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2000年7月分履歴

730

“不愉快だろうか、必要な措置”(完)

-国内の投資環境改善に本格的に着手した-

(独立新聞、722日、ウラジ−ミル・サニコ

ここ数日活発にくり広げられた事件は多くの人にとって唐突であり理解できないものである。よく眺めてみると、これは独占資本にたいする大統領や政府の戦争ではない。国には国庫金を絶えず補給して彼らを維持する力が最早ない、そうした時期が到来しただけのことである。

 

独占資本にとっては不愉快な動きが現実となっているが、これは法律的に見ればあまり正しいやり方ではないかもしれない。これについては首相ミハイル・カシヤノフも認めているところである。ウラジ−ミル・グシンスキ−の事件では、同氏の意見だが、検事は若干一生懸命やりすぎたらしい。しかし決めた方針の逸脱は何があろうとありえなことは、当たり前のことだ。これの保証ともなっているのが、ロシア政府にたいする先進七カ国の強力な圧力である。

 

警察司法当局の猛烈な活動は、汚れた資金の洗浄にたいし共同で対処するという、先進七カ国蔵相の重要声明をぼやけてものにしてしまった。ロシアも含まれていたが、一連の違反国の名前が出された。蔵相声明は78日(土)に出されたものだが、米国財務省は早くも11日に自ら進んで国内各金融機関にたいし、ロシアの銀行との取引を特に監視するため、指示書を送りつけた。先週末、EU各国蔵相も同様な指示をだした。

 

事態はこのように展開したが、わが国にとっては思いがけないことではない。米国政府はすでに五月にニュ−ヨ−ク州がとった対策を継承した。当時州内の銀行はニュ−ヨ−ク銀行も含め、多くのロシア顧客のコルレス口座を閉鎖した。

 

ニュ−ヨ−ク銀行を使ってロシア資金を洗浄するという昨年のスキャンダルは、司法当局の調査とは別に、米国議会を独自調査にはしらせた。議会の委員会調査結果をロシア側に知らせるために、春先に米国上院議員ジェ−ムス・リッチがモスクワを訪れた。同氏が閣僚や国会議員にたいし、汚れた資金の洗浄に対処する必要があると説明しようとしたが、漠然とした無理解に出会うばかりであった。米国の提案はまったく分かりきったことである。税法を厳しき守ること、小口及び大型投資家もふくめあらゆる株主の権利を保証することである。

 

わが国市場経済の学術的拠点である経済大学では、米国上院議員にたいし典型的な洗脳が行われた。わが国闇経済はマフィアには関係なく、企業家は麻薬取引業者でも武器商人でもない。彼らはよい人間であり、悪い政府が彼らから強引にまきあげている。それ故、彼らは税金を払わない。我々に何も教えることはないし、我々の生活を邪魔しないでくれ。わが国には一次資本の蓄積がおこなわれている。

 

一ヶ月後、今度はわが国議員が米国を訪れた。この訪問の内容はマスコミであまり詳しく報道されなかったが、帰国後行ったアレクサンドル・ショ-ヒンの記者会見から判断すると、汚れた資金についてロシア側の解釈は米国議員には理解されなかった。彼の発言からすると、米国が真剣であることがわかるし、もしロシアが近いうちに資本の不正国外流出にたいし何も手を打たないとすれば、九月にも一方的に対応するはずである。したがって、米国財務省の最近の決定は、事の始まりすぎない。

 

わが国に悪影響するのは間違いない。ロシアの銀行との取引に厳しい制限、国際金融機関からのものも含め、政府対外借款の事実上の停止となるだろう。事実を言えば、西側政府(パリ銀行債権団)は債務の一部帳消しを全面的に拒否し、債務返済期間の引き延ばしにかぎり同意した。元ウクライナ首相の事件をモデルにして刑事訴訟がないとも限らない。

 

国庫がわが財閥にとってドル箱であった、これは19988月が示したとおりである。国が破綻し、財閥の半分は消滅したが、原料部門は生き残った。つまり、これは天然資源や一次加工製品の輸出に胡座をかいている財閥のことである。彼らは国から最も価値あるもの、すなわち産出地を手に入れた。輸出型企業の経営陣がもっとも多く国外へ毎月20億ドルの持ち出しに関与している。これはロシア闇経済擁護者が主張するように、たんに企業幹部の利益だけでなく、小口株主から奪った利益なのであり、全て課税対象から逃れたものであ。文明市場経済の規則に基づくこれら二つの振る舞いは国家犯罪である。つまりこうした金は汚れているのである。

 

何もかも理解に苦しむ。次は誰なのか、どんな基準で刑事訴訟となっているのか。基本的基準としてはっきりしていることは、最初に選択される人物とは現在クレムリンが遠くにいる人物(グシンスキ−、カダンニコフ、ポタ−ニン、アレクペロフ)である。これが実行初期段階におけるプ-チン大統領により宣言された全てに同等に扱う原則なのである。

 

指摘すべきは、こうして明らかになった嫌疑は全ていずれにしろ税法違反がつきものであり、税務警察がここでは主人公なのである。ウラジ−ミル・プ-チンと連邦税務警察長官ヴァチェスラフ・ソルタガノフとの会合で資本流出と汚れた金の洗浄問題が検討された。関心があるのは特権のことである。例えば、ノリリスク・ニッケルの民営化が注目されているのは、この担保期間がウラジ−ミル・ポタ−ニンの副首相時代と一致していることである。インサイダ−取引があったのではないか、そう推測できる。

 

メデイア・モストの特異性は、この会社の経営陣は政府内に入らずに、国の管轄下にある企業から数億ドルもの融資をうまいこと受けていることである。インタ−ファックスの報道によると、グシンスキ−にはガスプロムからの融資も含め、13億ドルもの借金があり、ほとんど返済していないと国の首脳はもらしている。

 

これにたいし持株会社の経営陣は、13億ドルの数値は負債総額をかなりオ−バ−したものと反論している。しかし、ガスプロムにたいし、未処理でしかも期限切れでない債務が21160万ドルあることは認めざるえなかった。事実、ガスプロムはこの持株会社の株式40%を担保にさらに莫大な資金を融資しているが、これはメデイア・モストが自社の価値を20億ドルと評価していることを考えると、一億ドル以上である。プ-チン大統領は「何故にガスプロムこのために金を使う必要があるのか私には理解できない」と述べている。

 

こうした膨大な投資にもかかわらず、どうも利益は少しも問題になっていないらしい。と言うのも、問題が起きた当初、ガスプロムの経営者はマスメデイア持株会社における自分たちの所有権の規模は分かっていなかった。融資にあたり、ガスプロムはどんな考えに基づいたのか、理解できない。これだけの資金があれば、例えばシトクマノフ・ガス産地の開発着手には十分だろうし、そうなれば目に見える経済効果(実際ガス採取量は現在低下している)ばかりか、膨大な社会効果があり、巨大軍産複合体にも燃料補給できるかもしれない。

