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好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!! −2012年10月に読んだ本



集英社 スーパーダッシュ文庫
獅子は働かず 聖女は赤く3 あいつはもう一人でも大丈夫じゃ /八薙玉造

やっぱり、すっげーおもしろい。そして、相変わらず、パンツかよっ!!

今回は、魔女の隠れ里《茨の城》にあと少しのところで、再び、中央教会の攻撃を受ける……。と、エーファとヒルデの姉妹が、すでに戦闘ではほとんど役立たずで、コメディ&お色気要員になっている件。一方、うひぃ〜、コルネリアはともかくとして、フェル兄さんの結末がエグいなぁ。それとも、まだ、出てくるのか?

そして、明かされる《赤い聖女》マルレーネに絡む過去が、うわぁ、マルレーネは、悲劇のヒロイン的な立ち位置ではあるのだけど、その立場の人間としてはあまりにダメダメすぎる選択で、これは同情できないどころか、マジに最悪だ。むしろ、ユリウスはじめ、周りの人間が可愛そうすぎる。その運命を引き継ぐことになるアンナは……、続きは、どーなんのよ、いったいっ!!

[ 獅子は働かず 聖女は赤く ]


アスキー・メディアワークス 電撃文庫
楽聖少女2 /杉井光

……『神様のメモ帳』の四代目と平坂組の組員たちが出てきたんですが(笑)。

いや、なんだかなおさら、『神様のメモ帳』と『さよならピアノソナタ』の二次創作っぽいノリになってきたな。杉井光ファン向けのファンサービスが過剰すぎる予感が(^^;。いや、一応、ベートーベン女体化の歴史改変モノというのがメインストーリーなのだけど、そっちのほうは、ナポレオンが無茶すぎて、もはや、改変どーこーではなくなってる予感。いやまあ、歴史改変という感じではなくて、ループものと言ったほうがいいんだろうけど。世界を改変したりする悪魔の謎は、気になるところだよなぁん。……それにしても、主人公のユキは、杉井光のいつも通りの主人公なのだけど、いつも以上にウザイ。創作に目覚めて、もうちっとマシになってほしいなぁ。

[ 楽聖少女 ]


富士見書房 富士見ファンタジア文庫
姫狐の召使い3 /春日みかげ

いまいち、というよりも、つまんねー。いや、今回は、晴明の過去話とはいえ、晴明以外のキャラの扱いが、ぞんざいすぎてヒデー。まるで同じことしか喋らない、RPGのNPCのようだ……。ストーリーのほうも、たったそれだけのネタを描くのに、上手く話を膨らませているわけでもなく、ページ数だけ無駄に重ねてるだけで、どうにもツマラナイ。こんな丸わかりの話なのに、泣かせに走るわけではなく、なんら工夫するでなく、単にイベントを希釈して間延びさせてるだけとの印象。さすがに、ここまで酷い出来はいかんだろ〜。

そいえば、今回は、安部晴明モノではお馴染みの賀茂保憲が登場。そうきたかー。……しかし、陰陽道の時代は、戦国時代、幕末と同じくらい良くネタになるけど、基本、安部晴明が中心なので、いつもお約束の人になってしまうのは、ある意味ツライよなぁ。いや、突然、歴史上のマイナーキャラを持ってこられても、付いていけないんだけどさ。

[ 姫狐の召使い ]


アスキー・メディアワークス 電撃文庫
僕と彼女のゲーム戦争2 /師走トオル

権田原(T-T)

JGBC初代チャンピオンの権田原は、主人公たちの目指すべき目標、超えられない壁的な立ち位置のハズなのに、ゲームから離れたときのふつーのジャパニーズサラリーマンぶりが、なんともせつない。……いや、現実よりゲームが受け入れられている世界という設定だったら、麻雀が受け入れられている『咲』の世界のようにプロとして活躍できるとか、せめて『ベン・トー』の狼たちのように、戦場から離れても、一癖も二癖もあるようなキャラとして描けばいいのに。ゲームから離れたときのリアルに等身大なサラリーマンの姿は、いかにゲームを極めようとも、しょせん社会では役に立たないことを突きつけているかのようで、夢も希望もなさすぎるよ(T-T)。

