ロシア最新ニュ−ス
2000年6月分履歴
6月22日(木)
“支持グル-プはどこから現れるのか”(完)
-“改革の社会基盤“について
(モスコ−フスキエ・ノ−ヴォスチ、26、アンドレイ・ヤコヴレフ、エコノミスト)
グレフ氏の経済プログラムをめぐる議論ではどうも最大の問題、この経済政策は誰にメリットがるのか、これが欠落している。
ゲルマン・グレフの政策センタ−の文書を見ても、これにたいする直接の回答はない。とは言え、いろいろな学術セミナ−でこのプラグラムの執筆者各人の意見を聞くと、おおよそ次の命題がうかんでくる。
社会学的アンケ-ト資料によると、ロシアにはすでに特別な社会階層が形成されている。これは千五百万人、人口の約10%にあたる。一般にはこの人たちの年齢は四十歳以下で独自に生活費を稼ぎ、国には頼っていない。彼らの月収は一世帯当たりの計算で700ドル以上で最低生活を賄えるばかりか、預金もできる。まさに彼らこそ社会改革基盤の中心層なのである。
彼らの他に、所得を国に頼らない約四千万の人がいる。しかし、彼えらは生活水準がきわめて低いので自分の生活を賄うことにもっぱら没頭し、それ故社会的に見れば、比較的消極的な層である。
ゲルマン・グレフの経済プログラムはもちろんのこと、経済界、より正確言えば付加価値を作りさしている企業の利益のために作られたものである。だからこそ、このプログラムでは税負担の軽減や投資環境改善などがもりこまれている。そうしたことからこのプログラムの起草者は自分たちの考えを経済界が支持することを期待している。
またこのプログラムは明らかに経済界と国を分離しようとしている。これには、物的な刺激策や、公務員の保証と同時にその責任と権限を明確にできる熟慮した行政改革が必要となる。これに基づいて刷新された国家機関は“グレフ”グル-プの意見だと、新しい方針を積極的に支持するはずとしている。
一見するとこれはまったく説得力があるように思えるが、いずれにしてもゲルマン・グレフのチ-ムが一貫して自由主義の立場であることがよく分かる。同時にこうした社会基盤の堅牢さには多くの疑問があるとも言える。
第一に指摘しておくが、“支持”している社会グル-プが広範でないこと。これ自体問題ではない。これらの人々の特徴は社会的にはとても機敏なのである。ここ十五年間にロシアに現れた経済の自由や政治の自由をうまく「利用できた人々で、実際に“成功”した人々である。
しかしながらこれらの人々は政治の主体ではない。彼らには政府に影響を与えるメカニズムがない。彼らの利益を表現するのは、強力な組織政党かもしれない。ひょっとすると、この役割をはたせるのは、“SPS”かもしれない。しかし、“SPS”の政治力は金融産業グル-プとの密接な関係をよりどころにしているというより、むしろ末端組織や大衆との広範な結びつきをよりどころにしている。
“中間層”政党にとって代われるものとしては、社会で積極活動する人の意見を政治家や政府に伝達する市民団体かもしれない。民間の非商業団体が中心となっているこうしたシステムはロシアですでに形成されるつつあるが、しかしまだあまりにも弱すぎる。
このように“中間層”のあらゆる社会活動にもかかわらず、経済政策作りにたいするその影響力はきわめて限られたものである。これは中小企業についても同じようなことが言える。
大企業や国営企業では状況は一変する。そしてこれはまたきわめて本質的なことでもある。
90年代半ばにロシアで形成された“独占資本主義”は大資本と国家の緊密な関係の上に立っている。80年代末からわが国で存続した二つの企業戦略に言及する意味はある。一つの戦略は国家と最大限距離をおき、経済活動そのものが自分たちの問題を解決し、そのことが競争相手との戦いで生き残れるはずだとしている。二番目の戦略は国家との癒着を前提とし、国家機関や立法府の代表者をその中心に据え、あらゆる犯罪組織の“傘”よりもビジネス競争における“保護と支え”になり、国庫金を必要な方向に“回転”させることができるとしている。
1998年の危機はこの“新生ロシア資本主義”モデルの危機であった。第二の戦略に期待し国家とともに破産したものに代わり、発展に精進した組織が登場した。しかし問題は環境が基本的には変化しなかったことにあった。今のところ経験が人々に教えていることは、政府との密接の関係なしにロシア経済界のトップではまったく生き残れないということである。そこで短期的に見れば、第二番目の戦略は従来通りより効果があり、1998年8月の悲惨な結末にもかかわらず、多くの金融グル-プは古いやり方で政府と関わろうとするだろう。
このように見ていくと、経済政策の根本問題は権力の改革ということになる。今のところこの権力は中央でも地方でも古い国家機関が代表しているのであり、基本的には経済界との固い関係で生きているのである。こうした体制にあからさまに反対しているのは、今のところ、“新たなアッピ−ル”している干された官僚の少数グル-プだけである。
1992年のロシアで一種似たようなことがあったと思い起こす価値ある。あらゆる自由主義の宣言にもかかわらず、短期間にある改革主義者は退陣し、別の改革主義者は大金融資本や商業資本にために働き始めた。こうした利益には国内商品市場を急激に開放したことや、世界市場にロシアを一気に組み入れたことも客観的には一役かっているのであり、それは加工産業部門の大半を破産させるものであった。さらにまた国内金融市場を意図時に長い間閉鎖したことは、現業部門にたいする融資をきわめて高いものにした。たとえ一つのことが形式的にせよ、基本的な自由主義のスロ−ガンと一致していたとしても、もう一つのことは明らかに矛盾していたのであった。
こうのように事態が進展する危険は今も持続している。改革はいつも政府が主導するものだが、影響力のある利害グル-プに頼らざるえないし、これは国と経済界の関係にそれなりの優遇を前提としている。そしてもしこうした優先順位を政府が意図的にしかも公然と決められないとすれば、暫くすればいずれにしても、権力に集まっている人たちがそれらを自己の利害に基づいて、配分していまうだろう。
6月21日(水)
“安定化したロシア金融市場”(完)
-“国内アナリストの楽観的見通しには
西側のアナリストばかりか、投資家も同意している“-
(独立新聞、6月20日、アンドレイ・ヌイルコフ)
金融市場の状況は全体として安定した状態を保っており、これは多くの点で経済発展とロシアの主要輸出品目の貿易状況によるところである。統計数値はきわめて良いものである。五月の産業生産の伸びは、昨年同月比で10.6%となり、インフレ水準は低いまま維持され、五月の消費物価上昇は国家統計委員会の資料では、1.8%であり、年当初からでは6.8%となって、今年度予算の基礎とした数値(18%)を大幅に下回るものである。多くの専門家分析によると、2000年度のGDP成長は3〜5%としている。中央銀行の金外貨準備高は6月2日現在、199億ドルに達し、年初から74億ドルの伸びで、ほぼ60%の増加である。国家統計委員会の資料によると、2000年1月〜4月の期間、貿易高は1999年同期間比で31.9%の伸びで、406億ドルとなった。
年の半ばは2001年の予算編成の時期であり、今後の経済発展の見通しを立てる時期である。政府は経済状況についてかなり楽観的に見ている。来年度はインフレ11%、1USドル32ル-ブル年間平均レ-トで赤字のない予算となると考えている。OECD(経済協力開発機構)の予想でも、ロシア経済の見通しはかなり良いもので、2000年度GDP成長は4%、2001年度3%、2000年度と2001年度のインフレ率は20%としている。
金融市場の安定を促している肯定的な要因には、ロシアにたいする外国投資家の信頼の増大も含めることができる。大統領補佐官アンドレイ・イルラリオノフの資料によると、2000年4.5ヶ月の期間における資金流入総額は100億ドルで、これにたいし1999年全期間でも45億ドルしかなかったのである。政府政策にたいする信頼性は常に金融市場の決定要因であるが、現在のロシアにとっては解決すべき課題のことを考えると、最も重要な要因である。
このような経済発展は当然のことながら、真っ先に通貨市場に反映される。政府の予想分析では、年末の対米1ドル当たりのル−ブルレ−トは30.5ル-ブルとし、交換レ-トに関し金融当局の最大課題は国内通貨を支えることではなく、国内経済の利益も守り、対外債務の返済がロシア経済にとって負担にならないように(国内通貨の安定性)、通貨レ−トを最適に管理することである。この状況において、通貨レ-トの動向はきわめて安定した状態で推移するだろうし、ル−ブルをゆっくりと強化することにより、その急激な下落は1ドル当たり0.15〜0.3ル-ブルの範囲に止まるだろう。このような動向は、特にインフレの推移と国内に流入する膨大な資金量を懸念する中央銀行の政策によって決定される。
