えぐえぐ、泣ける(T-T)。綺麗で純粋で感動的な話。白痴っぽいヒロインは、ちと鍵系ヒロインの影響を受けすぎな予感なのだけど、新人さんとしては非常に読みやすい文章と、なにより綺麗なストーリー展開が素晴らしい。なるほど、これなら評判もいいわけだ。
いかにも好みには見えなかったのだけど、評判がいいので読んでみました。第13回電撃小説大賞<大賞>。心が壊れた少女が、畏怖と恐怖の対象になっている魔物の王と出会い、心を通わせていく物語で、童話仕立ての内容。いやぁ、とにかく綺麗で優しい物語だよなぁ。ほんと、新人にしては非常にクオリティも高く、素晴らしい。満足満足。
それにしても、噂では、「ライトノベルの範疇外の内容」みたいなのが耳に入ってきてたのだけど、さほどそうは思わなかったなぁ。というか、キャラもストーリーも鍵系の影響を色濃く受けてる予感で、むしろお約束なお話で、電撃で出てても違和感はないと思ったり。いや、確かに、この内容でカバーが萌え系のイラストだったら、雰囲気台無しになるとは思うんだけど(^^;。そゆ点では、電撃はホント懐が深いよなぁ。
[ ミミズクと夜の王 ]
なにゅ〜、そういう伏線だったのかー。や、予想よりも大きな話になっていてビックリです。まあ、そういう話にしないと、確かに、物語の緊張度が違うよなー。本格化する政争に、これは続きも目が離せませんっ!! ……今回の話に関しては、ちと拍子抜けな印象も否めないけど(^^;。
楸瑛を追って藍州へ向かう劉輝。さらに、監察御史として、その劉輝を追う秀麗。劉輝不在を機を狙い、暗躍する貴族派。そして、一行がたどり着いた藍州・九彩江は、王の死すら問われない藍家と縹家の治外法権が認められていた……。といいつつ、実は、次巻以降の展開への布石的な部分が大きいのが今巻だったりするわけで、いやぁ、ほんと続きが楽しみだなぁ。まだ、国試派不利とか藍家の立ち位置なんかの状況を中心に、説明が足りず納得できない部分も多いのだけど、まあ、そこら辺は続き次第だなー。
しかし当初は、秀麗が宰相辺りまで出世し劉輝と結婚してゴール、という辺りを想像してたのだけど、もう、さっぱり物語の着地点が見えない(^^;。ほんと、今後は、どっちに進むんだーーーっ!!
[ 彩雲国物語 ]
いやぁ、面白かったです。10数万年前にアフリカで生まれた現生人類が、いかに地球上に広がっていったのかを、ミトコンドリアDNAとY染色体の分析結果を主にして、さらに実際の過去の気候変動や遺跡の年代測定の結果を加味して論じた内容。
ただ、無駄が多い文章な上に説明も冗長でわかりにくく、正直、あんまり読者のことを考えてかかれてるとは思えなかったり。文章を必要最低限に削った上で、もっと、的確な図を使って説明して欲しかったよなぁ。あと、自説と異なる学者を貶すようなことを、わりとページ数を割いて書いてるんだけど、それもどうかと思うんだけどなぁ。
そゆわけで、以下メモ。
[ 人類の足跡10万年全史 ]
ヒロインの小川令子は、かなり良いわぁ〜。森博嗣の作品では、やっぱ、萌絵が圧倒的に強力なんだけど、それに劣らないタレントを見せ始めている予感。……年齢は行ってるけどな(笑)。
Xシリーズ二作目。満員電車で起こる連続切り裂き事件。犯人に間違えられた男性から依頼され、鷹知祐一朗と小川令子は捜査を開始する。というわけで、事件はわりとどうでもいいのだけど、小川令子のズレた会話と感性が非常に楽しい。変に気が多いしな(笑)。萌絵も微妙に絡んできて、キャラクター小説としては、ほんと面白いです。……ただ、萌絵は絡んでくるものの、ストーリー的にはあまり奥行きを感じないのだけど、シリーズとしては、どういう方向に進めるつもりなんだろう。
[ Xシリーズ ]
ちょっと類型的で薄っぺらいなー。まあ、新人さんにしては文章はそこそこ読める方だと思うんだけど、ストーリーも人物も表面的で薄っぺらく、説得力もなければ印象にも残らない作品になっちゃってるのよなー。
「ペイン・キャプチャー」という能力を持つ、反抗期の少年のような行動をする警官・鉄が、その特殊能力を使って犯罪者を取り締まるという連作短編。まあ、「ペイン・キャプチャー」―“他人と痛みを共有する能力”というアイデアは面白いのだけど、それ以外はいまいち。いや、なんといっても問題なのは、シリアス基調で重い話を狙ってるはずなのに、キャラにしろなんにしろ、しっかり踏み込んで描かれてる部分が全くなく、すげー薄っぺらいのよねん。こういうタイプの話は、せめて、主人公の心情ぐらいはもっと深く踏み込んで描かないと、お話にならないと思うんですがー。
