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好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!! −2010年6月に読んだ本



エンターブレイン ファミ通文庫
くあっどぴゅあ /木本雅彦

うわぁ、あまりに後ろ向きでヘタレな主人公にイライラする(^^;。基本は、ロボット競技に打ち込む理系少年の綺麗な青春モノなんだけどなぁ。

ロボット競技「サイドキック」に打ち込みつつも良いところがなかった中学時代。高校入学を契機に、心機一転、高校デビューを目指すが……。という感じで、ヘタレな主人公が、高校デビューを目指すも、結局、仲間たちとロボット競技で優勝を目指すようになるという青春モノ。木本雅彦らしく豊富なIT知識に裏打ちされた理系青春モノで、キャラのやり取りが変なノリで楽しい楽しい。でも、このキャラたちの会話のノリって、高校生同士というより、かなりおっさん入ってる印象なのだけど、実際、学生が読んだらどう思うんだろ。私は楽しいのでいいんだけど(笑)。

まあ、基本はコミカルな青春モノで楽しく仕上がってるのだけど、好み的には、ちょっとこの主人公はヘタレすぎて、いやん。行動的で自分勝手なヒロインと、愉快な仲間たち、そして、振り回される主人公という典型的な構図なら、もっと主人公は、キャラが弱くてもいいと思うんだけどな。

[ くあっどぴゅあ ]


富士見書房 富士見ファンタジア文庫
神さまのいない日曜日 /入江君人

最高傑作級。いやぁ、神に見捨てられた世界を舞台に、せつないストーリーをベースに置きながらも、キャラの言動が非常に楽しい。アイかわいいよアイ。そして、泣ける〜〜。

第21回ファンタジア大賞<大賞>受賞作。神に見捨てられ生と死が混沌とした世界で、墓守として生きる少女の話。正直、支離滅裂でとっちらかった、いかにも新人らしい荒削りな作品なのだけど、そのとっちらかった部分が、絶妙なバランスで、せつなさと笑いを同居させた作品に仕上げてる予感。アイとハンプニーをはじめ、キャラの関係性はめちゃくちゃだとしか思えないのだけど、このキャラたちのやりとりが、とにかく楽しい。特に、主人公のアイが魅力すぎるっ!! ストーリー展開も強引でむちゃくちゃだと思うのだけど、にもかかわらず、最後まで興味を引っ張るストーリーと、そして、その先に待つラストが、ほんとに切なく非常に素晴らしい。泣ける。いやぁ、面白かったっ!!

[ 神さまのいない日曜日 ]


富士見書房 富士見ファンタジア文庫
神さまのいない日曜日II /入江君人

アイかわいいよアイ。やっぱり、せつなく残酷な世界観と愉快なキャラたちのギャップがおもしろい。そんな愉快なキャラによって綴られる、コミカルでウィットに富むストーリーテリングが、ホント楽しすぎるっ!!

15年前に神に見捨てられた世界。そんな世界を救うことを夢見て旅をはじめたアイは、百万都市オルタスに立ち寄るが……。という感じで、愉快なアイがとことん魅力的な作品。ベースがせつなく残酷な世界観だけあって、なおさら、コミカルな演出が際立って、ほんと読んでて楽しい楽しい。まあ、前巻同様、描写が下手で場面がどうにも思い浮かべられなかったり、場面展開が唐突だったりと、作者の技量不足な部分が散見されるのだけど、それを補ってあまりある魅力的な作品。愉快愉快。……しかし、そこそこ長いシリーズ化を見据えたであろう最後の引きは、どうなんだろ?

[ 神さまのいない日曜日 ]


講談社 講談社ノベルス
ぐるぐる猿と歌う鳥 /加納朋子

小学五年生の高見森が、転校先の北九州で出会う小さな謎の数々。という感じで、加納朋子らしい日常の謎を扱うミステリなのだけど、……主人公のガキが酷すぎて読ません。いや、当然、好き好きなんだろうけど、私には、この主人公はありえないわ。乱暴者で問題児、いかにもトラブルメーカーというのは、主人公としては悪くないと思うのだけど、生理的にどうにも受け付けない。終盤で明かされるパックやココの話はせつなくて好みではあるんだけどなぁ。