ロシアの国債相場は全体として五月の下落後完全に復活し、若干の国債は今年の最高値を更新した。ロンドン銀行債権団にたいする国債相場(PRIN、LAN)は現在額面の29.3%と29.6%であり、今年の最高値よりわずか1%低いだけである。国内向け国債の利益率は第7シリ−ズで年14.9%、第4シリ-ズで年34.0%である。ロシアの欧州向け国債の利益率は年11.96%(2001年)から年15.45%(2005年)である。また2028年に償還する国債の年利益率は15%である。こうした国内の状況全体が欧州向け国債相場を確実に上昇させ、2003年に償還する国債では92.81%〜93.85%ととなり、これは今年最高値である。
ル-ブル国債市場で最も大きな出来事は、国債(シリ-ズ21141)(償還期日2000年10月4日)公募競争入札であった。財務省は30億ル-ブル増刷の内、最大年利益率16.48%でこの債券に29億2千6百万ル-ブルをあてた。大体はこれは銀行の豊富な資金を当てにしたものであった。全体として国債市場の利益率はかなり低いままである。短期で年10〜14%、長期で最大41%である。
銀行のコルレス口座の残高増によりル−ブル手形の需要が増え、この市場の収益性は低下した。“ガスプロム”株式会社の手形利益率は一ヶ月もので年率15.5%、一年もので年率27.7%である。“スベルバンク”の手形利益率は年率11.7%(一ヶ月もの)と17.0%(三ヶ月もの)である。それにもかかわらず、市場における手形の割合は縮小している。“チュメニ石油会社”の手形は利益率年15.7%〜24%(決済期間による)
5月の暴落後株式市場は若干持ち直した。株価指数は予想通り、200ポイントとなり安定した。それでも市場関係者は決定にあたり、従来通り米国市場に注目している。ロシア証券取引所の6月5日〜9日の期間、日平均取扱い金額は246億ドルであり、これは先週より13%多いものであった。
さらに指摘したいことは、1998年の危機以来はじめてロシア企業が米国市場で自社株の公募を始める予定である。“モ−ビル・テレシステム”社の株式17%が取引に出されるはずである。この取引で3億8千5百万ドルの売上が見込まれ、他の要因、例えば対外経済銀行向けに15億ドルの融資割り当てとともに、これは市場にとって良い兆候である。
6月20日(火)
“ロシア経済は外国からの大型投資プロジェクトの受入れ準備ができているか”(完)
-“国内アナリストもこの問題では意見が分かれるかもしれない“
(独立新聞、5月29日)
5月15日モスクワで「ロシア、2000年、未来の見方」とのテ−マで米国投資会社“モルガン・ステンリ”主催の会議があった。会議には国際金融機関の代表者、国内で活動している西側大型投資家、実質上ほとんど全てのロシア政治学者、エコノミストが出席した。会議出席者の共通意見としては、改革実施についてウラジ−ミル・プ-チンを中心とするロシアの新首脳部に大きな展望があるとしている。危機脱出に関し新政府への様々な提言は本日本紙“政治経済”欄でダイジェストで掲載する。経済改革についてこのように多くのやり方があることは、新政府の課題がいかに困難なものであるか、その余りある証明でもある。ここでは発言者は次の方々である:
デヴィッド・ウオ−カ(モルガン・ステンリ社社長)
グレブ・パヴロフスキ−(実効政治財団理事長)
セルゲイ・カラガノフ(対外・国防政策会議幹部会議長)
セルゲイ・グラジイエフ(経済政策・企業国会委員会議長)
エフゲニ・ヤ−シン(経済大学学術担当責任者)
マルチン・ギルマン(IMFモスクワ支部責任者)
アレクサンドル・ジュ−コフ(国会予算委員会議長)
アレクサンドル・ショ−ヒン(融資政策国会委員会議長)
イゴリ・シュヴァロフ(内閣官房責任者、国務大臣)
デヴィッド・ウオ−カ(モルガン・ステンリ社社長):
きわめてタイミングのよい時期にこうした代表者会議を開催できてとても嬉しいです。この時期とは、ロシア新大統領ウラジ-ミル・プ-チンが大統領として活動は始める時期なのです。
ロシア大統領は就任演説で自由で、繁栄し豊かで強い、そして文明的なロシア国家の姿を見たい、とそれとなく発言しました。経済はどうだろうか。この国の状態は現在、1998年後半に予測した状態に比べれば、はるかに改善されています。
平価切下げと政府債務のデフォルト宣言により、国内総生産は今後低下し、もしかしたらス−パインフレも起きるかもしれないと誰もが予測しました。この予想に反し、経済は立ち直り始めました。1998年末、景気は底を打ち、1999年になると早くもGDP3%の成長ラインにまで達しました、
経済成長は今年の前半もまだ継続中です。「モルガン・ステンリ」社は常に控えめな予測を立てていますが、2000年もロシアのGDPは3%伸びると予測しています。しかしながら、この予測を上回ることはすでにはっきりしています。
勿論、我々の多くはロシアの発展を観察してきて苦い経験があります。そうしたこともあり、現在のロシアの経済成長はル-ブル切り下げと燃料価格高騰による例外的な結果だと、そう言う人もいるかもしれません。これは実際大きな要因であります。このことは輸入が拡大し、それが工業生産に影響していることからも証明できるものです。
しかしながら、構造的改革の証拠もあります。特に徴税分野です。疑い深い人はしばしば、ソヴィエト後のロシアの発展成果を過小評価しています。でもたしかに国家支出が大幅に減少したではありませんか。昨年度、国家支出はGDPの約11%でした。また昨年度、政府はソ連邦の債務約100億ドル返済したことは特筆すべきことです。1989年から1990年ごろに改革が開始されてからわずか10年間のことです。この間ロシア経済のほとんどは民間経営に移りました。
一つとても興味深い事実を述べてみます。ロシアの新大統領は選挙期間中に途方もない一般受けする経済政策を発表しないで有権者から絶大な信任を得たのです。彼の演説の最大のテ-マは、ロシア国家が基本的な経済、政治機能を遂行できるように、ロシア国家を強くする必要があるとしたことです。つまり、近年我々がしたことをする必要があると訴えたのです。
大統領が他の国の政府と現実的に対話し協調できると期待できます。最近IMFの代表ステンリ・フィッシャ氏が以前にはロシアにこのような現実主義をみたことはなかったと述べています。ロシアに関する我が社の中心人物ジョン・ポ−ル・スミットも同じ結論です。
これが本日の会議にちょうど手ごろなテ-マ「ロシア経済の投資増加の必要性」を選択した理由です。1990年以降ロシアへの投資は1999年にいたるまで低下するいっぽうでした。とうとう昨年になると、その成長は全部で4.5%となり微々たるものとなってしまいました。経済成長を継続させたいと我々が望むのであえば、投資額を増やす必要があります。問題は産業設備のおよそ75%が10年以上使用していることにあります。基本的には投資の多くの分野は企業自身の資金でまかなっているのです。ロシアの銀行融資は当面望めないないでしょう。したがってロシアの企業への融資は海外からのロシア資本により彼ら自身に融資されるようにすることがきわめて重要なのです。
ジョン・ポ−ル・スミットの調査によると、十九世紀末から二十世紀の始め、外国からの投資は直接投資せよ、株式投資にせよ、帝政ロシアの経済成長維持に大きな役割をはたしていました。1880年からの外国資本はロシア企業の株式市場で約20%ありました。1913年頃にはこの数値は47%にもなります。ヨ-ロッパ諸国とその企業は様々な分野で活動を展開しました。フランス人とベルギ−人はロシアの製鉄部門を独占し、またアメリカ人は石油や金といった採掘鉱業で特に積極的に動きました。ドイツ人が強かった分野は電子工学や化学産業でした。
しかしながら、1905年以降ロシアの銀行が資本市場で大きな役割をはたし始めるにつれ、西側の投資家は消極的になり、基本的には株式投資家となってしまいました。面白い統計がありますが、それは外国資本の重要性を証明しているものです。1914年、ロシア企業75社の株式がロンドン証券取引所に出回るようになりました。1885から1913年の間、ロシア経済の成長テンポは年間約6%でした。
勿論、その時からは多くのことが起きています。この数値は既に過去のものだと、みなんさんはおっしゃるかもしれません。それでは現在の状況を見てみましょう。ロシアの株式市場は多くの人がご存知のように、この十年間、上がったり下がったりしました。1994年から1995年に投資した初期の投資家は勇敢なパイオニアであったのです。主にこれは投機家であり、きわめて大きなリスクをおかし、膨大な利益を期待したのです。1996年の秋以降、株式市場は安定し、ロシア企業向けの資本誘致の大きな根拠となるほど安定していると思われました。外国投資家はこの時期、20億ドルの株式を買い付けました。