それはともかくこの2巻は、金髪ロリ巨乳でツンデレな杉鹿まどかが参入。敵役の平泉がちょっとチープすぎるところはダメだけど、仲間を助けてチームの結束を強める展開は、部活ものの王道で楽しい楽しい。フラグ立てもお約束。ネタになっているゲームは、やっぱりさっぱりわからないのだけど、あまり自分から動くタイプでない岸嶺を、上手く動かす瀬名先生の立ち位置がなかなか面白いね。杉鹿もお約束な反応でグッド。……しかし、杉鹿メイン回なので仕方ないけど、天道の影がいっきに薄くなった予感。てっきり、平泉の止めを刺すのは、天道かと思ってたんだけどなぁ。いや、こういう展開だと、ゲームで勝つだけでなく、最後はより強い権力で叩くのが、お約束だと思うんですけど。

それにしても、次巻は図書館の眼鏡っ娘か。これはいよいよ楽しみすぎるっ!!

[ 僕と彼女のゲーム戦争 ]


メディアファクトリー MF文庫J
お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ7 /鈴木大輔

裸で添い寝……。うわぁ、にやにやが止まらない(笑)。そして、仕掛けが巧いなぁ。すごく綺麗なストーリー構成が素晴らしいっ!! ぎんぎん……。

そうわけで、夏休み。海の家でバイトをすることになった面々は……、と水着回?(^^;。いや、あまり多く語るとネタばれになってしまうけど、お手本のような綺麗なストーリー構成が、いやぁ、素晴らしい素晴らしい。ありさの全裸イベントから、まさか、そう展開して、うわぁ、そうくるかぁぁぁぁぁぁっっっ!! そいえば、ありさの全裸イベントって、はじめなんだか思い出せずに混乱したのだけど、5巻の引きか(^^;。すっかり忘れてたよ。<をい。……しかし、秋子方面といい、今回、かなりシナリオを進めた気がするのだけど、どうするんだ、これ!?

[ お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ ]


アスキー・メディアワークス 電撃文庫
僕と彼女のゲーム戦争3 /師走トオル

幼なじみの眼鏡っ娘・みやびちゃん参戦。いきなりのラブコメ展開で、にやにやしながら読んでたのだけど、一応、お約束的にライバル高校登場で、部活モノらしく、全国大会優勝を目指していくのは変わらずか。前半のノリのまま、ゲーム対戦は忘れて、ラブバトルなハーレム展開中心で進んでいってもよかったのに(^^;。ただ、みやびちゃんは待ちに待っていた眼鏡っ娘キャラだけど、幼なじみで、眼鏡っ娘で、アイドル声優で、セガマニアと、いろいろと属性を詰め込みすぎだよなぁ。もう一人ぐらい女の子キャラだして、属性を分担させたほうが良かったような……。

しかし、当初はメインヒロインかと思ってた天道のほうは、マジ、空気になりつつあるな。もはや、瀬名先生と同じく、単なるチームメイトの一人になってしまってるような……。

[ 僕と彼女のゲーム戦争 ]


宝島社 このライトノベルがすごい!文庫
薄氷あられ、今日からアニメ部はじめました。 /島津緒繰

えっと、私は、大学時代、アニ研に所属してました。一応、監督として、こんな感じのアニメ も作ってます。……で、この作品は、仲間を集めてアニメを作ろう!! という話なんですけど、う〜ん、アマチュアのアニメ制作の風景としては、なんだか違和感があるんだよなぁ。いや、ぜんぜん嘘っぽいというわけでなく、むしろ、アニ研出身者じゃないとわからないような、妙にリアルな部分も多いのだけど、だからこそ、些細なところの違和感が強いんだよなぁ。特に、作画周りの描写が、なんかおざなりというか、いい加減というか……。私がアニメを作ってたのは、パソコンが導入される前の 8mmフィルムの時代だったので、作り方もいろいろ変わってるのかしらん? でも、原画描いて、動画割ってって辺りは、あんまり変わらないと思うんだよなぁ。

それはともかく、本作は、第3回『このライトノベルがすごい!』大賞、栗山千明賞受賞作。主人公の火狩隆史は、授業中にエッチな絵を落書きしてるのをクラスメートの女子・薄氷あられに見られてしまい、という感じでスタートする部活モノ。まあ、Going my wayな女の子に振り回されつつ新しいクラブを作っていく、というのは、『涼宮ハルヒ』辺りと同じノリなんだけど、なんだかよくわからない部活をネタにしてるのではなく、「アニメ研究部」という実在する部活をネタにしているのが特徴。ただ、アニ研あるある的なものを期待してたんだけど、そういう感じのはなし。せっかく、漫研と対決したり、アニメ作ったりしてるのになぁ〜。