[ ぐるぐる猿と歌う鳥 ]


アスキー・メディアワークス 電撃文庫
俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長 /哀川護

盗作のため自主回収と相成った本書ですが、いやぁ、良質な学園ラブコメとして、非常におもしろかったです。もったいないっ!! ヒロインの1人、吸血鬼の九条院鑑美がなかなか愉快。そして、パクリというか「参考にしています」ということだったら、『バカテス』よりも、むしろルルーシュだよね?<をい

人間と人外の生徒が、それぞれ異なる生徒会を抱き対峙する聖桐学園。平凡な人間・兎沢紅太郎は、なぜか人外側の生徒会長“魔王”になって、人間側の生徒会長である幼なじみの伏城野アリスと対決する羽目に……。というわけで、完璧超人な生徒会長にもかかわらず紅太郎にデレまくるアリスをはじめ、ツンデレ吸血鬼の鑑美、クールな人造人間、雪乃に、いじめて系の人狼、夜依と、個性的なキャラが魅力な学園ドタバタコメディ。「魔王は正体を隠さなければならない」という設定が、[TVA]『コードギアス』を彷彿とさせる、というか、ノリはほとんど、『コードギアス』の学園パートだよね。文章も読みやすく、テンポもよく、とにかく読んでて、楽しい楽しい。

いやぁ、ほんと新人デビュー作としては、良く出来た学園ラブコメだと思ったのだけど、マジにこれ、盗作なの? パクったのは、アイデアやストーリーではなく文章表現という話らしいのだけど、パクってると言われている部分も、ある意味典型的と言っていいような部分だし、二冊並べて読み比べてみないと、正直、気づかないと思う。気づいた人はマジすげー。……ただ、自主回収になったぐらいなので相当酷いのかと思っていたのだけど、正直、そこまで酷いとは思えなかったので、やぱし、電撃文庫の自主回収という対応は過剰すぎると思う。もっと穏当な落としどころはなかったのかしらん?

[ 俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長 ]


アスキー・メディアワークス 電撃文庫
アクセル・ワールド5 ―星影の浮き橋― /川原礫

軌道エレベータにソーシャルカメラ・ネットワークが接続されたことを記念して、ミッションイベント「ヘルメス・コード縦横レース」がはじまる……。という感じで、格闘バトルが、いきなりレースゲームに変身。雰囲気もいつもと違い本編と離れた番外的な話かしらん?とも思ったのだけど、うわぁ、そういう展開かっ!! 加速世界を大きく変える展開に、続巻が待ち遠しいぃ〜〜。

それにしても、「「泊めた?」」に爆笑。いや、今回の見所は、レースではなく、むしろ、お泊まりイベントとか、ハーレム化が進むハルユキ周りのアレコレだよな。モテモテなハルユキに比べ、タクムはすでに空気化してる(笑)。

[ アクセル・ワールド ]


アスキー・メディアワークス 電撃文庫
なれる! SE 2週間でわかる? SE入門 /夏海公司

最高傑作級っ!! 過酷な職場に配属された新人SEの物語なんだけど、もう、いろいろな意味で酷すぎるっ。

就職氷河期の中、どうにか就職できた桜坂工兵の職場は、ブラックすぎるIT業界だった。というわけで、新人SEの奮戦記。なんといっても素晴らしいのは、リアリティ溢れる作業風景。いや、明らかに誇張されていてありえないと思いつつも、どうにもダブる自分の職場。現在進行形のいろいろな苦労が思い出されて、似た業界に勤める人なら、ホント、涙なしには読めません。私も残業代なんて出ないしなぁ。土日もほとんど出社してるしなぁ。

まあ、私の仕事上の立ち位置は、藤崎のポジションに当たるんだけど、そのためか、工兵どうこうよりも、立華の未熟さにハラハラどきどきで、心臓に悪い。はじめてのOJTはともかく、特に、客先での作業の進め方が、あまりに無茶すぎて、めちゃ怖すぎる。や、頑張ってるのはわかるんだけど、いろいろ間違ってるからっ!! それじゃダメすぎるからっ!! ……それにしても藤崎、お前、マネージャーとしてぜんぜん働いてるように見えないんだけど、ちゃんと仕事しろよ(^^;。

