ベルリン閉鎖、キューバ危機、ベトナム戦争、アポロ計画、チェルノブイリ、ベルリンの壁の崩壊……。いやぁ、第二次世界大戦後からの激動の20世紀後半を描いた「月と太陽のモンタージュ」が素晴らしいなぁ。コミカル短編は、まあ、いつも通りで、可もなく不可もなし。
そゆわけで、ドラゴンマガジン掲載分の短編と書き下ろしの過去篇からなる短編集の5冊目。今回は、過去篇の「月と太陽のモンタージュ」が非常に良かったです。まあ、相変わらず、駆け足で描写が足りない印象は否めないんだけど(^^;。歴史的な事件を短く切り出しながら、暴走するかのように発達する人類と、それを影から見つめる吸血鬼たちの複雑な想いを、切々と非常に巧く描いていて、お見事っ!! そして、過去篇も、次でいよいよ核心かしらん? いやぁ、次が待ち遠しいぃ〜〜。
面白い、めちゃくちゃ面白いっ!! や、基本的には、ワナビやネットのイタい話をネタにしつつ、物語自体も中高生が考えそうなイタイ展開になってるんだけど、それを明るくコミカルに描くことで、とにかく身近で等身大な笑いに繋げてるのよなっ!! 読んでて笑った笑った、非常に楽しいっ!!
第9回えんため大賞奨励賞。かつてネットで自作小説を公開していた少年、甲拓巳。ネット上でのイタい行動の記憶とともに、自作小説に関する全てを黒歴史として封印していたが、ある日、その自作小説のヒロインが目の前にあらわれて……。と、あらすじを書いてみても、もう、イタい話なんだけど、マジに、どうしようかと思うぐらいイタイ内容。読み始めた最初の頃はかなり辛かったのだけど、しかし、ブタマルGT が登場した辺りから、一気にコメディよりに面白くなって、いやぁ、ホントに楽しい楽しい。ネットやオタク関連の自虐的なネタが、ホントに巧くコミカルに仕立ててあって、とにかく笑えるのよ。ただまあ、ブタマルGTをはじめ、男性キャラはキャラが立っていて笑えるんだけど、女性キャラがあまりに薄っぺらいのがなぁ。特に、ヒロイン火琉奈がさっぱり見えてこないのが、ちょっと酷いよなぁ。
……それにしても、ネットのトラブルが、凄そうに書いてるわりに、実際にありそうな話で、アクセス数や関係者の規模感も妙にこじんまりとしていて、わりと生々しい話のように感じたのだけど、やっぱり、作者の人の実体験も入ってるのかしらん?(^^;。
[ セキララ!! ]
おもしろい、おもしろい。正直、ストーリーや設定は、薄っぺらくて酷いんだけど、キャラクターの勝利ですなっ!! キャラが生き生き描かれていて、ホント面白かったです。キャラ同士の頭の悪い会話だけで、もう、お腹いっぱい。
第9回えんため大賞奨励賞。天真爛漫な天使が空から落ちてきた。そんな天使を拾ったのは、世界征服を目指す腹黒策士な少年だった……。という感じで、捻くれた主人公が純真無垢な天使に感化されていくという、煽りそのまま“軽快ヒネクレ系ヒューマン・ストーリー”。まあ、頭の悪いSF設定は、さすがにどうかと思うのだけど、ヒロインのルーをはじめ、登場人物たちが非常に生き生きと魅力的に描かれていて、Good、Good。ほんと、キャラのやり取りが、めちゃ楽しいわぁ〜〜。挿絵も含め、良い意味で軽くチープな雰囲気が、意外と良い味だしてます。面白かったぁ〜〜。
[ カミマゴ ]
うわぁ〜、激しく陰鬱で、容赦ねぇ〜〜。いかにも、長期シリーズの第一巻という作りで、計算されたインパクトの強い導入になってます。ここら辺は、さすが、須賀しのぶだ。ほんとクオリティはめちゃ高いなぁ。続きもめちゃくちゃ楽しみです。