それにしても、ヒロインは 薄氷あられ かと思ったら、どう見ても、生徒会長のほうでした(笑)。個性的でぶっ飛んだキャラが魅力、という話なんだけど、これ、計算してそう描いてるというより、単に、キャラの方向性が定まらないまま書き進めた上にキャラ描写も不安定なだけで、たまたま、変な行動パターンにみえるキャラになっただけなんじゃ……。作者の力量的には、まだまだこれからという印象だったり。

まあ、身近なネタを題材にした作品なので、今後も期待したいところだけど、続きはどうするんだろ? 1本アニメを作っちゃうと次のネタは難しい気もするのだけど、部員の中に、声優や音楽やる人がいないので、そこら辺の人を集めてくる展開かしらん?

[ 薄氷あられ、今日からアニメ部はじめました。 ]


アスキー・メディアワークス 電撃文庫
僕と彼女のゲーム戦争4 /師走トオル

うわぁ、格ゲー、めんどくせー。覚えること多すぎ。いや、バーチャの頃は、私も、よくゲーセンには行ってたのだけど、10年以上足が遠のいてるうちに、基本的な技を出すだけでも、こんな複雑なシステムになってたのか。その上で、勝つためにはいろいろと覚えることがたくさんあるって、今、新たに格ゲーをはじめる人っているの? こんなに新人の参入障壁高かったら、衰退する道しかないような……。まあ、私がよくプレイしてたのは、『バーチャ』『龍虎の拳2』『餓狼スペ』『KOF』『ソウルエッジ』辺りで、『ストII』は、もともと良く知らないのだけど(汗;。そもそも、ゲーセン行っても、CPU戦しかしてなかったので、こんなメンドクサイ駆け引きとかやってなかったしなー。

というか、格ゲーって、女の子キャラを自分の好きなように動かすのが楽しいギャルゲーの一種なのに、男キャラを選択するってのが、そもそも訳がわからない。『ストII』から増えたキャラは知らないんだけど、まあ、『ストII』ってことなら、リュウじゃなくて春麗一択じゃないのー?<をい

それはともかく、内容のほうは、えっと、小説じゃなくて、ゲーム攻略を物語風に纏めたと言う感じになっちゃってるんですけど(^^;。さすがにこれは、正直、小説としての方向性を取り違えてるようにしか思えないのだけど、一応、これはこれでアリなのか?

[ 僕と彼女のゲーム戦争 ]


アスキー・メディアワークス 電撃文庫
アニメアライブ /秋傘水稀

最悪だっ。親、だしてきやがった。作者もアホだけど、こんな出来の悪いプロットを許した担当編集も万死に値する。親が出てくるまでは、かなり良かっただけに、もったいない、もったいなさすぎる。そもそも、「アニメーターは低賃金だからアニメーターになるな」というなら理解できるんだけど、「アニメーターは低賃金だから、クリエーターを目指すな、起業するな」ってのは、わけがわからないよ

そゆわけで、同人ゲームの企画・脚本をやっていた大学生が、周りが就職活動をはじめたのをきっかけに、創作活動を諦めるか、就職活動をするか、うじうじ悩む話。……そういう悩みだったら、とりあえず、就職活動で、ゲーム業界を狙えばいいんじゃないかな? 「夢を掴んでアニメーターになっても、アニメ産業の構造的問題で、アニメーターでは食べていけない。だから、夢を追いかけちゃいけない」って話なんだけど、アニメーター以外の夢ならぜんぜん問題なくない? てか、就職活動するから創作辞めるって、おいおい、どういうことだよ? 社会人に比べたらぜんぜん暇だろ? 社会人で同人やってる人とか兼業の人とかに謝れっ!! それ以前に、アニメーターに謝れっ!!

