南部は暑かった

Nashville旅行記

初めての南部。テネシー州ナッシュビルはカントリー・ミュージックの聖地。アメリカ人なら一生一度はお参りに行きたい場所?好きな音楽ジャンルはいくつかあるがカントリーは全く守備範囲外。今回の旅行は6日間。果たして旅行日程を埋めることは出来るのか?

アメリカ徒歩一人旅シリーズ--Nashville 編

Vanderbilt大学の案内によれば Nashville には徒歩で行ける観光地やカントリー以外にも楽しみがいっぱい!というのだが...

2日目:
前日2回飛行機に乗って耳痛がひどく、のんびり公園で写生でもしようと Vanderbilt大学向かいの Centennial Park へ。公園は広いが人影も少なく、描きたいような景色もない。アメリカで人気(ひとけ)のない知らない土地の公園は恐い場所で、くつろぐ気になれない。急遽予定を変更してダウンタウンのヒストリック・エリアへ。
ゆっくり歩いて50分(タクシーを利用すべし)。着いてみてここはカントリーなナイトライフを楽しむ場所とわかった。他にカントリー・グッズ、ウエスタンな服の買い物とか。さて、昼間は何をしたらいい?
街の雰囲気は今まで見た中では New Haven が最も似ている。大ではない小都市でちょっとさびれて、ちょっとやばめ。浮浪者や酔っ払いがいるのはどこも同じだがここでは話し掛けてくる。時間が早く他に観光客が少ないためかたいそうモテる。陽気に周囲を踊られたりする。AAAガイドに従い街の中心街のデパートとショッピング・モールに行くと、今日閉まっているのはよくわかるが今後も開くと思えない。何故か通り一帯が廃虚。うえーん、こわいよーこの町。
アメリカの観光地共通の赤線(黄線?)ウォーキング・ツアー路を通って歴史的建造物を一周してして帰る。
さて、明日からどうしたものか。

3日目:
公園でりすや鳥と遊んで過ごす。暑かった。

4日目:
初めての旅行らしい日程。しかしそれが可能になったのは一日レンタカー旅のため。
Towers で仕入れたカントリーのテープを流しながらドライブすると、気分はもうカントリー!(本気)
Opryland USA
カントリー・ミュージック主体のテーマパーク。ちょっと見物して、と思ったらフリーウェイ出口から駐車場に繋がっていて駐車料金を払わざるを得ず入ってしまう。絶叫マシンからお子様向け乗り物まで遊園地として充分楽しめる。東京ディズニーランドのように並ばないで済むのもいい。
カントリー・ショウを2種類見る。レギュラーなカントリー、ジャズ・ショウの他にスター(カントリーの)が出る特別ショウもあり、ホリデイシーズンには毎週催されている。
ショウは一回30分程度で歌に踊りに物まね、様々な趣向で楽しませてくれる。多分カントリーを知らない人でも大丈夫。
ところでアジア人は全然いなかった。やはりカントリー・ファンは少ないか。アジア人住民が少ない地域なのだと思う。

Nashville を離れてドライブ。木の種類が違うのと電柱が多いのを除けば東と変わらずたいくつな風景。しかし一度ハイウエイを下りると広大なトウモロコシ畑、牧場で馬、牛の放牧、畑と積み藁(ここでは丸め藁だが)など見慣れない風景が広がり、これが南部かと感じさせる。こういうのを見ると来た甲斐があるというもの。

南部米語:
南部の英語は聞き慣れないためか時々わからない。日本語だって方言はわからないのだから当然か。ことに語の繋がり具合に「英語」と「米語」程の差が東部英語との間にあるように感じる。西部劇中のカウボーイのような話し方。カントリーの歌い方もそういうなげやり(に聞こえる)な口調。ファンにはそのワイルドな感じが魅力かも。