[ ペイン・キャプチャー ]
おもしろいおもしろい。なんと言っても手堅いストーリーがおもしろい。元は児童書で、ライトノベルと比べると描写や演出は地味なんだけど、ほんと、きちんと物語としておもしろいのは素晴らしいです。そのストーリーはというと、父帝より命を狙われる第二皇子チャグムと、偶然チャグムを助けたことにより、チャグムを守り逃亡することになる女用心棒バルサ。チャグムとバルサは無事に生き延びることができるのか? そして、命を狙われる原因であるチャグムに宿った精霊と建国の秘密とは? という感じかしらん。
や、丁寧にわかりやすい伏線がきちんと回収される、すごく手堅い構成で、読者の期待を裏切らないストーリー展開なのよな。読んでいて「次は当然そういう展開だよな。ほらっ、きたきたきたーーーーっっっ!!」 という感じで、そしてそれが、きちんと手に汗握る展開に仕立ててあって、非常に楽しい。描写は最低限もないぐらいで、そこは物足りなくもあるんだけど、ほんとストーリーが魅力的。文庫はまだ2巻しか出てないみたいだけど、完結までは全部で10巻? や、続きも非常に楽しみですっ!!
[ 守り人シリーズ ]
2巻もめちゃくちゃおもしろいなー。1巻同様、描写は最低限で、ストーリー展開で魅せる内容。王道的に手に汗握る展開で、それでいて安心できるストーリーというのは、ほんと素晴らしいなー。
女用心棒バルサは、過去と向き合うため生まれ故郷のカンバル王国へ。先王が死に全ては終わったと思っていた過去の因縁が、大きくなってバルサを襲う。という感じで、先王の悪行とユグロの陰謀、さらに、山の王の秘密とカンバル王国の危機をキーに、ぐいぐいと読ませる展開は、ほんとに面白い。散りばめた伏線が収束し、綺麗に纏まったラストも素晴らしいなぁ。ほんとにスゲー面白い。よかったっ!!
で、封入されていたチラシによると、続く文庫版 3巻は、来春発売かいっ。すでに完了してるシリーズの文庫化なんだから、もっと出版ペースは速くてもいいと思うんですがー。
[ 守り人シリーズ ]
良い意味で下らない学園コメディ。出来は悪くはないと思うのだけど、うーん、好みじゃないや(^^;。
第8回えんため大賞編集部特別賞。成績順にクラス分けされた学園、最低クラスで待遇も最低な Fクラスに在籍する明久たちは、待遇改善を賭けて、秀才集まる Aクラスに戦いを挑む。という感じのストーリーで、基本的には、コメディ中心の軽い内容。確かに笑えるシーンもあるのだけど、個人的には、ちょっと軽すぎて好みじゃないんだよなぁ。ラブコメ方面も弱いしなぁ。
[ バカとテストと召喚獣 ]
学園祭。クラスの待遇改善のため、喫茶店でお金を稼ぎ、試験召喚大会で優勝を目指す、という話。軽い学園コメディとしては良い出来だとは思うんだけど、やはり好みじゃないんだよなぁ。う〜ん、せめてもうちょっとラブ寄りだったら良かったんだけど、いまのところラブもコメディのネタでしかないからなぁん。
[ バカとテストと召喚獣 ]
ダメ。そもそも、MF文庫Jのくせに、萌え萌えキャラ小説でなく、中二病全開、中高生向けファンタジーだったとは。がっくりだっ。
第3回MF文庫Jライトノベル新人賞、佳作。友人4人と作ったパーティの中で、一人魔法に目覚めず足手まといのネイブ。その劣等感の塊のようなネイブが、いろいろあって、強力な魔法に目覚める、という話。……まあ、好みに合わない上に、出来も酷い。読みづらい文章な上に、無駄な記述が多くてぐんにょり。そして、キャラが立ってない癖に、無駄に人数が多くわかりづらい。さらに、オーソドックスなストーリーのハズなのに、変に背伸びした構成を目指しているのも、なんだかなー。とにかく、構成や無駄を整理して、もっとキャラ描写を増やさないと、とても読めたものにはならないと思うのですがぁ〜。
[ 地を駆ける虹 ]
第19回ファンタジア大賞<準入選>。量産型のオンボロロボットが、気合と根性で、ちびっ子博士を守る、という話。コミカルなノリをベースに、きちんと燃えて泣ける要素も入れ込んだ内容で、全体にそつなくよく出来ていて、十分面白いんだけど、正直、好みじゃないんだよなぁ。