 

こうしたことからすると、政府は資金を入手するやり方はマスタ−し始めたらしいが無作法である。時間とともに完全マスタ−することを期待する。しかしこれには直接効果のある法律が必要である。それは自然人、法人、その中で最も重要である役人に拘束力のあるものとすべきである。

 

税法を強制的に執行する本格的対策がとられることは間違いない。小口株主の権利と利益を守る立場から企業の財政経営活動の監督が強化されるだろう。国会は市場に参加する全ての行動にたいし、統一ル-ルの法制化をせざるえないだろう。どの企業家も管理者も、法律に従い全額払う必要があり、どの取引先もしぼりあげてはならない、このことを自覚すべできである。

 

企業家は政府の行動にひどく当惑している。怖い憶測ばかりが語られている。しかし全員安心してもよい。政府の行動は西側債権者や投資家の圧力で余儀なくされたもので、政府自身は国内の最も裕福な人々15%の税金を引き下げたし、資本の持ち出しを管理する法律の制定にはさほど固執していない。新たに就任した指導者の誰かが他人の資産に注目でもしないかぎり、国有化はありえない。逆に一年間に7千の企業を大規模に民営化する予定である。

 

私の見るところ、大統領教書の意向とは、全てにたいし条件を平等にし、全てに税法を守らせ、汚職(インサイダ−行為)と闘うことだと思うが、多くの者はいつものお決まりの宣言と解釈している。それ故、警察機関の無作法な行いには、大きなパニックとなったのである。如何せん、政府はそれなりの説明をしなかった。だいぶ後になってからだが、プ-チン大統領の説明だと、国が手綱をゆるめている間に多くの企業家は危険ゾ−ンに入っていた。そこで我々はそこから着手した。国内の企業環境を急激に改善すべき措置をとったのであると大統領はのべている。政府は全てにたいし統一ル-ルを作ると約束している。だがプ-チンが約束したように、政府が開かれ、見通しできるものとなるのであれば、はじめて国内の戦慄がおさまるだろう。

 

 

 

 

724

“ロシア政府にたいする新たな助言”

-米国エコノミスト、共同アッピ−ルの主旨説明-

(独立新聞、720日、オレグ・ボゴモロフ:ロシア科学アカデミ−会員)

どの点からみても、政府は国の生産力や科学技術力を破壊した自由経済政策の継続を選択している。ゲルマン・グレフが責任者で作成した経済プログラムはこの政策を若干改良し、これを経済急成長の基本としようとしている。多くの有力専門家から出されたこの選択の妥当性についてのあらゆる疑念やグレフ・プログラムにたいする真剣な批判は無視された。わが国はまたもや危険な実験を押し付けられようとしている。健全な思考や現実の経験の教訓ではなく、思想を優先することが第一義的になっている。

 

あらゆる民族利害の代表者と自任する現代の民主主義国家がこうのように破廉恥きわまりなく、その政策を資産階級の要求に従うことは想像しがたい。社会問題から国の責任を免除し、改革の代償を国民に転化し、経済行為及びその調整の中心として国家に能力がないと承認している。わが国を待っている政治の基本理念とはまさにこれなのである。

 

これに関し思い起こしてほしいことは、今年六月本紙ではロシアと米国の有力エコノミストのロシア大統領と政府にあてたアッピ-ルを掲載したことがある。この中には五人のノ-ベル賞受賞者も含まれている。アッピ-ルでは経済政策に関し一連の基本原則が述べられ、それはロシア経済の危機克服と再生させるものであった。受取人はこれにたいする反応は不必要と見なした。それはそうと、事態が深刻であることを考えれば、いわれる助言には注意深く検討すべきではないだろうか。

 

わが国で今後の改革について議論されていることを知り、米国の学者は公表された共同アッピ−ルの主旨を説明するために自分たちの意見をロシアのエコノミストに送ってよこした。ネオリベラルと通貨主義という両極端性をもたない有名な米国の学者が市場改革の当面の動きをどのように見ているか、読者には興味のあるところだと思う。

 

市場の最重要要素とは制度基盤

米国専門家の見立てによれば、ロシアの経済改革には企業家にたいしても、雇用労働者にたいしても好環境を作り出し、社会を団結させそのエネルギ−を解放させるために新たなスタ−トが求められる。

 

米国の学者は経済政策の中で中央及び地方行政機関が優先すべきは、市場基盤に関し国及び民間のシステムを作り、それを効果的に機能させ、活動を統括することであると考えている。この課題を具体化する上で彼らが特に指摘している点は、所有権は明確に法律で定め、現実に導入すべきであり、金融制度には国による厳正かつ効果的な管理監督が必要として、ビザンチン課税には改革が求められ、応分の納税義務を守らせる必要があり、また経済成長には国の管理が必要であるとしている。

 

国が私有財産や経済行為を犯罪組織のゆすりや恐喝から効果的に保護し、新たな事業の許認可手続きと費用を出来る限り小さくし、所有権とその譲渡契約には国がきちんと責任を負い、国家資産の売却や国が発注する物件に関しては公開性とし厳正な入札で行うべきと、強調している。有価証券連邦委員会の権限を拡大し、発行人にたいし情報の完全公開の要求や、虚偽や詐欺を防止し、株主権利の擁護と遵守させることができるようにする。これは細部をつめ、今後検討する必要があり、それにより管理者や役員の独断を止めさせ、株主や労働者の代表からなる監視委員会でこれを監視できるようにし、大臣や政府役人が会社役員や監視委員会の委員として経済行為に関与することや、政府を通して企業利益を働きかけること禁止する。

 

米国の学者が特に力点をおいているのは、現代的な会計計算と検査報告を導入することである。市場参加者に実際の経費を当局に知らせるようにさせなければならない。これに関しては、会計検査院の資格と権限を拡大し、導入した標準会計報告方式を遵守させ、行政機関の法律違反や背任行為を監督し、違反者の処罰を定め、また検査結果を公表するようにする。会計検査院に気づかれずに、取引経費を膨らませたり、物流において不必要な中間業者を設けさせてはいけない。

 

様々なレベルの国家機関や行政機関の強化について実現しがたいとはいえ、有益な助言をいただいた。米国ではこうした機関は、納税者の税金で維持される民間機関であり、納税者に奉仕することを使命とし、納税者に報告する義務がある。経験、職業能力、良心、誠実性を考慮し、高級官僚を厳正に選抜するために、海の向こうの学者は大統領が任命し、国会が承認する国家機関または国家公務員常任委員会の設立を提案している。この委員会は権威があり、その決定や勧告にあたり完全に独立したものとし、そうでないと肥大化した管理機構の縮小や不必要な機関の廃止、役人の抜擢、昇進、罷免ができなくなる。人事問題に政治的あるいは思想的考え、上司にたいする忠誠心や献身性ではなく、仕事の能力や誠実さが比重を占めることが重要である。(中断)

 

 

 

7月19日(水)

“沖縄サミット前の考察”(完)