5日目:
Music Row 付近散策。ここと West End 一帯はホテルが多いためかグレードが高いレストラン、カフェ多数。朝食も出す安くおいしい店が何件もあるのでホテルで高い朝食をとる必要がない。
Nashville がなぜカントリーの聖地かというと、全米最初のラジオ放送局(内容はカントリー・ミュージック。現在は博物館とカントリー・ショウのシアターになっている)があったためらしい。そしてこの Music Row に集まっているカントリーの有名レコーディング・スタジオ。アメリカ人がここに来ると「あのスターがここであの歴史的名盤のレコーディングを!」などと感慨もひとしおなのだろうか。
再び公園。ギリシャのパルテノン宮殿を模したという The Partenon へ。市所蔵の絵画の美術館にもなっているという。しかし。予感はあったがローカルな画家の絵ばっかりだった。地元民には価値があると思う。看板は「世界で唯一実物大で復元したアテネ像」。他にオリジナルは大英博物館所蔵のギリシャ神像のコピーがいくつか。なんでこんなものを作ったか。ここがまだ若い町だった19世紀末頃、地元大学の先生が「"南部のアテネ"(学術都市ってことですか)にしたい」と思ったんだそうな。
他に歩ける観光地は Belmont Mansion(1850年築。アメリカで最も金持ちの女性の一人が建てた)位。Nashville 観光にはレンタカーかバス・ツアーをおすすめしたい。

税金について
消費税が高く買い物する気になれないのだが、州税(所得税?)がないとか。それを消費税でまかなっているというのだ。カフェのおばさんの話。そんな訳で暮らし易いこの街を誇りに思っているそうだ。そういえば最近全米「住みたい街ランキング」で Nashville は何と10位以内でした。


お待ちかね!!
アメリカぐるめ探訪--その13--Nashville編

1日目:
AAA(アメリカのJAF. 旅行代理店業もやっている)のガイドで4つ菱(星ではないが同様の菱数による評価)イタリアン・レストラン「Valentino's」. 何と泊まったホテルの隣でルームサービスがここのという贅沢。外見より洒落た内装。エスカルゴ、サラダ、フェトチーネ(パスタ)のプッタネスカ、シュリンプ・スカンピを頼む。こんなに柔らかいエスカルゴは初めて。残ったガーリックオイルで焼きたてのフランスパンを食べこれだけでも満足。サラダのドレッシングはアメリカでは珍しい透明なイタリアン(白濁したものが多い)で刻んだ野菜各種が混ざったいかにも手作り。
さて、しかし、素晴らしかったのはシュリンプです。添えられたパスタのトマトソースとスカンピの白ワイン・ベースのガーリック風味ソースのどちらも。惜しむらくはパスタがきしめん風の柔らかさだったこと。アルデンテな硬さのパスタを出すレストランは果たしてアメリカにあるのか?
それとデザートのティラミスがアメリカ風ケーキ(甘くて大味を意味する)。ここなら期待出来ると思ったのだが。なかなか完璧なレストランはないものです。ちなみにプッタネスカはおすすめしません。

あめりか和食探訪--Nashville編
2日目:
ガイドブックでこのエリア一の和食と推薦の「御殿」。私はわりと日本人に見られないので最初英語で会話したが板さんもウエイトレスも日本人。インテリアもシンプルでオシャレ。キッチュな「アメリカの日本風」とは違う日本人好みの和風。冷やっこ、焼き鳥、寿司セットとアラスカ巻(サーモン、アボカド、きゅうり)を注文。アメリカの豆腐は「Soft」と「Hard」があり、Hard は中華の炒め物に使うようなものだがここのは木綿。寿司ネタは全体にニューヨークの寿司屋位おいしい。赤貝、しめサバ、イカなど比較的珍しいものがどれもいい。特にしめサバ。内陸部なのに。もっともニューヨークのもカリブ海から来ているというが。ただシャリがイマイチ。味はいいが米が悪いのだと思う。この土地では仕方がないか。
鉄板焼きと中で2室に分かれており、相当広い店だった。
4日目:
Kobe Steak」。日本語を話す人もいるがおそらく中国人経営。バー(アメリカのカウンター式ではなく日本のバーのような空間。ただしおねえさんはいない)でしばらく待たされる(席は空いていたのだが)。店内は相当広い。日本でビズネスマンが接待に使いそうな雰囲気。
Kobeといっても神戸牛ではなく(NYで神戸牛を出す店があるがこの数倍はする)、かすかな予感通り鉄板焼きの店だった。あのアメリカで人気の日本食(ということになっている)鉄板を金ベラで打ち鳴らし肉を焼きつつ芸をしてくれるやつ。間近で見るのは初めて。えびのしっぽを投げ上げ帽子、ポケットに次々受ける芸、明かりを消して鉄板に火を入れる芸など各工程に芸をちりばめる。野菜がたくさん出るのも各種野菜を違う味付けで楽しませてくれるのもいい。さすが中華(じゃないって)。サイコロに切って盛ってくれるフィレ肉は柔らかい。スープ、ごはん(日本風の炊き具合)、サラダ、デザートが付いて苦しいほどお腹いっぱいの$17は安かった。