と、根本的な部分がいろいろ間違ってる作品なのだけど、もう一方の軸になっている アニメ制作パートは素晴らしかった。魅力的な女の子たちの創作へ賭ける熱い想い。情熱のあまり、ぶつかり合う青春っ!! 芽生える信頼っ!! そして、逆境すらもチャンスに変える素晴らしい展開っ!! アニメ制作のチームが、脚本、アニメータ、声優、音響、それぞれ一人づつなので、リアルに制作風景を描いたら、永遠と一人必死に描いてる隣で、三人がお茶でも飲んでダラダラしてる絵姿しか想像できないのだけど、そこら辺は上手くごまかしていて、この4人の構成だからこそ、ラストが生きる作りになっているのが、ホント素晴らしい。……ああぁ、どうして、マイナスにしかなっていない就職話を入れちゃったんだ? アホだ、あまりに残念すぎる、もったいない。四の五の言わず、アニメだけ作ってればいいのに。

ホント、途中までは、すげー良かったのに。アニメ制作ものとしても素晴らしく、アンネも観前も奈菜も魅力的でいい娘たちなのに、なんでこーなったっ!!(T-T)。

[ アニメアライブ ]


宝島社 このライトノベルがすごい!文庫
ファウストなう /飛山裕一

第3回『このライトノベルがすごい!』大賞、優秀賞。高校に入学して無気力になってしまった少年が、悪魔の登場とクラスメートとの交流を元にやる気を取り戻していく青春モノ。タイトル通り、ゲーテの『ファウスト』を下敷きにした内容なのだけど、センスが独特で凄いな。何故に、力士(笑)。

無駄に迂遠な会話と力士をはじめとした妙なセンスのわりに、王道でまっすぐな青春ストーリーが魅力だと思うんだけど、ただ、その迂遠で回りくどい会話が、単に下手でホント無駄にしか見えないのがマイナスだよなぁ。『ファウスト』というと最近のラノベ的には『楽聖少女』があるけど、『楽聖少女』と比べると、ネタ的にも、ちょっと弱い印象なのもツライ。まあ、新人らしく、力量的にはまだまだこれからという感じなので、今後の成長に期待かしらん。

[ ファウストなう ]


宝島社 このライトノベルがすごい!文庫
オレを二つ名で呼ばないで! /逢上央士

第3回『このライトノベルがすごい!』大賞、優秀賞。タイトルに二つ名とあるので黒歴史な話かと思ったら、バカテス的?な学園バトルものか。二つ名とともに超能力を与えられる学校で、その超能力を駆使して校内で行われるバトルを戦っていくという話。バトルといっても学校行事の一環だし、雰囲気的には、コミカル強め。これは普通におもしろい。

まあ、好み的には、もちょっとラブコメ要素が強いほうがいいのだけど、このノリだと難しいかなぁ。十分おもしろいんだけど、ちょっと小さく纏まっちゃってる感。あまり話を広げる余地もなさそうだけど、続きはどうするんだろ?

[ オレを二つ名で呼ばないで! ]


宝島社 このライトノベルがすごい!文庫
ロゥド・オブ・デュラハン /紫藤ケイ

さすが大賞っ!! 他の受賞作と比べて、あたま一つ飛び抜けている印象。これは、質のいいダークファンタジーだわ。

いやもう、冒頭のイベントから吐き気がするぐらいインパクト強くて、それが竜頭蛇尾になることなく最後まで徹底して強力な物語でした。なんちゅーか、全体として赤黒い。文章だからまだ平気だけど、これ映像にしたら、血だらけで凄惨すぎるぞ。凄い凄い。それでいて、読後感が悪くないのがなおさら凄い。

そゆわけで、第3回『このライトノベルがすごい!』大賞、<大賞>受賞作。領姫の死の真相を追ううちに、死の運命を弄ぶ死術と関わりを持つことになる傭兵アルフォンスの物語。しかし、本来、シリアスな話のハズなのだけど、アルフォンスと聞くと、笠原弘子の「未来派Lovers」が頭の中で鳴り響いてしまう世代なので、名前に慣れるまで大変でした。いや、アルフォンスって、30代以上だと「未来派Lovers」の印象が強くてなかなか使えない名前だと思うのだけど、作者の人、そうか若いのか……。いや、せめてハガレンのように通称で呼んでくれればいいのに……。

それはともかく、とにかく凄惨で凄まじい物語でした。これだけ退場者が多いと、続きを書くのつらいよなぁ、と思ったら、この作者、来月から別シリーズで三ヶ月連続刊行か。実力は確たるものがあるように思えるので、別シリーズにも大期待です。

[ ロゥド・オブ・デュラハン ]


小学館 少年サンデーコミックス
神のみぞ知るセカイ(19) /若木民喜

号泣。ラストのライブシーンがもう、涙なしには読めない(T-T)。ライブ前のシーンから、ちひろの台詞の一つ一つとその表情の想いを殺してる感が、とにかく切ない。さらに、なにより凄いのが、この歌詞。この歌詞をいつ書いたか想像するだけで、そして、それを今、歌っている姿が、とにかく泣ける。さらにさらに、輝く天使たちと、その天使を見上げ、涙をこらえ俯きながらギターを弾く姿が、いやもう、特別になれなかった切ない想いがあふれまくっていて、ほんとうに泣ける。……そして、読了後に見るカバーイラストのちひろはっ。なんだよ、その笑顔っ。卑怯すぎるわっ。