けれでもその後、1998年の平価切下げとデフォルトが続きました。現在市場への投資はドル計算でデフォルト前の約半分です。今チャレンジとチャンスとは、この市場に資本が流入する新たな段階が到来するようにすることです。
はたしてこれは可能でしょうか。出来るものでしょうか。よく言われるのは、こうしたことにはロシア自身に一定の条件が必要であると。
しかし、有望な一定の兆候は既に存在しています。私は新しい現実主義のことを言っているのです。投資家と企業間の話し合いは進んでいると、言ってもいい。きわめて有望な兆候があります。石油ガス部門ですが、大きな困難が例えば財政の不透明のようなことが、現在解消されつつあります。
我々はロシアで起きていることに大変関心がありますし、共感をもって接しているつもりです。しかし同時にプラグマテイストであり、リアリストでなければなりません。したがってロシアの友人と話している時強調するのですが、国の不適当な行動、とりわけ少数株主の権利保護や、不透明性は外国資本を安定的に誘致する上で大きな障害なのです。この点に関しては喜ばしい事実があります。大統領と大統領府は、税制問題を解決するときわめてはっきりと述べましたし、ロシアの土地改革問題に関しては前向きに回答するつもりでいます。
グレブ・パヴロフスキ−(実効政治財団理事長):
私はロシア政治において共産主義と関係ない部門で長年働き、ロシアの影の政治についてきわめて多くの知識をもっている人間です。ロシアの政治は常に影の部分があり、それは今日でも多く残存しています。
ロシアの政治舞台は常に憲法でも国家の法律でも規制されない一種の不正取引で権力を実現するきわめて特殊な地方の社会制度と言えます。これはロシア大統領にウラジ−ミル・プ-チンが選出されたことで、ロシアにいる我々すべてが期待しているように、その存在を否定されと思われる社会制度のことです。
政府が今日現実に直面している主な問題をあげてみます。先ず指摘したい事実とは、ロシアの政治体制は旧ソ連時代の地方行政機構の枠組みで組織されているということです。
ソ連邦は一種独特の形態でした。政府は、地方行政機構を中央で統治するシステムとして作られたのです。統治は一つのセンタ−から行われたわけですが、体制全体や国全体では独特の地方行政スキムがあり、その内部で実は指令管理が行われていたのです。
民主主義革命の当時、この中心は破壊されましたが、その土台は残ったままです。この土台とは、ロシア国民の日常生活や暮らし方、政府が実施する管理のやり方、また政府にたするこれらの影響の仕方が同じだということです。国民と政府の間には古い四段階の管理システムの範囲内の関係を除けば、いかなる相互関係もありませんでした。この制度は新しい体制の重大問題になったのです。
“民主主義の反乱”の当時、全ての地方行政機関は自由となり、自主的機関となって中央政府とはてしない取引したり、相互に取引きをし始めました。その結果、国は一種の巨大市場と化し、政治の決定が事実上売買されたわけです。さらにどのような中央政府の決定も、それが政治取引の場に出品されてはじめて意味をもつようになったのです。
第二の点は一般に知られていることですが、単一中央集権管理が消滅したことにより、司法権力が存在しなくなった点です。この原因に深く触れるつもりはありませんが、ただ言える事は、このことは重大な結果を招いたということです。つまり、二つのタイプの所有者によりあらゆる司法権力が“民営化”されたことです。一つのタイプとは、地方自治体であり、もう一つは影の政治グル-プということです。
影の政治グル-プ(ロシアでは金権独占グル-プのことである)は、膨大な政治資金を集めるセンタ-であります。政治資金とはなんでしょう。先ずこれは、わが国では資本家グル-プ、特に大資本家グル-プのとって、中央政府の決定に影響を及ぼ力であります。この十年間ロシアでは大企業が本来の市場つまり商品競争を前提とする市場ではなく、政治の市場つまり政治決定をする市場に一貫して進出しました。
これは中央集権政治の実行を不可能にしました。影の政治市場が存在できる条件としては中央政府に全国的に同じやり方で決定を施行する能力がない点や、他ならぬロシアのマスコミを通して伝える能力がないことです。まだ全てのものが理解しているわけではありませんが、わが国には政治を連携させる中央集権システムが存在していません。その上、基本的には分権機能も存在しません。わが国ではこの肩代わりをマスコミがしています。ここで指摘したいことは、これがロシア政治市場の中央機構であり、無論非民主的機構ですが、その資金の大部分は裏からの資金なのであります。これは広告主からの料金によるのでもなく、視聴者を拡大するやり方でもなく、結集した政治資本家のグル-プにたよるやり方です。彼らは中央でも地方でも大衆の行動を何らかの形で事実上管理しているのです。
このマスコミ機関という形態でカムフラ-ジュした政治統治システムは問題の一つです。何故かと言いますと、政府にはこの機関を通す以外には国民とのパイプがないからです。ところでわが国マスコミが報道することは、表面的にはニュ−スであったり、解説記事であったりします。実際にはこれは、皆さんも知っての通りプレスリリ−ス機関なのです。わが国のマスコミは情報を提供するのではなく、何らかの政治利害関係にあるグル-プの報道発表を伝えているのです。このグル-プはどれも政党ではないし、公認の社会団体でもありません。
さらに考慮すべきもう一つの点に注目したい。政治取引の場が存在することは、影の政治権力の中核が保護されていることが前提となります。彼らは各々、安全局のような自分の軍隊をもっています。これは事実上、国家機関の合同体に似たようなものです。市場からだけでなく、法律や司法から身を守るためのものです。
プ-チンに提起された困難な課題とは、政治取引の場という仕組みを解体することであり、出来る限り現憲法に触れないでやることです。この改正にも現在はこの政治取引の場に頼らないと不可能なのです。方法論的に見れば、プ-チンの課題は簡単です。ビジネスと政治を憲法の枠組みに戻すことなのです。ところが影の政治システムつまり、影のグル-プ間で取引するシステムの枠内では通常の議会のやり方でやっても不可能です。さらにプ-チンも議会以外の方法は望んでいません。従って現在の問題は、国政の体系化、地方行政機関の改革、さらにわが国では表面上にか存在しない本当の多党制を復活させる上であらゆる憲法の可能性を行使できる総合対策のようなものを作るこのなのです。
セルゲイ・カラガノフ(対外・国防政策会議幹部会議長):
国の経済・政治の将来に関し、楽天主義者だとの評判はありませんが、それでもここに参加されている懐疑的な人よりは私の見解は楽天的であります。
私の楽天主義の理由を説明しましょう。第一点は現在政府に対する国民の信頼が回復する可能性がある点です。国民とビジネスはこれを望んでいますし、我々はプ-チン閣下に期待しているのです。ロシアの経済界でも国外でもロシアへの投資の最大の障害は現行の法制度、徴税、経済全体の条件であると主張している多くの評論家の意見には同意しがたい。ロシアにたいする投資が少ない最大の原因とは、国民の大半と経済界の大半が政府をまったく信頼していないことです。
今では事態は変わっています。新大統領もどのようにして政府への信頼を回復するか知っています。このが第一点です。
第二点は現在政府には議会とうまく協調し、場合によっては議会を操るきわめて大きな可能性が出てきました。少なくとも大統領は今議会では多数派です。大統領は必要な法律を容易に通過させることができます。
第三点としては国民とエリ-トは法律の遵守と秩序を求めています。国民とエリ-トは、汚職防止に厳しい対策をとり、国の上層部から法秩序が回復させるのであれば、プ-チンを支持するでしょう。反対勢力の大半は混乱に陥っているか、戦意喪失状態か、それとももっぱら力を蓄えているだけです。
プ-チンはある程度リベラリストであり(それ故、野党右派の指導者も共感している)、強権国家主義者であり(それ故、ほとんど会派がプ-チンを支持している)、無論のこと愛国主義者なのです。したがって、愛国主義思想で武装している共産党やその他の政党は今や、その影響力を失っています。少なくとも一年や二年の間、ウラジ−ミル・プ-チンには指導者としての十分な信任が与えられるでしょう。興味深いのは、世論調査から明らかですが、国民が近いうちに経済成長の見通しと法秩序の回復が明らかになるのであれば、若干の痛みは我慢するということです。
さらに良いニュ-スがあります。チェチェン戦争ですが、外部世界には悪いニュ−スと見なされていますが、肯定的な面もあります。この紛争は国のエリ-トや国民の大部分が嘗めた屈辱感からロシアを立ち直らせたのです。この屈辱感は外の世界での敗北、例えばユ−ゴスラヴィアにおける敗北ばかりか、国民が味わった自国政府による屈辱感でもあります。こうした感情は明らかに存在していましたし、それはある意味でワイマ−ル共和国に似たような状態に国を陥れました。今我々はポスト・ワイマ−ル共和国の状態にいます。これも良くなっている点です。
