはいかないが、しかしおそらく最早あまり信用していない前向きな傾向だけを指摘し、論争は避けたいと思っている。
協調の場は無論存在するが、衝突の場のほうがさらに大きい。イワノフとパウエルは互いに何を語るだろうか。おそらくこれは具体的成果のない試験的な会談であり、基本的には分かっている立場の直接確認であろう。クレムリンでは、ホワイトハウスの新首脳となんとか話し合えると確信している。だがホワイトハウスのほうはおそらく、そうは思っていないだろう。こうした首脳部とクレムリンのほうから折り合いをつける必要があるのだろうか。
2月14日(水)
“戻ってくれば、何もかも許す”
- “ロシアの資本流出ついて、その感想“-
(イズヴェスチヤ、2月8日、アレクサンドル・リヴシツ)
大統領顧問アンドレイ・イルラリオノフは、2000年度ロシア資本の流出は1999年のレベルを超え、250億ドルに達したと最近発言した。元IMF専務理事ミッシェル・カムデシュは300億ドルとも言っている。もっと控えめな数値もある。だが総額はいずれにしても強烈である。これはパリ債権団と論争し興奮した2001年度返済額の約十倍である。“予算に触れずに返済したければ、資本の流出を減らしなさい”と言うが、どう答えていいのか、分からない。
多くのものは“盗み集めて、今度は隠匿している。警告する必要がある”と考えている。正しい。ただし、ほんの一部分である。これは全てがそう単純ではない。中央銀行、財務省、内務省、また経済協力開発機構、IMF、世界銀行などの公開資料を駆使し、若干この問題を解明してみる。
資本の持ち出しには国旗と同様に、三色に分類できる。黒、白、灰色(流出)である。“黒色”の持ち出しは、どうやら二重底のカバンを国境から運び出す密輸業者がやっているらしい。それ以上は止めておく。専門家ではない。
“白色”の資金を持ち出している者は全ての法律を守り、国家機関の許可を持ち、きちんと税金を支払っている。この資金の流れは元々きれいなもので、はっきりとした用途がある。持ち出し許可を出している中央銀行がこれは管理している。最近では年平均約20億ドルである。
たとえば、まさに白ロシアの融資も政府はこのように行動している。あるいはロシアで稼いだ利益を祖国に送金する外国の投資家の場合もそうである。彼らがその運命を不安がり、ただ資本を持ち出しているケ−スも事実ある。たった三ヶ月間(1997年11月から1998年1月まで)でわが国金融市場は25億ドル失ったこともある。ちなみに、1998年危機後、わが国に滞った資金の優先部分を財務省が解禁するや否や、今も流出している。無論不愉快だが、しかたがない。外国人はまったく合法的に自分の資金を自由に扱うことができる。旅行者、“運び屋”、移民を決めた人たちなど国外に金を持ち出している。
さらに海外で直接投資や証券投資をしているロシア企業がある。これはソ連時代からあったことである。本当のところ、設ける目的だけでなく、全世界に社会主義を普及させるためにも設立したのだ。しばしば返済する意向のない国に設立した。今でもそうなのである。したがって資産は多くあるが、利益はほとんどない。現在“ガスプロム”や多くの石油企業が投資している。勿論今では市場のやり方ではある。例えば“ルクオイル”が米国でガソリンスダンド網を買収したことや、東欧でも同様なプランがあることは有名である。鉄鋼会社もかなり積極的である。
こうした事業は企業にとっても、国にとってもメリットがある。海外に投資すれば、事業を効果的に打ち立てることができるし、これはすでに多国籍的な事業なのである。そして税金をもたらす。時には商品輸出をもたらしもする。海外での投資は徐々にロシアを政界経済に組み込んでゆく。こうしたことは、わが国が国際資本市場できちんとした地位についた後に起きてくるだろう。しかも、債務国としてではなく、投資国としてだが、そうしたレベルにはすでにあったが、現在はどこに向けてよいのか不明なのである。
ロシアの資本輸出企業は、世界の超大企業が敷いた道を進んでいる。投資を始めれば、つまり徐々に力がつき、世界の資本市場で競争できる力が身についてくる。今日“VR”が“シダンコ”の一部を買収しているが、明日は我々が買収するだろう。これは自然の流れであり、それにブレ−キをかけるべきでないし、それは促進すべきなのである。
開始するにあたって、例えば対応する法律を作る必要がある。将来、海外での投資で発生するリスクを保険保障する国家機構が必要になるだろう(こうした組織は他国には存在する)。規制は緩和するひつようがある。さもなければ“白色”の資金持ち出しが早速黒色なってしまう。そうしたことはすでに起こっている。認可を変更すべきである。おそらく対外投資はやはり中央銀行ではなく、何か他の機関が担当すべではないだろうか。ロシア企業の海外投資は資本の流出ではなく、りっぱな事業であると国民に分かるように説明する必要がある。強いて言うなら、国家の誇りの対象である。世界ではまさにそのように対応している。
わが国の企業はロシアの投資環境が悪いという理由により海外で投資しているわけではない。こうした企業は国内条件が改善されても、海外での投資を継続するだろう。と言うのは、多国籍事業が求めるからである。市場が突き動かすのである。例えば、米国では事業を発展させるあらゆる条件は存在するが、米国人は真っ先に国外投資をしている。時には資金を失うリスクはあるが、一路邁進している。はるかに困難な投資環境をもつ新しい市場を開拓している。家では何か物足りないのかもしれない。