そゆわけで、「女神編」完結。今巻のメインとなる あゆみの再攻略の過程も、ちひろを巻き込んだ時点で当然そうなるわけだけど、見守るちひろがホント切ないなぁ。ピックを奪うシーンとか、うわぁ、えぐえぐ(T-T)。いや、その後のピックの使い方も、もちろん、涙なしには読めない。そして、桂木の覚悟をうかがわせる天理のシーンから、あゆみへの本当の回答を経てからの告白シーンが、また、素晴らしい。これが、ちひろとの想いを重ねながら、ラストシーンの桂木の涙に繋がっていて、ほんと泣ける。凄いな。

ちなみに、ヒロインの中では、私は、栞一押しで、次いで、天理、かのん、あゆみという感じなので、買ったとき表紙見て、「なんでー、ちひろかよー」と思ったのは、ここだけの秘密。<をい

[ 神のみぞ知るセカイ ]


宝島社 このライトノベルがすごい!文庫
剣澄む ―TSURUGISM― /ますくど

第3回『このライトノベルがすごい!』大賞、優秀賞。村正、幼女化だとぅ。や、現代に到るまで柳生などの剣士が帯刀し活躍する世界を舞台にした物語で、上泉家の元跡取り・綱義は、久しぶりに戻った実家で、拘束された謎の幼女と出会う、という感じではじまる内容。別に、江戸時代が舞台でも良さそうな話なんだけど、現代にしてるのは、キャラ萌え的な要請だよな。イラストの力もあるんだろうけど、洋装で剣を振るう姿や刀子さんの衣装なんかも、カッコいいねぇ。素晴らしい。幼女・村正やブラコンが激しい弟との絡みは楽しく、剣を使ったバトルも格好良くて、これはいい新人作品。

ただ、ストーリーと設定がいまいち練り込まれてない印象。実力不足を理由に家を継がず外に出たわりに、屈託なく御前試合にでたり、妖刀の位置付けも微妙で、刀が人型を取るからといって、正直、剣士が妖刀を使う理由がないんじゃね(^^;。なんというか、描きたいシーンを並べただけで、シーンの繋がりがおなざりだし、俯瞰してみると粗が多い予感。幼女とのアレコレとカッコいい剣でのバトルを楽しむだけの作品と割り切ればいいんだけど、ちともったいないよなぁ。

[ 剣澄む ]


宝島社 このライトノベルがすごい!文庫
魔王討伐! 俺、英雄…だったはずなのに!? /遊馬足掻

第3回『このライトノベルがすごい!』大賞、栗山千明賞。ファンタジー世界を舞台にしたギャグ作品。こういう作品って、おまけ的な番外編とか習作みたいな感じでなら、よく見かける内容だと思うのだけど、それを一本通してやり切ったのが珍しく、それが栗山千明賞の理由なのかしらん。ただ、本来、短編でやるようなネタなので、やっぱり長い。そして、無駄に間延びさせてる印象なんだよなぁ。

いや、規格外に強すぎる残念な主人公、という着想はいいのだけど、そこで、ギャグに徹しきれず、変に普通のファンタジーっぽくしようとしてしまったのが敗因なんだろうなぁ。このネタだったら、ストーリーは要らないし、説明的な描写は、もっとざっくりで良かったんじゃね? ルーチェとの会話を主体にした日常系っぽい、一編をもっと短くした連作短編に徹してくれれば良かったのに。

[ 魔王討伐! 俺、英雄…だったはずなのに!? ]


宝島社 このライトノベルがすごい!文庫
オカルトリック 02 /大間九郎

最高傑作級。大間九郎、やっぱ凄いよ、天才だわ。とにかくキレてて、ヤンデるよなぁ。玉藻も、イソラも、ねえさんも、うわぁ、なにそのラスト。好みかどうかで言えば、決して好きなタイプの話ではないのだけど、ほんと凄いとしか言えないような内容だわ。

イソラの姉、舞花が意識を取り戻すところからはじまる導入。そして、玉藻を巡り、イソラは勝負を賭ける。と、いやぁ、ミステリ仕立てで、予想を超える展開と、どんでん返しに次ぐどんでん返し。上手くて凄いっ、凄すぎるっ!! そして、サブキャラに到るまで、壊れてイカレた登場人物が、ほんと凄いよ。寿司とかブリとか、なんだよ、このふざけたセンスはっ!! あまりにカオスな内容が、どこまでも凄いっ!! そして、まごうことなき愛の話で、ほんと素晴らしいっ!!