(モスコ−フスキエ・ノ−ヴォスチ、27、セルゲイ・カラガノフ:対外・防衛政策会議常任委員会委員長)

1991年のロンドン・サミットにミハイル・ゴルバチョフがはじめて招待された時、当時私が書いたメモを覚えている。記憶に間違いがなければ、高ぶる感情で書いた内容はだいたい次のようなものである。「正加盟国になりたがってはいけない。そうしないと拒絶される。先ずは国を経済的に建て直し、民主主義の道をしっかりと歩みはじめる必要がある。その後で自ら招待し、今度は条件付や制限したものではなく、完全な議決権をもらえばよい。」 メモこそしなかったが経済レベルや秀でた思想だけで承認されるわけではないと、分かっていた。しかしソ連の首脳は当時まったく別の世界にある先進国の言葉で語ることを知らなかった。新しい政治志向は外見だけは発展した西側の表現に似ていたが、その実はそうではなかった。

 

メモが気に入ったと言われたことがあった。当時少し若かった学者にとってこれは虚栄心をくすぶる賛辞であった。

先進七カ国、今では先進八カ国だが、その関係をどう発展させるべきか、これについての私の考えを提案してから、ちょうど十年間たつ。沖縄の先進八カ国サミットの本当の議題を予測するつもりはない。

 

権威あるシェルパ、すなわち先進八カ国サミット実務交渉者アレクサンドル・リヴウィツ(最近まで)、アンドレイ・イルラリオノフ(ここ数ヶ月)、外務省や大統領府の専門官はプ-チン大統領のために分厚いファイルを用意した。

 

最初にゴルバチョフが始めた条件と一方プ-チンが継続している条件を比較してみる。国際的発展の観点から見れば、ロシアは15年間中途半端にやり過ごした。ゴルバチョフは自分の背後にまだ完全であった超大国を背負っていた。今となるとわが国経済力は二分の一以下に低下したし、我々の願いでもあるが、国民経済発展に関し長期的で有効な戦略を最終的にとったとしても、まだ長い間相対的に低下し続けるだろう。情報技術を真っ先に導入して世界の他の国を引き離した米国経済の年間成長率は、ロシアの国民総生産(GHP)に等しいか、それを凌ぐものである。

 

わが国の未来について、以前よりはるかに強い猜疑心が生まれている。失敗ばかりの改革の15年間は展望の見えない国家の様相をかもしだしはじめている。この国家のことを考える場合、現在や将来の能力よりむしろ、残存している過去の力、膨大な国土や大きな人口、現在保管されている核兵器、戦略地政学的に見た位置、天然資源を考慮すべきである。おそらく最も重大なことと思われるが、ロシアは最早ポストインダストリアルはない、当面の情報革命から事実上脱落してしまったし、この脱落はまだ続いている。わが国は急激なテンポで過去の技術遺産ばかりか、磐石なものと思われた教育水準や高度の人的資産を失っている。これこそがかつての天然資源やつい最近の生産力と異なり、各国や各地域の発展水準や展望を決定づけるものである。国民の教育程度、さらに全体としてわが国エリ-トの世界発展の潮流の理解水準は、70年代、80年代あたりで停滞したままである。

 

わが国の後進性を語ってこれ以上傷口に塩を塗るつもりはない。十分語り尽くした。ましてやその他の七カ国にも問題が山積しているのでなおさらである。ウラジ−ミル・プ-チンは勝利者の大会に出席するわけではない。これは、先進諸国が未曾有の長期的安定成長段階にあり、その終わりが推定できる突発的なことや急変があろうとも、当面見えてこないこととは関係ない。

 

世界の国民総生産(GHP)が急速に成長しているにもかかわらず、速いテンポでその配分に不平等が生まれている。十億の人々は一日一ドル以下で生活している。さらに十億の人々は一日ニドル以下で生活している。最も豊かな国と最も貧しい国の人口一人あたりのGHPの水準は急激に拡大している。窮地に追い込まれている大陸や地域が形成されつつある。アフリカ全土がほぼそうだし、中央アジアの大部分がそうである。

 

諸国家の力は相対的に衰退傾向にあり、金融、経済、情報のグロ−バリゼ−ションは各国の権力や自国の国民の統治ばかりか、世界の動きを無管理状態にしている。

 

どうやらグロ−バリゼ−ションは、勝利した民主主義の手から大々的に祝った勝利を奪い取ろうとしているようだ。民主主義自体、崩壊作用を受け始めている。自国国民にたとえ建前にせよ責任を負っている国家が衰退することは、政治や自己の将来の決定にたいする国民の影響力を低下させることである。

 

速いテンポで国際社会を管理する力は衰弱し、国際関係の不安定さが強まっている。まさにこの不安定性と先行き不透明感の増大と、逆に一極化、特に米国覇権主義へ傾斜が進まないこと、これこそが国際関係発展における大きな潮流なのである。

 

核兵器の拡散を阻止できないでいる。インドやパキスタンが核兵器を保有したことは、北朝鮮のような仮想的に作られた虚像ではなく、本当の大国が核兵器を所有したいと思っても、誰もそれを止めることができないことを証明したのである。今では、今後どれほど核のか拡散が進むかではなく、10年、20年後にどれだけの国家が核兵器を所有することになるか、これが論争の対象になりうる。

 

国連その他の国際安全機構の多くはその役割や効力を低下させている。こうした背景の中、NATOは拡大することによって人為的に維持されている。それでもNATOもその効力のなさを証明してしまった。NATOは特にその有効性のあることをあらためて証明する目的でその憲章の定める範囲外にでる決意をし、いわゆるユ−ゴスラヴィアにたいする人道的介入をしたが、見事に失敗した。NATOは最初、コソヴォ人にたいし人種迫害する道を開いた。その後でユ−ゴスラヴィアの生活基盤を破壊し、今は為すすべもなく少数非コソヴォ人の人種迫害を監視したり、コソヴォ分離や偉大なアルバニア国家の建設(これはヨ-ロッパで初めての回教国家となり、その上後進国で犯罪の多い国家となる)の動きを注視している。

 

国際金融システムの改革状況もけしてよいものではない。金融システムを機能させる条件が通貨体制の基礎を確立した戦後のブレトン・ウッズ協定(2次世界大戦後の国際通貨体制をつくった協定)後、質的に変化したにもかかわらず、その改革ほとんどまったうまくいっていない。

 

こうしたことを背景にロシア大統領は何をすべきか。ましてや新大統領である。何をなすべきか。先ず第一に弱体化しているとはいえ、こうした状況であるので、ロシアは影響力を持てるし、自国の声を聞こえるようにすることが可能であると念頭におくことである。さらにあらゆるものを失ったとはいえ、わが国は先進八カ国の中で最も弱い国家でない。第二点としては、派手なジェスチャ−や耳障りの良い提案をするのではなく、自己、すなわち自国の政治力を協議に効果的かつ建設的に参加し増大させ、結びつきと信頼を確立するために力を集中するべきである。これには前提条件がある。プ-チンと初めて接触した外国首脳のほとんど全ての反応は一つにまとめることができる。最近になって初めて多才なロシアの旦那あるいはだた印象のよい道化師にかわって、自分が語っていることを理解し、他人の意見を聞くことのできる指導者がロシアに現れたと評している。こうした印象を定着させ発展させる必要がある。これはわが国にとってメリットのあることである。