人類の敵の出現により、中学校でも軍事教練が義務化されている世界。うじうじとして気が弱い主人公・陽菜は、唯一の癒しの場となっている森の奥で、見知らぬ一人の少年と出会う……。や、とにかく、主人公の陽菜がうじうじうじうじうじうじうじうじと、見てて非常にストレスがたまる〜。そして、死の臭いのするどんよりする世界観。そういう暗い雰囲気の中で、さらに容赦のない展開。もう、ほんとに凄い、凄すぎる。いや、展開そのものは、真っ直ぐに王道なんだけど、やっぱり見せ方が、めちゃくちゃ巧いよな。いやもう、非常に続きを気にさせる作りになっていて、いやぁ、続刊がほんと待ち遠しいなぁ。
[ アンゲルゼ ]
だははははははっ!! いやもう、作者の人、遊びすぎだろっ!! この7巻は、幕間的な要素の強い短編集なのだけど、世界観を壊しかねないぐらいコメディに走っていて、笑った笑った、大笑いです。それでいて、きちんと次の展開に向けて、シリアスな要素も入れ込んでるのが、泣けてくるなぁ〜〜。
《公館》から解雇された仁のもとに、結局、きずなとメイゼルがやってきて……、というところから始まる短編集。とにかく、ネタがめちゃくちゃで笑えるのと、細部に拘った描写が秀逸、胸に拘りすぎですっ!! そして、単なる短編集ではなく、きちんとストーリー構成としても、6巻を引き継ぎ、続く8巻に繋げる意味のある内容に仕立ててあるのも、素晴らしいよなぁ。各短編の中では、特に笑ったのが、「ハダカのこころで」かな。寒川、悲惨すぎる(笑)。……ただ、それにしても、現状の仁のポジションは、どうにも作者の都合だけで位置付けられたような違和感を感じるのが、にんとも。そこら辺、もうちょっと、説得力があると良かったんだけどなぁ。
[ 円環少女 ]
三年半ぶりの新刊だったので既刊から読み直してみたのだけど、おおぅ、前巻の終わりって、そんな中途半端なところで終わっていたのかぁ〜。そして、その中途半端な場面から、そのまんま、ふつーに続いてるのんな。……なんで、こんなところで、三年半も間を空けたんだ(^^;。
そゆわけで、和志は、治療のための唯一の手がかりである夏美の行方を追い求め、クラブ「タントラ」へ向かう……。物語的にはあまり進展もなく、内容もわりとぐだぐだだなー。情念の描き方や、重くえげつない設定は、相変わらず素晴らしいのだけど、どうにも周辺ばかり描いてる感じで、肝心の本筋がなかなか進まないのが、にんとも。まあ、下巻もすぐに出るみたいなので、それに期待かしらん。
[ BLOODLINK ]
せつなさの中に、爽やかな読後感。新人さんにしては尖がった部分がないので物足りないと思ったりもするけど、そつなく綺麗に纏まっているし、なかなかに面白かったです。
人々が徐々に存在を失っていく謎の現象により、ゆっくりと滅んでいく世界。そんな世界をバイクで旅する少年と少女と、旅先の人々との心の交流を描いた内容。まあ、ベタなモチーフをセオリー通りに組み立てた作品なので、良くも悪くも期待通り面白さでした。総じて、そこそこ巧く描けてる代わりに、目立った特長には欠ける印象なのだけど、その中でも強いてあげれば、少年と少女の関係性は、頭一つ良かったかしらん。ツンデレだしなっ!!
ぐはっ。シノシノの追い込みとその後のキララ先輩が、とにかく凄いんですがっ!!
とあるパーティー会場で発生した殺人事件。たまたま居合わせたシノシノとキララ先輩と僕は、事件の鍵となる『夢路ハナ』の謎を追う……。というわけで、キララ先輩の幼なじみ、トラも登場、事件の謎よりも、キララ先輩に多少焦点を当てつつ、シノシノの微妙な変化を描くような内容になっています、と。まあ、それはともかく、今回の話は、ほんと、えげつないわ。そして、“キララ先輩”が意味深で、なかなかに良いです。……しかし、あとがきによると、物語も佳境ということなのだけど、いったい、どこが佳境なんだ?(^^;。う〜ん、今後は、もっと三人の有り様に踏み込むって事かしらん? そして、不遇なクロス君(笑)の明日はどっちだ!?