[ オカルトリック ]


宝島社 このライトノベルがすごい!文庫
僕と姉妹と幽霊の再会 /喜多南

紫音、復活。クロを巡って、桃香と紫音のラブバトルが本格化するのかと思って期待したのだけど、それは、ほぼお預けか。今回は、兄に憑かれた少女・浅葱登場で、兄妹メイン。あわせて、緋色フォローか。この作品、相変わらず、優しくせつない話だよなぁん。

そゆわけで、幽霊を見ることができる少年・クロを巡るシリーズ第三弾。今回は、オカ研に浅葱と浅葱の死んだ兄・蘇芳が参戦。ほんと、相変わらず、切なく泣かせに来るなあ。ただ、もうちょっと、浅葱と蘇芳のイチャラブ的な要素を強調してくれれば良かったのに(笑)。浅葱は、クロとの絡みも薄く、いまいちキャラが弱い印象。肝心?の桃香と紫音は、クロも桃香の気持ちを察するような場面もあるし、これは次巻に期待かしらん。あとは、これに、緋色がどう絡んでいくかだなぁ。

[ 僕と姉妹と幽霊の約束 ]


アスキー・メディアワークス 電撃文庫
ソードアート・オンライン プログレッシブ1 /川原礫

『ソードアート・オンライン』のアインクラッド攻略を第一層から描き直す意欲作。なのだけど、序盤からアスナの親密度が高いとか、やっぱ変だろ。そこは、女の子をとっかえひっかえする方が、キリトらしいんじゃないか? 各層に嫁がいる、ぐらいで ちょうどいいだろっ!!

とはいっても、アインクラッド編は、やっぱり段違いに面白い。ちょうど今、TVアニメでALOをやってるけど、ほんと、アレはありえないよな。……もとい、第一層攻略を描いた「星なき夜のアリア」は、TVアニメ第二話の内容。アスナとの馴れ初めも、そして、そんなに親密でない仲間たちによる力を合わせてのボス攻略的な展開も、すげーおもしろい。ただ、アニメ以上に理不尽だ。いや、ネトゲはやったことないけど、そんなにスタートダッシュって有利なの? クエストが先着のみというわけではなさそうだし、ボーナスとかがあったとしても、先行して攻略するリスクを考えると、そんなに美味しいようにも思えないんだけど。キバオウの憤慨が理不尽すぎるように感じて、どうにも納得できない。まあ、その後のキバオウをみると、実際さほど理不尽ということではなく、キバオウの性格的な問題なのかもしれんけど。

第二層攻略の「儚き剣のロンド」は、うーん、この段階でここまでの親密さを見せるアスナは、やっぱ違和感。ミステリ仕立てなのも冗長な感じで、作者があとがきで述べてる懸念が、そのままマイナスになってる感じががが。

しかし、年に二層ぐらいのペースで書いていくって、ほんと、何年かけるつもりなんだ?(^^;。……SAO読んでると、すっごくRPGがやりたくなってくるけど、キリトのコミュニケーションスキルでさえ、基本、ぼっちなソロプレイヤーとか、MMOって、どんだけコミュニケーションスキルが必要なんだよっ。

[ ソードアート・オンライン ]


メディアファクトリー MF文庫J
お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ8 /鈴木大輔

一冊丸々ぎんぎん回。カバーイラストの小学生時代のぎんぎんの可愛いし、前半のデート編の空回りするぎんぎんも可愛い可愛い。だけど、やっぱりヘタレだ(笑)。や、今までの『おにあい』からすると、もう少しやらかしてくれるのかと思ったのだけど、思った以上にガードが堅い。肩透かしな感じがするのは、否めないなぁ。……後半のぎんぎんと秋人の小学生編は、秋人が積極的に熱く動いていて、いまの秋人からすると想像できなくて、すげぇ。この二人が成長したら、世界を牛耳るなり、すごく大きいことができそうな雰囲気なのに、なんで高校生になって、単なるハーレム展開になってるんだ(笑)。

[ お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ ]


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