超広視界双眼鏡 10x50 WX で星空を見ると凄いが、地上風景を見ても凄い。
没入感が半端ないのだ。
フルフラットで視野端までシャープな超広視界のなせる業だろう。
しかし、その大きさと重さから旅行に持って行くのは難しく、旅先の風景を見る為の『ミニWX』が欲しくなってしまった。
私にとっては魔性の双眼鏡だな…
そうは言っても、旧表示で90度の超広視界フルフラットの双眼鏡は WX の他に存在しない。
となると Zeiss SF, Swarovski NL pure あたりか?
導入の動機からして口径は42mmより32mmが良いし、可能な限り広視界で視野端までフルフラットであることは譲れない。
様々なレビューを参考に選定すると、フラットさは NL > SF のようなので、目的に合致しそうな機種は 10x32 NL になるが、口径42mm並みの高価格。
買うべきか見送るべきか?
8x32 NL の見掛視界が68度と小さ目 (!?) なので、10x32 NL が浮上したのだが、一般的に 10x32 はあまり人気がない。
日中の使用がメインなので、瞳径が3.2mmでも明るさ的には問題ないが、目の位置にシビアで手ブレにも弱い。
しかし、高倍率気味の方が風景への突入感 (没入感というより突入感) は増すだろうし、旅行では『小さすぎて何だが迫力がなかった』という事態も減らせる。
それに、NL pure にはヘッドレストが付けられる。
また、光学系の粗は高倍率の方が出やすく、高性能な 10x32 は限られることから、高性能な 10x32 なら高価格もある程度は納得できる。
だいたい、次の機種が出るのを待っていたら残り少ない人生が終わってしまう。
こうして購入を決めた。
追記 (2021/08)
口径42mm機と共用と思しき大きなフォーカサーと太い接眼部、そこに鏡筒が接続されたシンプルなデザインは、オープンヒンジより個人的には好きだ。
初めて手で持ったときの印象は「平たい!?」だった。
鏡筒の括れ部分が結構な扁平だからなのだが、この形状のお蔭で特に手にフィットするとかは個人的にはあまり感じないかな。
フォーカサーの動きはかなり軽く精密なピント合わせができるが、擦れを感じる時もある。
光学性能は半端なく良い。
中心星像は正に針で付いたようなピンポイント。
同じ星 (例えばM45のアルキオーネとか) で見比べた場合、小口径の方が星が暗くて締まるし、瞳径が小さい方が目の収差の影響が減ることもあり、私の持っている光学機器の中で最もシャープな星像を (私の目には) 見せてくれる。
視野の最周辺でも芯のしっかりした星像で、昼間の景色なら視野端まできっちりシャープに見える。
視野をパンしても回転球現象が顕著にならないギリギリのところまで直線歪曲補正がなされているようで、直線で構成された街並みを見ても違和感はないが、視野周辺の圧縮はある。
青色の透過率は抜群で、早朝の山の木々に薄く掛かった霧の微妙な青味などが、他のどの双眼鏡よりも良く再現される。
非常に細かい事を言えば、この双眼鏡でも視野の周辺20%ほどは色収差が僅かに残っているし、同周辺は色調が僅かに青にシフトしていたりとかはあるが、普通に使っている限り全域に渡って完璧と言いたくなる視野だ。
視野円は 8x30 EIIより少し大きい程度なので、EIIの視野円を見慣れた目には特に大きいと感じることはないが、狙い通りフルフラットな視野のため『丸窓を通して見ているような』没入感が得られる。
もちろん、WXの90度の視野 (こちらは『丸窓から身を乗り出しているよう』) と比べてしまうと、75度の視野では没入感で大きく及ばないが、手軽に持ち運べるフルフラット広視界双眼鏡として現時点で最善であることは間違いない。
ヘッドレストを付けて星空を見上げてみると、自作ヘッドレストを装着した 10x50 FMT より微振動が残る。
双眼鏡が軽くて微振動を拾いやすいからなのか、自作品は額当が大型のY字形状で重心までの腕も長いからなのか、理由は良く分からない。