[ SHI-NO ]
ヤンデレ、ヤンデレっ!! 相変わらず、フィノの黒くて病的な恋ごころは魅力的だなぁ〜。そして、セロの天然の女ったらしぶりの素晴らしいこと素晴らしいこと(笑)。
そゆわけで、シリーズ第二弾。ロンバルドに到着したセロ、フィノ、アルカインのパーティーに、アルカインの仲間達は無事に合流できるのか? という話。相変わらず、キャラが魅力的で素晴らしい作品ですなっ。ただ、わりとシビアな情勢だと思っていたのだけど、緊張感の欠片もなく、のほほんとした展開になってるのは、どうよ(笑)。まあ、今回まではキャラ紹介的な要素が強いのだろうし、本格的に物語が始まるのは、次からかしらん?
[ 輪環の魔導師 ]
最高傑作っっっ!! 全編素晴らしいのだけど、特に、千晶の汗の飛び散る様が見えるような、臨場感溢れるライブハウスのシーン。あまりの素晴らしさに、読んでて泣けてくるよ。いやぁ、心情表現と音楽は、非常に相性がいいよな。マジに素晴らしすぎる〜。
真冬、千晶、神楽坂先輩と、ナオの民俗音楽研究部。4人は海での合宿、そして、はじめてのライブへ……。と、いやぁ、悩み多き青春、各メンバの想い、それを、音楽に載せて描いた傑作。音楽を絡めた演出が、とにかく圧倒的で素晴らしいわ。合宿での演奏、その後、そしてライブシーン。ほんと各場面場面でのキャラの心情が見事に描かれていて、すごいすごい。そして、ストーリー的にも、恋愛要素が強くなって、より好みの線になってるしなっ!! ただ、展開自体は、ぎこちない感じもするんだけど。作者の人は、キャラを動かすのに、わりと苦労してる予感が(^^;。まあ、それはともかく、ほんと素晴らしかったぁ〜〜。
[ さよならピアノソナタ ]
最高傑作級。もうもう、とにかくラストが綺麗だ。いやぁ、零崎曲識の恋と音楽の物語。きちんと一本筋が通った内容で、非常に良かったです。
そゆわけで、零崎一賊を描いたシリーズ3作目。あとがきによると、このシリーズって、正式には「人間シリーズ」というのか。初めて知ったよ(^^;。で、この3作目は、最強の“音使い”零崎曲識を描いた内容。零崎曲識の人生について、五年前、十年前、二ヶ月前、そして、今の4つの短編から構成されているのだけど、ラストを魅せるための構成が素晴らしく、そしてそのラストがとにかく綺麗で、ほんとめちゃくちゃいいわ。そして、『少女趣味』としての零崎曲識のキャラが魅力的すぎるっ!! ……あと、『戯言シリーズ』と、かなり密接なエピソードとなっていて、そこら辺も楽しいのだけど、すでに内容を忘れかけてる部分もあって、ちと困ったりもして。<をい
[ 零崎シリーズ ]
だははははははっ、笑った笑った、大笑い。……なのだけど、眼鏡っ娘萌え小説じゃねぇっっっ!! いや、主人公が眼鏡っ娘ということで薦めていただいたわけですがっ、確かに、主人公は眼鏡をかけていますがっ、主人公に関しては、どうみても萌え的な文脈で書かれた作品ではないのよなっ!!