 

第三番目としては、わが国の状態と改革についてロシア大統領の報告を個別問題として扱うことを出来る限り避けるべきであろう。このような問題提起はそもそも初めからロシアを不平等な関係に置くものである。これでは、七カ国の前で報告するのはただの一カ国となってしまう。さらに言えば、七カ国この一カ国に何を助言すべきかあまり分かっていない状況なのである。それ故、ロシアについての話は出来る限り公式交渉の枠外に出すようにしたほうがよい。

 

最後に四番目の点だが、それでもやはり、沖縄サミットで提起され、次のサミット、もしかしたら早くもモスクワサミットになるかもしれないが、そこで検討される可能性のある二つのテ-マを予測してみる。

 

どの専門家も、核保有国が8から10カ国あり、きわめて制限された効力だが米国の展開したミサイル防衛システムのある世界がどうなるか分からない。核兵器が存続するのであれば、ロシアは当面その保有を継続するだろうが、ロシアにとって政治影響力のある主要国家の一つとして、国際関係全体における核兵器の将来についての問題を世界の最有力諸国家の中心議題として提起することはメリットがあるし、関心のあるところである。

 

されにもう一つのテ-マを述べるとする。四年ぐらい前、私は対外・防衛会議の仲間とともに当時ロシアで始まった麻薬中毒の流行にたいし、社会とエリ−ト層に関心をもってもらうためキャンペ−ンを行ったことがある。関心をあおり立てることには成功した。しかし当時も今でも驚かされるのは、麻薬売買や麻薬中毒にたいする何らかのある程度有効な国際組織が存在しないことである。きわめて奇妙な印象をもったのは、麻薬王が各国政府を買収し、各政府が単独で国際麻薬ビジネスと闘うよう仕向けていることである。

 

これで止めることにする。これ以上奇妙な話をするのは止めることにする。

大統領は同僚を威嚇してはいけない。彼に必要なことは、ゴルバチュフが始め、エリツインが成就できなかった仕事をやり遂げることである。ロシアはそのあらゆる弱点にもかかわらず、先進八カ国の正加盟国となることに着手する必要がある。そこに加盟し影響力をもてば、わが国のしかるべき威信を保つための多くの高い代償を節約できるはずである。そしてこの影響力をもつにはさほど費用はかからない。知的準備と若干の柔軟性、多くの現実主義それと政治意志の表明である。

 

 

 

7月13日(木)

“安月給の官吏は割に合わないし、危険でもある”

-“大臣の月給は5千ドルとすべきである、と経済大学の学者グル-プは考えている。彼らは行政改革案を作成した。行政改革はグレフのプログラムの一部であったが、政府案から消えていた。何故なのか、この問題も含め、行政改革案起草者の一人、経済大学の学長ヤロスラフ・クジミノフに答えてもらった“-

(モスコ−フスキエ・ノ−ヴォスチ、26、リュドミ−ラ・テレニ)

-行政改革の章ですが、政府案からは抜け落ちていますね。どのような理由でしょうか。

「国の改革は大統領の専権事項に属する問題で、政府の専権事項ではないのです」

 

-ということは、大統領の動きを予め読みしながら、この章を作り変えているのですか。

「最近我々が提出した経済大学の報告、これはグレフプログラムの行政改革の章にあたります。同センタ−でこの仕事の責任者はミハイル・クラスノフです。最終段階でガリ・ミンフとアレクサンドル・マスラフが加わりました(両者とも経済大学報告書共同作成者)。この報告は今後10年間を見通して作られたもので、市民社会における各制度作り、個人と経済行為の権利保護メカニズム作り、連邦制の問題、政治制度などの各章からなっています。政府に渡された長期政策に関する部分は追加調整や妥協ばかりではなく、2000年〜2001年の期間にたいする一連の優先措置が選定されました。行政改革案ですが、結局のところ長期政策のレベルで残されることになりました。したがって我々は現実的に優先であり、本当に実現可能である課題を選び出し、検討しようとしました。その中心が行政改革なのです。

 

-最初の反響からしますと、あなた方の提案にたいする反応は不信感そのものです。実質的議論もしないで評論家はすかさず「国民は理解しないだろう」と断言しています。

「国民は、まれにそしてある程度打算で国民のことを思い出す若干の人々が願っているイメ−ジよりはるかに賢いものです。私の考えでは、国民は安月給の官吏は割に合わないどころか、危険であるとだいぶ前から理解しています。我々の課題は、こうした改革が必要だと、社会に諭すことなのです。これは我々に道義上の義務だと言いたい。ちなみに起草者の誰もが国家機関の人間ではありませんし、したがって私欲があるとして我々を疑うことは難しいでしょう」(続く)

 

-それでしたら、安月給の官吏が何で危険であるかまだ理解していない人たちにたいし、根拠をあげてみてください。どうでしょうか。

「レ-ニンの遺言のように官吏が平均労働者の賃金をもらっていると考えています。わが国ではだいたいその通りなのです。下級官吏の給料は100ドル以下です。数万ドルの決定を下す国家公務員の給料は200ドルです。同じ仕事を実業界でやれば、1000ドルから1500ドルもらえます。数百万ドルに匹敵する決定を下している官吏でも、給料はだいたい300ドルです。実業界ではこのクラスの管理者ですと、およそ7000ドルから10000ドルもらっています。これはどういう結果もたらしますか。官吏はどうにかしてこの給料不足を補おうとするものです。

 

-賄賂ですか

「賄賂の話をしているわけではありません。この問題はきわめてはっきりしています。賄賂には刑法で対処する必要があります。政治的是非を原則として収賄者を選り分けしないでただ対処すればいいのです。ここでは話は、ロシアの大部分、そう確信していますが、真面目な官吏のことです。

 

-どうやって真面目な官吏は、刑法に違反しないで給料不足を補っているのでしょうか

「どのような人間も、何らかの社会支援グル-プに頼って存在しています。例えばあなたが高給とりの管理者とすれば、こうした支援グル-とは、たんなるフレンドリ-な関係かもしれません。もしあなたが給料でやりくりできない官吏ならば、友情を共済システムにもちこむはずです。中級官吏の給料を頭にうかべると、なにもかもはっきりします。すでに触れましたが、国家への忠誠心の値段は200ドル、支援グル-への忠誠心の値段は800ドルです。ここには彼が現金で払えないもの、正常な住居、レクレ−ション、自動車、子供の教育などが備わっています。繰り返しになりますが、こうした場合、正直な官吏は法を犯していません。国は官吏に大きな自由を与えています。例えば、30の国家投資計画があります。全てにたいしては資金はたりません。つまり、官吏が自分の選り好み行動するのはそれなりの理由があるのです。