そうは言っても多少なりとも手ブレを減らす効果があるし、別の活用法もある。
WXと比べるとNLは視野端がやや見辛いのだが、アイカップを普段より1段低くしヘッドレストだけで固定するようにすると、目をブラックアウトしないギリギリの最適な位置に持ってこれるし、眼球の動きが自由になるので、視野全体を見渡しやすくなる。
そう、三脚に固定したときの覗き方が手持ちでできるのだ。
あと、某掲示板などでベールグレアが話題になっているが、確かに逆光や曇天などで視野の下部に出やすい。
しかし、目を気持ち上にずらしたりして覗き方を変えればグレアを完全に消せるので、個人的にはあまり気にはならないかな。
このような目の位置の微調整にもヘッドレストは有効だ。
大きさと重さは 8x42 MHG とほぼ同じだが、この2機種は性格が大きく異なる。
片や低倍率・大瞳径で扱いやすい高性能機、片や高倍率気味で気難しい超高性能機といった感じだ。
ちなみに、暗い星やメシエ天体などの検出能力は 10x32 の方が 8x32 より高く (瞳のお話:極限等級)、光害の影響を受けた空なら 8x42 並の検出能力がある。
思いのほか旅のお供に活躍してくれそうだ。
追記 (2021/10)
最高に気に入って使っている。
口径32mmにしては高倍率気味の10倍を選んだが、視界はクリアそのものでピン・シャープ。
10倍を選んで大正解だったと思っている。
NL pureシリーズは、12x42 やヘッドレストが用意されていることから、高倍率側に特に力を入れている気がするのは気のせいだろうか。
そもそも双眼鏡の選び方として、口径42mmなら10倍を選ぶということは、本当に必要としている倍率は10倍なのであり、昼間使うことが前提なら口径32mmでも10倍を選んだ方が良い (光学性能さえ見合えば)。
この双眼鏡を使っていて、強くそう思うようになった。
ところで、付属のストラップはネオプレーン素材で平紐の長さが簡単に変えられるようになっており、なるほど大変に良くできている。
山歩きなどには凄く良いだろうし、これが気に入ってスワロを選ぶ人も居るに違いない。
しかし、やはり少々嵩張ると思う。
私の用途は旅行中心なので、バッグなどに入れて持ち歩く際の携行性を重視し、嵩張らないシンプルなストラップに変更することにした。
変更したのは 203 Camera Straps のブラックナイロン ショートストラップ (ベース長45cm、幅30mm) (右写真)。
全く飾り気のないストラップで高いものでもないが、サルカン (平紐を通す輪っか) がレザー製なのが少しだけお洒落かも。
サルカンがレザー製だと、いわゆるニコン巻きをしたときに平紐を止める力が弱いかもと心配したが、そんなことはなく、むしろ3本の平紐が通しやすくニコン巻きに適していた。
ベース部はナイロン製なので凄く柔らかいし、裏地のマイクロファイバーも心地よい。
これでヘッドレストを外すと、かなりコンパクトに収納できる (とは言えヘッドレストは滅多に外さないが)。
この双眼鏡を持って出掛けるのが最近の楽しみになっている。
追記 (2021/10) 修正 (2021/12)
海外の掲示板を見ていたら、『NL pureの最大の欠点は、キツ過ぎる接眼レンズキャップだ』といった書き込みがあった。
もちろん冗談半分だと思うが、しかし私もキツ過ぎると思う。
運搬にはキッチリ嵌って安全で良いが、頻繁に付け外しする際に具合が悪い。
そこでスペアパーツを入手し、接眼レンズキャップの内側にある6つの引っ掛かりのうち、3つ (右写真の黄色矢印部分) をカッターで切除した (右側は切除後)。
また、ストラップの平紐を通す穴のうち、普段は通していない方には斜めに切込を入れ (右写真の水色矢印部分)、平紐を本体から外さなくても通せるようにした。
これでしばらく使ってみたが、まだ少しキツイので、もう1つの引っ掛かり (右写真の橙色矢印部分) も切除した。
これで丁度よい嵌り具合になった。