今日はもう1件。
先日授業中にちょっとした事件があった。裸夫モデルのデッサン中に、あるアジア人の女の子が一部の生徒にだけレクチャーを続けていた先生に腹を立て、"What are you doing!", "Who are you!" などと叫び続けて大変な剣幕だったのだ。アシスタントをはじめ仲裁に入る人々など入り乱れてちょっとした騒ぎになってしまった。その彼女に今日友達になった韓国人の女の子が似ている。彼女はその後にクラスに入ったので事件を知らない。私には話してみてぬれぎぬとわかったが(件の彼女は英語がカタコトだった。今度の彼女は流暢)、周囲が同一人物と見ていたら気の毒。
この騒ぎの後の休憩ではひとしきりこの話題が盛り上がり、彼女に背を向けていたモデルさんは"What are you doing!"に「わしのこと?何か悪いことした?」とポーズも震えてしまったと言う。この時に私が考えたこと。
彼女の国籍について。私は英語の発音から日本人ではないと言った。台湾人が中国人ではないと言った。ゆえに韓国人だろうという結論になった。真偽のほどは不明。
2/12
地下鉄の路線を変えたら快適になった。今度は往復共に終点で降りるので絶対安全。
ところで問題の7番の地下鉄(先日誤って急行に乗った路線)をいつも利用しているという人に出会った。この通り過ぎてしまった駅というのはグランド・セントラルというアメリカで最初に地下鉄が開通した(と思った)ミュージカル「42nd Street」の舞台にもなっている大・大メジャーな駅。東京駅みたいな主要駅なのだ。彼は7番の「急行」がここを通過することはないはずだと言った。「本当に通り過ぎたんだよう」と主張すると、それは間違って通り過ぎたのだ、そしてそうした間違いはよくあることなのだ、Express, Local の表示もしょっちゅう間違っているのだ、ダイヤが遅れて「通過する」というアナウンスが入って駅を通りすぎてしまうこともあるのだ、「I hate the subway system!」と彼は言った。I agree with him.
語学学校でお友達になったチハルさんはニューヨーカー。駐在員のご主人と赤ちゃんとミッドタウン(グランド・セントラル駅があるNYC中心部)のアパートメントで3人暮し。話を聞いてあんまり境遇が違うんで驚いた。同じアパートの日本人達と日本食料品店からデリバリーを頼んでの生協風食生活、車は持っていない、学校にでも行って意識的に使おうとしなければ全然英語を使わないで済んでしまう日々等。日本の生活でのわずらわしいこと(親戚付き合いとかかな)とは無縁で東京の生活の便利さはそのまま。このままずっとニューヨークに住んでもいいと言っていた。ニューヨークには日本のレストラン、パン屋、本屋、ビデオ屋、図書館何でもある。地上波日本語放送もあるしなあ。全くうらやましい。
郊外に住んでいるお友達の話。やはり日本人も全然いない、周りに何にもない、近所の人々との交流を求めて学校に行ってもお年寄りばかり、一日中一人で家にいる日が何日も続くことも。ボランティアのお婆さんが週1訪ねて来てくれておしゃべりをするのが唯一アメリカ人との交流。だそうだ。チハルさんはこの話を聞いてもピンと来なかったそうだが、私にはわかるわかる。
ニューヨークに住んでアーチストを目指しているヒロ君は共同バス、共同便所のアパートメントに中国人のおじさん達と住んでいるという。アートスクールへの通学は自転車。全くニューヨーク近辺の一角だけを取っても日本人のアメリカ生活はいろいろなのだった。
普段使われていない脳の部分には「つばくろのジンペイ」とか一生浮上することがなかったかもしれない知識が埋もれているのだった。
2/19
徒歩10分以内に Deli(デリカテッセン) が出来た!とてもうれしい。コンビニ代りに使えるぞ。アメリカで Deli はどこにでもあって人気がある種類の店。冷製のお惣菜やハム、サンドイッチ、ちょっとした缶詰、瓶詰、菓子等を売る。早速瓶ジュースとお菓子を買う。