 

-この選り好みのおかげで、支援グル-が彼にあたえる援助そのものとなるわけですか

「そしてここで我々は、国家機関が嘘の体系の中で機能していることにどうも気づいていないようです。またこの体系は一定の実業界にはとてもメリットがありますし、それは国家機関を外部から操っているのです」(中断)

 

 

 

79

“コ−ポレ-ション「教会」”(完)

-“はじめてモスクワ総主教管区の裏経済活動が調査された“-

(モスコ−フスキエノ−ヴォスチ、25、ニコライ・ミトロヒン)

ロシア正教会の経済活動のエピソ−ドはしばしばマスコミで取り上げられている。しかしこうした記事がないとしても、資金や経済活動ぬきでは巨大な組織の維持はできないことは明白である。社会の精神的頂点として教会は大きな注目を集めているが、商業組織としては社会にたいし完全に閉鎖している。ここ数年教会やその長(国の儀典地位では総主教は、第六番目)の政治影響力が強まると、教会はより積極的に経済にくいこみ出している。問題としているのは、蝋燭を売ったり、洗礼費用や葬式費用で稼いだ金のことだけではない。ロシア正教会の経済活動とその裏の部分をはじめて大規模に調査した執筆者は次のように確信しているように思える。「たとえば独立国家共同体にある教会は管理外の資金を扱う巨大な国外支部に変身している。奇妙なことだが、ロシア正教会の物的豊かさは信徒数とか教区数とは直接関係ない」

 

本紙は調査結果の一部が公表できたことにたいし、レフ・チモフェエフ氏が中心となっているゴ−リキ国立大学の不法経済行為調査センタ-に謝意を表します。

 

総主教アレクセイUが個人的に公表した教会財政の公式資料はとてもわずかなものである。二年に一度の高位聖職者の定例会議(教会に属する全ての主教の集まり)で定例会議までの期間全体にわたる中央本部(モスクワ総主教管区)収支の基本資料が発表される。1997年2月の最新の報告(と言ってもきわめて概略的なもので、教会予算総額も、収支内容も明らかにされていない)によると、モスクワ総主教管区の主な収益は「一時的自由になる資金の活用、その銀行預金、短期国債その他の国債の購入や、教会用具を製造している若干の企業(特に美術工芸会社“ソフリオ”)による」ものとしている。ロシア正教会傘下の主教管区の上納金はきわめてわずかな額(総主教管区予算の2%強)であり、それでは教会の教育施設をきちんと賄うことさえできない。

 

1998年に定められてロシア正教会の運営規約によると、下部組織の聖職位の任命は完全に上部組織にかかっている。その代わり経済の分野では下部組織は建前では上部組織の管轄下におかれる。教会会費を徴収するシステムは形式的には存在するが、現実には機能していない。ましてやロシア正教の規約にもその他の公表された教会文書にも、主教管区や教区が上納すべき金額の割合や具体的金額の定めがないからなおさらである。総主教の話だと、モスクワ総主教管区直轄で約7千の教区をうけもつ76の主教区はモスクワ中心にあるさほど大きくないホテル一つの十分の一しか総額で納めていないとのこと(1994年当時で総主教管区に属するホテル“ダニロフスキ−”が納めた金額は総予算の22.5%であるが、主教管区の上納金はたった2.5%であった)

 

最高位つまりモスクワ総主教管区とその支部に関してはその収入源を信頼できる情報は少ないとはいえ、きわめて具体的の述べることができるし、そこにはきわめて生臭いものを感じる。総主教管区に入る資金はいくつかの独立したル−トを通るが、このル-トは総主教の側近が管理している。その内のいくつかは正式の聖職位にあるものがたずさわるが、いくつかはそうではない。モスクワ総主教管区の事情をよく知っているかつての総主教広報担当者E.コマロフ氏は「思想という人為的な掟で動くどのような閉鎖的な組織でも、官吏の影響力はその肩書きではなく、複雑に錯綜した非公式な関係により決まる」と述べている。

 

その他の問題としては、総主教管区に実際に収入をもたらす団体とその政治的影響力と権威は利用するが多くは納付しない団体とは区別する必要がある。二番目タイプの団体は通常、自己の商業活動を人道的プランでカモフラ−ジュし、彼らについては第一タイプの半透明な団体と比べるとほとんど知られていないが、まさに社会意識やマスコミ報道における彼らとモスクワ総主教管区のほぼ全ての経済活動が結びついているのである。

 

総主教自身でさえ公の発言で教会の商業活動をもっぱら人道的イベントの参加に結び付けている。昨年総主教はインタビュ-で次のように述べている。「商売と教会は相容れないものです。時にはたぶん人道支援も受けざるえなかった、そのことについて話し合いことがあります。我々によく様々な国家機関が人道支援の分配に教会が参加するよう依頼がきます。こうした人道支援が受取人に届く、その保証人と考えているのでしょう。しかし、教会にとって商業活動はとくいくつかの分野では許されるものではありません」

 

こうした意味で総主教として筋の通った行動となったのが、“ロシア和解と和合の慈善基金”の設立であった。これに資金を出したのがスキャンダルで有名な女性企業家G.ソトニコヴァである。ソトニコヴァの他に、総主教と直接結びつきのあるさらにいくつかの営利慈善団体の代表者がいる。こうした営利慈善団体の一つに、事業家エレナ・シュリギナと関係のある企業グル-プがある。

 

総主教と親密な関係にあり、名称に“正教”という言葉を用いているにもかかわらず、どの団体も実際正教の広報誌にも知られていないのは興味深いところである。いずれにしても、インタ-ネットで正教の広報サイトを見ても、彼らのことを見つけ出すことはできなかった。これは、こうした団体が何らかの慈善行為や教育活動として機能しているのか、それとも純粋な営利企業なのか、そうした疑問の根拠となっている。ともあれ、1999年春、総主教アレクセイU70歳の誕生記念日にあわせ、総主教のアトリエはクレムリンで作品展を行った。これは、彼らの活動をマスコミに明らかにした最初で今のところ唯一のものである。修道院の敷地内あるいはその管理下でさらにいくつかの営利団体が活動しているが、それがシュリギナの会社と関係があるのか不明である。

 

明らかにこうした団体は経済においてはあまり重要ではないし(教会の対外渉外部の管轄下にある団体は除いて)、教会全体の組織を賄うことはおそらくできないだろう。総主教管区“最大の稼ぎ手”は、株式会社「国際経済協力」(IEC)グル−プである(あるいはあった)。

 