死神姫と呼ばれるアホな娘アリシアが、新興貴族のなり上がりで暴君と怖れられるカシュヴァーンの元に嫁ぐことからはじまるコメディ。いやぁ、過去の出来事により頑なになった青年の心を、明るくマイペースな少女が少しずつ解かしていく、という王道的なストーリー展開で、その奇を衒わず丁寧に組み立てられた展開が、なかなかに筋が良く素晴らしい。読者の期待をいい意味で裏切らないのよなっ!! 期待通りのカタルシス。ほんと、面白かった、面白かった。ただ、アリシアの頭があまりにお花畑すぎるのは、ちと人を選ぶと思ったりも。まあ、コメディということを考えれば、許容範囲だとは思うんだけどさ。
[ 死神姫の再婚 ]
バカだっ。愛すべきバカ小説。や、バカ小説としての組み立て方は、わりと王道なんだけど、キャラクターの使い方が巧く、非常にクオリティの高いバカ小説に仕上がってるのんな。……ただ、ちと好みじゃなかったりはするけど(^^;。
そゆわけで、夜のスーパーで繰り広げられる半額弁当を巡るバトルを描いたお話。ネットの各地で評判が良かったので買ってみたのだけど、いやぁ、期待を裏切らない、良い意味で想像通りの内容で、非常に面白かったです。とにかく、基本に忠実なバカ小説。王道的なストーリーの組み立て方もいいんだけど、なんといっても、キャラの造形と、そのキャラを巧く使った演出が、非常に出来が良いのよ。ほんと、白粉の妄想や白梅の性格がアクセントとして絶妙で、そして、各所に挿入された主人公の妙な独白が、笑える笑える。内本君とか石岡君って、なんだよ(笑)。まあネタ小説だし、正直、好みの線ではなかったのだけど、とにかく面白かったです。
しかしそいえば、主要登場人物をみると、なんで「著莪あやめ」が載っているだろ。ほとんど出番はなかったし印象的なキャラでもないと思うのだけど、もしかして、あとがきの削除されたネタって、「著莪あやめ」絡みなのかしらん?
[ ベン・トー ]
何でこれが、富士ミスじゃないんじゃーーーーーーーっっっ!! いやぁ、LOVEですよ、LOVE。とにかく良質なラブコメですよっ。って、ラブは弱めで、むしろコメディ主体な気もしますが、それでも、ファンタジアではなくて、富士ミスで出すべき内容だろ。……とにかく、さくさくと軽く読めて、非常に楽しい。すげー、面白かったですっ!!
そゆわけで、弟・雪国は、姉・舞姫の代わりに、女装の上で名門お嬢様学校へ通うことに……、という男女入れ替わりなドタバタラブコメ。作者が女性のためか、この手の話ではお約束なエロ成分は弱め、萌え要素も控えめだと思うのだけど、その分、正統的なラブコメとしては、なかなかの出来です。生徒会と対立するソロリティという社交組織といい、そのリーダーである「胡蝶の宮」こと蝶間林典子といい、そして、雪国の一目惚れの相手である一駿河蜜のぶっ飛んだ性格といい、いやぁ、お約束ではあるのだけど、これらの設定が、いい感じに軽いノリのストーリー展開にマッチしていて、めちゃくちゃ面白い。ホント、コメディとしては、すげー出来がいいのですよっ!! まあ、ラストが駆け足になってしまっていたのはタマに傷だったのだけど、それ以外は、凄く面白かったです。
もう、コバルト、ファミ通文庫時代の竹岡葉月の作品と比べても、一段も二段も面白い。これなら、続きもめちゃくちゃ楽しみですっ!!
[ SH@PPLE ]
うわっ、変わってねぇ〜〜。デビュー作も含む最初期の短編集なのだけど、作風といい内容といい、ほとんど今と変化がないのよ。いやぁ、30年間、これを書きつづけてきたのか。凄いなぁ。
そゆことで、夢枕獏のデビュー作も含む最初期の短編集。いくつかの短編は確かに古さを感じさせるものもあるのだけど、総じて、今と変わらない、エロスとバイオレンス、そして、漢の肉の熱さを感じさせる内容。……あと、タイポグラフィック・ストーリーというか、文字で遊ぶ表現手法を始めたのは、夢枕獏だったのか。まあ、ネタとしては面白いけど、所詮一発ネタなので、最初期だけで止めたのは正解だと思う。
あとは、いくつかの作品について簡単にコメント↓。
山を生んだ男
冬山に挑んだ男が体験した不思議な話。解説によると、「夢枕獏の方向性を決めた重要な作品」ということで、確かに、『キマイラ吼』に連なる片鱗を見せる、いやぁ、漢らしく汗臭い作品だ。どんだけ山が好きかということが伝わる内容で、素晴らしい。
てめえらそこをどきやがれ!
『魔獣狩り』の原型。といっても、『魔獣狩り』は読んだことないんだけど(汗;。いかにも、セックスとバイオレンスで、まったくその後の夢枕獏と変わらないよなぁん。
遥かなる巨神
うわっ、SFだよ、SF。白い巨人が闊歩するある惑星を描いた内容。いや、こういうSF的な方向で進んだら、夢枕獏も違った作風になったんだろうか。
[ 遥かなる巨神 ]