[ 量産型はダテじゃない! ]
いやぁ、面白い。一見バラバラに見える 3つの事件と、それらの事件の裏に見え隠れする ID仮説を信奉するテロ集団、という感じで進むのだけど、サスペンス的に盛り上げる展開が、非常に面白かったです。ただ、序盤でスケールの大きい話を期待させてたにもかかわらず、読み進めると「あれ?あれれ?」という感じに、拍子抜けで肩透かしだったりもするので、そこは残念だったりもするのだけど。
2036年。技術の進歩により確実性を誇るようになっていた気象予報シミュレーションが台風の進路予想を外すようになる。一方、ジャーナリストの失踪事件や古生物学者の事故死の裏に、ID仮説を信奉する世界的テロ組織「ユーレカ」の影が見え隠れする。気象予報シミュレーションの不調の原因は? 「ユーレカ」は何をしようとしているのか? そして、人類の進化の謎とは? そこに神は関与しているのか? と言った内容。こー、いかにもスケールが大きそうな内容で読んでるときは確かに面白かったのだけど、読後感としては、ちょっと期待ハズレなんだよなー。小ネタは面白いし、伏線もきちんと回収されてて悪くはないハズなんだけど、どうにももやもや感の残るラストで、にんとも。
[ 進化の設計者 ]
女性らしい感性で書かれた良質のファンタジー、と思ったら、作者の人は男性かっ。描写が足りない&展開が唐突、という欠点はあるものの、総じて、非常に筋がよいファンタジーでした。オススメっ!!
第19回ファンタジア大賞<準入選>。“森の魔女”と呼ばれ人々から敬遠されていた少女リッカは、優しい二人の青年と出会い、そして人々と交流するようになる。しかし、彼女には失った記憶と共に、周りを不幸にしかねない大きな力が授けられていた……、みたいな内容。いやぁ、魔法や神の設定をはじめとした世界観はわりと綺麗だし、“神子”として生まれ運命に振り回される少女をまっとうに描かれていて、非常に面白かったです。主人公の少女視点でストーリーは進行し、少女漫画的な唐突な展開が散見されるので、作者の人は女性かと思ったら、解説を読むと男性らしくて、ちとビックリ。まー、新人らしく荒削りではあるのだけど、ほんと、ファンタジーとしては、よく出来てると思います。面白かったっ!!
[ 沙の園に唄って ]
最高傑作級。もう、エミリー様、下品すぎるだろっ(爆笑)。いやぁ、軽くコミカルなノリと裏腹に、良くぞここまで、重い話に仕立ててきたなぁ。文章も読みやすく、構成も非常に巧く組み立てられていて、新人とは思えない出来。ほんと素晴らしい。
第6回スーパーダッシュ小説新人賞大賞受賞作。弟王との王座争いを避けるため、辺境に引きこもっている王女エミリーは、待女や騎士にやりたい放題の日々。今日もジュディやアルバートをいぢって遊び倒していた……。という感じで、愉快で下品なエミリー様が素晴らしすぎるっ!! エミリー様、万歳っ!! エミリー様、最高っ!! そして、そのエミリー様を容赦なく襲う運命っ!! エミリー様の豪快な性格も、シリアス展開する重いストーリーも、手加減なく描かれていて、ほんと面白い。そして、単にコミカルなキャラとシリアスな展開というギャップだけで見せるのではなく、ストーリー構成がきちんと丁寧に組み立てられていて、そこもまた、素晴らしいのよな。くぅ〜〜〜、ホントに素晴らしい作品でしたっ。
[ 鉄球姫エミリー ]
デビュー作「ブルー・フライト」を含む、菅浩江の初期作品を集めた短編集。う〜ん、陰鬱な作品が多く、ちと好みじゃない部分もあったりして(^^;。
収録されている作品は 8篇なのだけど、その中で印象的だったのは、「雨の檻」と「そばかすのフィギュア」かしらん。「雨の檻」は、免疫不全のため無菌室から出れない少女シノと、そんなシノのために作られたアンドロイドのフィーのせつない話。予想通りにストーリーが展開するのだけど、壊れていく日常が怖くせつなく、そしてラストが、凄く印象的なのよなぁん。「そばかすのフィギュア」は、最新テクノロジーにより自在に動き感情まで再現されたフィギュアと、そのフィギュアをデザインし自らの想いを重ねる靖子とのせつない話。「フィギュア」というネタでオタク心をくすぐりつつ、きちんと綺麗でせつなく泣ける話になってるのよなぁん。……しかし、陰鬱でせつない話ばかりで、もちっと明るい話があってもいいと思うんだけどなぁ。
[ そばかすのフィギュア ]