教会所有のIEC株を具体的に誰が扱い、同社の役員となっている主教は誰の部下なのか分からない。総主教管区の他にIECはクレムリン改修計画の枠内で石油を売っているので、大統領総務部と密接の関係にある。モスクワ総主教管区と大統領総務部の密接な関係は別の大きなプロジェクト、これは1996年アルハンゲリスク州ロモノ−ソフ産地でダイヤモンドの調査ことであるが、ここにもはっきりと現れた。現在総主教管区はこのプロジェクトからは離れているが、1997年当時元主教アルハンゲリスキ−・パンテレイモンは「ノルド・ダイヤモンド・インヴェスト」社の役員であったし(もしかしたら現在も役員かもしれない)、この会社はダイヤモンド採掘会社「セヴェルアルマズ」の傘下にある会社で住所も同じである。

 

モスクワ総主教管区支配人である大主教ソンネチノゴルスキ−・セルギイ(フォミン)の仕事は最重要な経済プロジェクトを管理することであるが、同時に各主教管区の仕事の責任者である(つまり、そのからの上納金を管理している)。彼は大主教管区の二つの常時資金源(ホテル「ダニロフスキ−」と美術工芸会社“ソフリオ”)を管轄している。

 

美術工芸会社“ソフリオ”の代表エフゲニ・パリエフは、“一匹狼”である。元総主教広報担当者E.コマロフによると、「財政面の最も影響力のある教会活動家で、彼の組織は総主教管区の最大資金要因であり、それ故彼に嗜好を総主教は常に考慮せざるえなかった」

 

美術工芸会社“ソフリオ”の繁栄は、ロシア正教会のどの教区にとっても同社製の教会用具や僧衣を所有していると格式は高くなるが、その理由だけでなく、優秀な設備が整っている同社が外部で積極的に契約をとっているせいでもある。

 

1997年の報告で総主教は美術工芸会社“ソフリオ”の毎月の売上は100億ル-ブル、当時のレ−トでドルに換算すると2百万ドルであると触れている。つまり同社の年間売上は公式資料にしたがうと、2千4百万ドルである。かりに少なく見積もって利益を15%とすると、美術工芸会社“ソフリオ”は年間3百6十万ドル以上の収益があることになる。

 

この数値を信用すると、美術工芸会社“ソフリオ”の製品を販売しただけで、主教区運営部は最低上乗せ額を30%と見ると、年間8百万ドルあるいは平均でモスクワ総主教管区に属する1主教区あたり10万5千ドル儲かることになる。これは“ソフリオ”社の商品だけの数値であるし、最低の収益を前提としたものでもある。ところが“ソフリオ”社の生産された製品量は、主教区の在庫販売量と直接結びつかない。“ソフリオ”社では教会向けでない製品が大量にあるし、教区の“やり手”や自営の卸業者が同社から直接購入していることはよく知られている。その製品は豊かな教区や人数の多い教区の狭い範囲で第一に配分される。“ソフリオ”社の財政担当役員は市場における教会向け製品の割合を述べるには躊躇っていたが、その製品の大部分はモスクワ地域や各主教区であると認めている。それでもモスクワに近いヤロスラフ主教区やコストロマ主教区にある各寺院では同社の製品が30〜80%しめている。

 

いくつかの計画ではパルハエフとその傘下組織は教会対外渉外部と一緒に仕事しているように思われる。たとえば、広報部は、“ロシア正教会”によりNATOのミサイル爆弾攻撃で被災した正教信徒と全ての住民のための寄付募金用の専用口座を開設されたと伝えている。この口座は“ロシアゼネラル銀行”に設けられた。同行の発起人の一つは、つまり優遇融資を受ける第一候補の一つは、ロシア正教会の美術工芸会社“ソフリオ”である。

 

国と慈善家の援助や全教会的役割のある企業の収益、各主教管区の上納金に他に、モスクワ総主教管区にはモスクワの最高聖職位である総主教という地位による強力な財政力がある。さらに府主教である副修道院長クルチツキ−・ユヴェナリをつかって、アレクセイUは名目上、モスクワ州にある600以上の教区を管理している。すなわち総主教には全教会教区の5%が属するわけで、それも最も豊かな5%なのである。(続く)

 

どうやら、モスクワ総主教管区全支部の中、最も大規模の経済活動をしているのは、教会対外渉外部らしい。そのきわどい経済行為(人道支援に見せかけたタバコの無関税輸入)は他の支部競合者の協力もそれなりにあったと言われるが、明らかになった。

 

1996年から1998年頃、タバコの直接の輸入販売を行ったのは、慈善団体「ニカ」とロシア正教会人道支援本部である。タバコは総額数百万エキュ(文書によると、千五百万エキュと二千五百万エキュのロットが記載されている)が納入されている。関税特恵を利用して得た資金はいろいろな時期に「アレクサンドル銀行」、「ペレスベト」、「カルシュスキ−・ゼメリヌイ銀行」という銀行に入っている。

 

タバコ以外に教会対外渉外部は人道支援本部を通して無関税の鶏肉輸入もしている。1997年の大主教会議前日にマスコミにより暴かれた未曾有の“タバコ”スキャンダル後、同本部はその年二月から、建前では中立の主教オレホヴォ・ズエフスキ−・アレクシイ(あまり重要でない修道院問題責任者)が代表するようになった。しかしながら、匿名希望の教会対外渉外部のある人物によると、実際は従来通り同本部はこの渉外部の支配下にある。それと言うのも、主教は対外渉外部の副責任者となるが、これは公にしなかったのである。

 

こうしたスキャンダルや関税対策が厳しくなると、人道支援本部の価値がなくなったと思われる。1996年〜1997年の摘発事件後、このような支援が継続されているのか不明である。

 

また同対外渉外部の大きな経済企画となったのが、特に2000年記念聖地巡礼のツア−であった。対外渉外部(総主教管区の名で)はこうしたツア−の主催者であり、教会信徒はその助力だけで聖地巡礼すべきであると、発表された。

 

 

 

7月1日(土)

“ロシア上空に投資の靄が立ち込めている”(完)

-“産業成長の鍵は企業資金の流れの透明性

(独立新聞、620日、ウラジ−ミル・サンコ)

世界銀行やコンサルテイング会社が世界に彼らにとって投資の魅力ある国を作ろうとしているが、ロシアはあいかわらず世界の最後列の国である。かんばしくない主な点は、政治の不安定性、経済や法律制定の非公開性であるが、これが国力の位置付け表の最後列にわが国を陥れている。

 

初代ロシア大統領の闘争好きはよく知られれている。政治家が国内戦の瀬戸際で共存している国にどんな戦略投資家もくるわけがない。先の選挙後、わが国には従順な国会と新大統領が誕生したので、安定するはずだとでも言うのだろうか。この点で重要なことは中国を例にとれば明らかであり、わが国と異なり、投資が行われている。注目すべきは、資本がわが国の東の隣国に流れ込み、その国が西側で言う民主主義には熱心ではなく、市場の閉鎖性では有名である。ところが投資家は巨大な市場に足場固めようと願っている。これはまさに1991年に我々が放棄した選択肢なのである。

 