しかし、似たような職種の人間が読む分には、共感しつつ、また、ツッコミしつつ、読んでて最高に面白いと思うのだけど、これ、学生さん辺りが読んで面白いのか(笑)。

[ なれる! SE ]


アスキー・メディアワークス 電撃文庫
ロウきゅーぶ! (5) /蒼山サグ

スポ根小説らしく合宿&特訓回。水着回ともいう(^^;。非常に安定して楽しめる内容で、そして、いつも以上に、サービスシーンと小ネタが多い印象でした。面白かったっ!! 基本は、ひなたのターンだったけれど、智花といい、愛莉といい、葵といい、お色気担当の扱いが酷すぎるな(笑)。

[ ロウきゅーぶ! ]


文藝春秋 文春文庫
インシテミル /米澤穂信

米澤穂信なのに青春ミステリじゃなかったorz。や、ミステリファン向けにがんがんミステリネタをぶち込んだような内容なので、ネタの半分も分からない私には、正直、面白さも半減。どう見ても、濃いミステリファン向けの作品で、決して、つまらなかったわけではなかったけれど、しょぼん。

時給112,000円の破格のバイトに応募したら、それは、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を意識した参加者同士が殺し合う犯人当てゲームだった……。という感じの作品なのだけど、もうちょっと、ラブ展開なりエロ展開なりあるかと思ったら、マジにミステリミステリした作品でした。閉鎖空間の極限状態で美女と一緒で『淫してみる?』というタイトルなら、ふつー、エロだろ、エロエロっ!! がっかりだっ!! まあ、深夜の恐怖も読んでて怖かったし、謎解きのカタルシスも悪くはなかったけれど、やはり、物足りない感じが……。

[ インシテミル ]


徳間書店 トクマ・ノベルズEdge
大正野球娘。4 /神楽坂淳

次回で最終巻とはいえ、なんとも重い展開。小梅を中心とするお嬢さん方の友情は優しく暖かいだけに、読んでてツライなぁ。……変に敵を作らず、ラストまで優しい話でいいのに(^^;。

女の子が野球をするのはハシタナイといわれていた大正時代の女の子たちの物語。登場するお嬢さん方が、素直でまっすぐでほんとに気持ちのいいだけに、今回の話は、ほんと読んでてツライ。巴と静が金の力で後妻にされそうになるという男尊女卑の時代を象徴するラストエピソードとはいえ、敵側がエゲツないのがなぁ。……それにしても、小梅たちの百合百合とした友情は、やっぱり楽しい。相変わらず、小梅のモテぶりが尋常じゃねぇ。

[ 大正野球娘。 ]


集英社 集英社新書
小説家という職業 /森博嗣

「他の職種なら当たり前のことが書かれてるだけ」という話も聞く本書ですが、逆に言えば、小説家を含む出版業界がビジネス的には未熟ということを浮き彫りにする内容、ということかしらん。むしろ、他の小説家が、どれだけビジネスとして意識しているのか、森博嗣の意識と乖離しているのか、というのが気になるなぁ。

S&Mシリーズ(→感想) などを書いてる森博嗣が、小説家になった経緯や心構え、そして、出版業界のアレコレについて書いた本。なんとなく自作を貶めるというか、斜に構えた筆致が、ファンとしてはもやもやするのだけど、そういう態度もファン向けのポーズなのかしらん。ファンとの関わり方も含めて、ビジネス的な観点を強く意識した心構えが、社会人としては非常に共感できる。一貫しているのは、「仕事は報酬を得るためのもの」「仕事に好き嫌いを持ち込むな」という当たり前の意識。そして、「本好きばかりの出版業界は、当たり前のビジネスが成立していない」と断じる。そこには憧れの職業としての小説家、出版業界の姿は微塵もない。プロモートの一環としてのホームページの扱いや、ネット書評との係わり方も書かれていて、いろいろと楽しい。ファンの反応に関する件とかは、一応私も、ブログとか書いててもさまざまな感想をいただくので、その点でも、いろいろと共感する部分もあったり(^^;。……それにしても、この本自体も、顧客としての読者の反応を意識して書かれてるんだろうけど、どこまで本音なんだろ。

[ 小説家という職業 ]


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