今後の事と国民が何をできるか、その点について若干述べてみます。現在の政治状況で最も注目される点は、統治にあたりプ-チンの大きな自由があることです。プ-チンにはゴルバチョフやエリツインと比べると、はるかに有利な状況があります。その理由に関しすでに何点か触れましたが、例えば野党勢力が大きくないことや、プ-チンには大きな期待がかけられていることです。プ-チンが望み、そして効果的な官僚機構をうまく作れれば、望んだことほとんど全て実行することができるでしょう。
こうした自由は無論のことプ-チンに大きな力を与えますが、同時に一定の責務を負わせるものです。1992年と1996年に多くの可能性がありましたが、当時多くのことが何もなされないままでした。もし経済の構造改革にはじめて対応した経済チ−ムを作ったプ-チンが迅速に行動しないとすれば、このチャンスもまたもや逃がしてしまうことでしょう。
プ-チンがすばやく動いていると証明できる兆候が今見られる。先ずは連邦機関の組織改革と七つの大行政管区の新設に関する命令、それに十八世紀、十九世紀時代の不可思議な任命職制度を作り出している地方行政府の基盤を段階的の壊していることです。
それでも、国の近代化、構造改革、強化のかわりに全体がロシア独裁主義の方向に進む可能性もあります。その場合、国が建て直されることはなく、ただ反対勢力が一掃されてしまうでしょう。この傾向は数日前に目の当たりにしました。ロシア最大の独立系テレビ局が理解に苦しむ強制捜査をうけたことです。
ロシアの将来はとても明るい、その可能性もあります。現在我々は過渡期にいるのであり、何らかの新しいステップを思案している最中ですが、共産主義時代以降はじめて発展の局面が現れたのです。この十五年間、どの政府も国の長期発展計画作りを考えもしませんでした。
現在は長期的展望にたって国家発展計画を作れる可能性が存在しています。これらのプランはきわまて合理性のあるものです。そしてこの一年間で、今後楽天的に考える根拠があるかどうか、我々は理解するだろうと思います。それでも現在はまだこうした可能性があるのです。
さらにもう一点、これは対外政策です。今現在、もちろんプ-チン政府の対外政策に関するどのような公式文書もありません。しかしながら我々が知っている、この分野の声明、行動、計画からすると、楽天主義の根拠を探すこともできます。先ずプ-チンは愛国主義者であり、また大変な実務家でもあります。彼は戦略ゲ−ムを弄ぶことは望んでいませんし、経済を中心にロシアの対外政策を集中させようと考えています。
その他、ロシアの指導者の誰よりも、ロシアのWTO加盟を望んでいることを認めていますし、ロシアとEUの関係についてもきわめて熟慮した文書をつくっています。さらに核実験禁止に関するSALT-2条約の批准は、大統領がつまらない戦略ゲ-ムではなく、実際に信頼できる雰囲気つくりをしようとしている証明でもあります。NATOに関する彼の動きはその考えの正当性を裏付けるものです。大統領は中国にたいしても、旧ソ連邦の国家、例えば白ロシアやウクライナにたいしても動き出しました。これは必要な方向への動きだと思います。例えば、ウクライナや白ロシアとの会談では、とても礼儀正しく、友好的ではありましたが、きわめて強い調子でもありました。事実上プ-チンは何らかの懐古的な感情がなく、旧ソ連の国家と良い関係を発展させる用意のあるグル-プを代表しているのであり、いかなる場合でもロシアの根本的な利益を犠牲にすることはありません。これは良い前兆です。その他の国ともきちんとした関係になると思われますし、それによりこの二年間我々がいた悪循環から抜け出すことができるでしょう。当時、おそらく中国を除けば、ほとんど全ての国家ときわめて緊張した状態にありました。
セルゲイ・グラジイエフ(経済政策・企業国会委員会議長):
現在ロシア経済には前向きな側面がありますが、ロシアの急激な回復をやめさせ、不況にする若干の要因を無視することは有害であると警告したいと思います。
昨年夏から経済成長のテンポは実質的にはまったくありません。回復は1999年12月になってはじめて現れ、三月まで続いていました。この回復傾向は国民の手元資金が増えたことによるものです。
実際今ではこの回復傾向は終わりつつあるとも言える。辻褄が合わないのは、経済成長テンポの緩慢がその可能性がまだ完全に消滅していないのに起きていることである。今日現在、現業部門の企業操業率は約50%にすぎません。産業能力の半分が稼動していないわけです。
企業の経験からしますと、マクロ経済の好調が持続している場合、こうした休業状態にある企業の半分ぐらいは操業開始してもいいはずです。つまり現存の生産能力に基づけば、経済成長力は少なくともまだ25%はあります。これは若干の大型投資の誘致は必要であるが、そのことを計算に入れていないものです。
投資環境を改善する上では、国内の貯金があまりよく活用されていません。手元にある小口の貯金は生産拡大に投資されていますが、その他の貯金はどこかに蓄えられているか、それとも外国の口座に預けられています。
現業部門の発展を監督するチ−ムつくりはきわめて重要です。中央銀行は将来性のある企業を担保にして、商業銀行に融資する制度をつくるやり方でこの方向に動きはじめました。こうした制度は政府が資金面から現業部門の問題に対応する上でとても必要なことです。
安定した経済成長を確保するためには、政府の政策は現業経済部門に投資額を三倍増やす問題を解決するものでなければなりません。この投資額は少なくとも単純再生産を確保するためには必要なのです。現在現業部門にたいする投資水準は老朽化した生産設備を交替するためには明らかに不十分です。
不況から安定した成長に移るためには、新しい技術に基づくロシア経済を全面的の法律で支援する必要があります。ロシア経済の課題とは投資環境を大幅に改善することです。このためには金融面で好条件をつくるとか、国家の金融政策とか、投資環境をバックアップするあらゆるものを広く十分に活用することが理にかなっています。
残念ながら、市場改革の十年間、市場そのものはほとんど機能しかなったと総活せざるえない。近いうちに競争関係の発展と市場における独占禁止が経済成長の目安になると思います。
今現在、国民の所得は安定した生産回復をもたらす需要調整には不十分なものです。したがって、ロシアではきわめて低い賃金を正常なものに回復することは、経済成長を確固とする上で最重要な要因の一つです。
モスクワで最近開催されたロシア生産者大会で、現業経済部門の振興対策が議論されました。このフォ-ラムの参加者は政府、中央銀行、連邦議会にたいし、経済成長を支援する具体的政策をつくるよう訴えました。早い時期にこの申し入れが検討されることを期待しているところです。
ロシアの経済成長を阻害する可能性のある第一番目の危険は、生産設備の老朽化により生まれるかもしれません。産業基本資産の老朽化は三分の二以上にものぼり、近いうちにその半分が使いものにならない状態になると予想しています。これを補うためには今すぐに投資レベルを三倍に引き上げる必要があります。
二番目の危険は需要レベルです。これは改革当時、特に1998年の金融破綻後、国民所得が著しく低下しましたが、このことだけでなく、対外債務の大きな負担が国家予算を圧迫してることにもよるのです。
第三番目は、予想される外国資本の流入により経済に必然的に生じる大量資金の利用方法が不透明なことです。ロシアの専門家の誰しも、近々外国資本が大量に流入することは疑っていません。事実上それはすでに始まっています。中央銀行の外貨準備高が急速に上昇していることは、この動きの結果なのであります。
ロシアの金融証券市場は、ロシア企業の株価を元に戻せば、膨大な利益を生む儲かる場所なのです。現在株価は類似の企業資産を世界の基準で評価すると、低すぎます。そこで投機家は株価相場が上がり大もうけするためにロシア金融証券市場に参入する好機がきたとよく理解しています。この市場に投機目的で流入されると予想される金額は、様々な分析がありますが、200億ドルから300億ドルといわれています。この額は前期にロシア市場に出回った額に近いものです。
しかしながら、実際にはこれは資金量が二倍になることを意味します。そしてここでも二つの危険が生まれます。一つは通貨市場に自由な資金が流入することによるインフレであります。この危険に通貨当局は1996年から1998年にかけて、国債の利率を上げて対抗したのでした。このやり方は事実上通貨量を抑制しましたが、同時に自己破綻により金融破局となったわけです。遺憾ながら、わが国の通貨当局は再びこの方向に動く兆候が明らかに見られます。そうなると再度現業部門への資金流入が阻害され、金融証券投機市場において国により保証された高利益が人為的に確保されるわけです。