貿易活動の自由化は、わが国の企業のほとんどにまったく競争力がないと、三歳の童子でも分かっていたことをいっそうはっきりさせただけであった。現在生産部門の商品やサ-ビス供与の内需はきわめて低いし、大きな関税障壁をなくして輸入すれば、簡単に満たされる。だから投資家には特に急ぐ理由はない。それ故に経済の公開性は大きな意味をもってくる。わが国の改革主義者はこの意味を関税障壁をなくし、しかるべき為替管理のない貿易自由化にもっぱら話をすりかえている。そこで資本持ち出しの自由をかなり広く解釈し、合法的利益だけにとどめていない。後で分かることだが、彼らはこれを意図的に行っている。

 

経済の公開性や当然のことながら投資魅力で最も重要な要素は、会社の経営や財政の透明性であり、とくに世界基準にあった会計報告なのである。皆も認めるところでしょうが、各投資家は、自分の資本がどれほど有効に機能するのか、知りたいところである。

 

ところが企業活動透明性の要求は、IMFにたいする国の公約にもかかわらず、年々実行されなくなった。どうしてロシアの政治経済の上層部はこれほどまで頑強に基本的な投資条件作りに抵抗するのだろうか。もしそれが出来たとすれば、一人の独占資本家も今まで存在しなかったはずだと、はっきりと言うことができる。たしかについ最近まで億万長者どころか、百万長者もいなかったではないか。

 

国は国有財産を手放したが、チュバイスの民営化の結果、全企業とは言わないがやり手の経営者が登場した。結局、多くの新しい経営者は利益だけにとどまらず、償却資金さえも横領する完全な自由を手に入れた。取り上げた資金は、優れた輸出力のある石油ガス、鉄鋼という資源部門でも生産低下となるほど大きな影響を与えるものであった。自分のものでない金を自由に使うという身勝手なふるまいは、石炭産業のような収益の低い部門できわめて顕著であり、そうしたところの企業経営者はわずかばかりの炭鉱夫の賃金までもしばしば横領しているのであった。

 

横領とは、会社役員の不透明な経営の結果なのである。自分のものでない企業の利益を役員が中心となって横領することが正常な経営形態と考えるのであれば、資本の誘致について何を語れるだろうか。

 

わが国独占資本家にはその経営について学術的根拠があった。それはまさにエコノミストのヤコフ・パペの論文である。「アプリオリだと、独占グル-プの不透明性は何か一様に否定的にものとしている。観念論的な立場からすれば、これはまさにそのとおりである。しかし、現実は考慮すべきである。今日不透明性とは、統合した経済グル-プが生き残るためには重要な条件である。高い税も取引の費用もまさに同じ理由なのである」

 

さらに続けて「透明性が先ず必要なのは株式投資家である。もしロシアに民間の株式大型投資家が出現する条件が出てきたならば、どうやっても透明性を確保する必要があるだろう。

しかしロシアの国境に数百億ドルもの本格的な投資資金が突撃状態で待機するとは思えない。もしそうなるとすれば、せいぜい投機家か、有名なケネット・ダルトのような吸血鬼の数億ドル程度だろう。そこで考えるべきことは、こうした外国の投資家に国内産業を取り仕切る権利を与えたものかどうか」

 

そして我々の学者は行き詰まってしまった。実際、透明性が確立していれば、現在の形態の持ち株会社は存在しないはずである。所得税率の上限が30%だという主張には明らかに嘘であり、米国では最大45%で百万長者も億万長者も問題なく支払っている。しかしこれも、透明性すなわち管理できる状態があるからで、税率が下がり皆が納税するという展望がなければ、嘘もはなはだしい。誰も盗んだものから納税しないし、納税そのものがないだろう。納税があれば、所得源に照明があてられる。

 

ヤコフ・パペは明らかに狡猾であり、不透明性は不良の投機家を追っ払うために必要なものと述べている。このような有名な市場主義者が、市場経済における投機家は自然に生息するムクドリみたいなもので、翼に春をのせて運んでくるのものであり、投機家の後に続いて金融証券市場に戦略投資家が到来することを知らないわけがあるまい。

 

特に注目すべきは、ケネット・ダルトである。我々にとって彼は吸血鬼以外の何者でもない。ちなみに彼は真の投機家であり、彼なしには市場は市場でなくなる。投機家は戦略投資家の道をつくるだけではない。彼らは市場で最も重要な機能をはたしている。つまり資金の流動性を高めているのである。投機家は取引物件の価値をよく知っているし、リスクをおかすことをおそれない。ケネット・ダルトは他の投機家と異なり、大きなリスクをおかす人間である。それだから彼はロシアに現れたのであった。

 

彼はまったく合法的なやり方で優良企業の大量の株式を手に入れた。知られているとおり、大規模な民営化当時、これら企業の株はとても安いものであった。時代は持株会社設立へと動いた。これは、各企業の株式を単一株式に変えることを意味していた。一企業ではケネット・ダルトは大口株主であるが、持株会社では小口株主となる。さらに管理会社は自己裁量で交換レ−トを定めていた。誰も数百万のロシア株主の意見を聞いたり、同意を求めなかった。しかし、ケネット・ダルトは無権利で無言のロシアの株主と違って、自分の株価の本当の値打ちをよく知っており、自分の権利も知っているので、それを守ることができる。分別ある独占資本は事を荒立てることなく、ロシアの証券取引所の価格よりはるかに高い価格でケネット・ダルトに支払ったのである。

 

ニュ−ヨ−ク銀行スキャンダルと国立経済大学でのマネ-ロンダリングについての米国国会議員ジェ−ムス・リッチとの討論は、政府の経済プログラム作成を自負する国立経済大学の人間が闇経済を正当化するのであれば、ロシアの投資に立ちこめる靄が近いうちには消えないだろうと、如実に示すものであった。同大学副学長ヴァジム・ラダエフは「闇経済と犯罪を区別することがきわめて重要です。闇経済のほとんどはその中身や目的からして法律に違反していませんが、全体的には法の枠外に出てしまい、特に脱税や税金の一部未払い等を目的としています」と説教している。なんと優雅な考えだろうか!分かったことは、全体的には法の枠外に出ることは、法律違反ではないことである。

 

全て罪がないとは本当のことなのだろうか。小口株主の配当金の課税をかいくぐり、そればかりか小口株主の配当金そのものを掠め取ったり、預金者のお金を国外の持ち出したり、公務員の給料をごまかしたりすることが、犯罪ではないのだ。こうなると税金は払わないのは当たり前ことだ。「正式に受け取った所得の税金を払わない場合にかぎり、マネ−ロンダリングのことが言える」とこの改革主義者の著名エコノミストは付け加えている。彼はつい最近まで第一副首相であり、現在はアレクサンドル・ショ-ヒンが担当している融資機関と金融市場国会委員会の議長である。

 

近代的な方向に企業経営を向けるどのようなやり方も、もっぱら市場の略奪のためなのである。こうした環境ではどのような法基盤の整備も話にならない(この必要性に関しては、ジェイムス・リッチの圧力でアレクサンドル・ショ-ヒンは認めざるえなかった)。彼自身が米国上院議員のロシア訪問を政治的意図と見ているのであれば、他のことは期待しようがない。

