相続税調査の話(96.11.30)
相続税の調査は今ごろと、春ごろに調査に来ることが多いようです。申告書を提出してから早くて半年遅ければ2年以上経ってから調査にやってきます。通常は1週間ほど前に税理士に連絡があり日程を調整することになります。
自宅に訪問する調査は半日から1日が多いようです。相続人の方に対して被相続人のことをいろいろと聞かれます。香典帳や印鑑の提示を求められたり、通帳や有価証券などの現物を確認してゆきます。小型のコピー機を持参してコピーを取りまくってゆく調査官もいます。
そのあとなんのかんのと1カ月程度で何らかの決着がつくことが多いですが、もめる場合は2〜3カ月以上かかることもあります。
特別減税打ち切りの方針(96.11.21)
自民党は20日、所得税・個人住民税の特別減税を今年限りで打ち切ることに決めました。この特別減税は、来年4月から実施される消費税率の引き上げ(苦い薬)の、いわば見返り(アメ)として実施されてきたものです。薬の後にアメをなめるのならまだいいのですが、アメは先に3年間なめて苦い薬は未来永劫(?)飲まなければならないわけですから、納税者としては辛いところですよね。
相続税の税務調査の結果発表(96.10.27)
金沢国税局は23日、平成7事務年度(7年7月〜8年6月)の相続税の調査結果を発表しました。それによると、平成6年中に北陸三県(石川、富山、福井)で相続税の対象となる遺産を残したのは943人で、そのうち約三割の278件が調査の対象とされました。そしてそのうち276件に申告漏れが見つかりました。実に99.3%の割合です。
税務署は納税者の許に調査(実地調査)に訪れる前に税務署内部で準備調査をし、問題点をおおむね発見した上でその確認のために訪問しているようです。それで、調査件数に対する申告漏れの捕捉割合が高くなるのです。また、相続税の場合は、事情をいちばん把握している被相続人本人が死亡しているので、どうしても相続財産が漏れがちとなります。
ところで、相続税は法人税などの商売に関する税金と違うので、家庭の主婦の方が生まれて初めて税務調査をうけるといったことにもなります。おまけに、場合によっては屋探しのような調査を受ける場合もありますので、納税者の方が戸惑われることも少なくありません。
経済審、配偶者控除の撤廃を提言(96.10.18)
首相の諮問機関である経済審議会は、雇用分野における経済構造改革策として、所得税制での配偶者控除、配偶者特別控除の撤廃を提言しました。配偶者控除制度が主婦層の本格的な労働市場への参入を妨げていると判断されたからです。配偶者控除制度が廃止されれば、非就労の妻をもつ夫の税負担は増加することにはなります。しかし、女性の社会進出が一般化している現在、非就労の妻を持つ夫を税制上、何故優遇しなければならないのかと考えた場合に明確な回答が見い出せないことも事実です。
基準地価格平均40%下落。でも喜ぶのは早い?(96.10.15)
10月15日の新聞で、基準地価格が平均39.8%下落と報じられました。今回発表されたのは、3年に一度評価替えされる固定資産税評価額の算定の基礎となる指定市町村の基準地価格です。この価格を基に97年の全ての宅地の評価が決定されることになります。しかし、これで来年の固定資産税が安くなると思うのは早計です。
前回の評価替えの時に、評価額が大幅に上昇したため(公示価格の10〜20%から70%水準にUPした)、その負担軽減措置として、課税標準(課税標準に税率を乗じて税額が算出される)が抑えられました(評価の上昇割合の高さに応じて、評価額の3/4〜1/2が課税標準とされた)。そのため、今回評価額が下落しても、今年度の課税標準額を上回っている限り、来年の課税標準は上昇し、税額が増加することになります。
評価額が下がって、税率が変わらないのに税額が上昇するとは、なんとも不思議な話です。
土地の時価と税法上の評価額(96.10.12)
10月12日の日本経済新聞に、固定資産税の評価について、時価を上回る評価額は違法とする東京地裁判決の記事が掲載されていたのをご覧になられましたでしょうか。また最近都市部で時価と相続税評価の逆転現象が発生し、問題となっていることも記憶に新しいことです。何故このような事態が起こるのかを簡単にご説明いたしましょう。
その前に、時価と各税金の課税の基準となる評価額の関係は現在次のようになっています。時価を100とすると、地価公示法により毎年国土庁が発表する「公示価格」は時価の70%程度。公示価格の半年後に各都道府県が発表している「基準地価」も同じく時価の70%を基準としています。そして、国税庁が相続税評価額として発表している価額(路線価)は公示価格の80%を基準としていますので、時価に換算すると(時価の70%×80%=56%)約60%となります。固定資産税の課税の基準となる「固定資産税評価額」は市町村が3年に1度決定し、課税台帳に登録していますが、これは公示価格の70%を基準とし、時価に換算すれば(時価の70%×70%=49%)約50%ということになります。
このように時価に対してある程度余裕を持った評価となってはいますが、当初見積もった余裕を超えた範囲で地価の下落が発生したため、逆転現象が発生したわけです。そして、その原因はこの余裕の割合が大幅に縮小されたことにあります。以前は、相続税評価額が時価の30%程度、固定資産税評価額が時価の10%程度の水準で設定されていました。そのため、多少時価が下落しても逆転現象が発生することはありませんでした。それが、税金をより多く徴収するため、土地の評価を上げたこと。また、時価と評価額が大きく乖離していることを悪用した節税対策を封じるために時価と評価額の差を縮小したこと--のために、前述のように時価との差が縮小したのです。地価が上昇するか、安定的に推移する局面では問題は顕在化しないのですが、間の悪いことに地価の下落の局面で実施されたものですから、問題が発生したわけです。
実質的増税を、税法の改正という正規の手段を経ず、評価額の上昇という姑息な手段で実施してきたことが裏目にでたと言うべきでしょう。
こ・ら・む
ソフトウエアと税理士業務
ソフトウエアと税理士業務(広くは専門家業務)は結構類似点があると思っています。形の無いサービスであり、特定の機能をユーザーに提供する点、また使ってみないと良し悪しがわからない点も共通しています。それで私は、税理士業務の今後の展開を考えるときに、ソフトウエアの展開が参考になるのではないかと考えています。
ソフトウエアの展開を眺めてみると、最初はシンプルな機能だったものが、次第に多機能化・大型化してきました。それで色々なニーズには応えられるようにはなったものの、ユーザからみれば複雑化し、いらない機能も満載された状態になってしまいました。使わない機能にもお金を払っているわけです。お仕着せの万人に向けたソフトとなったために各個人からみたら使いにくいものとなったのかもしれません。そ
の反省からか、最近ソフトウエアの部品化が言われています。ユーザーが必要なものを組み合わせて、自分に最適なソフトを利用することだと理解しています。言わばイージーオーダーのソフトウエアと言うことでしょう。
実は税理士業務も同じです。ユーザーのニーズに応えるためとは言いながら、業務範囲を拡大し、総合事務所化する流れがあります。私の事務所で全てがそろいますと。それも一つの道ですが、逆に機能を絞り込み、特定の機能だけを専門的に提供する「部品」としての事務所と言う考え方もあるのではないか・・・、ソフトウエアの部品化(コンポーネント化)をみて、そのように感じています。ユーザーは自分のニーズに最も適した「部品」としての事務所を選択するのです。
個人にかかわる相談ごと(それは税務には限りません)について、一つの事務所のみで総合的にサービスを提供するのではなく、複数の事務所が有機的にサービスを提供するというのも面白いとはおもいませんか?インターネットを利用してそれが実現できないものかなどと考えています。