二つ目の危険は中央銀行が外貨流入量に見合うル-ブル量を発行しない場合、起きると思います。そうなると、ル-ブル交換レ−トは急激に上昇します。これは1994年から1996年にかけて起こり、現業部門の競争力にとって悪い影響をあたえたのです。
私の考えでは、通貨の流れを規制する国家当局は現業部門発展に資金が流れるような措置を講ずるべきです。振興制度が動き出し、現業部門への民間投資誘致について国家保証のメカニズムが完全に利用され、良いマクロ経済条件が作らるのであれば、この余剰資金は生産発展に向かうでしょうし、企業の財政状態は明らかに改善され、経済成長が確実となるでしょう。そうなると外国の投機資本により現業部門が成長し、ロシア経済は年5%以上安定成長することができるでしょう。
もしこのようにならないとすると、投機資金の流入によりル-ブル交換レ-トが上昇するか、それとも新たに金利引上げ行われ、投資を三倍にするという課題実現は不可能となります。このシナリオ通りになりますと、産業における生産資金量は四分の一縮小し、三年後には半分になってしまいます。その結果、五六年たちますと、ロシア経済は客観的にきわめて厳しい資源が制限された状態に陥ります。産業における固定資本から見ても、経済基盤から見ても、確認済み鉱物資源から見ても、このように言えると思います。
安定的で急速な経済成長に移行するための経済的にも政治的な好機を生かす正しい経済政策を選択する上で、現実的には数ヶ月しか残っていません。経済政策で正しい対策をとれれば、これはまったく可能なことです。
エフゲニ・ヤ−シン(経済大学学術担当責任者):
先ず私があらためて述べたいことは、ロシアのエコノミストが今後の国家発展プログラムの作成にあたり、ここ数年間に起きたことの評価に関し意見が分かれていることです。これはしばしばきわめて激しいものです。そして彼らの過去にたいする見解によって、今後の発展プログラム作成のやり方がそれぞれ選択されているわけです。
一つの見解は、ロシア経済の窮状は主にこの十年間の改革に誤りがあったとする立場です。また他の見解ですと、確かに誤りはあったが、しかし共産主義時代の70年間にこうしたアンバランスが蓄積したのであり、それが早急なる問題解決を不可能にしているとの立場です。
私の考えですと、基本的な誤りはロシア政府やIMFその他の金融機関がポスト共産主義のロシアにおける市場改革の困難を過小評価したせいではないでしょうか。今日の最大の課題は、やってしまった誤りを修正することです。
改革のテンポがあまりにも遅かった、これにたいする非難ですが、元政府閣僚の一人として言えることは、急速な進展は不可能であったということです。この理由は簡単で、わが国の政治社会状況ではより本格的に前進させることが不可能であったのです。もちろん、これに関し余力はあったのですが。
そこで将来のプログラムについて述べてみます。今後十年間のロシア発展長期経済戦略を作成するというプ-チン大統領の考えには、恵まれた条件があると言えます。これは緊要な課題でありますし、これを解決するにはわが国に現在現実に存在する可能性の方向を明らかにする必要があったのです。
極端な見解を代表しているのが、国の経済規制を強化する必要があるとする立場で、現存の生産能力で需要の刺激し成長をはかることに重点をおいているものです。この立場はル-ブルレ−トが低いこと、独占生産品とサ−ビスの価格を規制することを前提としています。私の前に発言したグラジエフ氏は極端な左よりの立場の代表者であります。同氏は同時にロシア共産党が提案しているプログラムの作成者でもあるわけです。
もう一つの極端な見解とは、これは主に世界経済の経験をよりどころにしているものです。これを支持している人によりますと、ロシアの経済成長には全市場部門をコントロ−ルし国の支出を大幅に削減するため、出来る限り経済の自由が必要であるしています。この立場の特徴は、ロシアは欧米諸国といった先進諸国と肩をならべるのではなく、東南アジア諸国を目標とすべきで、とりわけ国家支出を大幅に抑え、この十年間で大きな飛躍をなしとげた諸国を目指すべきだとしています。例えば、タイやマレ−シア、シンガポ−ル、中国といった諸国です。中国を例にあげますと、GDPにおける国家支出の割合は多くのエコノミストの評価によりますと、13%です。ただし中国には国による年金制度はありません。もっとも民間の年金制度も実際上存在しません。あるのは国営部門における社会保障だけですが、これは12億国民の中、たったの一億人にあてはまるだけです。
この中間の見解もいくつかあります。その一つの代表的立場は、グレフ氏の下で作成されているプログラムです。このプログラムは、競争条件の均等化、経済の規制、市場参入の緩和、最も“有害な”税金とりわけル−ブル取引税、販売税、また所得税やその他発展的要素のある部分の課税を下げて税負担を当面相対的に若干下げることを前提としています。
このプログラムはまた国家機関の抜本的改革も前提にしています。今日この改革のいくつかについては既に触れられています。私から見ると、最も重要な点は司法制度の改革であります。
現在ロシアの司法機関はきわめて重苦しい状態にあります。それは法律の分野で経済発展を支えることができません。そうしたことで、わが国ではとても頻繁に汚職や犯罪が発生しています。これは国の側からの反撃がないからです。そうした反撃の意志があったとしても、裁判所の決定があてになりません。思うに、各知事に続きプ-チンは司法問題に着手するでしょう。これはきわめて正しい決定となるでしょう。
さてロシア経済の最大の構造問題はなにか、それについて若干述べてみます。問題は次の点にあります。改革を継続すれば、成長の条件が生まれますが、そうやるのか、それとも二年から二年半後に新たな危機がロシアに待っているのか、その点にあります。
私の考えではロシアの最大の問題は、非市場部門の問題だと思います。これは経済の現業部門のことです。この問題はソ連時代から競争力のない巨大な経済が存在していることに起因するのですが、これは変化に対応する能力がありません。それは正常な市場環境ででは機能できません。今日それが存在しているのは、主に他の部門、経済の健全な部門のおかげなのです。
この部門を克服するのか、それともソ連時代の運命が我々につきまとうのか、そうなれば危機は継続するでしょう。
現時点でロシア経済における非市場部門は我々の評価では、全企業の25から40%です。
今日ここで、ロシアの産業振興を今支援することが必要であるとか、独占資本にたいし厳しい規制が必要であるとか、物価の急速の上昇は抑えるべきであるとか語られました。しかしながら、問題は専売品の価格安定がどれだけの期間維持できるかにあります。
今現在でも“ロシア総合電力”株式会社代表のアナトリ・チュバイス氏と“ガスプロム”の責任者レム・ヴャヒレフの間で、請求書にしたがいチュバイス氏は“ガスプロム”に支払ってよいものか、そうでないのか、これで論争がおきています。
“ロシア総合電力”株式会社の最大の問題は、同社が非市場部門としては最後に位置する債権者であることにあります。債権の半分は生産企業と農業経営体であり、電力料金を支払っていません。その結果、“ロシア総合電力”株式会社にはガス料金を支払う金や、動力企業や燃料産業を正常に維持するための投資資金もありません。
したがって民営化時に非市場部門の企業が閉鎖されなかったり、生き残る能力のある企業を再編しなかったり、政府が正常に操業している企業を市場に参入させないでいると、ニ三年後にはロシアには大きな燃料・エネルギ−危機が訪れるかもしれません。現在国内市場での石油価格は世界の価格のニ〜三分の一です。
民営化は痛みを伴わないものではありません。しかし同時にこれは深刻な問題でもあり、選挙に勝利し上機嫌であるプ-チン大統領が真剣に取り組まざるえない問題です。この時プ-チン大統領はル-ブルレ−トの低下と高い国際石油価格の恩恵をうけていました。
むろん、高値の石油価格はロシアの助けにはなりますが、ロシアを救い出すことはできません。石油価格は国内でも国外でも正常なものでなければなりません。これは、経済が早急に克服しなければならない最大の関門です。言うまでもありませんが、この問題を解決するには条件が必要であります。本格的な投資が求められますし、投資環境の改善とか、国内外の資源を集中させる必要があります。
そこで資本の流出についてニ三述べて見ます。驚くべき数値がありますし、それはまたわが国がこの問題をうまく解決していないと指摘する場合、西側の最大の論拠としているのです。ロシアから流出する資本総額のほぼ半分は国際収支に用いられるものですが、これはロシアの資本です。これはロシアで行なわれている業務を操作するために持ち出されるもので、たんに企業が国外で取引しているだけなのです。その理由は、彼らがロシアの銀行を使って仕事をしたくないということです。企業の多くは貸付け金を銀行に返済していませんが、企業を信用していない銀行を企業は信用していません。この不信の悪循環が影の経済を生み出し、資本の流失を引き起こしているのです。