このことは“白色”で持ち出されたロシア資本は非常事態に限って戻りうることを意味している。例えば、ある海外市場が破綻したり、それとも他国で国営化のおそれが出てきた場合である。十中八九、それは永遠に戻ってこないだろう。そのかわり、モスクワにある本社は利益を自由に使いことができる。そしてこうした金がロシアに戻らないとも限らない。
今のところ、“白色”の資本輸出はロシアから出てゆく資金の流れほんの一部である。資金流出の約90%は他の色、つまり“灰色”である。まさにこれこそ流出なのである。“灰色”資本流出の場合、法律はここでは完全には守られていない。例えば、企業は合法的に輸出するが、その後で事実上非合法に国外に稼いだ金を残しておく。もちろん、税法にも違反している。同じようなことが国家管理にも起きている。送金を専業としている企業は通常、輸出入業務と為替業務の認可をとっている。外見は合法的な行動である。だが実際は別の非合法のビジネスをしているのであり、中央銀行の許可を取らずに資金を送金している。何故に即刻逮捕できないのか。何故ならこうした行為を行うと企業は直ちに閉鎖してしまう。そして逮捕するものがいない。結局、“灰色”の金の出所が不明となる。それが犯罪の浸透を可能としている。
“灰色”資金の持ち出しは無論のこと、国家の弱点を示すものである。結局政府には法律全てを執行する力はないし、国の経済を管理する能力がないということになる。国の評判がそこなわれる。たしかに、“灰色”資金持ち出しの一部はマネ−洗浄に向けられる犯罪と関係している。海外に送金する機械にとっては、基本的にはその出所はどちらでもいい。そうした資金の流出が存在するかぎり、ロシアは海外からの本当の投資は期待できない。ロシア人自身が国外に資金を持ち出し、国内で保有することを恐れていることは、つまり彼らは自国政府をあまり信用していない、と外国人は見ている。そうであるならば、何故に我々は政府を信用せねばならないのか。
“灰色”持ち出しには別の側面も存在する。逃避した資金は金庫としての西側に蓄積される。何故なら、そこはより安全であり、銀行はより信頼できるし、税金も低い。後にその一部は流動資本となり、ロシアの輸入資金として利用される。また一部は外国からの投資や融資の形で直接戻ってくる。わが国にたいする大規模投資家リストには、キプロス、ジブラルタル、アンチル諸島その他国外に記載されていることには訳がある。ちなみにまさにこうした資金が国際市場に現れ、また民営化に関与したのである。そして残った部分の金だけが、飲食費や遊興費、あるいは別荘などに使われる。
“灰色”資金の大部分は出所からみて犯罪ではない。例えば、ロシアの大企業が国外に資金を持ち出し、後に国内に戻し、民営化入札に参加した例は有名である。こうした資金に麻薬取引とか銀行強盗などの痕跡はあり得ない。
いずれにしても、メカニズムが半合法的なのである。おそらく一部は資金洗浄なのだろう。新しいロシアの株主を作り出しているが、それは所有者が秘密の不可解な外国の企業である。こうしたことはわが国経済を暗いものにし、より不透明なものにする。要するに、ダ−テイなもの映る。
しかし、それは機能している。輸入品を運んでくる。僅かとは言え、投資であり、国庫の収入にもなっている。しかし実際上、不払い、内金、バ−タ取引、故意の倒産で仕事をしているのとほとんど同じである。これが現実のロシアの経済なのだ。改革の結果もロシア的である。それは本当のことを言うと、正しい方向に進んだが、不当な損失を被り、結局何もかも最後まで出来なくなる、そのように今でも行われている。
こうした事態の改善はきわめて慎重にすべきかもしれない。おそらくこうした“灰色”持ち出しメカニズムの破壊は可能だろう。ただし、経済が悪化しないという前提である。さもなければ、割に合わないものだ。たしかに完全とか合法的とかいうものでない、つまりわが国の不完全で半合法的な経済が敬意に値するもの、すなわち高成長、優れた収支バランス、赤字のない予算、中央銀行の記録的な金外貨準備高をもたらしたのである。
“灰色”資金の持ち出しは約9年前に始まった。ちょうど対外貿易が自由化された直後である。際限のない自由が急速に蔓延した。ソ連時代の外貨独占も瞬く間に崩壊した。ところが、優れた法律も有効な管理システムも今日まで存在しない。90年代始めのことを今さらどう言ったらいいのだろうか。
当時西側はわが国の金を黙って受け取っていたことは、たしかに面白い。汚職や資金洗浄についていかなる非難もなかったし、いかなる新聞キャンペ−ンもいかなる教えもなかった。IMFでさえ稀にしかこうしたことについて説教しなかった。資本の自由な流動への迅速な移行については頻繁に賞賛していた。おそらく、金を貰うのは常に快いせいかもしれない。さらに資金洗浄については、わが国はけして過去も現在も世界のトップクラスではない。国連の資料によると、毎年世界で約1兆ドル洗浄されている。当然、膨大な資金を洗浄している豊かな国が主役である。ロシアはより貧困であり、それは0.1%以下である。ところがわが国こそが何故か非難されている。
