酸化銅の定比例の実験が教科書通りに行かない理由


☆本の通りには行かないことを痛感する実験

 

「銅の質量が決まると、そこに結びつく酸素の質量も決まる」

この定比例の法則は、物質が粒(原子)でできている証拠の一つです。

銅の隣に酸素の「座席」があり、その座席は、銅によって決まる。

「質量保存の実験」と並び、原子論を導く大変重要な実験です。

しかし、なかなかうまくいきません。

質量比は「銅:酸素=4:1」になるのが理論値ですが、

実際に実験室で行うと、質量比「銅:酸素=8:1」くらいの結果になります。

 

 → ここまではすぐにできますが・・・

 

☆いろいろな試行錯誤

以前私が予想した原因を挙げてみます。

(1)バーナーの加熱不足

(2)銅粉が細かいので、湿気が含まれており、銅粉の秤量に水分が含まれていた。

(3)酸素不足

 

(1)は、バーナーの火力を上げたり、加熱→冷却を何度も行ったりしました。

  しかし、ある程度質量が増えたらあまり変わりません。(銅:酸素=8:1)で落ち着きます。

  また、ステンレス皿と銅粉が離れたら熱が伝わりにくくなるようです。

  ですので、銅:酸素=4:1を目指すのであれば、1回の加熱で長時間行う方法がよいようです。

  「加熱時間に応じて酸素がある一定のところまで増える」実験を行うと、てんびんに乗せるために冷やすので、

  できた酸化銅とステンレス皿と離れてしまうようです。

 

(2)は、新品の銅粉や、乾燥剤で湿気を取ったもので実験しましたが、あまり変わりません。

   天秤に乗せている間に水が吸着します。

   水分をとばすため、少し加熱し、銅の色が変わる前に天秤に乗せましたが、0.1gも軽くなっていません。

   実際に吸着した水蒸気の質量はそれほど多くないようです。

 

(3)は、酸素のスプレーを吹きかけながら実験を行っている話を聞きましたが、

   バーナーでできる気流の影響でほとんど酸素の効果はないようです。

 

他にも原因は考えられますが、

質量比の結果から酸素と化合していない銅が存在することは間違いありません。

 

 

☆銅粉のどの部分が化合していないのか?

これについて、次の2つが考えられます。

 

(A)燃焼皿にのせた銅粉の下の方が銅として残っている↓

 

(B)銅粉1粒1粒の中心部が銅として残っている↓

(粒の周りはじゅうぶん化合している)

 

(A)は、3分の加熱→ぬれぞうきんの上で冷却→天秤で秤量の1回目です。

薬さじなどで燃焼皿の銅分をかき混ぜればわかります。どうやら赤い粉が出てきました。

再度バーナーで酸化させます。

 

(B)は、3分の加熱→ぬれぞうきんの上で冷却→天秤で秤量を5回繰り返しました。

3回目から質量がほとんど変わらなくなりましたが。

 

(B)は銅分が細かいのでナイフやヤスリなど物理的な方法では確かめられません。

そこで、(B)について、化学的な方法で銅粉1粒1粒の酸化銅を削ってみましょう。

 

その方法は、薄い塩酸(5%)で処理します。

 

☆できた酸化銅を削ってみる

(プラスチックカップに(B)の酸化銅(のつもり)をいれ、質量濃度5%の塩酸に入れます。

 →  → 

 

銅:酸素=8:1の結果となった酸化銅について

表面の酸化銅を塩酸で溶かしたところ

赤い粉末になりました。 なんと、半分以上銅でした。

 

銅:酸素=5:1の結果となった酸化銅について(銅1gを強熱し酸化銅1.2gが得られた)

表面の酸化銅を塩酸で溶かしたところを顕微鏡で確認しました。

share_CuO.jpg     kenbikyou_set.jpg   

シャーレに5%塩酸と得られた酸化銅をのせ、顕微鏡のステージの上から光を当てます。

顕微鏡のしぼりを閉じて、下からの光をシャットアウトしてあります)

(生物顕微鏡を「実体顕微鏡的」に使いました。こうしないと酸化銅のように不透明なものは観察できません)

Cu_found.jpg   

黒い酸化銅の中に、赤い銅が出てきました。

やはり、銅:酸素=5:1のときも酸化されていない銅が存在することがわかります。

しかも、均一に酸化されていくのではなく、銅粉によって酸化の度合いが違うことがわかります。

 

 

☆では、どうすれば良いのか

この実験で、銅粉1粒1粒の中が酸化し切れていないことが証明されました。

銅粉1粒1粒の中を酸化させるには、次の2つの方法が考えられます。

 

( i ) 銅分をもっと細かい物にする

( ii )もっと酸素と銅が出会う環境を作る

 

( i )は値段が高くなります。

市販の銅粉を自分たちの手で細かくする方法(例えばふるいにかけるなど)が

考えられます。

 

 ( ii )は、酸素の濃度を上げたり、加熱の方法を工夫することが考えられます。

 

Al_cover.jpg burnerMAX.jpg

三脚のまわりをアルミホイルでカバーをして外に熱が逃げるのを防ぎました。

この方法は、食塩を融解する方法でも紹介しています。

バーナーの火は、空気調節ねじを全開に近くしたものを使います。

内炎(水色のもの)がステンレス皿につかないような大きさに調節します。

 

☆教えてください

(ア)市販の酸化銅粉末を5%塩酸に入れると、すべて反応し銅粉は出てきません。

   市販の酸化銅粉末はどのようにして作っているのでしょうか。

 

(イ)通常の実験室の環境(教科書通りの実験方法)で

   質量比 銅:酸素=4:1 に近づいた例はあるのでしょうか。

 

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☆その他

どうやら、酸化銅の被膜は強固で一度形成されると酸素が中まで行かないようです。

「うまくいかない原因」だけ、報告したページで申し訳ありません。解決策は今後の課題です。

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