 

統一ル−ルでやるという考えには、わが国の自由主義者は承服しないだろうし、政府の経済グル-プにおける彼らの力は確かなものである。こうした事実がどうやら、政府諮問機関の経済改革作業センタ−の責任者や自由主義チャンピョンのウラジ-ミル・マウに自由主義改革の歓喜をもたらしているのかもしれない。為替管理強化法案をつぶした議員も時代の雰囲気を感じ取ってはいるが、政府はその採決に固執しなくなった。零細企業の税負担は政府が折れたため、取り下げられたが、そのかわり第一波の自由主義により実行されなくなった国民の社会優遇措置も廃止されるだろう。

 

商業活動の近代的統一ル-ルの確立はロシアでは、上からの押し付けや、民族思想あるいは職業的誇りを宣言することによるのではなく、内部モラルが自然と普及することによりもたらされるだろう。このヴァデイム・パダエフはロシアの投資環境に立ちこめる靄は消えないと確信している。

 

ご覧のとおり、わが国改革主義者には商業活動の統一ル-ルの気持ちすらない。リベラル改革が国に投資をもたらさないことは、なによりも中央銀行取引局長コンスタンチン・コリシェンコの狼狽ぶりを見ればよくわかる。同氏の意見だと、投機資本はあまり望ましいものではない。それというのも、わが国は証券市場に投資される資金を企業の労働資本に変換できるメカニズムが存在しない。その上彼は、近い将来に自主的な産業成長を確保するために国内の金融ポテンシャルをどうのように活用すべきか、まだ分かっていない。通貨が流入すると、資金量は増え、インフレのおそれが出てくる。最終的には商業銀行の残高は央銀行のコルレス勘定で700億ル-ブルとなり、国民の預金は膨大な金額である。なんと展望のないことか!

 

メカニズムは単純である。経済活動に参加する全ての者のための統一ル-ルに法的体裁を

整えればよいだけのことである。この必要性については、米国の国会議員ジェ−ムス・リッチが訪ロした時にわが国自由主義者に説いていた。しかしル−ルを守らないと、きわめて刑事責任も含め厳しい処罰がまっている。これはわが国では無能な行政として解釈される。企業会計の透明性の要求はもっぱら商業秘密の違反として、わが国自由主義者によって解釈されている。一方、小口株主の権利保証については、唯一ロシア統一電力システム株式会社のケ−スで思い起こされただけである。そこでそうした大きな注目を集めたのはおそらく、アナトリ・チュバイスのパ−ソナリテイによるもだと、そんな気がする。たしかに数万の企業の数百万の小口株主の権利保護については、誰の頭にも浮かばなかった。あそこでは常に組織作りが行われている、これは多くの株主を犠牲にして、子会社に最良の資産を移すことを意味している。

 

不法な横領は、企業会計を透明にしてはじめて終焉するかもしれない。ロシア企業の市場からの資金調達が同様な外国企業に比べ数百倍も低いことには誰も驚くことはない。これはまさにロシア企業経営者にたいする不信の直接の反映である。企業がその経営者により横領されているのに、いったい誰が株式に投資するだろうか。小口株主の権利は完全に無視されているが、大口株主も見捨てられる可能性もある。投資家の株式が水増しされるか、親会社が倒産するのが落ちで、そしてしかるべき人間が主要債権者になるのである。株式会社における国の代表者も経営者と同類である。彼らには倒産を未然に防ぐ能力がまったくないことを示している。いずれにしても、企業民営化後、かつての国の代表は懐にずっしりと重い株式をしまいこみ、きわめて成功した経営者になっている。

 

国内に内部セクト主義的モラルが支配している間は、国民は銀行や企業、様々な証券会社を信用せず、タンス預金をすることになる。銀行や投資会社、保険会社、年金会社、個人はわが国の経営者には何の価値もない。

 

その結果、小さな外国の投資は国内に流れ、資本の大きな流れは国外に向き、経済はきわめて不安定な状態なのである。リベラル改革は経済をけして良くするものではない。

 

リベラルの精神はゲルマン・グレフを責任者とする長期政策センタ-で作られた“2010年までのロシア長期発展計画の国会案にも貫かれている。良好な投資環境をつくる章では、分かりきっていることが否定されていない。

 

国内には闇経済の比重がきわめて高く、これによってもたらされる投資家のリスクはとても大きなものである。少数株主の権利は無視されたり制限され、これは投資を意味のないもにしている。法律をかいくぐり、ロシアに浸入する資本を管理するメカニズムは存在しないし、その上国外への資本持ち出しを阻止する有効なメカニズムも存在しない。上記計画案の文書には、法律分野に問題があると認めている。特に全ての経営体にたいし平等の競争条件を作ること、民営化後の資産再配分にあたりきちんとした法曹界の形成に問題があるとしている。現在、こうしたメカニズムは、多くの点で狭い範囲のグル-プの利益のための資金管理を保証している

 

国民にはいったい何が待っているのだろうか。民営化後の資産再配分の餌がまかれる。つまり、国の手元の残っているもの全ての民営化が行われる。この計画案の作成者たちは、効率の高い経済活動条件を悪くしている基本要因は巨大の非市場部門の存在であり、これは発展に必要なリソ-スに負担をかけ、不健全な経済・金融活動を経済全体に波及させていると考えているならば、こうした人たちをこれ以外にどうのように解釈できるのだろうか。国営部門の問題は政府の役人が狭いグル-プの人間のために国営部門を濫用していることにあると思われる。

 

商業活動の統一ル-ルを定める国内法が生まれたばかりの状態にあると言われる。いずれにしても、この法案の起草者はわが国では現在まで個人の権利義務に関し命令的な規定がある不当な事例がいまだ存続していると主張している。今は実態があろうが名目上であろうが、法人を設立できるにもかかわらず、わが国のリベラル主義者は市場への参入障壁を低くすることと法人登記手続を簡素化することが基本課題だと考えている。これにより彼らは商業活動にたいする官僚主義の圧力を緩和できるとし、また経済活動に関わる全ての者にたいし経済の自由のレベルを上げられると考えている。ゲルマン・グレフのチ-ムのユ-モア感覚を認めてやる必要がある。それと言うのも、経済の自由の拡大についての章の題名が「経済の非規制」であるからだ。

 

人もうらやむ頑固さで経済の非規制という方針を貫いているわが国の改革主義者が完全に無知だとは到底信じがたい。あらゆる市場経済は商業活動の統一ル-ルの上に立脚していることはよく知られているが、これは法律で制定されており、つまり最も市場経済が発達した国でも無限の経済の自由など存在はしない。その上法律で定めた規則を守らないと、きわめて厳しい処罰が適用されている。役人の横暴は刑事責任も含めインサイダ−取引の厳しい禁止で抑止している。

 

 

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