わが国を悪徳金融の中心人物にしようとしている。こうしたことは1999年に始まったことだが、その年の資本の流出は前年度をまったく同じであった。問題はロシアでも米国でも選挙が差し迫っていただけでなく、両国民の中にかなり広まっている買収カ-ドを切りたいと政治家が願っていることにもある。決定的役割を演じたのが1998年危機であった。わが国の外国取引先が突然目覚め、騙されたことに気づいた。だが誰が騙したのか。改革派だ。彼らはかなり寛容にあつかわれ、それほど好まれていた。西側は狼狽し、腹を立て、不信を抱きロシアとの関係は悪化した。それはいまでも続いている。“大デフォルト”がなければ、“ニュ−ヨ−ク銀行”の件にも誹謗中傷はなかったろう。
そこで90年代の始めに戻ってみる。1992年〜1993年、外貨売上で未返済分は、輸出の50%にもなる。まさにそのようなものが、当時の資本流出の基本メカニズムであった。それはいとも簡単なやり方で始まった。外国の輸入企業は突然、支払いを遅らせ始めたし、さもなければ送金を全面的に中止した。わが国輸出業者は手紙を送り、要求し、訴訟をおこしたが、何故か常にうまくいかなかった。一方ロシアの監督機関に訊ねると、不可抗力、取引先の不誠実、ロシア国外にも及んだ不払い危機などをあげた。外貨売上代金は永遠に他国に留まったままである。その後、そうした国にロシアの輸出企業は引越しするようになった。これもまた永遠にである。一緒に息子(兄弟、義理の父、名付け親など)も連れてゆき、実際にまさに悪質の滞納者となってしまった。統計資料を見ると、90年代中頃ロシア輸出企業にたいする外国企業の債務は少なくとも毎年50億ル-ブルづつ増加していた。当時の為替レ−トで計算すると、約10億ドル近くにもなる。だがこれは“灰色”資金持ち出しル−トのほんの一つである。
戻ってこないメカニズムはきちんと何年も機能した。だが問題を理解し、その解決を試みた人はほとんどいなかった。ほかでもない私はこのことに取り組んだことがあった。徒労であった。
90年代末頃になると、主に中央銀行の努力で戻ってこない確率は5%まで低下した。現在ではさらに小さくなっている。しかし流出は以前どおりであるし、縮小していない。それと言うのも、国内に外国に送金する一大産業が形成されている。小規模なものではない。現在ロシアには対外業務に関わっている企業は約70万社ある。しかし、勿論全ての企業が資金移動を専門としているわけではない。しかし多く。おそらくこうした事をしているのは数十万の人だろう。こうした経済部門はダイナミックな動きをとり、それに反対する政府の行動にたいし、新たな資金流出方法で対応している。
外貨売上金が戻ってこないことの他に、例えば輸出契約の中途破棄が行われている。納入を止めれば、それで終わりである。こうした行為は違約金対象である。ところが資金持ち出しを目論む者にとってこれこそが必要なのである。違約金を喜んで支払う。その上、多ければ多いほど良い。実際誰も輸出などしようとしていない。違約金の形で資金が国外に去り、そこに滞留する。
さらにもっと簡単なやり方は、輸入の前払いである。こうした場合、輸入は架空であり、どのような品物もロシアに入ってこない。こうした支払いの25%は、国外に送金するためにだけ設立された会社が行っている。そしてすぐに閉鎖する。輸出入価格や架空のコンサルタントサ-ビス代金、法外な融資利子などを操作して資金を持ち出す。こうしたことはどうしたらいいのか。
“灰色”資金は主に貿易取引を通して流れる。少なくとも二名の関与者がいる。架空の輸入取引で資金が持ち出される場合、それに関与するのはロシアの架空輸入業者だけではない。仮にモスクワから電話やファクスで数日間設立されたものであるにせよ、必ず架空の外国輸出業者が存在する。そうした会社なしにロシアから資金は流出できないだろう。
結局法律や海外での管理システムにおいては、こうした会社はまったく自由に行動することができる。実際こうした会社にはあやしい出所のロシア資金を自社の口座で受け取る権利がある。実際にはいかなる輸入も、輸出品納入の中断もコンサルタントサ-ビスなどもないことを明らかに知りつつも、そうした会社と資金取引をしている。そしてこうしたことは全て嘘であり、資金持ち出しのカモフラ−ジュであることも知っている。
ロシアから(どの国でも同じだが)資金の持ち出しは、たんに国内的な問題ではない。単独ではこうした問題には対処できない。これは国際問題なのだ。この解決は共同でのみ可能である。資金流出問題に関し、わが国に課された問題について、外国政府や管理機関、OECD、IMF、世界銀行も考えるべきではないだろうか。当面の目標は灰色資金を犯罪から守る、そうした形になるかもしれない。遠い将来、国際社会が国外問題を処理するようになれば、灰色資金持ち出しそのものが過去のものとなるだろう。そして選別も容易になる。黒色か白色だけである。黒色資金にはきちんと対処する必要がある。密輸は国と共同で行われたし、汚職同様その根絶は簡単ではない。白色資金は全面的に支持する必要があるだろう。