私の見解では、資本流出問題の解決は闇の経済の合法化の問題なのです。そこには確かな可能性があります。大統領はロシアの経済界、社会、労働組合、国会に面と向かい、一種の国民合意の契約を提案し、今日経済で盛んである闇経済を拒否するよう訴えるべきです。
若干の基本指標を見ますと、最近投資環境がある程度改善されています。とりわけ、政治の安定、マクロ経済の安定要因をさしているわけです。まもなくロシアの国家予算が施行されてから半年になります。
ロシアの経済状況の変化で重要なポイントは、始まった民間投資の成長であります。このプロセスは昨年9月から見られるものです。これはまた際立った出来事なのです。
全ての人は、ロシア経済の今日の回復は1998年危機やリ−ブル切り下げ、石油価格の高騰の結果だと、それを理由にしています。もちろん、その通りです。しかしこうした要因のおかげてロシアに、設備刷新のためによりいっそう積極的に投資している企業が現れたののです。投資家はだいぶ以前からこのシグナルをまっていたのです。これは実のところ、具体的な抜本的変化から見れば、状況改善のほんの端緒なのです。
もっとも、否定的な面も存在しています。所有権の擁護にしましても、ロシア企業の透明性にしましても、団体の運営にしましても今のところ基本的な変化はありません。これは政府や大統領、国会議員だけの仕事でないと言いたい。これはまた世界経済と協調するために定められた行動基準を長い間身に付けようとしていたロシア経済界の仕事でもあるのです。
我々は相変わらず曲がり角にいるのですが、今は可能性の窓が存在しています。大統領は正しい方針を示す必要がありますし、もうじきこれを実行するでしょう。
経済成長の可能性はありますが、これにはよりいっそう慎重に取り組む必要があります。現在多くの人が緩慢でない急速な成長が必要だと述べています。しかしロシアに実際必要な成長率はおおよそ年間8から10%でありますが、この数値には三段階を経ないと到達できません。
今後ニ三年で完結せねばならない第一段階とは、キ−ワ−ドは信用です。この時期にロシアは世界の金融経済界から信用を回復する必要があります。国内で自国の信用の回復と投資環境を改善しなければなりません。
第二段階とは国外国内の投資を急激に増加させることであり、ロシアの国際収支内容を変えることです。
第三段階とは、急速の経済成長の段階です。この発展パタ−ンは白ロシアの例のように不健全な成長を性急に刺激するよりはまともなものと思われます。白ロシアではルカシェンコが「生産力を早く高めるように努めろ」と発言しています。しかしそこでは粗悪な製品が生産されるだけです。我々はこうしたものは必要ありません。ロシア経済の経験では、国が介入しない所でははるかにうまくいっているのです。コンピュ−タや新しいテクノロジ−、通信機器がよい例です。ここは国が介入していない部門なのです。しかしそこで最大の成長をしているのです。
もちろん、世界の中ではたいしたことはないでのすが、次のことに注目していただきたい。1998年から、当時国民の所得は低下していましたが、ロシアのインタ−ネット利用者数は2.5倍となりました。このテンポはさらに伸びつづけるでしょう。ここには大きな市場と大きな潜在力があります。
他の部門でもこうした発展を期待できると思います。現在機械製造が有望であります。この部門は他の部門と比べると最も非効率的な企業が存在するところでありますが、ここには有能な人材や技術力が集中してますし、市場形態の経営化の意欲が大きく現れています。
マルチン・ギルマン(IMFモスクワ支部責任者):
私は過去について述べるつもりはありませんが、ヤ−シン氏の意見には賛成すべきと思っています。最近までロシアの専門家も外国の専門家も、例えばIMFもそうですが、ロシアにたいしあまりにも楽観的に見ていたと思います。我々は過去の体制による負担を忘れ、実現できる改革のテンポを高めに設定したのです。実際、若干失望したのです。
現在我々はロシア政府と仕事をしていますが、投資環境を改善するためにこの国が通るべき道が見えます。安定した成長を確保するには、マクロ経済の安定を確かなものにすることと、構造改革が必要です。このことはある意味で今日の会議が若干時期尚早とも言えます。私は“モルガン・ステンリ”社のあらゆる尽力には敬意を表すものですが、会議はあまりにも早い時期に行われ、首相もまだ承認されていません。新政府が仕事に入るにはまだ数週間あります。その時になってはじめて、新政府がどんな旗印で仕事を行う意向であるか、分かるはずなのです。
プ-チン大統領とカシヤノフ氏、それに長期政策作成センタ−所長ゲルマン・グレフ氏を中心とする彼らの同僚たちは、遅れをとりもどし、現在の有利な状況のめぐりあわせを利用するためにロシアは迅速に行動する必要があると強く思っている。ここで言っているのは、高い石油価格と強いル-ブルのことです。これを利用し、経済政策の基本部分の具体化を始める必要があります。当然のことながら、これには予算面も国民も一定の努力が求められます。
現在はロシア政府がやろうとしていることにどのような秘密もないと思っています。これについてはエフゲニ・ヤ-シン氏がきわめて広範囲にわたり発言しています。私としては彼の発言の若干の点についての反復にとどめます。税制改革は課税率の変更や、税制の簡素化、その透明性も含め、断固として実施する必要があります。国税省の運営の仕方も改革する必要があります。
同時に統一予算も補助金をカットし身軽にするべきです。ロシア政府はいくつかの具体的提案に関してはすでに少なからず実施しています。
さらにもう一つの問題点は社会保障です。現在これは、税政策でできるようなことも入れてきわめて幅広く網羅しています。
経済をもっと安定した価値のあるものにすることがきわめて必要です。通貨の流通をもっときちんとすべきです。ヤ−シン教授が暖房、エネルギ-、鉄道それに現物取引による決済方法をなくす必要があると、すでに触れました。未払いが過去のことになるように、物々交換取引は一掃せねばなりません。
現在まで産業構造の改革問題や国内の投資環境を変える問題は解決していません。私はヤ-シン教授が述べたこと全てについて完全には同意しませんが(多くの点で彼と意見が一致していることは不思議ではありませんが)、それでも司法制度の改革、特に取引や事業に関する法律の変更は必要ですし、重要であるという彼の考えには同意せざるえません。
さらにもう二点について述べたいと思います。第一点としては、銀行機関の改革に関し、今後強い対策をとる必要があるということです。今日までこの分野の状況改善のため取られた措置は、文書で提出されたものと比較すると、きわめて中途半端なものでした。
さらにもう一点としては、土地所有問題です。土地所有権問題の解決は国内の投資環境を改善する上でとても大きなシグナルとなるはずです。
これまで私が指摘した多くの点は、世界銀行やIMFの努力にもよりますが、今までのロシア政府の経済政策にすでに盛り込まれてきました。これらは政策は、IMFの専門家ととても緊密な協力関係にあるゲルマン・グレフ氏のグル-プでも生かされてきました。グレフ氏が提案している多くの点は私も支持しています。そして今最も重要なことは、これらの提案が新政府にどの程度採り入れられ、またそれが採り入れられたとしても、現実に具体化するのか、それともまたもや最上の時期まで延期されるのか、見極めることです。政府が最初の一歩をどのように踏み出すか、それまでこの結論は見合わせたいと思います。
今現実にロシアには再出発できる可能性があります。そして問題があるとすれば、こうした良い考えが現実の政治でどの程度具体化されるか、その一点だけです。我々IMFとしては、政府が基本プログラムの公表に迅速かつ効率よくこぎつけ、必要な改革の意味をロシア国民に説明することがきわめて重要と考えています。
もちろんのこと、全ての考えを直ちに実現することはとても困難なことです。しかしロシアもIMFも、再出発の息吹が現実に訪れたことを理解する必要があるのです。そして全ての人が願っていることは、この再出発の息吹がロシアを危機から脱け出させることなのです。
イゴリ・シュヴァロフ(内閣官房責任者、国務大臣)
ちょうど一週間前に我々は昨年度の民営化の結果の検討を終えたところです。これは基本的には1999年度における我々の仕事の総括にあたります。我々は1991年から1992年に始まった民営化の基礎を築き上げました。