アメリカぐるめ探訪--南部料理編
3日目:
初めての南部料理。Blackened(焦がして炭がかかったように黒くしたもの)ビーフ、チキン、フィッシュが南部料理の特徴の一つ。黒胡椒もたくさん使う。昼食にフライド・チキンとフライド・フィッシュ(魚の名前は忘れたが白身)のサンドイッチ。結構いける。夕食にハーブチキン、フライド・ステーキ(鳥のメンチカツみたいの)。グリーン・ビーンズ(いんげん)、ビスケット(お菓子のではなくケンタッキーFCの同類)、フライド・ポテト付き。いんげんは加熱しすぎだがどれも悪くなかった。タイガー・ウッズで話題の南部料理カラード・グリーンにはいまだお目にかかれない。一度食べてみたいと思っているのだが。
5日目:
今度はソフィスティケイティッド高級南部料理で「Wild Boar」.95年に食べ物雑誌でベスト・シェフ・オブ・アメリカに選ばれているというAAAガイド5つ菱(最高位)レストラン。店に入った途端超高級そうでおじけづく。店内には店の名前の通りイノシシや鹿の剥製。カーテン、絵などヨーロッパ中世のお城趣味のような店なのだが、もしかしてキッチュ?
つき出しのような小オードブルが2種類チーズのシュークリームとサーモンのマリネでどちらも美味。注文したのはオードブルにカルパッチョ、アスパラガスのクリームスープ、グリーンサラダのバルサミコ風味、メインに私にラム、夫はハーブチキン。カルパッチョ(牛?鹿?馬?)はにんにくもだが胡椒が効いて南部風。スープは味が濃いが野菜も濃くおいしい。メインが来て驚いた。アメリカ盛りではない普通の一人前。盛り付けがおしゃれなラムはお上品な柔らかい肉。これならデザートもいける。"True"クリーム・ブリュレと初めて聞く Spanish Coffee を頼む。「スパニッシュ」は「アイリッシュ」のウィスキーをブランデーに変えたものだった。

こうして南部で何回か食事して思うのはどこでも全然構ってもらえないこと。他の客にしているように話し掛けて来ないのだ。英語が通じない(実際南部なまりで聞き取れないことがあるが)と思われるのか。東部ではどこでも容赦なくアメリカ人同様に扱われるのだが。ここでは外国人、特に東洋人が少ないためだろうか。こういう風だとなんだか寂しい。


カントリー・ミュージックに関する考察
何がカントリーか私にはよく聞き分けがつかない。今のカントリーはポップス風、ロック風、アイドル系、ラップ風(!)、ドラム/ベース・ビート入りなど様々。共通点を探すなら"ニニニニ"(と聞こえる)ヴァイオリン、ウクレレ、ギターをスライドさせる弾き方(見ればすぐわかってもらえるのだが)、男性はウエスタン・ハット着用、女性はスカートを振る、地声で歌う、声のひっくり返し技巧(演歌でいうこぶしか)などだが、こうした外面的なものの他おそらく私には聞き取れないがアメリカ人にグッとくる味があるのだろう。

アメリカで大成功する音楽にはカントリー的要素が必要だという。確かにストーンズで最もオンエアー回数が多い"Beast of Burden"は何だかカントリーだし(日本でそう感じたことはなかったが)、現在ヒット中のU2"Staring at the Sun"も。アラニス・モリセットのアンプラグド・ライブ・ビデオを見たらもう完全にカントリー調だった。

ケーブルTVでナッシュビルローカルのカントリー・チャンネルを興味深く見たのだが、切々と歌い上げるのを聞いても決して上手くはない。アレサ・フランクリンの方がどう聞いても上手いし、趣味ではないがホイットニー・ヒューストンやマライア・キャリーの方が上手い。しかしおそらく外国人が森進一や五木ひろしを聞いても上手いかどうか判断出来ないだろうと思うので、そういうテイストなのだと理解するしかない。

「ロックン・ロール」はこの白人音楽カントリーと黒人音楽リズム&ブルースの融合だというのだが、私の「ロック」(ロールは付かない)はイングリッシュ・インヴェージョン以後(ビートルズ、ストーンズ以降)なのでこのテイストとあまり関係がない。
ファンがこれを読んだら怒るかな。ごめんなさい。しかし日本にカントリー・ファンがいるのも謎のひとつ(ごめんなさい)。

97年7月へ戻る