国外がある限り、灰色資金の持ち出しは一掃しがたい。管理する国家機関の能力を上回るパワ−で資金は持ちだされる。言えるとすれば、その縮小だけである。多くのものは、国外に持ち出すより、ロシアに預金するほうにメリットがある、そのようにすべきだと考えている。だがわが国は合法的な経済活動に関し、強力で安定し、支払能力のある国にする必要がある。そうなれば、灰色の構図は自然と消えて行くだろう。そこに真理の一端がある。ただいつまで待てばよいのか分からない。ロシアから何処に行くか不明な膨大な資金は惜しいものだ。
投資環境が改善されているうちは、有効な手立てをうてるかもしれない。一つはわが国が単独でなしうることだが、その他は外国や国際機関との協力が必要である。例えば、輸出入分野で業務している数十万事務所の監督を厳しくすべきであろう。窒息させてはいけない。目的は別であり、送金専業の一時凌ぎの会社をより少なくすることであり、その他の会社がロシアは居心地が悪いと感じるようにすることである。そして最終的には三つの中から一つを選択するようにすることである。定款記載のことを業務とするか、それとも白色の資金輸出をするか、あるいはこの市場から去るかである。中央銀行はロシアの銀行と国外にある銀行の関係を若干厳しくし監督したらよい。税法を修正すれば、架空輸入を大幅に制限できるだろう。
わが国家機関はこうした手段をよくしっている。無論、その行使は厄介なことで、有難いものではないし、憂鬱でさえある。と言うも、こうした長距離競争でわが国政府はいままで勝ったことがない。資金流出は増えつづける。それでも多少は望みがある。たしか、外貨売上金の未返還と架空輸入はうまく大幅に縮小できたはずだ。だからその気さえあれば、可能ではないか。
国際協力には大きな可能性がある。今のところ、西側は資金の流出と洗浄でわが国を批判しているだけである。だがロシアに問題あるのはその半分だけではないか。もう半分は彼らの側にある。解決したければ、最早説教から行動に移る時期だ。ましてや、ロシアの会社が域外ビジネスを発明したわけではない。最近までロシア語にはそうした言葉はなかった。域外経済は、今日しでかしているのはロシアだと非難している国が作り出したものだ。わが国の方はそこに関与したのは90年代の初めである。それもあらゆるものに飢え、執拗で悪意のある新参者として参加したのである。かつては西側の会社もそのようであった。その後変化し、時に域外業者と関係することを恥じたりしている。彼らにとって何よりも重要なのは評判であるが、わが国のほうは金である。
域外事業行為の問題は多国籍的な性格がある。ロシアばかりか、わが国の取引先も不安にさせるものである。主にこの問題はOECDが取り組んでいる。成果は今のところない。成果が出れば、“八カ国”財相と中央銀行の首脳が会ってこの問題を検討すべきであろう。もし他ならぬわが国代表がこうしたテ-マを持ち出すのであれば、たいしたものである。その後G8サミットで提起されるかもしれない。2001年にイタリアでなければ、2002年カナダである。
ロシア資本流出に懸念している国と共同政府委員会の設置には何の障害もない。銀行業務と為替業務を規制している法律に齟齬がある。それを近づけるようにすべきである。情報交換程度にせよ、税務機関と司法機関の協力は欠かせない。さもなければ灰色の流れの中に犯罪資金が存在することになる。1999年にもわが国は不法手段で得た収入の合法化防止に関する法律を十分制定する機会はあった。国会から流れてきた約束をよく覚えている。“選挙前の表決するから、問題はない”。選挙は終わった。そして今日までこの法律はない。(中断)
2月8日(木)
“物置をあさって”(完)
- “ロシア政府、パリ債権団向け追加資金の見つけ出し“-
(イズヴェスチヤ、2月6日、エレナ・コロプ)
パリ債権団に返済せねばならぬ、この考えを受け入れた政府は追加資金見つけ出しを熱に浮かされたように開始した。昨日ミハイル・カシヤノフ首相は財務省にたいし、2月7日までに2001年度予算修正法案を作るように指示した。一方財務省は訪ロ中のミッションと見込みだが、それにたいし合意しようとしている。
予算修正は2月13日の臨時閣議で検討されると、首相は述べた。そこでの問題は追加収入の“確認”とその主な資金源となるだろう。カシヤノフ首相が財務省に目標とするよう指示した資金源は全部で三箇所である。第一は徴税状態の改善である。首相によると、税務機関の努力だけでも、発生した予算不足を解消することができた。1月、予算実施は多くの地域での厳寒とそれによる追加支出のため、ほとんど麻痺していまった。第二の追加収入源となるのは、国家資産の計画以上の民営化である。しかしここでは政府の権限が、民営化企業リストも株式の規模も承認する国会により制限されている。
追加資金のもう一つの可能性を、カシヤノフ首相は国内市場での借り入れと結びつけている。ホワイトハウスが本紙に明かしたところでは、政府は確保したが受け取っていない西側融資により出来た予算の収入の穴をそれで埋めるつもりらしい。それにもかかわらず、本紙情報筋によると、政府はいかなる場合でも、中央銀行から融資を受けないだろう。というのも、“これはあらゆる点で間違いだからだ”。
しかし、国内借款というカシヤノフ首相の発言は、財務省にとってはあらゆる点から見て、予想外のものあった。首相が財務大臣クウドリンに指示した時、次官ベラ・ズラトキスが財務省は2001年度国内市場で積極的に借款する意向はないし、“我々の皇后は予算法の範囲内もので、これはきわめて保守的なものだ”と発言した。