民間企業の数は現在国営企業数を上回っていますが、資産を見ますと、現時点では国のほうが大部分を占めています。様々な評価からしまして、国が資産を全面的に保有しているか、あるいは株式会社の資産54から56%を保有しています。
投資環境と我々の仕事は直接結びついています。今年我々が民営化と関連し、投資家にどのようなことを提案するつもりか、お話します。国が所有しているものには、さほど多くの大企業は残っていません。五月末から六月始めにかけて、政府は一連の株式売却の最終決定をするはずです。「オナコ」の株式85%、「ロスネフチ」の株式の25%プラス1株、「スラヴネフチ」の株式19.68%です。このプランはすべて重要であると考えています。と言うのもこれらは予算目標の達成と関係しているからです。ちなみにこの四つの物件全てが売却されますと、予算目標を数倍上回ることになります。
さらに「ルクオイル」が夏までにここ五年間の決算報告を行い、同社の株式が国外でも売り出せるように準備することを期待しています。この会社の15%の株式は現在の国が保有しています。二ヶ月前ロンドン、ニュ−ヨ−クで行われた会議によりますと、この株式の売却計画は100%うまくゆくはずです。ただし同社の株価が年末までに15ドル以上にならばい場合には、この売却は行われません。
それはさておき、今触れた株式売却計画にもう一度戻りますが、「オナコ」社の株式は現在、三つの石油持ち株会社にとって必要なものです。この三つの会社とは「ルクオイル」、「ユコス」、「シブネフチ」で、経営の強化を求めています。これはまた「スラヴネフチ」にも関係があることです。我々は昨年度わざとこれらの会社の民営化を進めませんでした。当時ロシアの投資家の要望はあったのですが。けれども、民営化の決断を下す場合、我々にとって重要となる要素の一つは、ロシアの投資家と並び競争入札に参加する用意のある外国の戦略投資家の存在があるかどうかなのです。
この他に、国が事実上事業の発展を阻害している、いわゆる民営化の不十分な企業の株式の売却についても、積極的に作業を進めています。今年、こうした株式銘柄が約1000売りに出されるでしょう。一般にこうした企業は仕事があまりうまくいっていませんが、ほかにやり方がありません。8月15日までに我々は民営化に関する新しい法律を国会に提案するつもりです。これにより、信用取引や指名入札を含め、株式売却のやり方を大幅に拡充する予定です。この法律は先進諸国の民営化のやり方のあらゆる良い点を採り入れたものと思っています。これは体系的でよく熟慮された文書ですし、正常な条件で関心のある投資家に株式を売却できるようになります。
何故に我々が直接売却のような資産売却方法を導入できるのか、それは手続きを完全の公開し、透明すれば、指名入札による売却でも根も葉もない噂は飛ばないと思うからです。もっと悪いことは、競争入札と言いながら、実は直接売却が行われていることです。
投資環境についても、我々の基本課題は外国資本の大部分が先にも触れました巨大石油企業に流れるように民営化プロセスを仕向けることです。外国の戦略的大投資家が私が民営化が不十分であると述べた企業に向かうとは思えませんが、我々はそうした方向を目指しているのです。
ロシアは常々民営化について批判されていますが、その原因の一つは民営化がきわめて不透明であること、それに一定の人間だけに都合がよいものとなっていることです。私は民営化の仕事に三年間たずさわってきたと言えます。この間、所有の非国有化に大きな変化がありましたし、ここ二年はどんなスキャンダルもありませんでした。
株式売却価格について我々は政策も修正しました。今後は売却価格は第三者の鑑定人の報告だけを基に設定されるでしょう。その際、大物件に関しては、公認の国際投資銀行、例えば「モルガン・ステンリ」社、「クレジット・スイス・フェスト・ボストン」社などに参加してもらうつもりです。
アレクサンドル・ショ−ヒン(融資政策国会委員会議長)
ここで私はロシアの銀行金融機関の問題について多く触れたいと思います。現在投資環境の問題はロシアにとって最も重要な問題です。この場でエフゲニ・ヤ-シン氏が説明したり、あるいは長期政策策定センタ-が用意しているプログラムにおいて投資環境の改善がメインテ-マであることはそれなりの理由があるわけです。これによると年間6%以上の経済成長の達成ができるとしています。私に考えでは投資環境とは、これは社会的な課題ではありませんし、ある意味では経済政策の結果であり、近いうちに実行せねばならない改革の結果なのです。
もちろん、ここでは最重点問題は税制改革です。これには詳しく触れませんが、ただ言えることは、税制改革の鍵は大統領と政府が握っているということです。何故なら、国会は今ではウラジ−ミル・プ-チンと首相のどのような提案でも支持するでしょう(もちろん、税制の簡素化と税負担を軽減するという提案にかぎりますが)。今専門家がおそらく、いかに税を変更するかとうことではなく、いかに大幅に減税するか、そのことについて議論していると思います。準備段階の法案から判断するかぎり、政府は10%の減税を予定しています。多くの専門家はここには私も含まれますが、税負担を20%軽減したほうがよいと考えています。
分かりきったことですが、これには国の歳出削減や、国が関与しなくても効率よく機能すると思われる若干の分野から国が手を引くことが求められます。この特徴とすれば、文字通り短期間にこれを提起することであります。したがって我々は今や、若干の抜本的な提案がなされるのを待っているわけで、これはどうみても政府は用意しているようです。これはその他の多くの問題(例えば土地改革)についてもあてはまります。プ-チン大統領には土地の私有権を認め市場開放を目指す土地法を国会の夏休みまでに採択する可能性がまだのこっています。例えば、これは妥協的なやり方でもできると思います。権利そのものは連邦法で制定し、実行は適当な条例を制定し各地方でやる方法です。こうした緩やかなやり方をすれば、ロシア連邦構成体の半分は土地の私有制に移行すると確信しています。
金融税務制度と密接に関係している問題には、ロシア連邦の債務問題があります。徐々に国の借款をやめる必要があります。1993年、ロシア政府は短期国債というやり方をとりましたが、当時政府は西側諸国の経験、とりわけ膨大な国債額の米国の経験に注目したわけです。ところが今では米国は常に財政状態が好調で債務削減の模範となっている。我々も国債の削減を課題としなければならないと思います。今のところ完済にはほど遠いですが、少なくとも対外債務は減少させる必要があります。
そこで対外債務を減少できるのか、この点をもう一度考えてみる必要があります。ご存知のようにロシア政府とロンドン債権者クラブ(銀行債権団)との交渉はうまくゆき、そこで債務ほぼ三分の一を帳消しにするという合意ができました。政府もロシア全体も、パリ債権者クラブとの合意も出来ればこのようなパタ-ンになって欲しいと思っています。実際現在の状況はきわめて困難なわけで、ロンドンクラブで合意したような債務抹消のこうしたやり方に同意をうるのはとても大変なわけです。世界の石油市況が景気がよく、それによりわが国の貿易収支が好調である条件では、ロシアが自国の対外債務に対応できないと、債権者に説得することは難しいわけです。ましてや、債務45%までが一債権国ドイツに集中しているという一つの大きな難問が存在しています。その上ドイツの代表がIMFの専務理事に就任するやいなや、IMFはロシア債務の一部を帳消しにするという案にはいっそう冷淡になってしまいました。
通常のやり方をとらないでソ連時代の債務帳消しに合意できるような方式を見つけられると思っています。つまり、わが国の債権者であるパリクラブ加盟国にたいし、ソ連の金融資産の請求を下げるということです。実際これは“先進八カ国”というロシアの相手国に政治的意志があれば可能なことです。七月沖縄で行われるサミットで我々はおそらく、このやり方をためしてみるつもりです。
ソ連時代の金融資産が約1500億ドルあることはご存知でしょうか。この大半はほぼ三年前ロシアが債権国として同クラブに加盟した時に考慮されました。ほんの数カ国のわが国にたいする債務だけが無視されました。この国とはインド、イラク、リヴィア、キュ−バです。旧ソ連にたいするその他の国の債務は大幅に割引して、500億ドルでした。この金額はパリクラブにたいするロシアの債務に匹敵するものです。パリクラブ加盟国にたいする債務を放棄する選択もきわめて可能ではないでしょうか。
言うまでもなく、これは法的にも技術的にもその手続きはとても厄介ですが、実行は可能であると思います。ロシアにとってこのやり方はメリットがあります。そのわけは、その他の問題は無視すれば、わが国は借金を“取り立てる”特に効率的な手立てはありませんし、またいずれにしてもこれらの債務を帳消しにせざるえないからです。優遇条件で政府が融資して債務100%を抹消すると昨年提案したクリントン米国大統領の最終的な案をご存知と思います。パリクラブの会員条件に従うと、ロシアはパリクラブでも提案される返済方法を用いなければなりません。