私はコンビニが大好き。日本に住んでいた時は徒歩3分圏内に2件あり、夜中にちょっと小腹が空いちゃった時など便利に利用したもの。アメリカにも当然セブン・イレブン等24時間営業のコンビニがあるが(西には日本資本?のファミリーマートもあると聞く)、夜間は行ってはいけない危険な場所と言われている。そもそもうちの近所にはないけれど。
暖かいのでお散歩などしてしてみた。気候さえよければニューヨークは歩き易い街。アヴェニューとストリートの番号を見ながら歩けば迷わない。お買い物などして散財。本と画材でたかが知れているが。
物価と税金が高いのでなるべくニューヨークで買い物はしない習慣。ただし本、画材はニューヨークの方が安い。地元の画材屋は1件で独占企業状態。捌ける数も桁違いそうだから仕方ないけれど。値段に差がない日本と違い、アメリカで本は出版社、書店によって値段に結構差がある。一般書のペーパーバックでも1ドルから20ドル位まで。特に気に入っているのは「Dover Thrift Editions」というシリーズ。1ドル、2ドル均一で名作古典が読める。
アメリカ人に描く時は日本語か英語かと聞かれた。どっちでもないつうの。「English!」と答えたのは、日本のファイン・アートにはジャパニーズ・ドメスティックとウェスタン2種類の手法があり、これはウェスタンだから、というリクツ。「ハックルベリー・フィンの冒険」の中で脱走黒人奴隷のジムが「フランス人だって人間だったら英語を話すはずだ」と言うくだりを思い出した。あんまり関係ないか。この本は大人になって読むと哲学的とも思えるし、使われている英語が面白いので機会があればぜひ英語で一読をお薦めする。
これを再読したきっかけは新潮「百年の文学」でサイデンステッカーが邦訳不可能な作品として挙げていたため。日本語訳用の変な黒人言葉ってあるけどな、あれってやっぱり、何だよなあ。現代アメリカでも「黒人英語」というものがあるらしく、標準英語が理解出来ない子供のために学校の授業でも黒人英語を採用する地域に関する記事が新聞に出ていた。これがまた子供の将来の差別に繋がるという反論もあるらしい。日本はテレビの影響で全国的にいわゆる「標準語」も話すと言われているが、TV大国アメリカでなぜ標準英語が浸透しないのだろうか?
一応書いておくと、ジムだけでなくハック・フィンもなまってます。
今日はもう1件。電車に乗っていたら突然逆向きに走り出した。線路(軌道)を変えるため戻るとの放送が。
隣の席のおじいさんはこの時寝ていたので、目覚めてとても焦っていた。当然だ。気がつくと電車が反対に走ってたなんて「ウルトラQ」や「世にも奇妙な物語」じゃないつうの。
結局5駅戻ってマンハッタンまで停車なしの急行になった。途中駅に行く人を降ろすために停まったのは私が乗った駅。日本だったら大騒ぎで新聞沙汰だ。乗客は騒がず、ざわめいたのは Bridgeport まで戻ると放送が入った時と(そんなに戻るのかという反応)、Express になると言われた時だけ。急ぐ人いないの?電車の本数が少ないため、皆さん私同様余裕を持って家を出ているのだろうか。だいたいアメリカ人は、行列しても電車が遅れてもレストランで待たされても、文句も言わず騒がない。
朝から2時間電車に乗って激しく消耗した。
2/26
恐い目という程のことではないが、酔った黒人のおじさんに耳元で"Take your shit!"と言われた。こっちじゃない方なら日本で飲むのが流行ったけどな。
そういえば先日エンパイヤ・ステート・ビルディングで銃乱射事件があったらしい。日本からのメールで知った。新聞でまともに読むの映画評とマンガだけだもの。コネチカット州の新聞でも1面トップに載るくらいだから、ニューヨークといえどもこんなに危ない事件がしょっちゅうある訳ではない。