実際、後で財務省は本紙にたいし、次官はたんに“まだ事情がわからない”だけで、“以前の立場”を述べただけだと、説明した。新しい立場とはどんなものかと問うと、相手は返事に窮し、“構想はまだ出来上がっていない”と答えた。
財務省が首相の緊急指示を受けたのが、IMFミッションとの交渉の真っ最中であった。前日、IMF首脳はロシアのマクロ経済状況は好調が継続しており、同国は外国の債権者にたいしその義務を履行できると、再度念を押した。こうした点からして、今回のIMFミッション訪ロの結果は、事実上予定されていたことである。昨日IMF代表団長ジェラル・ベランジェとの会談で、財務大臣アレクセイ・クウドリンは、“2001年度だけでなく、2002年〜2003年の展望も考慮した”協力プログラムを検討するため、再度ミッションを派遣するように同氏に要請した。西側債権者との交渉の全責任を負っている大臣の論理は分かる。今政府がパリ債権団にたいし、どうにかこうにかして30億ドルをかき集めれば、スケジュ−ルでは二年後の180億ドルの返済がはるかに困難になるからである。
2月7日(水)
“3月26日、ロシア政府人事刷新”(完)
- “退陣予定者は既にチェック済み、政治家要人の交代シナリオ、急ピッチに用意“-
(独立新聞、1月31日、マリナ・ヴォルコヴァ)
3月26日、ウラジ−ミル・プ-チンが大統領になって一周年になる。本紙の多くの取材源予測では、この日プ-チン大統領は自前の人事作りで祝すかもしれない。これまでほんの少数の人が公式には政権を代表していた。三月末から五月の始めにかけ、本紙取材源は人事刷新が行われ、大統領府も政府の要人事実上全ての交代あるかもしれないと予想している。内閣と大統領府の緊急の総辞職を裏付けるはっきりとした論拠は実際にはない。税制改革にブレ−キがかかったのだろうか。例えば政治と異なり、経済では性急な成果は期待できない。今日まで“ロシア統一電力”社改革の戦略が作られていない。また大統領顧問アンドレイ・イルラリオノフと電力で国内最大実力者アナトリ・チュバイスの公然の論争は、容易でない問題を慎重に検討し、そして観念の上では誤りをおかさずにすむ改革戦略をさらにより良く仕上げるため、首相と内閣全体の仕事範囲を拡大しているだけである。パリ債権団にたいする債務に関し、直ちに意思統一できなかったのだろうか。つまりこれは戦術問題だ。債権者と若干勝負しようと決めたのに、返済せずにすむ破廉恥な望みがあるなら、何故に一度に返済すべきなのか。各知事に任期三期、人によって四期も与えたのか。だからこそ政治改革は政治的だと言われるし、それと言うのも改革は強引には進められていないし、曲がった線のようなもので、大幅に一歩前進、小幅に二歩後退である。結局のところ、内閣や大統領府の総辞職はすでに何度となく言われてはいるが、これは大統領の重要な政治手段であり、特別な必要なしにその行使は危険である。突然新しい人たちが専門的な意味で古い人たちより出来が悪いと分かったら、また更迭するのか。いずれにしても、政治の安定は高くつくし、その上不必要な憶測そのものが膨れ上がるものである。
こうした論拠は全て道理がないどころか、政府も大統領府も黙らせる十分な根拠でもある。ただし、プ-チン本人がこの論理を支持する場合にかぎる。とは言え、大統領の合理主義は有名であり、事実上政府のどの交代も純粋に客観的な理由によるものでないというこれまでの経験通りに今回もなるかもしれない。あらゆる常識的判断の中できわめて有力な一つの論拠となりうるのは、今日まで大統領には国の主要ポストを占める自前のグル-プがない。現政府及び大統領府のこの一年、共同作業で蓄積されないわけがない個々の問題の解決方法や未解決にたいする不満は、人事刷新のただ表面上の口実にすぎないだろう。
何故にプ-チンはこれまで人事異動を行わなかったのか、まさにそうした問いは関心の惹くところである。昨年の出来事にさっと触れてみると、少なくとも四つのケ-スでは辞任は避けられなかった。一つは最高検が、臆面もなく実業家に“示談金”を要求した手紙を書き、公然とゆすりをしようとした時のことである(グシンスキ−関し、ずさんな行動については言うに及ばない)。
それでも検事総長は辞任しなかった。第二は“クルスク”号沈没事故の時である。大統領にたいし不十分な情報伝達と軍人の余りにも不適切な状況判断は本来辞任すべきであるのに、国防大臣と海軍総司令官の即刻辞任の理由とはならなかった。第三は株式と引き換えにグシンスキ-に自由を保障し、報道出版省大臣ミハイル・レシンが署名した“ガスプロム-メデイア”と“モスト”のいわゆるNO.6合意書が公表された時である。政府内のあだ名では“連邦公証人”だがそのポストを確保し、大臣を正当化したい幻想が見え隠れする釈明があり、それによると彼は公人としてではなく人間としてこの合意書に署名したとしているが、それならば辞職に値するには官吏は何をすべきなのか、そうした疑問が出てくる。第四は“統一電力”会社にたいするチュバイスとイルラリオノフの争いが文書偽造の公然のスキャンダルとなった時である。ある者か、それとも他の者か、しずれにしても誰かそのポストを失っていたはずであった。