ロシアは対外債務の消却がこのようなやり方できるのであれば、数十億ドル国家予算を倹約できますし、税金の軽減も可能となるわけで、投資環境も改善できると思います。
六年前、ロシア側の団長としてIMFと世界銀行に赴いた時、税金軽減の方針と引き換えにするという条件だけでロシアに融資するようにIMFに申しいれたことがあります。今ではIMFとロシア政府の関係は容易くなったと思いますし、ロシア政府と中央銀行の共同声明にあるプログラムを5から10項目とし、いくつかの基本改革にまとめあげ、そうした条件でもって融資の実行が可能かと思います。
もちろん、重要な点は海外に流出した資本を戻すことです。流出している資本の額はいろいろ言われていますが、しかし月間10億ドル以下だとは誰しも言わないと思います。私個人は、この金額は月間20億ドルぐらいになると考えています。ここにはとても簡単な評価基準が存在します。ロシアから資金が流出するということは、投資環境が良くないことを意味しています。ロシアの経済界が資金を国内に預けないのであれば、外国の投資家を引き入れることについて、何が語れるでしょうか。我々としては行政的なやり方で資本の流出を規制することには反対ですが、正直言って政府は一連の行政措置を提案しています。三月に国会は行政措置で資本の流出を規制するとした政府と中央銀行の案を審議しましたが、下院は政府よりいっそうリベラルであり、この案には反対しました。一ヵ月半経ちましたが、ロシア大統領はまさに丁度二週間ほど前のことですが、これらの法案にたいし自分の見解を国会に示しました。この見解の90%は国会の二つの委員会、予算委員会と金融銀行市場委員会の立場と一致するものでした。
現在政府は資本に流出の規制に関し、より自由なメカニズムを選択しています。これには良い投資環境を作ることと、ロシア市場からの資金の流出を比較的自由な制度にすることが前提となります。私はこれは正しいやり方だと思います。これにより国内から資本の流出が減少されるでしょう。政府と中央銀行の意見だと、行政措置も早い段階で止めることも可能だとのことです。
ところで、二年続けてですが政府と大統領に提案しているもうひとつの問題があります。これはロシア国外において一種の保証基金を作ることです。この基金を通して投資資金を入れることはロシアの税法に違反した人にたいする罰則を免除する根拠となりうると思います。
アレクサンドル・ジュ−コフ(国会予算委員会議長)
ここ数ヶ月に起きている産業の多くの部門での生産増大という事実は、投資環境改善を阻害している経済問題全てが解決したと、まだ証明しているわけではありません。一つのきわめて重大な経済問題がありますが、これは現在にいたるまで解決されていません。この問題はロシアで仕事している全ての外国投資家はご存知かと思います。税金問題のことです。税犯罪が増えてはいますが、税制の骨格は投資活動にたいし大きな影響を維持しています。今日現在、総生産の40%までは税金や手数料の形で社会資本その他の資金として国により様々なやり方で用いられています。この数値はロシアにとっては大きすぎるし、税負担は35%まで下げるべきであり、場合によっては国内総生産の30%まで引き下げたほうがいいと、これには多くに人が賛同しています。様々な制裁により国は税のほぼ半分を徴収している事実はそろらくご存知かと思います。このことは、納税者は半分に限り自主的に納税する用意があるということです。残りの50%はいわゆる税調の形で国が徴収しているわけです。
さらにいろいろな分析によりますと、好調な企業が企業家の40%までがまったく税金を払っていません。明らかにこれは、非合理的な税制やあまりにも重い税負担が原因であり、またこれも重要なことですが、税法がきわめて複雑で分かりずらく、不明確なせいでもあります。これは一面では高い税率を前提としたもので、もう一面では税を控除する多くの優遇のあるものです。
したがって、今日のロシア政府の最大課題の一つは抜本的税制改革の実施であります。そしてこの基本方向となすべきことは、固定負担の低減と税優遇を廃止することです。今日の好況を利用しないと、改革はずっと後に引きのばされてしまうことでしょう。
根本的に新しい税制でもって2002年までに良い投資環境を作り上げるためには、今年中に根本的な改革を実施すべきであると思います。2002年までにこうした改革の効果がでるようにするには、政府は夏の休暇までに全ての法案を国会に提出し、議員が税法の後半部に関する根本的改正案とその他の法律を採択できるようにする必要があります。まさにこうした改革を念頭に入れて2001年度の予算も組む必要があるわけです。
どのような基本提案が今政府内や、グレフ氏の戦略計画センタ-も含めさまざまな経済研究所で検討されているのでしょうか。その他のことを別にすれば、これには所得税の変更も含まれています。現在とても複雑で多段階の税率が用いられていますが、これはまた国民各層にたいしきわめて多くの優遇措置を前提にしているものでもあります。提案されるものはほぼ間違いなく、近いうちに税法改正ということで審議されるでしょうし、これは課税表を出来る限り簡素化し、税率を最大限下げるものです。実際現在、二つの案が検討されています。第一の案は、年収に関係なく所得税率を一律とし、13%にする案です。これはとても大きな前進です、何故かと言いますと、この税率はきわめて低いからです。さらにこの案では最低生活費には控除をもうけるとしています。控除対象は世帯における子供や被扶養者です。この措置は、所得から医療費、教育費その他一連の必要経費を控除できるようにするためのものです。第二の案は、税率を二段階にするというものです。低所得税率を12%にし、30万ル-ブルを超える所得を高所得税率とし、15%ととする案です。この案の内どれを政府が支持するか分かりませんが、いずれにしても国民の所得税が大幅に低減されます。
大きな希望が持てるのは、こうした図式のどれかが導入されますと、納税しないで現在支払われている所得のはぼ50%が表に出てくるはずです。もちろん、ロシアの賃金を実質的なものにし、企業が実際従業員に支払っているものと書類上で一致させるためには、所得税だけをさげても不十分です。所得税問題よりはるかに重要なことは、社会基金の積み立て問題です。社会保障税の徴収にたずさわる職員の組織がきわめて巨大な組織網となっていることと、企業が一度にいくつもの社会基金と関係せざるえいない事実はこうした基金への納付が納税者にとってとても負担になっています。したがって政府の提案は、これは間違いなく近い内に大統領により承認されるものですが、こうした支払方法にかわり、所得の35%の一律社会保障税を導入しようとしているものです。さらに企業が従業員に賃金を多く支払えば、社会保障税の税率を下げるという、社会保障税に関し逆累進制が導入されるかもしれません。もしこうした提案が実行に移されれば、私の見解ですが、所得税と予算外基金の納付にたいする税基盤が抜本的に拡大できるわけで、これはまたさらに税負担を軽減できるはずです。
私の考えでは次の点がより根本的な問題と思われます。これは、利益にたいする税基盤の計算のやり方を大幅に変更すれば、現実的に実行可能かと思います。生産と市場販売にかかる経費全てを支出総額に組み入れ、課税対象の利益からこれを控除する必要があります。
付加価値税に関しては、その税率の変更はないと思います。従来通り20%の税率のままでしょう。最も大幅に変更されるのが流通にかかる税金で、おそらくこれは段階的にたぶん一年間ぐらいの間に流通対象の税金、例えば道路通行税や燃料税などは廃止されるでしょう。これは今日最大の悪税であり、文字通り全ての企業や自営業者の大きな不満となっています。
理解してほしいことは、こうした変更一つ々に様々なロビイストや、社会税の税率引き下げに全面的に反対している野党勢力側からの強い抵抗があります。この改革の実施は、大統領が全面的に支持する条件ではじめて可能なのです。しかしいずれにしてもこれが実施されますと、ロシアの投資環境は一変するかもしれません。我々は今日ばかりではなく、経済状態を改善できるでしょうし、ロシアにたいする投資を長期的に成長させることができるでしょう。
さらにもう一点について触れたいと思います。現在国会議員はロシアの対外借款プログラムと借款に上限を設けることに関する法案を審議しています。この計画にはわが国債務の全て支払い、これにはロンドン銀行債権団にたいするわが国債務が正式に手続きされた後に生じる支払いも含まれています。国会議員や党派でもこの合意はロシアにとって不利益をもたらすものと考えている者もいますが、国会はこの合意に否定的態度をとるとは私には思えません。