ヤンデレヤンデレっ!! という感じの、ダークな雰囲気で手堅い作りの連作短編。まあ、手堅く定番なネタではあるんだけど、そんなに尖がった特徴もないので、ちょっと新鮮味には欠けるよなぁん。
MF文庫Jライトノベル新人賞 佳作受賞作。悪魔と契約を結ぶことで歪んだ願いを叶えようとする人間たちと、そんな人間を見守る美少女悪魔「九」を描いた連作短編。どこかで見たことがあるようなネタばかりな上に、とってもありがちな構成なので、正直、新鮮さにはめちゃ欠けるんだけど、その分、手堅く出来はふつーにいい感じ。まあ、かなり暗くて嫌な話なので、わりと人は選びそうな予感だけれど。
[ ナインの契約書 ]
圧巻の最終巻。大人の事情で、全五巻予定が全四巻に切り上げということなのだけど、きちんと伏線を回収し描くべき部分は描いたであろう、非常に中身の濃い一冊でした。やっぱり、もうちょっとページを割いて書いて欲しかった部分もあることはあるのだけど、むしろ、突然の短縮にもかかわらず、よくここまで上手く纏めたなぁ。
もはや遠くなってしまった日常。学校を止め家にも帰らず、ただアンゲルゼとの実戦を重ねていく陽菜に、運命は、さらなる過酷な決断を強いる……。という感じで、このシリーズも最終巻。湊と有紗の関係、陽菜の出生の秘密と父親である敷島との確執、アンゲルゼの謎、軍の思惑、そして、覚野と陽菜の二人の想い、と、非常に密度の濃い内容で、とにかく圧巻。そして、非常に綺麗なラストシーン。ほんと文句なく素晴らしい作品だっただけに、たった4巻で終わってしまったことは、とにかくもったいない。残念無念。
[ アンゲルゼ ]
すっ、すげぇぇぇーーーーーーーっ!! うわぁ、うわぁ〜、雪乃紗衣の伏線をたたみにかかった時の巧さは、ほんと絶妙だよなぁ。ていうか、今まで仕込んでた伏線を、怒涛の勢いで回収すること回収すること。……えっと、シリーズも最終盤突入ということで、O.K.?
吏部尚書・紅黎深の解任で混乱する朝廷。貴族派と国試派の思惑が交錯する中、紅家官吏が出仕拒否を……。と、単なる紅家の話で終わるのかと思ったら、うわぁ〜、会議での凌晏樹の提案も鳥肌モノだったけれど、“鳳麟”の話が出てからの展開が、めちゃくちゃスゲェ〜〜。いや、“鳳麟”は、てっきり最終エピソードへの仕込みかと思ったら、速攻で使ってきたよ、この作者。そりゃ、奴がそうなのはバレバレだったけど、だからと言って、このタイミングで明かすかぁーーーっっっ!! ああああぁぁ、劉輝も秀麗も、というか、王家、紅家とも、もはや詰んでるとしか思えない状況なんだけど、この逆境から、どうハッピーエンドに持っていくつもりなんだろう? 怒涛の展開に、続きが待ち遠しくて、仕方ありませんっ!!
[ 彩雲国物語 ]
面白いのは確かなんだけど、それはともかく、何故に上下巻っ!! ふつーに1巻、2巻、以下続くでいいじゃん。や、上下巻で綺麗に纏まってるわけではないし、あとがきによると、そのまま続くみたいだし、なんで、上下巻として売ってるのぉ??
ヤエトの体調を心配する皇女に命じられ、療養のため都に戻ってきたヤエト。しかし、その都では、皇位継承権を巡りキナ臭い動きが……。という感じで、ロリコンっ!! ロリコンっ!!<をい。や、新キャラのスーリヤは、当然、ラブコメ要員で、ヤエトを巡り、皇女とスーリヤの間であれこれ展開があると思ったのに、スーリヤの扱いが残念でありませんっ!! ……相変わらず、ヤエトの病弱で隠居を求めつつも生真面目な立ち振る舞いも楽しく、ファンタジー世界としての設定も秀逸で魅力的、物語的にもまだまだこれからという感じなので、とにかく続きが非常に楽しみです。
[ 翼の帰る処 ]
ナオは、あまりに酷いヘタレだ。……や、最後は綺麗に纏めてるけど、ナオのヘタレぶりが目立つ話でした、最終巻なのに(^^;。
クリスマスを目前として錯綜する恋模様。そして、真冬に不吉な予兆が……。と、前半の、いかにも不幸一直線を予兆させるフラグの数々が、もう、えげつないことえげつないこと。そして、ナオのヘタレぶりがあまりに酷い(笑)。さらに、哲朗の頑張りどころは、なにか間違ってる気が(^^;。という感じで、感動のシリーズ最終巻っ!!
や、総じて、素晴らしい音楽と恋愛のシリーズでした。ナオは、ヘタレすぎるけどなっ!!
[ さよならピアノソナタ ]
う〜ん、もともと単巻前提の、一発ネタ的な内容なので、シリーズ化はツライかなぁ。いや、方向性を変えてくるならともかく、やってることは1巻と同じでインパクトは確実に劣ってるだけ、明らかに、1巻の劣化コピーでしかないのが、にんとも。
とはいえ、思わずニヤニヤするような、おたくネタ満載な内容は健在。隠れオタクの妹とその妹に振り回される兄、今回は、兄妹で夏コミに行くことに……。と、まあ、小ネタの数々は面白いんだけど、肝心のストーリーは、あまりに強引な上に1巻の焼き直しでしかないので、正直、いまいち。あと、オタクやネットねたは、小ネタで終わるならいいけど、変に、作者の主義主張も混じってるような物言いなので、そこはどんなもんかなー。あとがきによると、三巻からは多少アプローチを変えるらしいので、それでどうなるかだなー。
[ 俺の妹がこんなに可愛いわけがない ]
テンプレート的な作品だなぁ。いや、橋本紡の『毛布おばけと金曜日の階段』(→感想) 辺りを感じさせる内容ではあるんだけど、どうにも、売れ線を狙ったような、ありがちな作品になっちゃってるんだよなー。つまらなくはないんだけど、これなら、作者は橋本紡じゃなくてもいいんじゃね?
母親の失踪をきっかけに、死んだ子猫を拾っては庭に埋葬するようになった女子高生・みずきを主人公とした青春ストーリー。猫関係の話はわりと良かったものの、キャラの配置や行動なんかが、あまりにテンプレートすぎるんだよなー。「親がいなくなり、取り残された姉弟」「子猫の礫死体を拾う姉」とネタが重いのが、なおさら、テンプレート的な作品の薄さを際立たせてしまっていて、酷い。インパクトと雰囲気だけで作品を作るんじゃなくて、もうちょっと、キャラを深く描いて欲しかったなぁ。
[ 猫泥棒と木曜日のキッチン ]