こうした例を拠り所としても、大統領ははっきりとした必要性によりある人々と決別したがらないというのであれば、大統領は何かで縛られているという印象が生まれる。この人々はかけがえのないとしているが、きわめて仮定的なことであり、彼らとプ-チンとの結びつきがきわめて疑わしい。結局のところ、1999年12月クレムリンへのプ-チンの幸運な引越し条件の一つは、新国家元首の最初の命令に記述されているエリツインとその家族の保障ばかりか、エリツイン一派の大半を残すことであった、こうした可能性も排除できない。そしてこの一年プ-チンが、若干の政治家が小さな声で定期的に口にしている元エリツイン側近の誰にも触れないと約束、そうしたいかなる紳士協定がなかったとしても、政府を早急の改造すれば不必要な人物は辞めてもらい、“自前”の人間と交替する格好のきっかけであり、自前のグル-プを持ちたいという正常な政治家の正常な願望を実現できる。省庁数の縮小、つまり職位としての副大臣の廃止や現在五つある椅子をたった一つにする、そうした大統領府の方針をとれば(これに関し最終的決定はまだない)、現政府のきわめて多くの者は新内閣では席がないかもしれない。たとえば二つの組織を例にとってみる。交通省と運輸省である。かならずこのようにはっきりとダブっているものは、廃止されるだろう。また財務省と税務省であるが、すでにこれは一つに合併されるかもしれないと、話は出ている。
しかし最大なことは、政府を組織改革すれば、現在の内閣を総辞職させなくとも、首相も含め、閣僚の大半を交替させるお膳立てができる。“政府は対処できない”、“国に新たな課題が持ち上がり、その課題もさらに考えだすにしても、それは新しい人々が解決すべきである”、といったことは言うに及ばない。内閣の仕事効率を高めるため改革を行うのであり、新内閣に入れなかった者には、ある者は大統領の希望にそって、ある者は本人の希望にそって、ある者は口頭で、またある者は悪くないポストにつけ、必ず感謝すると言えばそれで十分だし、内閣総辞職の政治方針は維持される。いずれにしてもこの組織改革は、この組織改革は国内の政治勢力図を完全に変更してしまうはずだ。
真っ先に閣僚ポストを失うはずの者の中にミハイル・カシヤノフ首相(若干の者は彼を中央銀行総裁のポストに異動させようと心に決めている)、税務大臣ゲンナジイ・ブカエフ、内務大臣ウラジ−ミル・ルシャイロ、国防大臣イ−ゴル・セルゲエエフ、運輸大臣ニコライ・アクセネンコ、改革された“ロシア兵器輸出”公団責任者アンドレイ・ベリヤニコフ、中央銀行総裁ヴィクトル・ゲラシェンコ、検事総長ウラジ-ミル・ウスチノフ、右派懐柔に差し向けられるはずの“ロシア統一電力”社責任者アナトリ・チュバイスが含まれる。
いつものことだが、最も厄介な問題は首相である。新首相のお見合いが年中行われていたことは、誰しも知っていることである。首相ポストの試験で一位合格して最もはっきりと公然と賞賛されたのが、今後10年間のロシア経済の将来を予測するという大統領命令を引き受けたゲルマン・グレフである。実際、経済プログラムは可もなく不可もないものであった。アンドレイ・イルラリオノフも公開試験にはパスしたが、無論膨大な理論知識により裏打ちされているとはいえ、あらゆる経済問題に関し、独特でしばしば根拠のない過激な意見や、論争スタイルがかならずしも礼儀正しくないことがそのチャンスをきわめて低いものにしている。首相候補は各知事に中にも求めてみた。グレフに代わる案としては、ハバロフスク地方知事ヴィクトル・イシャエフが思い浮かんだ。しかし、彼は現内閣に対峙することを恐れ、またいわゆる自国経済プログラムで政府と半ば共産党の考えに似たものを国会審理で代表しているので、役目をはたせない。そこで似たような試みをモスクワ市長ユ−リ・ルシコフがやっている。問題はただ一点、これについて誰も彼に求めていないし、また彼はクレムリンの雰囲気を微妙に察知し、自分のイニシアで国中の経済にとりかかっている。
そうしたわけで、可能性のある首相候補名簿はさほど大きなものではない。従来どおり、最も確率の高い首相候補の一人は安全会議書記セルゲイ・イワノフと見られている。だが、首相に元軍警察官僚をつけたいと、大統領に希望があるかどうか、まったく分からない。本紙の多くの情報筋は、プ-チンはそれでも、軍警察官僚より経済人を好むという意見に傾いている。まして、セルゲイ・イワノフにはホワイトハウスに急いで入る理由はない。頻繁に揺れる首相の椅子と比べれば、安全会議責任者のポストは地上の天国である。実際上セルゲイ・イワノフは出来事にたいしては最小の責任で国家のあらゆる問題に介入する力があり、現在副首相の役割をしている。結局のところ彼本人は大統領がその選択を誰か別の人に向けることに強い関心があるのだが、勿論“党”が“必要だ”と言えば、“コムソモ−ル”は“イエス”と答えるほかない、そうしたケ−スもないとも限らない。
予想されるミハイル・カシヤノフ首相交代と絡んでしばしば出てくる名前のエコノミストの中には、現在の副首相アレクセイ・クウドリンはいない。チュバイスとの関係があまりにも密接であり、石油業者との軋轢があり、政府はパリ債権団とうまく合意できるので、2000年度予算に返済額を組み込む必要はないと大統領に報告したことが、こうした事態を招いた。これに関し本紙情報筋によるとこの一年本格的に踊り出て、最近では政府指導者として立派な素質を見せている、既に何度か触れているゲルマン・グレフの可能性はきわめて高く評価されている。一見してばかげた話に思えようとも、本紙情報筋は内心、セルゲイ・キリエンコがきわめて高い確率で首相につくと考えている。1998年デフォルトという“良くない経歴”はあるが、その障害にならない。第一にほぼ三年も経てばそれぞれの政治家の大罪を政府も国民も許すという法則がこの十年間に事実上出来上がっている(例えば、アナトリ・チュバイスやヴィクトル・ゲラシェンコ)。第二に、クレムリン筋の見解だと、キリエンコはたんに積極的だけでなく、彼の管区が一筋縄にいかないにもかかわらず、全権代表としても悪くはない。ある情報だと、大統領本人も彼にきわめて満足しているらしい。第三に、リベラル改革をするため、現在多くのことを進んで放棄できるぐらい国の将来を信じる必要があるし、別の言い方をすれば、国のリベラル実験をするためには、幾分祖国を憎悪する必要がある。実験への執着に関しては、プリヴォルシュキ−管区の例だけでさえも、キリエンコの右に出るものはいない。
一般に本紙情報筋の間では全権代表は控えの人材として高く評価されている。その中の多くのものは、大統領府長官候補としてゲオルギイ・ポルタフチェンコとヴィクトル・チェルケソフの名を上げている。しかし本紙情報筋はアレクサンドル・ヴォロシンに代わるべきものとしては現在のFSB長官ニコライ・パトルシェフのほうを選択している。当然のことだが、大統領府長官の辞任はその多くの次官も交替することになる。とは言え、大統領府自体には引越しの雰囲気は見られない。そして現在のスタッフはそれなりにユニ−クである。その大半はボリス・エリツイン時代に作られたものだ。しかし新大統領が来たという変化した状況下では、大統領府ではまったく別人が執務している印象が出るほど、以前とは異なる作業スタイルを見せるようになった。エリツインの弾劾、プリマコフの辞任、“統一”の結成、プ−チン本人の政界登場といういわゆる“反則”すれすれのゲ−ムをせめて例にあげることができる。さもなければ、エリツイン本人の任期前の辞任との連携ゲ−ムを例にあげることができる。こうしたことは全て前大統領の特性である。昨年になると、血中のアドレナリン濃度を上昇させるようなことは何も見られなかった。こうしたことは最早プ−チンのスタイルなのだ。新大統領の行動は予め細かく計算し尽くされたもので、その結果が先の見通しがたったものか、それとも成功するとプログラミングされた場合にのみ行われる。例とすれば、全権代表の登場と知事が早速同意した連邦改革である。大統領府でも、知事を“説き伏せた”ことについて、“我々は買収、恐喝、殺害すると脅した”と好んでジョ−クと飛ばしていた。いずれにしても、現在の大統領府はやはりエリツインのスタッフである。そして多くの専門家はまさにそうした欠陥を遅かれ早かれプ−チンが交替させたくなる理由のリストに入れている。
どうなるか分からないが、しかし本紙情報筋の人事予想全体から二つの構図が浮き彫りになる。一つの構図では、大統領府長官も首相も軍警察関係者となる。もう一つの構図では、大統領府長官は軍警察関係、首相はリベラルエコノミストがなる。したがって、昨年ダボス会議で効果的に発せられた「ミスタ−プ−チンとは何者だ」という問いの最終回答が近いうちに出てくるだろう。結局のところ、大統領が権力につける人々、それこそまさに戦略そのものではないか。
2月1日(木)
“漂着”(完)
- “ロシアは困難を根拠に債務返済しない。ところが“パリ債権団にたいする債務”返済に向けられる資金の一部は横領され、個人口座に消え去った“-
(モスコフスキイエ・ノ−ヴォスチ、2001年23〜29号、アンドレイ・ソトニク)
うしたことに国際資金調査により回答が出てくるだろうか。何故にロシアは今日までこの調査に参加していないのか。ピエ−ル・ファリコン関与の横領15億ドルをロシアは“パリ債権団にたいする債務”として負担するかもしれない。
武器不法売買に関与したピエ−ル・ファリコンは周知のように昨年12月1日から取り調べ監房にいる。一方、彼と彼の仲間のいんちき仕事を巡るスキャンダルは進行中である。本紙が明らかにしたとことでは、ミッテラン事件の“ロシア側の足跡”は武器の売買だけではない。ピエ−ル・ファリコンは“ファルコン・オイル”社経由のアンゴラ石油取引やソ連向け漁船建造と関連した資金投機の中心人物かもしれない。彼が積極的に動いたことにより、旧ソ連とロシアの膨大な資金が何の役にも立たないところに消え去り、その結果パリ債権団にたいする債務に加算された。順を追って説明する。
借入金はどのように消え去ったか
80年代終わり、旧ソ連漁業省は政府保証で国内の漁船を刷新するため、国際融資を受けた。融資金は“祖国の金庫”に入らず、直接国外の造船会社に入った。この資金管理は“ルイブコムフロ-ト”社(ソ連・英国合弁企業)に一任されていた。この会社の発起人は全ソ独立採算公団“ソフルイブフロ−ト”と外国会社“ファルコン・シッピング”であった。スペイン、ドイツ、英国の一連の銀行がこの合弁企業用に信用口座を設けた。受け取った融資金は直ちに“ルイブコムフロ-ト”社から外会社“ベルゲン”、“ピタゴラス”、“ライヴェル”などに送金された。発注では数年間に、50隻の漁船と12隻の輸送船を建造するはずであった。建造された船舶は最初ロシアの傭船会社に“魚と船を引き換えに渡され、借入金返済後その所有物となるはずであった。この計画価格の20%を”Moscow Narodny Bank”(ロンドン)が融資し、80%はスペインの”Banco Hispano Americano“が融資した。ところが91年、突然ソ連邦が消えた。そこで融資金はどうなったのか。
1993年中頃からスペイン銀行の融資保証はパリ債権団枠内のロシア債務に切り替えられた。まさにこの年に“ルイブコムフロ-ト”社資本金のうちロシアの出資比率が何故か34.6%まで減少した。さらにこの部分も再手続きされている。現在この部分は直接ではなく上記の“ファルコン・シッピング”社経由で国家資産省の管轄となった。その後建造された船舶は無論のこと、謎のごとく消え去り、30隻以上ロシア国外で合弁会社に売却された。金はどこに行ったのか、ロシア政府は知らない。(この事件は内務省経済犯対策本部が担当している)今日現在、債務(利子と違約金を含め)15億ドル以上である。
金は沈まない
しかしこれだけではない。記憶にあると思うが、全部で62隻建造され、30隻は“売り切れ”たが、あと32隻の残っている。その運命も悲惨なものだ。2000年12月、韓国の釜山港である外国会社の訴訟で“ルイブコムフロ-ト”社所有の9隻が差し押さえられた。ところがさらに23隻が海洋を航海し、誰かに安定した収入をもたらしているが、但しロシアの国庫ではない。
この“漁業”問題について若干別な点の詳細にも注目してみたい。ロシア内務省経済犯対策本部は“ルイブコムフロ-ト”社のロシア側の説をきちんと検討し、国際融資された各企業とこのプロジェクトに融資した銀行との間に合弁会社の経営陣が完全な仲介組織網を築き上げた、ときわめて筋の通ったことを言っている。さらにかなり根拠ある説が存在する。それによると“鏡の向こう”に消えた資産の中にはナンビア、アンゴラ、モ−リタニアその他アフリカ諸国、南米の数十の水産工場もある。おそらくこれらの工場はかつて旧ソ連漁業省が受け取ったまさのその融資金と関係あるにちがいない。この裏づけとして“漁業図”と関係する“マネ−洗浄化”の容疑者を取り調べたカナダ警察の調査結果を見ればいい。確信をもって言えることは、この水産業の収入はどこかに消え去り、それはパリ債権団にたいするロシア債務返済以外の場所である。
最後にさらに一つの事実。少し前筆者の訴訟であるオ-ストリア詐欺師の裁判が行われた。好奇心をそそる人物と言える。ソ連時代、彼は“輸出禁止品”(例えば、西側が公式にソ連邦に輸出していなかった電子機器、それ故ソ連特殊機関は仲介業者網を利用せざるえなかった)の取引に直接関与していた。91年後、このわが国とっての英雄はロシアの非鉄金属やアゼルバイジャン石油取引に配置転換された。そしてウインの裁判所は、1991年〜1993年に彼がナンビアにある一連の水産工場の株式を操作していた証拠書類を入手した。この株式はソ連のパ−トナより彼にプレゼントされたものであった。(ちなみにウイン裁判所は彼を詐欺師と認定し、長期の禁固刑を言い渡した)
こうしたことは全て、ソ連資金により誕生した膨大な資産が“鏡の向こう”にきわめて高い確率で存在することを物語っている。この運営による収入はロシアの国庫には入らない。多くに国では(ロシアも含め)、個別に調査資料が存在するが、これは正常な国際協力があれば、横領資産のある場所の外国裁判所にロシアによるれっきとした告訴を行う根拠となりうる。勿論、こうした資金をロシアの国庫に戻すためである。
水平線の向こうで
このように、わが国対外債務形成と関係のある1991年〜2000年期間のあらゆる資金扱いをチェックしないで、国家予算だけでパリ債権団に債務返済することは、許しがたい愚行である。現在まだ債務返済のために別の資金源を利用できる可能性もある。そのうちの若干例をあげてみる。例えば、外国裁判所の決定により、現在の資産所有者の外国銀行口座から、返還した資金である。その主なものは、以前ロシアから横領した借入金である。その他の資金源としては、外国裁判所の決定により差し押さえられた資産(株式、邸宅、ビル、ヨットその他動産、不動産)である。これらはパリ及びロンドン債権団にたいする債務に容易に転用できる。
今後は例外なくロシア政府の物的融資(ニッケル、パラジウム、ダイヤモンドなどだが、これは重要ではない)は例外なく(外国法の要求に厳重に一致させ)チェックすべきである。また“Bank of New York”事件や1998年デフォルトの状況での税金未払い、IMF及び世界銀行の融資利用、ロシアのガス及び石油代金にたいするCIS諸国の“未払い”、国債取引、外国の“タイド”ロ−ンの利用などがある。
こうしたことを政府が直ちに実行しないと(やり方を知らないとか、法律家の言う“利害の衝突”とか、そうしたことは重要でない)、わが国政府にかわって、他国の政府がそれを実行するだろう。そして旧ソ連やロシアから持ち出された資産は後戻りできないところまで去ってしまうだろう。